「やった~!!勝ったよ、先生!!」
「見てたよ。ユコ、頑張ったじゃないか」
意識を取り戻したユコは、四天王討伐の報告を受けると、とても嬉しそうに、俺に抱飛び付いてきた。
「はぁ……はぁ……やったぞー!ユコ、がんばったなー!」
「サコも十分頑張ったよ」
緊張が解けたサコはふらふらとした足取りでユコに近付くいてきた。俺は労いの言葉をかけて彼女を支えてやる。
「悪かったな、作戦伝えてなくて」
「だ、だいじょうぶ。せんせーのさくせんなら、すごいから」
そうとう疲れてるのか、少し言葉がおかしい。……そんなことはないか。
「ちょっとサコ!あんたのジャンプ力、スゴすぎなんだけど!」
「ホンマに!サコさん、大活躍やったねぇ~」
「そ、そうかなぁ……えへへ~♪……じゃないや!サコはユコのゆーとーりにしただけだからな!ほんとにかつやくしたのは、ユコなんだぞー!!」
「確かに、挟み撃ちや、戦闘での功績。なかなか良かったわね」
「二人の仲の良さの賜物……素敵なの……」
「ああ、さすが双子って感じだったよな~」
仲の良さを褒められてご機嫌になるサコ。
「だろー!?サコとユコはふたりそろえば、なんでもできるんだ~♪」
「えへへ……そうだもんね~サコ♡」
「そうだもんな~ユコ♡」
俺の腕の中で見せつけるようにイチャコラする美少女姉妹。
「……キマシタワー」
思わず口に出た。
「ちょっと教官」
ツッコんでくれるのはシンただ一人。俺がニヤリと目線を送ると、シンは顔を赤くしてそっぽ向いた。
「なにニヤついてんだよオヤジ」
「いや別に。さ、キャンプに帰るぞ」
俺は休息チケットを破り捨てた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一度キャンプへ戻り、体力を回復させた俺達一行は最後の四天王を探し出すべく、上へと続く階段を使って次のフロアに進んだ。
暫く歩いていると今までとは違う奇妙場所に辿り着いた。
俺達がいる大きな通路。正面はまだまだ通路が続き、側面側に左右三つずつ、合計六つの部屋がある。壁や扉なんてないから、外から部屋の様子がまるわかり。そんな場所である。
「おいおい、なんでしょうかね。あれは」
六つの部屋に、今まで見たことのない奇妙なクリミナルが四体ずついた。
「強いオーラ……感じるの……」
「全部で……24体の敵を倒さなあかんってこと?はぁ……骨やわぁ」
「ユコ、頑張る!……けど、ちょっと無理かも……」
追いかけっこじゃない分まだまし、とか俺は考えてたけど……彼女らにしたら、大量の敵を相手にするほうがツラいと感じるみたいだ。……ランとユコは気合い十分のようで肩を回している。みんなが嫌だ、とは限らないのね。
思考に耽っていると突然、シンが前に出てきた。
「ちょーっと、待った!あなた達、目先の情報に惑わされ過ぎよ」
「どういうことだ?」
「よく考えてちょうだい。ここに来て、急に見たこともないクリミナルが同時に24体も出現するなんて怪しすぎるとは思わない?」
「まあ、確かにな」
「いい?こういうのは、本物の一体が他のダミーに紛れているってのがセオリーじゃないかしら?」
「言われてみれば……確かになんか不自然だもんな!」
「本物は一つ。他は分身。つまり……」
「その一体を倒せば……」
「そう、全部片付くってわけ」
シンの話にみな、感心した反応を見せると、シンは満足気に胸を張ってドヤ顔を決める。そうとう嬉しいんだろ。
ただ、この話に一つの欠点を見つけた俺は、躊躇しつつも指摘することにした。
「なるほど。……で、シンさん」
「なにかしら、教官」
「いえ、ね……。素晴らしい推測だと思うんですけど……問題がありまして」
「?なにかしら?」
「どうやって本物かどうか区別するんでしょうか?」
額にに汗が浮かぶシン。この汗はここの暑さのせいではない。つまり、そう言うことだ。
「どうすんだよ……」
困り果てていると。
「はい!そーゆーことなら私に任せて!」
キサラギが大きな声をあげて前に出た。
「私、本物に囲まれて育って来たから、本物と偽物の違いはすぐ分かっちゃうのよね~♪」
「これで問題はなくなったわ。それじゃ一つずつ部屋を見て回りましょ!」
こうして、俺達の『クリミナル目利き』作戦は始まった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
六つの部屋を遠巻きに見て、全部で24体のクリミナルをキサラギに観察させることができた。
一先ず、落ち着いて話ができるように、通路を進んだ先にある広い場所に出た。
「あれでぜんぶのへやまわったぞ!」
「キサラギさん、どれか本物か、分かった?」
「う~ん……怪しいのは何匹かいたんだけど……これ!って感じがこないのよね」
「ダメじゃないか!」
「う、うるさい!」
思わずツッコんでしまった俺に、顔を真っ赤にしてムキに怒ってくるキサラギ。
「全部……全部いっぺんに見たら本物かどうか断定できると思うわ」
「全部一緒に、か……」
「よし、ならば俺が一肌脱ごう!」
『ッ!!?』
「俺がパンいちになって部屋を巡り回って挑発すれば、逆上したクリミナルが俺を追いかけてくるだろう」
「先生!?頭でも打ったの?ユコが治療してあげるよ?」
「ユコ、大丈夫だ。俺は正常だ。さて、では脱ぐぞ」
「わーーー!ふざけんな!やめろって!」
「離すんだラン!俺が……俺が脱ぐしかないんだ!」
「頼むからやめてくれ~!そんなんでクリミナルが釣られるわけがないだろ~!」
「それよ!教官、ラン!」
シンがなにかを思い付いたようで、大きな声をだす。
「なにか思いついたみたいだな。たまには俺の冗談も役に立つもんだね~」
「え?冗談だったのか?」
「ああ、緊張を解そうと思ってな」
「……本当は?」
「暇だったから、みんなをからかって遊びたかった」
「死にやがれ!」
「あばばば!」
「ちょっと教官!私に任せてもらっていいか、許可を頂戴」
「ああ!行っていいぞ! ラン!ステイ!股間はダメ!」
こうして、シンは思い付いた作戦を実行に移した。
果たして、作戦の行方は……ユウの股間はどうなるのか……次回に続く!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《???》
いつも通り、探索していた時のことだ。
道中、木刀を見付けた。
見た目から、相当使い込まれていて、古くなっていることがわかる。どうしてこんな物がここに?……ん?これって……!?
「オヤジ!そんな物騒な物持って何してんだ!」
後ろからランに話かけられた。口調からして、怒っているようだ。
「その木刀で何かするつもりか?ハァッ!武器がねぇとアタシが怖くてしょうがねぇってことかよ!」
別にそんなことは考えちゃいないけど、このまま誤解を受けるぐらいなら、この木刀を捨てる方が賢いな。……それにこの木刀、なんか嫌な感じがするし。
俺は木刀をそこら辺に捨てて、ランに機嫌治してもらおうと、努めた。
……ランはやたら木刀を気にしていた気がする。それに、あの木刀……最後に見付けたあの汚れ。あの独特の色と微かに香った鉄の匂い。あれは血だ。
突然の地獄っぽさが妙に怖く感じた。
どうも、DAMUDOです。
だんだんと彼女たちが主人公と仲良くなっていってるね。
そして、最後あれを持ってくる。いやぁ、楽しくなってきたぁwww
追記
金属バット→木刀
に変更しました。私のミスです。