クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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みえない敵

四天王の一人を倒した俺達一行。

みんなで勝利を喜んでいた。

 

「へへっ♪すげーのは逃げ足だけだったな!」

「おう!それよかアリスがすごかったぞ!!」

「うん!クリミナルの居場所、ぴったり当てちゃったし、戦いでも大活躍だったもん!」

「小さい頃からずっと……アリスは特別な力……あったの……」

 

みんな、今回の功績者であるアリスを褒める。すると、アリスは少しずつ自分のことを語りだした。

 

「アリスが特別なせいで……テレビの人におっかけられたり……嫌なことたくさんあった……けど……だけど……アリスは特別で……よかった……のかな……?」

「当たり前だ。アリスが居なきゃこうも簡単にはいかなかったぞ?そうだろ、みんな」

「ああ、オヤジの言う通りだ!」

「そうよ。クリミナルをあっさり倒せたんも、アリスさんのお陰やわ♪」

 

誰もアリスを否定せず、当たり前だろと受け入れた。それが嬉しかったのかアリスは笑った。

 

「……褒めても……何も出ないの……♪」

 

釣られて、俺達も笑顔になる。

 

「あと三体……ガンガン行くの……!」

「そーね!なーんか面白くなってきたし!ガンガン行くわよっ!」

「おお!よっしゃ、行こうぜーー!!」

 

こうしてやる気が上がったまま、次の四天王探しを始めた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

事が起きたのは次の階で探索していた時だ。

俺達は襲い掛かってくるクリミナル共を倒しながら進んでいると、俺の前を歩いていたトモエに異変が起きた。

 

「ん……?なんや、お尻の辺りがモゾモゾと……」

 

突然立ち止まり、俺の方を向いた。その目には敵意がある。

 

「どうしたんだ、トモエ。足でも痛めたか?」

「とぼけとんといて!センセ、痴漢は犯罪よ?」

「はあ!?お、俺が痴漢!?俺がするのはセクハラであって痴漢では……だいたい、おしおきルームじゃないのにそんな節操なしなことしません!」

「あら?おかしいなぁ……センセ以外に殿方は……」

 

なにかの勘違いでトモエが俺に痴漢されたと思っているらしい。二次被害を避けるため、トモエから距離をとる。その時、

 

「ふえっ!?な、なに?今の感触……」

「ひっ!だ、誰よ!?私の胸揉んだヤツ!!」

 

距離を取ろうと移動した場所にいた、ユコとキサラギが声をあげた。

そして、二人は近くにいた俺を見る。

 

「もしかして……先生?」

「あんたねぇ……好き勝手やれると思ったら大間違いだからね!」

 

二人の怒りの矛先は俺に向けられた。

 

「ちょちょちょ!待てって!」

「待てじゃないわよ!この色情魔!変態!」

「痛い痛い!叩くなって!俺はなにもやっちゃいない!」

「じゃあ誰がやったって言うの?」

「俺じゃねーって!……なぁユコ。お前なら信じてくれるだろ?」

「ゆ、ユコ……誰を信じればいいかなんてわかんないよ。こ、こんな酷いこと……」

「おい、ユウ!ユコをいじめるな!サコがだまっていないぞ!」

「オヤジ……あんた最低だな!」

「待て!本当に俺じゃないんだよ!」

 

全員を巻き込んでパニックとなった痴漢騒動。しかも、このままだと俺が犯人にされる勢いだ。

必死に弁明するが集団心理か、みんなして俺を敵意のこもった目で見る。

 

「キャアッ!!ちょ……や、やめなさいよ!!」

「ひっ!だ、誰だアタシの尻を触った奴は!」

「はい、俺ここ!シンとランとはこの中で一番距離があります!」

「なに!?オヤジがやったんじゃねーのか?」

「だから、さっきからそう言ってんでしょうが!」

「じゃあ、なんだ?アタシら以外誰もいないし、見えない痴漢魔がいるってのかよ?」

 

ランがそう推測したのと同時にトモエがあるものを発見した。

 

「あ!ランさん、あそこに!」

 

