「鍵……鍵……ダメだ、それらしいもんが見つからねぇ」
門扉の鍵穴を見つけた俺達は、それに合う鍵がどこかにないか探していた。
鍵探しは中々難航しており、なにか落ちてたりすると大概が光を反射させている氷とかだったりした。
「なかなか見つからないわね」
「雪が積もってるから、地面に落ちてたりしてたらうっかり見落としちゃいそうだよね」
「ならサコがゆきかきしながらさがすぞ!」
「やめとけ。霜焼けしたら大変だ。あれは……かなり辛いからな」
いい加減諦めて当初の目的通り先に進んだほうがいいかと思い始めたその時、
「ねえ、みんな!あそこになんか落ちてるよ?」
トモエなにかを見つけたようで、駆け寄っていく。
拾い上げてみると、それは氷ではなく鍵だった。
「やった!これであの……とびら、も……」
鍵を見つけ喜びに浸るのも束の間、すぐに希望は消えていった。なぜなら、
「この鍵……どうみても鍵穴と合いそうにないよね……」
ユコの言う通り、この鍵は少し大きかった。
「そ、そやけど……きっと他に合うのがあるはずよ?」
「それもそうだな。よし、もうちょっと探してみよう」
俺達は再び歩きだした。
「これは……ダメね」
「これも大きすぎやね」
「これも形が違うよ」
「う~ちっちゃすぎる……」
「全滅か」
あれから何本か鍵を見つけたがどれも鍵穴とは合いそうになかった。
「はぁ……ユコ、疲れちゃった……」
「ユコ、だいじょうぶか!?おい、ユウ!そろそろきゅうけいにするぞ!」
「ああ、それもそうだな。シンとトモエも疲れたろ」
「休憩はいいけど、どうせならキャンプが良かったわ」
「う~ん、あの扉の前にあったのを最後に全然みてないね」
「ま、1階層にキャンプの入り口は一個しかないみたいだし、しかたないだろ。休息チケットもトモエの【リターン】もなぜか使えない、し……ん?」
俺はなにかを気配を感じ取った。
なにかが、俺達を見ている。
そう思った瞬間、二匹のクリミナルが突如現れた。
それを確認すると、俺はほぼ反射的に叫んでいた。
「シン!」
「了解!」
シンが【OPR・アシスト】発動。サコの力も借り、四人の能力を上げる。
二匹のクリミナルが突撃してくる。
「はいな!」
「ライトボール!」
相手の攻撃に合わせてトモエとユコがカウンターをお見舞いし、クリミナルを倒す。
特に強いクリミナルではかったが、どうしていきなりクリミナルが現れたのだろうか?……嫌な予感がする。
「みんな、悪いけど休憩はやめて鍵を探そう」
「教官……わかったわ。みんな行きましょう」
少し不満げな顔だったがなんとか言うことを聞いてくれた。
俺達は再び、鍵を探す。
あちこちで雪をかきながら鍵を探し続けてかなりの時間がたった。
「ううぅぅぅ、ちーべーたーいーッ!!」
「サコさん大丈夫?ここはうちが探すから……」
「ん……ううん!だいじょーぶ!サコはへーきだ!」
「ユコは前の試練の暑いのよりこっちほのうがマシだから頑張れるよ」
「そうね。それに、扉で待ってるみんなのことを考えたら……」
「そやね!ほな、頑張って調べてみよ!」
彼女達は鍵を探し続ける。
寒さ冷たさでどれだけ手がかじかみ、痛むのが容易に想像できるほど真っ赤になった手を必死に動かす。
仲間の為、再び笑いあって旅ができたあの時間を過ごす為。
「おーい、お前らそっちはどうだった。俺は鍵を幾つか見つけたけどダメだったわ」
少し離れた所で探していたユウが肩をすくめながら話す。
チラッと見えた両手は彼女達にも負けないほど赤い。
「センセ、おかえりなさい。こっちも頑張って探しとるんやけどね」
「全然ダメ」
「なんでこんなにも鍵が落ちてるのかな?」
「なんか、ぜんぶにせものなきがしてきたぞ……」
「そんなこと言うなよ。はぁ、少し戻ってみるか」
見落としがあるかもと通ってきた道を行こうとしたその時、
「ん?なんか踏んだような」
足元の違和感を確認しようと拾ってみるとそれが鍵だとわかった。
その時、鍵を見てシン達が声をあげる。
「ねえ、それ!」
「鍵穴に合うかも!」
「だな!」
「はな、急いであそこに戻ろ!」
多くの時間と大きな労力の末に遂に鍵を見つけることができた俺達は急ぎ足で三人と別れた門扉に向かった。
「おーーい、みんな~!!いまたすける……あ、あれ……?」
「扉が……開いてる……?」
「どういうことだ?」
俺達が扉門に着いたとき、すでに扉は開いており、そこには人影なんてもんはなかった。
なにかないか、俺達は開いている扉の辺りを調べてみる。
するとシンが扉に刺さっている鍵をみつけた。
「この鍵……私たちが見つけたのと同じ型だわ」
「ほな、みんなは無事にこっちにこれたんよね!よかったねぇ~。……それで、みんなは……どこ?」
「どこにもいないぞ?」
「もしかして……先に行っちゃったのかな……?」
「それならそれで、私たちと合流するべきじゃない!?」
「サコたち……いっしょーけんめーカギさがしたのに……」
話が段々と暗い方向に進んでいく。
「お前ら、もう少し考えてから話せよ。クリミナルが現れたとか、俺達があっちこっち行ってる間に行き違ったとか、色々事情があるかもだろ」
「そう……そうよ!みんな、ほら!そんな暗い顔せんと~!」
トモエが一生懸命、場の空気を変えようとする。が特に効果はなく。
「はぁ……なんかしらけちゃった。まあ、私たちも先に進みましょう」
その言葉を最後に誰も喋らなくなった。
少し怒ったような不満と疑心の色の陰が四人の顔を暗くする。その顔は彼女達と初めて出会ったとき以上の他人不信を見え隠れさせるものだった。
そして、今の俺にはそれを払拭する手はなく、ただ彼女達の前を歩くだけだった。
霜焼けはヤバイ、マジで。
ちょっとおまけとして、ユウがみんなの両手を手包みで暖めた時の反応みたいなの書きたいね。