Mr.ハンドを倒し、すっかり祝杯ムードになっている我ら一行。
今回、一番の功労者であるキサラギとシンが中心となっている。
「シン、あんた中々やるじゃない。少し見直したわ」
「ふふふっ!まあね~。ま、ちょっと頭が良すぎて他の人から反感かっちゃって、こんなところに来るはめになったんだけどね!それよりもキサラギ、貴女も頭空っぽのスイーツ女かと思ってたけど意外に仕事できるじゃない」
「なーによ、偉そうに!私はセレブよ?安物と偽物に囲まれて満足してるあんた達とは次元が違うの~!」
「ふ~ん。贅沢しすぎて地獄に落ちたわけだ」
「なんで二人とも喧嘩腰なんだよ。力合わせて切り抜けることができたんだから仲良くできないのか?」
俺が呆れながら言うと、
「ま、考えてあげるわ」
「役立つ内はいいわよ」
と言う。笑っている顔をみれば認めあっているのが一目瞭然である。
「つんでれーず、なの……」
「うまいこと言うね」
アリスの小声の一言に思わず反応してしまう。
「ま、なんだっていいじゃねーか、勝ったんだし」
「そうやね。これで全員倒せたことやし」
「そっか!これでしてんのーをぜんぶやっつけたのか!」
「じゃ、じゃあ、次は……」
「ああ、奴との最終決戦だな」
その言葉で、皆の緊張と闘志が昂るの感じた。
場所は変わり、炎が逆巻く広い場所。
そこでは大きな怪物が静かに座っている。
突然、今まで静かだった怪物は顔をあげる。
「この感じは……まさか本当に四天王を倒しちまうとはな!いいぜ、相手しやる!」
その声色は興奮と怒りが入り交じった荒々しいものだ。
怪物──バーン・レイジーは翼を広げてその場から飛び立ち、決戦の場所へと向かった。
場所は戻り、ユウ達一行のもとへ。
「ねえ、本当にこっちであってんの?」
「ああ、確かに扉の開く音が聞こえた」
俺達は遠くから聞こえた音の場所へと向かっていた。
おそらく、そこが最終決戦の場所だろう。
「うちも確かに聞こえたから、心配せんでええよ」
「ふ~ん、トモエが言うなら心配ないわね」
「おいこらキサラギ。そりゃどういうことだ?」
「オヤジ、ムキになるなよ。それよりほら、あれじゃないか?」
ランが指差す先に、俺達が探していたものを見付けた。
まだ開いて真新しい様子の扉だ。
「おお、確かに。じゃあ、ちょっとみんな止まってくれ」
俺の声にみながその場で立ち止まり、俺の方を向く。
咳払いを一つして、演説じみた話を始める。
「ついに奴、バーン・レイジーと決着をつける時が来た。最初の時は、突然の環境の変化、不意打ち、何より力不足で奴を倒すことは叶わなかった。しかし、今回は違う!奴の手足である四天王を倒したお前らはあの時とは比べ物にならないほど強くなっていると俺は確信している。準備は十分!後はあの野郎をぶっ倒して、先に進む。俺達に喧嘩を売ってきたことを後悔させてやるんだ!」
「ユウもたまには粋なこと言うじゃない!」
「おう!やってやるぞ!」
みんな、既に気合い十分。
まだ戦いは始まっていないというのに、もうそれぞれの獲物を握り、目をギラギラと光らせている。
いつもなら、女の子とは思えねえ血の気だな、とか言う俺だが、今はそんなこと微塵も思っていない。
俺の頭のなかは単純明快。彼女達が奴を倒すことだけだ。
「んじゃ、行くぞ!気合い入れてけ!」
俺を戦闘に扉を潜った。
いざ決戦だ。
「まってたぜ、子猫ちゃんたちよ!久しぶりだなぁ!」
奥へ奥へと進んでいった場所にバーン・レイジーを見付けた。
奴はその場所の中心でどっしりと構えており、俺達の存在に気づくなり、大きな声で話始めた。
「まさかその細腕で、俺様の可愛い部下達がやられるたぁ思わなかったぜ!……デーモン、インビジ、ビースト、ハンド……みんな、いい奴等だったのになぁ……」
後半から声が落ちる。同時に奴が放つプレッシャーの刺が鋭くなったように感じる。
そんなことなど気にしていない様子でバーン・レイジーに睨みを効かせる我が生徒達。頼もしいのやら、危機感がないのやら。
その中の一人、キサラギが、
「あんたが私達に倒させたんじゃない!」
と、つっこむと、
「シャーーーーーラップ!」
やたら大きな声で黙らせようとするバーン・レイジー。
「いまの俺様の悲しみは、この世の誰も分かっちゃくれねぇ……ちっぽけな俺にできることなんてたった一つ……」
突如、炎の海から四本の火柱が立ち上ぼり、バーン・レイジーに向かって落ちていくと、奴の体の炎に取り込まれ、奴の炎が激しく燃え上がりだした。
「テメーらの雁首揃えて四人の墓に供えることだよぉおお!!」
殺気。
今までの敵よりも濃い、純粋な殺気が向けられる。
「ユウ、来るわよ!指示ちょうだい!」
「わかってる!メンバーはラン、キサラギ、トモエ、サコだ!最初っからぶっ倒す気でガンガン行けぇ!」
名前を呼んだらメンバーは前に出て、残りは俺と一緒に後ろへ下がる。
戦いが始まる。
最初に動いたのはバーン・レイジー。
