クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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遅くなりましたごめんなさい。


ガールズオーダー2《前半》

しまった……私としたことが……。

私ことキサラギはちょっとしたトラブルにあってしまった。

自分のミスに塞ぎこんでいると、不意に後ろから声が掛けられた。

 

「元気ないなキサラギ。どうかしたのか?」

 

声の主はユウ。私の様子が心配になって、来たみたい。

あ、ちょうどいいじゃないの!ユウに手伝ってもらおう。

 

「うん、実はね。私、宝石をさがしてるんだ」

「宝石?」

「うん。前にアクセを貰ったけど、そう言うんじゃなくて、普通に丸いのが欲しいの」

「つまり、前の硝子部分にあたる部分だけ欲しいって訳か。丸いやつで」

「そうそう、そう言うこと。同じ形をしているやつが二つ欲しいんだけど、今手元になくて……」

「前みたいに探してくれってわけか」

「うん。言っとくけど、二個一緒じゃないと意味ないんだからね!」

「あれ?俺が引き受ける前提で話が進んでない?」

「なによ、ダメなの?私も一緒に探すからいいでしょ?」

「それは別にいいんだけど……そんなのどこにあるかな~って思ってな」

 

そっか。ここは地獄なんだから、探し回ってれば都合よく落ちてるなんてことはないか。

 

「あ~もしかしたら、炎ノ試練のどこかにあるかもしれないな」

「え!ホント?」

「ああ。マグマとかあるし火山っぽいだろ、あそこ。もしかしたらあるかもな。モンハンのやりすぎかもしれないけど」

「なんでもいいわ!はやく行こ!」

「はいよ」

 

私はユウを連れてキャンプを出た。

 

 

前にアクセサリーを貰った時以来、久し振りにユウと二人きりの時間。

何時もはみんなの先生だけど、今だけは私だけのお願いを聞いてくれる。

そう思うと、ユウを独占できている優越感が生まれる。

 

って!それじゃあ私があいつのことを、す、すす好きみたいじゃない!それはない、ないない。……でも、最近は嫌いじゃなくなったかな。

いっつも私に命令するし、スケベだし、えらそうだけど、口喧嘩も本音でいいあえるし、私がミスった時にフォローもしてくれる。あ、儲かったりすると一緒に盛り上がる時は楽しい。

うん、やっぱり最初あった時より仲良くなってるのは否定できないな。

 

「おお!あったぞ!」

 

ユウが何かを摘まみ上げて吠える。

それはちょうどいい大きさの丸くて綺麗な石だった。

 

「でも、一個じゃなぁ。近くにもう一個ねぇかな」

「なら、今度はあっち行こ」

「おう」

 

私が勝手に押し付けたことなのに一生懸命にやってくれるユウの姿は、ムカつくけど格好いいと思ってしまう。別に恋愛感情はない。

 

こんなに近い距離感を持てる男なんていなかったから楽しい。

ユウが父親か兄だったら楽しく過ごせたかもしれない。最近そう思う。

 

「あったあああああ!」

 

ユウが大きな声をあげてこっちに向かってくる。

 

「どうだキサラギ!さっきのと形そっくりだろ?」

 

さっきの石と同じようなものを渡される。確かに形もだいたい一緒。

 

「うん。これなら使える!」

「使えるって……そういや、これなにに使うんだ?」

「ふっふっふ……これはねぇ……」

 

私は懐にしまっていた物を見せる。

 

「じゃーん!!」

「こ、これは……」

 

私が取り出したのはクマのぬいぐるみ。けっこう上手くできてると思っているから、自信作というやつよ。

まあ、まだ試作途中だけどね。

 

「実はね、私ぬいぐるみ作りが趣味なんだ♪」

「キサラギがぬいぐるみ作り、ねぇ……」

 

ユウが疑わしそうな目で私とぬいぐるみを交互に見る。

 

「なーによ、その目は!?」

「いや別に」

「……ま、いいけど。でね、宝石を頼んだは、この子の目にしようと思ってね」

 

そう言って私は、糸と針を取り出し、二つの石を目の部分に縫い付ける。

これぐらいならなれてるから、ちょちょいのちょいで……

 

「できた~♪ほら見て!キラキラしてすっごく可愛い~!!」

「ああ。ぬいぐるみのわりには豪華だけどな」

「ふふっ!私にピッタリでしょ?」

「なかなか似合ってるよ」

「ありがと♪じゃあ、早速帰ろ。この子をはやく仕上げなくちゃ!」

 

私は楽しみのあまり、ユウを置いて先に走りだした。

あ、そうだ。

 

「ユウ~!探してくれて、ありがと!!」

 

お礼を言ってなかったので振り返って言う。すると、ユウは一瞬キョトンとした顔になると、ニカッと笑った。

 

久し振りに楽しい一時だった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「オヤジ!いつまでキャンプにいるつもりだよ!」

 

キャンプ内にアタシ、ランの声が響く。

近くにいたオヤジ、ユウが目を丸くして驚いた表情でアタシを見る。

戦闘中とは違ってフヌケた顔をしてるのがムカつく。

 

