四天王の一人を倒した俺達一行。
みんなで勝利を喜んでいた。
「へへっ♪すげーのは逃げ足だけだったな!」
「おう!それよかアリスがすごかったぞ!!」
「うん!クリミナルの居場所、ぴったり当てちゃったし、戦いでも大活躍だったもん!」
「小さい頃からずっと……アリスは特別な力……あったの……」
みんな、今回の功績者であるアリスを褒める。すると、アリスは少しずつ自分のことを語りだした。
「アリスが特別なせいで……テレビの人におっかけられたり……嫌なことたくさんあった……けど……だけど……アリスは特別で……よかった……のかな……?」
「当たり前だ。アリスが居なきゃこうも簡単にはいかなかったぞ?そうだろ、みんな」
「ああ、オヤジの言う通りだ!」
「そうよ。クリミナルをあっさり倒せたんも、アリスさんのお陰やわ♪」
誰もアリスを否定せず、当たり前だろと受け入れた。それが嬉しかったのかアリスは笑った。
「……褒めても……何も出ないの……♪」
釣られて、俺達も笑顔になる。
「あと三体……ガンガン行くの……!」
「そーね!なーんか面白くなってきたし!ガンガン行くわよっ!」
「おお!よっしゃ、行こうぜーー!!」
こうしてやる気が上がったまま、次の四天王探しを始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
事が起きたのは次の階で探索していた時だ。
俺達は襲い掛かってくるクリミナル共を倒しながら進んでいると、俺の前を歩いていたトモエに異変が起きた。
「ん……?なんや、お尻の辺りがモゾモゾと……」
突然立ち止まり、俺の方を向いた。その目には敵意がある。
「どうしたんだ、トモエ。足でも痛めたか?」
「とぼけとんといて!センセ、痴漢は犯罪よ?」
「はあ!?お、俺が痴漢!?俺がするのはセクハラであって痴漢では……だいたい、おしおきルームじゃないのにそんな節操なしなことしません!」
「あら?おかしいなぁ……センセ以外に殿方は……」
なにかの勘違いでトモエが俺に痴漢されたと思っているらしい。二次被害を避けるため、トモエから距離をとる。その時、
「ふえっ!?な、なに?今の感触……」
「ひっ!だ、誰よ!?私の胸揉んだヤツ!!」
距離を取ろうと移動した場所にいた、ユコとキサラギが声をあげた。
そして、二人は近くにいた俺を見る。
「もしかして……先生?」
「あんたねぇ……好き勝手やれると思ったら大間違いだからね!」
二人の怒りの矛先は俺に向けられた。
「ちょちょちょ!待てって!」
「待てじゃないわよ!この色情魔!変態!」
「痛い痛い!叩くなって!俺はなにもやっちゃいない!」
「じゃあ誰がやったって言うの?」
「俺じゃねーって!……なぁユコ。お前なら信じてくれるだろ?」
「ゆ、ユコ……誰を信じればいいかなんてわかんないよ。こ、こんな酷いこと……」
「おい、ユウ!ユコをいじめるな!サコがだまっていないぞ!」
「オヤジ……あんた最低だな!」
「待て!本当に俺じゃないんだよ!」
全員を巻き込んでパニックとなった痴漢騒動。しかも、このままだと俺が犯人にされる勢いだ。
必死に弁明するが集団心理か、みんなして俺を敵意のこもった目で見る。
「キャアッ!!ちょ……や、やめなさいよ!!」
「ひっ!だ、誰だアタシの尻を触った奴は!」
「はい、俺ここ!シンとランとはこの中で一番距離があります!」
「なに!?オヤジがやったんじゃねーのか?」
「だから、さっきからそう言ってんでしょうが!」
「じゃあ、なんだ?アタシら以外誰もいないし、見えない痴漢魔がいるってのかよ?」
ランがそう推測したのと同時にトモエがあるものを発見した。
「あ!ランさん、あそこに!」
トモエが指差す先には、透けている服一式があった。
着ている本人は見えないが確かに誰かが着ているようで、俺達から逃げるように動いている。
