クリミナルガールズ ~時給3000円~   作:DAMUDO

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炎ノ試練

「すごいね!すごいね!あんなでっかいのやっつけたよー!」

 

番人を倒してピョンピョン跳ねながら喜ぶサコ。

 

「ねぇ先生?ユコ、頑張ったよ!」

 

笑顔で俺に駆け寄ってくるユコ。

 

「アリスも……頑張ったの……!」

 

ユコに遅れて負けじと褒めろとせがむアリス。

 

「うふふふふ。映画みたいですごい迫力やったわぁ」

 

微笑みながら何かずれたトモエ。

 

「ふん……ま、こんなもんじゃない?」

 

思ったより拍子抜け、と言った感じのキサラギ。

 

「ったく、こんなときくらい素直に喜んどけって♪」

 

そんなキサラギの内心を見抜くラン。本人が一番嬉しそうだ。

 

「こいつは流石の私でも、一人は無理だったわね。共闘しておいて正解だったかな」

 

今さらなこと言うシン。

みんな思い思いに喜ぶ。そんな姿を見て俺はとっても嬉しくなる。四人だけだった時とは比べ物にならないくらい、この仕事が楽しくなってきている。確かに彼女逹の身の安全が不安にはなるが、戦闘になれ、成長し、頼もしくなった姿を見るのは何物にも換えがたい。

 

「しっかし、あーいうデカブツ倒すのって快感だよなー!」

「クリミナルさん……さようなら……」

 

まだ彼女達は番人を倒した余韻を味わっているようだが、かなり疲れているのがよくわかる。

本当に頑張ってくれたし、ねぎらいの言葉でもかけよう。

 

「みんな、良い戦いっぷりだった。俺は嬉しいよ」

「サコはユコのためにがんばったんだ!おまえのためにじゃないぞ!」

「ユコはサコと一緒だから頑張れるんだよ。ね、サコ♡」

「ね、ユコ♡」

「(絶句&唖然)」

 

ダメだ、泣けてきた。今までにないくらいの本音だったのに……。

 

「センセ……二人はホンマに仲ええねやね。見てるこっちが照れてまうくらいやわぁ」

「……うん……本当にね……はは」

「あの様子やと、ケンカしたこともないんやろうね。羨ましいわぁ……」

「相性よろしく集中砲火。我、大海ニ散ル」

「……センセ、大丈夫?」

「うん、取り合えず一旦キャンプに戻ろう。『リターン』を頼む」

「は、はぁ……みんなー集まってほしいんやけど」

 

こうして、泥ノ試練を無事突破した俺達。けれども、まだ七人の仲はチグハグな気がする。次はどんな試練が待ち構えているのか……不安感の種は尽きないが、なんとかなるだろう。いや、俺がなんとかしてみせる。この仕事の良さがわかったんだ。誰一人として、死なせない。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

番人がいた場所の先にあった階段を上っている我ら一行。

階段が長く感じる気がするが気のせいだろか?そんなことを思い始めた時、遂に出口が見えてきた。

橙の光が溢れる出口を抜けると……。

 

「暑いッ!!!てか、熱い!!!」

 

周りが火の海だった。

床や通路が見にくくなるほどの熱気があちこちで放射され、火の海では火の粉が舞い、たまにプロミネンスが起こっている。

もし、ここから落ちたら……そう考えるだけで、腰が抜けそうになる。

 

「あちっ!あちっ!ユコ、だいじょうぶか?やけどしてないよな?」

「はぁ……はぁ……だ、大丈夫だよ、サコ。ユコ、頑張るから……」

 

ここの階層に来て少ししか経っていないのに、汗が溢れてきた。体力もガンガン減っていくのが目に見えた。

 

「気温摂氏88度、湿度10%。人間が生きていける限界は軽く突破してるわね……」

「流石地獄、か」

「暑い……ってか熱い!ちょっと、クーラーないの?」

 

キサラギが音を上げて、俺を見る。しかし、俺にはどうすることも出来ないので両手あげて首を振る。お手上げです。

 

「はぁ……ありえないんだけど……」

 

がっくりと肩を落とすキサラギ。

 

