クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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四天王の悪魔

アリスが示した場所へ向かう。しかし、四天王の姿はどこにもなかった。

 

「あれ?どこにもいないぞ?」

「ふん、やっぱりね!超能力なんてあるわけ無いじゃない」

 

シンがアリスをバカにするような言い方をする。

 

「ちょっと黙ってるの!!……アリス……集中するの……」

 

出会ってから初めてアリスが大声をあげた。これにはシンも流石に驚き、黙る。

そんなシンの姿を見て満足したのかアリスはシンを一瞥すると目を閉じて呟くように詠唱をし始めた。

 

「ネコノメウヲノメサンショウノメ…………」

 

呟きはさらに小さくなっていき、ユウ達にはなにを言っているのか、わからなくなった。

その姿を見て、シンが心配事を俺に言ってくる。

 

「ちょっと教官。あの子にこのまま任せていいの?」

「ん~?いいよ。アリスのあんなに気合い入ってる姿を見るのは初めてだから、きっと上手くやってくれるさ」

 

俺はシンの質問は簡単に流す。

まだ納得できていない顔をするシンも、ユウの自信あふれる態度に反論する気も失せた。

ちょうどその時、アリスにアクションがあった。

 

「むむむむっ!!……出たの!!この先……北の方角に……強大なオーラ……!!」

「オッケー、次はそっちね。さあ、みんな行こうか」

 

俺は誰かが発言する前に出発の合図を出した。

誰かがアリスに文句を言って、変に空気が悪くなるより、さっさと成果を見せればそれで丸く収まった方が後味が悪くならないからな。

そう考えていたユウの頭には、アリスが失敗する可能性など微塵も考慮してなかった。それほどまでに、彼はアリスを信じているのだ。

 

 

「お!あれは……」

「う、うわーーー!!いいいたぞーーー!」

「さっすがアリスさん!ドンピシャやん~!!」

 

遂にさっきから逃げ回ってる四天王を発見。しかも、そこは逃げ道がない行き止まりだった。

 

「ま、まさか本当なのかしら……でも……自分の目で見ちゃったら信じるしかないじゃない……!!」

「アリス……ホントのことしか言わないの……」

「はぁ……信じるわ。疑って……悪かったわね」

「いいの……♪」

 

シンとアリスのわだかまりも無くなった。

 

「よーし!そんじゃやってやろーじゃない!」

「こ、今度こそは逃がさないんだから!」

「覚悟……なの!」

 

ジリジリと四天王に近付くキサラギ達。

四天王も逃げられないとわかると遂に本来の姿を現した。

スーツの下の肉体は勢いよく盛り上がり、一瞬にして筋肉が発達する。同時に先程までの人間としての肉付きは四足歩行の獣の肉付きに変わり、キサラギ達の数回りも大きな怪物になった。

『Mr.デーモン』 レイジーファミリーの四天王の一人、炎獣のクリミナルである。

変身を終えたデーモンは、飛び上がりキサラギ達に飛びかかる。

 

「さあ、やるぞ。キサラギ、アリス、ユコ、シン、頼むぞ!」

 

指名された四人は跳んでいるデーモンの下を潜り抜けて後ろをとる。

俺と他の三人は後ろへ下がり何時でも動けるように待機。

 

「じゃあ早速……痺れちゃえ!」

 

デーモンの背後にキサラギが【麻痺斬り】を仕掛ける。しかし、デーモンは横に跳んでそれを避ける。

 

「……冷えるの!」

 

アリスはデーモンの着地地点にタイミングを合わせて氷魔法を放つ。が、デーモンは空中で氷魔法に狙いを定めると口から火球を発射した。

火球は氷魔法に命中。互いに消滅し、衝突点で水蒸気が上がる。

デーモンは着地すると、強靭な四肢を駆使した駿足でアリスに突進する。

 

「ボーッとしない!コール、氷結!」

「わかったの……!」

 

シンがアリスを奮い起たせ同時に氷魔法を放つ。

氷の塊がデーモンの正面に衝突。デーモンは攻撃で怯み、動きを止めた。そうしてできた隙にキサラギが攻める。

 