服が完全に見えるようになった時には、遠くに離れられていた。
そいつは前をこちらに向けて手を叩き、俺達を挑発している。
「クソッ!あいつが犯人かよ!このド変態野郎が!!!」
服しか見えないのにどうして野郎とわかるのか?と言うツッコミを胸にしまっておく。
ランは激昂したまま追いかけようとするが、それを見るなり透明変態野郎は逃げていってしまった。
「テメー許さねーぞ!!待ちやがれコラァ!!」
ランは怒声を発しながら、そのまま追いかけていってしまった。
「みんな、追いかけるよ!」
俺達は急いでランを追い掛けた。
「あ、ラン発見」
以外にも早くランと合流できた。
「すまねぇ、あいつを見失っちまった」
「大丈夫だ。それより、一人であいつの戦われるほうが不味かったからな」
「どういうことだオヤジ?アタシがあんなやつに遅れを取るって言いてーのか!」
「可能性だよ。あの服、今思い出したがあの『Mr.デーモン』と同じスーツだった」
「まさか……!?」
「そうだ。あのド変態野郎は二人目の『四天王』だ」
「そうか……なら、次会っときは確実に仕留めなきゃな」
「ああ、みんなでな」
「なら、ここで油売ってる暇はない。早く行こうぜ」
ランに急かされ、四天王探しを再開する。
「いたわよ!」
すぐに見つかった。
奴は遠くの柱の陰から覗くようにこちらを見ている。が、俺達が発見した途端、また逃げていった。
「クソッ!あいつも逃げ足が速いぜ!」
俺達は急いで奴を追い掛ける。しかし、見失ってしまう。すると、奴は遠くでこちら見ていて、発見すると逃げ出す。追い掛けて、また見失う。そんな流れを何回も繰り返していた。
「待ちやがれ!変態野郎!」
「えらい、怒ってはるねぇ……」
長いこと繰り返していると、段々と体力が減っていき、走るのが辛くなってきた。アリスに至ってはもうバテバテで、また俺が背負うことになった。次に倒れそうなのは、ユコかシンだな。
そのなかで唯一元気なのが、ランただ一人。元気と言うより、怒りで疲れを感じなくなっているようだった。
一体どうしてしまったのか、聞いてみたいがそんな余裕は今の俺にはない。
「ラン、ここよ!」
遂に隅の方に隠れていた四天王を発見し、追い詰めることができた。
「こんな所に居やがったか!高校三年間で痴漢20人斬り達成したこのアタシから逃げ切れると思うなよ!」
逃がさないように注意しつつ、距離を詰めていく。すると、四天王は軽やかにランの右側を抜けようとした。
「させるか!」
ランはその動きに見事な反応を見せて、進行方向に先回りする。しかし、四天王は躍るような足運びで、体制を右側に向かう形のまま、見事左側を抜けていった。
「なに!?」
予想外の動きにランは驚愕の声をあげる。
四天王はそのまま左側の通路へと逃げていった。その後ろ姿は、子どもとの鬼ごっこで本気を出す大人の様だった。
「もうっ!逃げてばっかで男らしないわ!」
「クソッ!クソクソクソッ!」
一向に捕まる気配のない状況と疲労感に、みんなイライラとした空気を漂わせた。
ただ、俺は奴の行動に疑問を持ち始めた。
足が早く、透明になることもできるのに、度々姿を見せてはすぐに逃げている。まるで、俺達を誘っているようだ。……罠臭さがプンプン臭うな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(ぐうぇへっへっへ。走らせまくって、体力削る作戦は順調に進んでるぜぇ。一人だけやけに喧しいのがいる。あいつには要注意だな……。
それにしても我ながら最高の作戦だぜ、体力を削るだけじゃなく、お触りもできるわ、乳揺れ見れるわ、汗ばむ肌がたまらんわでウハウハだよまったく!よし、今度はパンツ見てやるぜ!)
二人目の四天王の頭は煩悩にまみれていた。