クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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分断

休憩して暫く時間が経ったが、雪は一向におさまる気配がない。しかし、吹雪くようなこともなさそうなので、視界は悪いが、先を進むことにした。

 

「う~、やっぱり雪が降ってると寒いなぁ」

「しかたないでしょ。コートとか買えるわけじゃないんだから」

「そうなんだよね~。造るって手もあるんだけど」

「じゃあ、そうしなさいよ」

「いや、そうすると……採寸計らないとね、ぐえへへへ」

「オヤジが『Mr.インビジ』みたいだぞ」

「なっ!?」

 

そんな他愛ない会話をしていると前方に扉門が見えてきた。

 

「あれ、大きな扉があるよ」

「本当だ」

 

近付いてみるとかなり大きな門だとわかる。

開けてみようと試みるが押しても引いても開かない。

 

「ねぇ、ここになにか書いてあるよ」

 

どうしたものかと考えているとユコが扉門に文章が記されているのを見つけた。

 

「先生、読んでみて」

「まかせろ。なになに……七人のうち三人をこの場に置き捨てよ。さすれば扉は開かれん。……だぁ!?」

「な、なんだよ、この条件……三人置いてかないと扉は開かねーってことかよ……」

「七人ってことは、教官は数に含まれてないってことかしら」

 

この理不尽な条件を前に、みな不安げに顔を合わせる。

血の池のようなべったりとした空気が首周りにまとわりつき、誰かが次の言葉を発するのを躊躇させていた。

そんな静寂を最初に破ったのはサコだった。

 

「さ、サコは絶対嫌だからな!ユコとは離れないぞー!!」

 

微妙に口調が違ったがこんなときにそんな些細なことなど気にしてられない。

サコの続けとばかりにほかのみんなも口を開く。

 

「ああも~~~!!あんたはすぐそれなんだから。わかってるわよ!」

「……どうするの……?」

「ど、どないするんやろなぁ?」

 

みんな各々の不安を口にする。

 

「ちょ、ちょっと一回落ち着こう!な?」

 

なんとかこの場を宥めようと試みる。しかし、効果は薄かった。

 

「こんなときに落ち着いていられるか!」

「こんなときだからでしょ!」

 

騒々しさが彼女達の不安に比例して大きくなっているようだった。

俺が手をこまねいていると、後方から聞き覚えのある声がかけられた。

 

「あのう……」

「キャッ!!」

 

その声にユコが驚き、悲鳴をあげる。

それに反応してみんな一斉に後ろに振り向くと、そこには桃色の長髪を揺らす姿が雅なヒメカミが立っていた。

 

「ひ、ヒメカミ!?驚かさないでよ……」

「ご、ごめんなさい。伝え忘れたことがあったから慌てて追いかけてきたの」

「伝え忘れ……?」

「この試練にある門は一度通ってしまうと閉じられてしまうの。けど試練をクリアすれば後から開く仕掛けになってるの」

 

最初、ヒメカミが言っていることの意味がわからなかったが、段々と言葉の意味を理解すると、自然と気持ちが明るくなった。

ちゃんと対策はあるんだ。

 

「なるほど……こういうダンジョンではよくあるパターンよね」

「俺的には門の先に開閉のスイッチがあるパターンのほうが嬉しいんだがな」

「そんなこと言っても無理なものは無理でしょ。ひとまず、指示に従いましょう。後で合流すればいいわけだし」

「うん、ユコもそう思う。ユコ達を試してるんだよ、きっと」

「これも試練の一つってことか……」

「ほな、恨みっこ無しってことで……」

「じゃんけん勝負にするの……!」

 

ヒメカミの情報で幾分かは心の重さが軽くなったのか、みんな明るい方向に話を進めている。

取り合えず、ここで待機するメンバーをじゃんけんで決めることになった。

 

「それじゃあ、いくわよ!じゃーんけーん……」

 

七人は輪を作り、中心に向かって拳は振り下ろす。その過程にて七人の手はそれぞれの形に変えていき、そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それじゃ、三人とも、ここで待ってるのよ?」

 

じゃんけんの結果、ここに残ることになったのはキサラギ、アリス、ランの三人だ。

 

「アリス……ちゃんと待ってるの……」

「ま、恨みっこ無しって言ったしな。休憩だと思って羽根伸ばしてるよ」

「こんなとこでじっとしてたら雪だるまになっちゃうわよ!ほんっと急いでね!」

 

三人は後腐れなく見送りの言葉をかけてくれた。

 

「わかってる!すぐに迎えにくるからね」

「雪だるまになってたら、それはそれで面白そうだ」

 

俺達も暗い表情を見せずに見送られる。

 

「みんな、頑張ってね……」

 

最後、後ろでヒメカミが祈るように呟いた。

 

 

大丈夫、大丈夫。後でちゃんと合流できるんだ。そう心の中で言い聞かせながら、俺は四人を引き連れて門をくぐる。

門は俺達が通った瞬間、大きな音を立てて閉じてしまった。

 

「やっぱり鍵がかかったわね」

 

扉が閉まった。覚悟はしていたが、やっぱり寂しくならずにはいられなかった。

少し感傷に浸っていると、ユコがまたなにかを見つけた。

 

「あっ……!ねえ、ここに鍵穴があるよ!」

「なに!?」

「ほんとだーーー!こんなちっこいかぎあなみつけるなんて、さっすがユコだな!」

「ってことは、鍵さえあればここの門は……」

「開くってことだ!」

「それなら、早く鍵探して三人を迎えに行こ!」

 

俺達は先に進むことを後にし、扉門の鍵を捜しだすことにした。

 

白々と輝く銀世界。ここは地獄。心身凍てつく極寒地獄。

いまだ雪はしんしん降り注ぐ。積る雪が隠すは大地か視界か。それとも……

 

 

 

 




雪だるま衣装キサラギ

かわいいんじゃない?

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