トモエが指差す先には、透けている服一式があった。

着ている本人は見えないが確かに誰かが着ているようで、俺達から逃げるように動いている。

服が完全に見えるようになった時には、遠くに離れられていた。

そいつは前をこちらに向けて手を叩き、俺達を挑発している。

 

「クソッ!あいつが犯人かよ!このド変態野郎が!!!」

 

服しか見えないのにどうして野郎とわかるのか?と言うツッコミを胸にしまっておく。

ランは激昂したまま追いかけようとするが、それを見るなり透明変態野郎は逃げていってしまった。

 

「テメー許さねーぞ!!待ちやがれコラァ!!」

 

ランは怒声を発しながら、そのまま追いかけていってしまった。

 

「みんな、追いかけるよ!」

 

俺達は急いでランを追い掛けた。

 

 

「あ、ラン発見」

 

以外にも早くランと合流できた。

 

「すまねぇ、あいつを見失っちまった」

「大丈夫だ。それより、一人であいつの戦われるほうが不味かったからな」

「どういうことだオヤジ?アタシがあんなやつに遅れを取るって言いてーのか!」

「可能性だよ。あの服、今思い出したがあの『Mr.デーモン』と同じスーツだった」

「まさか……!?」

「そうだ。あのド変態野郎は二人目の『四天王』だ」

「そうか……なら、次会っときは確実に仕留めなきゃな」

「ああ、みんなでな」

「なら、ここで油売ってる暇はない。早く行こうぜ」

 

ランに急かされ、四天王探しを再開する。

 

「いたわよ!」

 

すぐに見つかった。

奴は遠くの柱の陰から覗くようにこちらを見ている。が、俺達が発見した途端、また逃げていった。

 

「クソッ!あいつも逃げ足が速いぜ!」

 

俺達は急いで奴を追い掛ける。しかし、見失ってしまう。すると、奴は遠くでこちら見ていて、発見すると逃げ出す。追い掛けて、また見失う。そんな流れを何回も繰り返していた。

 

「待ちやがれ!変態野郎!」

「えらい、怒ってはるねぇ……」

 

長いこと繰り返していると、段々と体力が減っていき、走るのが辛くなってきた。アリスに至ってはもうバテバテで、また俺が背負うことになった。次に倒れそうなのは、ユコかシンだな。

そのなかで唯一元気なのが、ランただ一人。元気と言うより、怒りで疲れを感じなくなっているようだった。

一体どうしてしまったのか、聞いてみたいがそんな余裕は今の俺にはない。

 

「ラン、ここよ!」

 

遂に隅の方に隠れていた四天王を発見し、追い詰めることができた。

 

「こんな所に居やがったか!高校三年間で痴漢20人斬り達成したこのアタシから逃げ切れると思うなよ!」

 

逃がさないように注意しつつ、距離を詰めていく。すると、四天王は軽やかにランの右側を抜けようとした。

 

「させるか!」

 

ランはその動きに見事な反応を見せて、進行方向に先回りする。しかし、四天王は躍るような足運びで、体制を右側に向かう形のまま、見事左側を抜けていった。

 

「なに!?」

 

予想外の動きにランは驚愕の声をあげる。

四天王はそのまま左側の通路へと逃げていった。その後ろ姿は、子どもとの鬼ごっこで本気を出す大人の様だった。

 

「もうっ!逃げてばっかで男らしないわ!」

「クソッ!クソクソクソッ!」

 

一向に捕まる気配のない状況と疲労感に、みんなイライラとした空気を漂わせた。

ただ、俺は奴の行動に疑問を持ち始めた。

足が早く、透明になることもできるのに、度々姿を見せてはすぐに逃げている。まるで、俺達を誘っているようだ。……罠臭さがプンプン臭うな。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

(ぐうぇへっへっへ。走らせまくって、体力削る作戦は順調に進んでるぜぇ。一人だけやけに喧しいのがいる。あいつには要注意だな……。

それにしても我ながら最高の作戦だぜ、体力を削るだけじゃなく、お触りもできるわ、乳揺れ見れるわ、汗ばむ肌がたまらんわでウハウハだよまったく!よし、今度はパンツ見てやるぜ!)

 

二人目の四天王の頭は煩悩にまみれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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