「なあオヤジ。このままでいると、体がなまってしかたねぇよ!」

「あ~、でもな、ラン。やっとのことで、バーン・レイジー倒したんだ。今は体を癒すことが大事だと思うぞ?」

「んなこと言ったって、暴れたくて体が疼くんだから仕方ねぇだろ?」

「はぁ……んじゃ、俺とお前の二人だけで行くぞ。他のみんなはキャンプで休ませる。いいな?」

「ああ!やれるならなんでもいいぜ!」

 

アタシはオヤジと二人でキャンプを出た。

 

 

 

アタシ達がいるのは泥ノ試練。ホントは炎ノ試練でやりてぇけど一人だからってオヤジが言うから仕方ない。

 

「おっしゃ!勝ったぜ~!」

「おバカ。無理して突っ込むなよ」

「はぁっ!あれぐらいのクリミナルの攻撃なんて屁でもねーよ」

 

アタシがそう言った瞬間、頭からぺしっ、とマヌケな音が響く。

オヤジがアタシの頭に手刀を落としたからだ。

 

「いっっ!」

 

意外と痛くて、思わず頭を押さえる。

オヤジの奴め。最近は言うことを素直に聞いてやってんのに、調子に乗りやがって!

失望混じりの怒りを乗せてオヤジを睨めつけようとしたその時、アタシが怒鳴るよりも早くオヤジの両手がアタシの肩を掴み、正面で顔を付き合わせる形になる。

 

「ッ!?」

 

顔が近い。思わずさっきまで出そうだった言葉がどこかに言ってしまった。

しかし、驚くアタシとは違って、オヤジの表情は真剣そのものだった。

 

「あのなラン。怪我をしないことに悪いことはないんだよ。自分の体なんだから、自分が一番大切に考えてやらなきゃだめっしょ」

 

説教された。

まただ。アタシはオヤジに説教されるたびに頭が上がらなくなる。

男の言うことなんて、上っ面だけの中身のない戯れ言だと思うはずのアタシがオヤジにだけはそう思えない。

 

オヤジはオヤジで、他の男とは違う。

アタシがそう思っているってことなのかな。

 

「……悪かったよ」

「おう、それでいい」

 

オヤジは満足そうに肩をから手を離す。

今だ!

 

「ふぐっ!?」

 

アタシはオヤジにボディーブローをかます。

 

「オヤジも一発叩いたんだから、アタシも一発。これでチャラだぜ?」

 

あの手刀だけは許せねぇ。

 

「お、おお、相変わらず……エグい一撃を……」

 

オヤジはふらふらと揺れながら、立っていようと努力する。

顔が青いのに必死に我慢しようとする姿が面白い。

 

「ふふ、アタシも散々暴れられたし、今回のところはもう帰ろうぜ」

「そうか……そう言えば、ランはなんでそんなに暴れたいんだ?」

「ッ!?」

 

オヤジの質問にドキッとして固まってしまう。

 

「い、今は……言えねぇ……」

 

アタシはそれだけ言って先にキャンプに向かって走ってしまった。

 

今はまだ、言いたくないんだ。

心でそう呟きながら。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

ある日。キャンプで休憩していたアリスは、異変を感じ取った。

ただならぬ悪寒が体を駆け巡り、事態の危険性を強く警告する。

 

「どしたのアリス?」

「…………ッ!!」

 

急にかけられた声に驚いたアリスは跳ねるように振り向いた。 

 

「わ、悪いな驚かせて。なんかあったのか?」

 

ユウが申し訳なさそうな顔をしながら、アリスの顔を覗きこむ。

本当によくアリスたちのことを気にかけているから、これだけ早く声をかけてくれるんだと最近わかった。

 

そうだ。手伝ってもらおう。そう思い、ユウに言ってみる。

  

「……!行かなきゃ行けないの!」

 

焦っていてうまく言葉にできない。

一度冷静なって、とか考えもせずに、アリスは一方的に言葉を送るだけ。

 

「前に通ったあの場所!もう一度行かないと……大変なことになるの!」

「え?え??わ、わかった!」

 

この時、ユウはアリスがなにを言っているのかわかっていなかったと思う。それでも協力しようとしてくれるあたり、彼の人柄の良さを感じられる。

 

「じゃあ……早くいくの!」

「え、ちょっ!」

 

アリスはユウの服を引っ張り、有無を言わさずキャンプから連れ出した。

 

 

 

 

アリスとユウが今いるのは泥ノ試練の隅っこ。

 

「……ここで良いの。少し待つの」

 

アリスはユウに待つように頼んで作業を開始する。

今回の原因を探りながら集中する。

 

作業中ずっと、背中にユウの視線を感じる。それがなんだか無償に恥ずかしくて作業が早く終わらないかと思ってしまった。

結果、集中できずに予定より少し多く時間を使ってしまった。

 

「……これで大丈夫なの」

 

報告するとユウはホッとした顔で迎えにきてくれる。

もしかして、もう終わりだと思ってるの?

