クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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四天王の魔の手

「あら~どうしたのかしら?マフィアだか何だか知らないけど部屋にこもりきっりなんてだらしな~い!部下がこの調子じゃ、ボスのバーン・レイジーってやつも大したことなさそうね!あーあ、拍子抜け!みんな、いこいこ!」

 

案を閃いたシンは通路に戻り、部屋にいるクリミナルに向かって大声をあげて煽った。すると、24体のクリミナルが一斉に部屋から出てきた。

その瞳は憤怒の色に染まっている。

 

「おい!出てきたぞ!どーするんだよ!?」

「いいから、はやく先に進むわよ!」

 

シンに言われてクリミナルに捕まらないように逃げ出した。

 

通路を走っている俺達。後ろからは多くのクリミナルが追いかけてくる気配を感じる。

いつまで逃げていればいいのかわからず、ただシンについていくことしかできない。今の俺達はシンに全てを託していた。

 

「この辺りがよさそうね……」

 

シンは少し広い場所に着くと真ん中で立ち止まる。

 

「教官達は先の方に行ってて!後は私に任せてちょくだい!」

「おう!」

 

シンを置いていき、俺達は先の通路に向かった。

その間にも、クリミナル達は確実にシンのいる場所に近づいていっている。

 

そして遂に、クリミナル達がシンのもとに辿り着いた。

 

「おら、ノロマども!こっちだこっち!追ってきやがれ!……じゃなくて、追ってきなさい!」

 

シンはクリミナル達を挑発する。

クリミナルは大きな手を広げて掴みかかるようにシンに襲い掛かった。

 

「よっと!あらあら、私はこっちよ!捕まえてみなさい!」

 

シンはクリミナルをサッと避けると距離を取るために走る。

避けられたクリミナルは負けじとシンを追いかける。

シンが部屋をグルグルと回って逃げるものだから、クリミナル達もシンを追ってグルグルと回る。

同じ場所の同じ道を同じ早さで走り続ける。

アニメでしかお目にかかれないような現象が今ここに実現した。

 

確かにクリミナルは罵倒を理解できる頭を持ち、単純故怒りもする。だからって、ここまでマヌケとは。四天王……だろこいつは。

 

「……そろそろ頃合いね」

 

暫く走り回ったシンはその輪からサッと抜け出すと、悠然とした態度で俺達のもとに戻ってきた。

クリミナル達は追いかける対象がいなくなっているというのに、まだグルグルと走り回っている。それでいいのかクリミナル?

 

「どう?これで全員がそろってよく見えるでしょ?」

 

涼しい顔でキサラギに言うとキサラギは笑顔で

 

「カンペキ!」

 

と返した。

キサラギはシンと入れ替わるように前に出た。

 

「ユウ、ちょっと待ってね!すぐに見破っているから……!」

 

普段なら俺に報告なんぞしないのに……よほど気合いが入っているようだ。

 

「さーてさて……」

 

キサラギは真剣な表情に変わると、鋭い目付きでクリミナルを見定め始めた。

 

「ん…………わかった!あいつよ!」

「了解!」

 

キサラギが大きな声をあげ、指差して追う。それに反応したシンは、キサラギが指差している一匹に向かってカードを放つ。

カードがそいつに命中すると、クリミナルの動きが止まった。

そして、煙が空気に混じって消えるように分身だったものは光と共に消えた。

見事、キサラギは本物を見つけ出したのだ。

 

「当ったり!!」

 

しかし、分身が消えて不利と判断したクリミナルは逃げ出す。

 

「絶対に逃がさない!追っかけるわよ~!!」

 

結局、俺達が追いかけるはめになった。

 

 

「ふっふっふ……ずいぶん手間かけさせてくれたわね!!」

 

元々、逃走する能力には秀でていなかったようですぐに行き止まりへ追い込むことができた。

 

「大きな手のわりには頭のほうはイマイチみたいね」

「さーあ、覚悟しなさい!!」

 

シンとキサラギが積極的にクリミナルに迫っていく。

クリミナルは逃走は無理と判断したのか棒立ちのまま俺達に向き直った。すると、本来の姿へと見た目を変えた。

 

