「ちょ、ちょっとあれ!!」
数回の戦闘を重ねながら探索を続けている俺達。
ある戦闘を終えて、少しばかり休憩してから進み始めた時、あることに気がついた。
「倒したクリミナルさんが、生き返ってる!?」
さっき倒したクリミナルが同じ場所で煙共に現れたのだ。
これから察するに、今まで倒したクリミナルは全部生き返っているということになる。
クリミナルはキョロキョロと周りを確認して俺達が居るのに気が付いた。
「こっちに来るよ!逃げなきゃ……!」
「みんな、走るぞ!」
俺達は奴等から逃げ出す。
サコが力を失っている以上、戦闘は極力避けなければならないからだ。
一心不乱に走り続け、前へ前へと進んでいると再びあれが俺達の前に立ちふさがる。
「また……門……」
門扉にはこう書かれていた。
『四人のうち二人をこの場に置き捨てよ。さすれば扉は開かれん』
「またかよ……ッ!」
俺は力の限り拳を強く握り締める。握ったてから血が滲み出そうな気がする。それほど力も体力も有り余っているのに俺には何もできない。
悔しさをこうやって誤魔化して、彼女達には落ち着いている風に見せるぐらいしかできず、根本的解決には導けない。
つくづく、俺は無力だと認識させられる。
「やっぱりここもじゃんけんで決めるんが良さそうやね……」
トモエが重々しそうにそう言うと、みんな仕方なくと言った感じで頷く。
再び、じゃんけんが行われた。
「……ユコの負けだね」
敗者は前回と同じくユコ。前と違うのはユコ自身がその結果を受け入れる覚悟が決まっている顔つきになっているってところだ。
「……それじゃ、残りの一人を決めましょう」
シンが話を進めようとしたその瞬間、サコが大声を上げて中断させる。
「ちょ、ちょっとまて!サコが……サコがユコといっしょにのこる!」
サコの発言に俺達は、どうしようか?と言った感じで顔を合わせる。
サコは俺達の意見など当てにする気もない感じで、ユコに問い質した。
「サコはずっとユコといっしょだったし……ユコだってそのほーがいいよな?」
ユコはすぐには答えなかった。考えるように目をそらし、すぐに視線をサコに戻すとゆっくりとこう答えた。
「ユコは……
「ユコ……!?」
サコは青い顔でユコの肩を掴み、声を荒げる。
「な、なんでそんなことゆーんだ??!サコがよわくなったからか???!なあ、ユコ!!」
今までの明るい声ではなく、単純な悲痛の叫び。
しかし、ユコはサコと目を合わせずに何も言わない。
代わりと言うわけではないが、シンがトモエに聞いた。
「……トモエ、貴女の意見は?」
「……うち、ええよ」
これをトモエは承諾。
「センセとお別れするんは寂しいけど、せっかくのご指名やし」
「そう、二人がそれで良いなら私はなにも……」
「そ、そんな……」
サコは絶望的な表情をしてうつ向き、もう反対の意を唱えなかった。
残る者を決めると扉はゆっくりと開く。
俺とシンが扉を潜る。
「サコ……行くわよ」
動かないサコをシンが呼ぶ。
サコはシンの言葉に反応を示さなかった。が、その腕はプルプルと震えていた。
俺は動かないサコに近付き手を取ろうとした。その時、サコは怒りの色が染まった瞳でユコとトモエを睨み付けて声を荒げる。
「ユコ……なんで……なんでだよ!!ユコもトモエも……だいっきらいだーーーーー!!」
サコはユコ達に背を向けて走り出す。そばにいた俺は弾き飛ばされ、サコを止め損ねる。
取り残された俺はユコ達に言葉を残してサコを追いかける。
「すまん!二人とも無事でいてくれよ!」
「はいな!」
「先生……サコのことお願いします!」
こうして、ユコとトモエの二人を残して、俺とシン、サコが先に進むことになった。
この時、俺がユコとトモエの考えに気がついていれば、もっと早く苦しまずに済んだかもしれない。
先に進むにつれて仲間の数が減っていく。理不尽な要求を受けるばかり、心身が磨耗していき、疲れ、不安に、そして怒り、遂にサコがユコに酷いことを言うという有り得ない事態が起こった。
これが、氷ノ試練の真骨頂なのだとしたら……。そう考えると、この先無事でいられるのか不安になってくる。
でも、俺はなんとしてでもみんなを無事に上に連れていかなければ。
なんとしてでも、上に……上に……。
雪はまだやまない。
どうもDAMUDOです。
ここら辺だけの特別ボイス。結構好きです。