「トモエ……あんた、考えたわね~」
「確かにあの変態なら、あそこまで無防備な女の子を放っておくわけないわね」
「うふふふふ……そんなつもりやなかったんやけど……。ただ夏場は通学電車に痴漢が増えるなぁって思い出したんよ。うち、昔からなんでか男の人につきまとわれること、多かったから……」
そう言って俯くトモエ。仕方ない、とか思ってしまった自分が許せなくなる。
「ま、まあ……そうだろうね。その身体じゃ、ね……」
キサラギと意見が一緒で罪悪感が少し和らぐ。
トモエは、顔をあげて笑顔をみせる。
「こんなうちでも、みんなの役に立てたみたいで良かったわぁ」
トモエのお礼をしめに、話題はランに代わる。
「ランのこーげきもかっこよかったぞ!」
「すっごい迫力だった~!」
サコユコが無邪気に称えるもんだから、ランも思わず照れる。
「へへっ……まあね。アタシ、か弱い女の子を傷付ける男、絶対許せないタチだからさ!」
「ふたりとも……いいコンビなの……!」
アリスにそう言われて、二人は互いに見詰めあい、同時に笑い出した。笑いはたちまち周りに伝染し、みんな笑顔になる。
「これで、残りの四天王はあと二人。そいつらさえ倒せば、バーン・レイジーにリベンジだ」
「おう!このちょーしで、バッキバキにしてやるぞ!!」
俺達は次の四天王を探しに歩き出した。
相変わらずの暑さが襲い掛かってきて、うんざりしながらも、残る四天王が二人だと言うことを胸にやる気を繋ぎながら進んでいると、次の階の通路にどっしりと構えている黒スーツの生物を発見。
「どうやら三体目みたいね」
服の下からでもわかる強靭な四肢が特徴的な四天王で、形は人に近くても顔には人間味がない。前の奴ら同様本来の姿を隠しているのだろう。
「今度は逃げられることはなさそうね。こっちみて構えてるし」
「確かに。けど、その分自信があるんだろう。他の四天王が二人もやられているのに何の仕掛けもせずに堂々としているし」
「なるほどな。なら、気を引き締めねーと」
俺達は緊張した面持ちで四天王に近づいていった。すると突然、大胆不敵に構えていたはずの四天王が一歩足を退いた。かと思うと力強く地面を蹴ると横に向かって走り出した。
奴が向かう先には通路から落ちないようにするためのガードがあるのだが、それにぶつかる気なのか減速する様子を見せない。
ガードにぶつかる直前、片足を前に出した瞬間に凄まじい衝撃音が鳴ったと思うと、四天王は空高く舞った。翼もなにも飛行機能があるとは思えない身体で空にいるのだ。
そう、奴は跳んだ。
ジャンプした。
そして、今の場所から少し歩かないと辿り着けない、別の通路にショートカットしたのだ。赤い配管工おじさんもビックリである。
もちろん、四天王はそのまま逃げていってしまった。……おい、また逃げたぞ!ユウは心の中で苛立った。
「なっ!あの距離跳んだってのか!?」
「ひとまずあっち側に行ってみよ!」
せっかく見つけた四天王を逃がすわけにはいかない。兎に角急いで見つけようと、跳んでいった所へ移動し、近くにいないか全員で目を凝らして探した。
「いたよ!!」
ユコが指差す先にいた四天王。俺達が発見するよりも奴の方が先に俺達に気づいていたようで、奴はすでに走り出していた。
真ん中が崩れ落ちていて渡れなくなっている通路。そこに向かって猛ダッシュ。そして、当然のように崩れている溝も跳んで越えていってしまう。
「またにげたーーー!!」
「クソ!あのジャンプ力、反則だろ!」
「愚痴ってないで、早くいくよ!」
これで何度目の追いかけっこか……。こんな暑い場所で何故にこんなにも走り続けなければならないのか。どうしてああしてと考えている内に再び見つけることができた。
「今度こそ逃がさないわよ~、ってちょっと!」
近寄るキサラギを見つけるやいなや、反対方向へダッシュ。そして、道がないところを飛び越えて逃げてしまう。
「もう~!いやっ!!」
流石に、普段は穏やかなトモエもヒステリーを起こす。
なんの嫌がらせか。今、四天王がいる場所は、そこに続く道が欠落していて、歩いては向かえなかった。
「え?ちょっ、どうすんの……あれ」
ユウの問いに一同は何も答えず、タメ息を吐く。
ダメか、と呟き疲れがどっと押し寄せる。
そんな中、ユコは顔を上げて、サコに近付いた。
一体何をする気なのか。ユウはただ見守ることしかできなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
道なき場所でユウ達一行の動きに注意して見ている四天王『Mr.ビースト』は焦っていた。
心配性の癖に見栄をはってしまうビーストは、不意打ちで急いで倒してしまおうと思っていたのだが、それは男としてどうなの?と、考えてしまい、いつの間にか正面から対峙する形になってしまった。
それならば、そのまま戦ってしまえばよかったのだが、それは叶わず、気付いたら脱兎の如く逃げ出していた。
(はぁ……俺っていつもこうなんだよな……)
彼は心配性で見栄っ張りで、臆病だった。
こんな感じだ。DAMUDOだ。
さてさて、2の小説書くか書かないか。決まってないけど、やるんだったらこういうストーリーにしようとかは考えました。これでいくと、ユウくんがまた出るのよさ!準主役でね。
ま、決定じゃないんで、期待はしないでね。