身体はキサラギ達と同じ程の少女のような中性的な形になる。しかし、肉体は黒みのかかった赤色一色で、他の色にかわる境界線がない。頭から体、足にかけて一色なのだ。

特徴的な大きな手には禍々しくぎらついた、粗い爪がついている。その手は片方だけでも本体より大きい。

そして、その手は頭から生えていた。髪のように、大きな手が頭から生えているのだ。

奴は『Mr.ハンド』。レイジーファミリー四天王、最後の一人である。

 

ハンドは大きな手を揺らめかせ、俺達に殺気を放っている。

 

「キサラギ、シン、サコ、ラン、頼むぞ!」

 

俺は今戦のメンバーの名を呼ぶと四人は返事をすると共に前に出た。

 

戦闘開始だ。

ハンドはその場で手だけを伸ばしてキサラギとシンに攻撃する。

シンは跳んで回避。キサラギは剣で手を受け止める。

 

「くっ!こいつの攻撃、けっこう重いわよ!でも……」

 

キサラギは剣に力を込めて、ハンドの手を押し飛ばす。

 

「受け止められないことはないわ!」

「了解よ。なら、重く感じなければ楽よね」

 

シンはカードを放ると、四人の周りをカードが輪を作りながら周り始めた。

 

「コール、アシスト!」

 

シンがそう叫ぶとサコとランが反応。すぐさま、スキルを発動させる。

 

「よっしゃー!パワーアップ!」

「守り固めんぞ!」

 

シンの【OPR・アシスト】によりサコの【ハイチャージ】、ランの【ガードシフト】の効力が上昇。四人の物理攻撃力、物理防御力に加え、魔法攻撃力、魔法防御力も大幅に上昇した。

そんな中、ハンドはサコに向かって大きな手を振り下ろす。

サコは振り下ろされる手を拳で弾いていなす。

 

「へっへ~ん!もうおまえなんかこわくないぞ!」

 

そのままハンドに近付き【ほのおパンチ】を発動。燃えた拳がハンドの本体に迫る。

 

「…………!」

 

ハンド本体の手がサコの腕を掴み、攻撃を防いだ。そして、【だきしめる】発動。大きな手がサコに覆い被さり、握り潰す。

 

「がはっ!……ぁ、あぁ……っ!」

 

サコは強い力で体を圧迫され、肺の空気が一気に抜けてしまい、窒息状態に陥ってしまう。

 

「サコ!」

 

ランがいちはやく助けに向かい、ハンドに切りかかる。

 

「テメー!サコを離しやがれ!」

 

ランの剣がサコを捕らえている大きな手の首に当たる直前、ハンドは蝸牛が角を引っ込めるような俊敏な動きでサコから手を離し退く。

 

「なに!?」

 

ランの剣は虚しく空を切り、勢いに乗って方向転換ができない身体はハンドにとって絶好の隙だった。

ハンドの爪が毒々しい紫色に染まりだす。そして、よりいっそうの危険さを漂わせた大きな手を広げ体を捻る。

 

「ラン、逃げろ!」

 

ユウの警告も叶わず、ハンドはその場で強烈なスピンし、遠心力を乗せた大きな手を近くにいるランとサコに浴びせる。毒々しいの【怨念の双爪】が突き刺さり、彼女達はを吹き飛ばされた。

 

「二人とも大丈夫か!」

 

ユウは急いで駆け寄り、二人の状態を確認する。

先程の能力アップのおかげで傷は酷くはない。しかし、二人の様子がおかしい。

 

「お、オヤジ……なんか、痺れて……」

「うぅ~、きもちわるいぃ~」

 

二人は【麻痺】と【毒】の状態異常に陥っていた。

 

「わかった、今治療する。トモエとユコは代わりに戦線に出てくれ!爪が紫色になったら気を付けるように言っとけ!」

「はいな!」

「わ、わかったよ!」

 

ユウは袋から回復薬を取り出しながら、指示を出した。

トモエとユコは戦線に到着し、キサラギ達と合流する。

 