 

「次はあっちなの……」

 

ユウの表情が一瞬固まる。

やっぱり思ってたの。 

 

アリスは早く次の場所に向かおうとユウの手を掴んで引っ張っていく。

早く終わらせるの。

 

突然、ユウはアリスを止めて抱き上げる。

 

「ッ!?」

「まあ、そんなに急ぐなって」

 

そう言ってアリスの頭を撫でる。

 

「次はあっちだったな」

 

そのままアリスを抱っこしたまま次の場所に向かう。

本当に人の心境を感じとるのがうまい人なの。

そんなことを思いながら、ユウから離れないよう彼の服を強く握る。

 

 

 

「……ここでいいの。また待っててほしいの」

「わかってる。よくわからんが、頑張ってこい!」

「うん……!」

 

再び私は呪文を唱え、ユウに待ってもらう。

もう視線は気にならなくなり、集中して作業が進む。

暫く、互いに無言でいるとユウが話しかけてきた。

 

「なあ、一体何してるんだ……?」

 

どうやら、アリスが何をしているのか気になったらしい。

私はホントのことを言うべきか迷った。信じてくれないかもしれないと思って。

でも、ユウのことだから、もしかしたら……。

アリスはユウの方を見ずに説明をする。

 

「さっきの場所と、この場所には強い霊力が流れてるの……それを霊脈と言うの……。霊脈が乱れてしまうと、大変なことが起きるの……逆に流れに乗れば力を取り込めるの……」

「へぇー、アリスはそんなこともできるのか。スゲーな」

 

当たり前のように受け入れたからできる発言。

ユウが柔軟だからか、アリスを信用してるからなのかはわからないけど、嬉しい。

 

「……終わったの」

「よし、帰るか」

 

アリスは急いでユウの服を引っ張る。

 

「どうしたんだ?」

「だっこ……してほしいの……アリス、頑張ったから……」

「……喜んで!」

 

ユウはアリスを抱き上げて、歩き出す。

うん。これ好き。

アリス達はゆっくりとキャンプへと帰り道を行った。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

サコだ。また悩んでいることがある。

 

「う~ん…………」

 

いくら頭を捻ってもいい方法が浮かばない。

そうしていると後ろから、

 

「どうした、サコ。なんか悩み事でもあるのか?」

 

ユウがサコに話しかけてきた。

 

「え、あ、うん……」

 

ちょうどいいから話を聞いてもらおう。ユウも無関係ってわけじゃないし。

 

「じつはユコがさ、このあいだのマクラじゃ、いやみたいなんだ」

「そうなのか?」

「うん。きっとこのマクラがいろがひとつだけで、かわいくないからだとおもうんだよなぁ……」

「なるほどな。……じゃあ、マクラカバーなんてどうだ?」

「マクラカバー……なるほど!それいいな!」

 

流石ユウだ。すぐに解決策を出してくれる。

 

「じゃあさっそく、ユコがすきそーな、かーいくておんなのこっぽいのをつくろう!」

「女の子っぽいね……。俺じゃそう言うのわかんねぇな」

「きっと、しろとかピンクのレースがいっばいついてるのがいいとおもうぞ!」

「なるほどな。じゃあ、一緒に探しに行くか」

「おう!」

 

こうして、サコとユウでユコのマクラカバーを作ることになった。

 

 

 

サコとユウは二人でマクラカバーに使えそうな素材を集めた。

 

「これでだいじょうぶか?」

「ああ、十分だ。待ってろすぐに作ってやるから」

 

ユウは裁縫道具を取り出して製作に取りかかる。

サコはそれを横で眺めてることにした。

 

ものすごい早さで手を動かすユウ。

思わず口を開いて見いってしまう。

 

「できた!」

「おおーーー!!」

 

完成したのはサコが思ってた、ピンクと白のかーい模様の入ったマクラカバー。

これなら絶対ユコも喜んでくれるぞ。

 

「ほら、サコ。お前からユコに渡してやれ」 

「おう!ありがとな!」

 

ユコの喜ぶ顔が頭に浮かび、嬉しくなる。

 

「ホントにサコは妹想いだよな」

 

ユウがそんなことを言った。

 

「いもーとおもいかぁ……そーみえるならそれでいいや。サコはユコがだいっすきだからな!」

「ははっ、毎度ながら素直に言うね」

「ふふん♪ユコはすっごくかーいからな!それにがんばりやさんだし、サコはずっとそばにいたいんだ!」

「そうしてやれ。なんであれ血の繋がった家族を大事にすることは大事だからな」

「おう!ユウ、ほんとにありがとな!ユコもぜったいよろこぶよ!!」

 

サコは命一杯感謝を伝える。

ホントにホントにユウに感謝してるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうもDAMUDOです。

少女たち目線はどう書いてたか忘れ、書いては消して書いては消してを繰り返しているうちに、この時期に。
しかも、結局不振な点を払拭できてないって言う。

バカですか私は。

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