炎の凶爪を一番前に出ていたランに向かって振り下ろす。
「死ねや、子猫ちゃんよぉおお!!」
「なめんじゃねーぞ!」
ランは盾でぶつかると、盾を爪から腕へとなぞるように滑らせ、懐へと難なく潜り込んだ。
「なに!?」
「ハァッ!」
ランの【リベンジ】が発動。斬撃がバーン・レイジーに叩き込まれる。
「ぐぅっ!」
攻撃され、苦悶の声を漏らす。
それは、みんなの攻撃はバーン・レイジーに確かなダメージを与えられると言うことだ。
「攻撃が効いてるぞ!一斉にボッコボコじゃあ!」
「あんたに言われなくてもわかってるっての!」
キサラギ飛び上がり、剣を構える。その刀身は毒々しい紫色に染まっていた。
バーン・レイジーは小さな火球を乱れ射つが、キサラギは剣でそれを防ぎ間合いへと迫っていった。
「えいっ!」
紫色の刀身での斬撃。【猛毒斬り】が炸裂した。
「うっ、なんだ!?毒か!」
バーン・レイジーは憎々し気に顔をしかめる。
「休んでる暇なんかあらへんよ?」
奴が毒で怯んだ一瞬の隙に、トモエが近づき抜刀。
【峰打ち】を打ち込み、バーン・レイジーを麻痺状態にする。
動けなくなったバーン・レイジーの正面からサコが炎を纏わせた両手を構えて突撃した。
「どとーのサコらーっしゅッ!!」
炎の拳での乱打【ほのおラッシュ】だ。
右左右左と一心不乱にバーン・レイジーを殴りまくる。
故に気づけなかった。
「そんな攻撃でこの俺が殺られるかよぉ!」
麻痺状態から回復したバーン・レイジーがサコ目掛けて拳を落とす。
「サコ!」
キサラギがサコを助けようと声をあげて、近付こうとする。
が、間に合わず、拳はサコのいた場所を砕く。
サコはキサラギの警告で直撃は避けたものの、攻撃の衝撃と飛び交う岩石に巻き込まれ、吹き飛ぶ。
更に、バーン・レイジーは尻尾を、近づいていたキサラギに叩き付ける。
丸太ほど太い尾をバットのように使いキサラギを吹き飛ばすバーン・レイジー。先ほどの攻撃といい、力の強さは脅威的である。
サコはむくりと立ち上がり、バーン・レイジーに睨みを効かせ、攻撃をかわせるギリギリの距離まで移動して、闘志をみなぎらせていた。しかし、キサラギは動かない。
「マズいな……。シン、キサラギと交代してくれ。俺が直接キサラギを回収するから、お前はすぐに前線に出て、俺に攻撃がこないようにしてくれ。できるか?」
「余裕よ。ついでに指揮も私がとってあげるから、教官は治療に専念しててちょうだい」
「流石」
俺とシンはそれぞれの役目の為に走り出した。
久しぶりの全力ダッシュでキサラギの元へ急行。状態を確認する。
「おいキサラギ、大丈夫か?」
「ぅう、ん……だ、大丈夫……」
「嘘つけ。すぐに治療してやるから待ってろ」
俺はキサラギの肩と膝の辺りをしたから持ち上げる。
「……お姫様だっこ」
「ん?なんか言ったか?」
「別に……」
「そうか。なら、しっかり掴まってろよ!」
俺はキサラギをさっきまでいた場所に急いで運ぶと、慎重に床に降ろして、空いた手でバックをまさぐり、アイテムを取り出して治療を始める。
一方、戦線では。
「コール、アシスト!」
「任せろ、守りを固めるぜ!」
「おう!ぜんりょくぱわーあっぷ!」
シンの指揮のもと、パーティーの能力を上げて、
「松葉崩し!」
相手の能力を下げる戦略をとっていた。
四人の物理的攻撃力・防御力、魔法的攻撃力・防御力は上げて、バーン・レイジーの物理的攻撃力を下げることによって、ダメージを極限にまで抑えることができる。おそらく、一行の中で一番の物理的防御力をもつランに至っては、バーン・レイジーの物理攻撃によるダメージはゼロに近いだろう。
正に、シン達四人の独擅場である。
「クックック、まさかここまでやれるたぁ思わなかったぜ、子猫ちゃん達よぉ」
「今頃わかってもおせーってんだよ!」
「ああ、確かにな。こうなることが予想できてたら、四人もやられるこたぁなかった……」
バーン・レイジーの炎の揺れ方が変わった。いや、変わったと言うより揺れ方のパターンが四つほど増えたようだ。
同時に、身に纏う覇気の質も変わりだした。
「安心しな、テメーもすぐにあいつらのトコに送ってやるよ!」
剣を構えてランが突撃する。
「そんなお節介はすんなよ。どちらにせよ、あいつら今はここにいるんだからな……」
瞬間、バーン・レイジーの体は炎に包まれ弾丸のように突進してランを迎え撃つ。
「こ、これって!」
サコがなにかに気付く。
その間に、ランはすぐさま盾を構えて攻撃を受けるが、その威力に吹き飛ばされてしまう。
「チッ!なんなんだよ急に!」
「ら、ラン!」
大声でサコが叫ぶ。
「なんだよサコ!」
「あ、あれ、あのこうげきは……してんのーのビーストのやつだ!」
「ご名答」
サコの言葉に返事をしたのはバーン・レイジー。
勝負はこれからだとばかりに笑っていた。
「さあ、仇討ちの時間だッ!」
どうもDAMUDOです。
遂に次回、決着が!
お楽しみに!