「せ、先生が爪が紫色になったら気を付けろって」

「そんなこと今のみたらわかるわよ!」

「ユコは頼まれたことしただけなのに、なんで怒るの~!?」

「で、どないするの?」

「取り合えず、手に触れようが爪に当たらなれりゃいいのよ。幸い、爪はそこまで大きくないし」

 

ハンドの【爪とぎ】発動。両爪が鋭く長くなった。

 

「・・・なんでよ!!」

「シンさん、そんな気に病むことあらへんで、な?」

 

憤慨するシンを宥めるトモエ。そこにキサラギがある提案をする。

 

「ねえ、ちょっと。私、いいこと思いついちゃったんだけど」

「なによ?言ってみなさい」

「ほら、ネイルってあんまり長いと折れやすくなるのよ。だから、あいつの爪も根元からボキッて折っちゃえば、何時もみたいにボコボコにできるんじゃない?」

「なるほど~♪」

「でも、どうやって爪をおるん?」

「えっと……それは……」

「私にいい考えがあるわ」

「本当!?」

「ええ。今から作戦を伝えるからしっかり覚えて頂戴。作戦名は【囮・二段構えの刃】よ!」

『え・・・?』

 

◇◇

◇◇◇

 

 

「さあ!反撃開始よ!」

 

シンの号令を合図に四人は一斉にハンドに突撃。

 

「第一波!」

 

キサラギとトモエが加速し、一気に間合いを詰め、獲物を振るう。

ハンドは特に困った風でもなく余裕を持ってこれを爪で弾く。

二人はバランスを崩され、隙が生まれてしまった。そこに、ハンドの攻撃が。

 

「第二波!」

 

キサラギ達の後方からユコの【ライトボール】とシンのカードが放たれた。大量のカードに紛れ、魔力の玉がハンドを襲う。

ハンドは攻撃の手を引っ込めて、その大きな手を使い、本体を覆い包んだ。

攻撃の雨がハンドに衝突。衝撃で土煙が上がる。

ハンドは再び手を広げ、その勢いで周りの土煙を吹き飛ばす。その瞬間、

 

「もらったーー!」

 

シンとユコが手のひらサイズまで圧縮した魔力の玉を握り、ハンドの爪の根元に叩きつけようと試みた。

これが決まれば魔力爆発の衝撃により爪を破壊できた。

 

しかし、シンの予想よりも早い動きでハンドの爪が二人を襲う。

 

「っ!ユコ、退きなさい!」

 

二人は咄嗟に身を反らし、攻撃を避けるが、爪の先がかすり、二人の頬に傷がつく。そして、その爪は()()をしていた。

 

「ぐっ!」

「ぁ……うそ……」

 

二人は体が痺れその場に倒れてしまい、作戦は失敗に終わったと思われた。が、ここからがシンの作戦の本番だった。

 

「さ……本命よ……」

 

倒れた二人の影に隠れていたキサラギとトモエがハンドに爪に向かって力任せに獲物を振るう。

しかし、ハンドはそれすらもわかっていたかのように涼しい顔で対処にかかる。

爪を二人に向けて突き出す。

 

「ッ!」

 

突然、キサラギに向けられていた手の動きが止まる。

倒れていたはずのシンとユコがキサラギに向けられていた手にしがみついて動きを止めていた。

 

「いただき!」

 

キサラギの【二段切り】が炸裂。渾身の一撃目で爪にヒビを入れ、二撃目で叩き折った。

 

一方、トモエの方は。

トモエに向けられた爪は何物にも邪魔されることなくトモエを突き抜けた。その瞬間、トモエの姿は消えた。

 

「反対やよ♪」

 

【二つ巴】の分身を囮にした不意打ちがハンドに叩きこまれ、もう片方の爪をスパッと切り落とした。

 

シンの作戦は見事成功。ハンドを無力化した。

ハンドは爪を失った両手を見詰め、膝から崩れ落ちた。戦意を失ったようだ。

 

「中々おもしろかったわよ」

「相手が悪かったって諦めなさい」

 

シンとキサラギがハンドに近付く。そして、静かに止めをさした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




描写してないけど、キュアで状態異常を回復してます。

DAMUDOです。
もうすぐバーン・レイジーだす。

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