「いただき!」

 

キサラギの【猛毒斬り】がデーモンに命中。

猛毒の斬撃にデーモンは苦し気な咆哮をあげる。そして、滅茶苦茶に暴れだした。

暴れ馬の如くあちこちに跳ねて、地面を砕き割っては岩を飛ばす。

 

「きゃあ!」

 

デーモンの近くにいたキサラギは体当たりで吹き飛ばされる。

 

「ヤバイヤバイ!逃げるわよ!」

「ちょっと……無理なの……ッ!」

 

シンとアリスは一緒に岩の雨を浴びる。

三人は大きなダメージを負い、地面に倒れてしまう。デーモンはそれを確認すると、動きを止めて息を整えながら、満足そうに笑みを浮かべる。

 

「勝ったと思ってんのかなぁ?一人、忘れてるんじゃないの?」

 

ユウが呟いたその後、ひょっこりとどこかに隠れていたユコが姿を現した。

 

「大丈夫!みんなすぐ治すから、大丈夫だよ!」

 

ユコはかなりテンパりながら、武器の箒に魔力を込める。すると、緑色の優しい光が生まれた。

 

「届いて!ヒールぅッ!」

 

ユコの【ヒール】か発動。

回復の波は広がっていき、キサラギ、アリス、シンの傷を癒していく。

 

「イタタ………よくもやってくれたわね!」

「アリス……怒ったの……!」

「ゆ、油断したけど、もうへまはするもんですか!」

 

回復した三人が立ち上がり、再び戦闘体勢になる。

 

「せ、せんせーい!ユコ、もう十分やったよ~!誰かと代わってもいいと思うんだけど?」

「ハハハ、どうせなら四人で最後までやりな。もう終わるだろうし」

「そ、そんな~……」

 

ユコだけはさっさと逃げ出したかった。

そんなユコなど気にもせず、他の三人はデーモンへと突撃。デーモンは彼女らから離れようと下がるが、さっきの攻撃で疲れており、すぐに追い付かれてしまうほどスピードがなかった。

 

「逃がすもんか!」

 

キサラギの【麻痺斬り】を再度放つ。

今度はデーモンの後ろ足にしっかりと命中。

デーモンは転び、暫くの間、体の痺れに襲われた。

 

「さあさあ、畳み掛けるわよ!」

 

シンの魔法攻撃。

小さな魔力の球を連続して発射し、デーモンに次々と浴びせていく。

的が大きくて動かないため、適当に放っても外すこともなくどんどん当たる。

シンの攻撃が止む頃にはデーモンはすっかり弱っていた。

そこへ、アリスが強力な一撃を叩き込む。

 

「終わり……凍えて……死んじゃえ!」

 

アリスの強力氷魔法【コゴエール】。

巨大な氷塊がデーモンの周りを囲むように現れ、降り注いで氷付けにする。

 

ア"ア"ア"アアァァァァ……

 

デーモンの断末魔は氷が砕けると、共に消滅した。

 

「俺達の勝利だ」

 

四天王戦、一体目は幸先よく余裕の勝利し、試練は幕を開けた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

炎が燃え盛る場所。

 

「この感じ……デーモンがやられた」

「奴め、俺達四天王の名に泥を塗りやがって……!」

「仕方ない。奴は俺達四天王の中では最弱」

「ふん、逃げ足ぐらいしか能のない奴だったしな。で、次は誰が行く?」

「なら、俺が行こう。ボスの話じゃ相手は(カワイイ)女共の集団らしいしな」

「なにか考えがあるの?」

「ああ、とっても完璧なのがな」

「じゃあ、お前に任せるぜ」

「おう、デーモンの仇はとってやるさ」

 

そう言ってそいつは出ていった。

 

(ぐてへへへ、久しぶりの女の身体だぜ)

 

その頭は煩悩にまみれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうもDAMUDOだ。

次の四天王は全くもって、うらやまけしからんな!

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