「こりゃマジで地獄っつー感じだな。油断せず気を引き締めていくぞ!」

「あ、俺のセリフ……」

「……アリス……暑いのむり……」

「えー、頑張ろうぜ?」

 

しっかし、本当に暑い。

みんなもこの暑さで番人を倒した時の盛り上がりが嘘のように意気消沈している。あつい~。あつい~。の大合唱。

聞いているこっちは気持ち的に更に暑くなる。

 

「ああ!もう無理だ!」

 

俺は遂に我慢できず。上着を脱いでシャツ一枚の姿になる。

 

「ちょ、ちょっとセンセ!なんでいきなり服脱ぐん?」

「暑いからだよ!」

「女の子が目の前にいるのよ!?少しは考えて動きなさいよ変態!」

「暑いんだよ!」

「うるせー!暑いのは、アタシらも一緒なんだよ!」

「じゃあ、お前らも脱げよ!」

「は、はあ!?な、なに言ってるんだよ!男のお前ならまだしも、女の子がそう簡単に脱げるわけ───」

「そうなの……脱げば……暑くないの……」

「「え!!?」」

 

まさかのアリスの爆弾発言。俺とランの息もこの時ばかりは合わざるをえない。

そんな俺らを無視してアリスは自分の服に手をかける。

 

「待て待て待て!アリス!!脱ぐなって~!!」

「アリス!待て!俺が悪かった!謝るから落ち着いてくれ!」

「ほら……ランも脱いだらいいの……」

「ちょッ!おい!やめやめやめーーいっ!!」

「うおおお!どうなんだ!?男としてこれはどうなんだ!!?」

「ひっ!オヤジ、テメーッ見てんじゃねーぞ!ひゃうっ!あ、アリスぅ!!」

「ランもユウもアリスも……一緒なの……♪」

 

暑いなか、ぎゃあぎゃあ騒ぐ三人。

 

「やっぱり……仲良いなぁ」

「トモエ……どうやったら、あれが仲良く見えるのよ?」

「レベルの低いバカ騒ぎをして、無駄に体力を使ってる愚か者にしか見えないわね」

「そうなん?うちはあの三人お似合いやと思うけどなぁ?」

「それって、ユウとランが両親でアリスが娘ってこと?……ないない、似合わない」

「教官が尻に敷かれて、娘にキモいって言われる景色の幻視、余裕だわ」

 

騒ぎを傍観し好き勝手言う三人。

 

「まってろユコ。いまあおいですずしくしてやるからな!」

「サコ、ありがとう……」

「おう!」

 

自分たちの世界に浸る二人。

 

まとまりが生まれるの何時になるやら。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ここを越えればあと半分。と言う言葉をバネにやる気を取り戻し、進み始めて少しして現在。景色が変わらない通路を歩き続けて遂に事が起きた。

広い場所に出た瞬間、中央に巨大な火柱が発生した。

「な、なんだよこれ!?」

「……強い力……感じる……!」

 

アリスの台詞から嫌な予感を感じる。そして、その予感が的中した。

火柱が消え去ると一体の怪物が姿を現した。

頭は鳥、体は人間、下半身は蛇で、炎の翼と鬣を燃えたぎらせている。炎の合成獣、そんな見た目をしている。

そして、そいつを間近で見てわかった。こいつはこの試練の番人だ。

炎の番人は俺達に目をつけると、大きな声をあげた。

 

「ちょーっと待ちな!!」

「キャーーー!!サコ、先生!わさわさした変なおじさんがーー!!」

「おいこら!!ユコをおどかすなよ!へんなおじさんめ!!」

 

声からして男声ってのはわかる。だからっておじさんって言っちゃいけねぇよ!おじさんって男たちにとってはかなりくる言葉なんだぜ?と、二人を心の中で注意しておく。

 

「へ、変なおじさん!?おいおいおいおい!!まさかこの俺様を知らねーってのかい?」

 

ほら、こう言う面倒そうなことになる。

 

「俺はバーン・レイジー。レイジーファミリーのボスをやってて、この辺りじゃ顔なんだけどなぁ」

「はあ?なにそれ?意味わかんない。レイジーってブランド名かなにか?」

「ちがーーーーう!!ファミリーだっつの!!」

「ようは、この快走を仕切ってるマフィアのボスってことね」

「はっはっはーー!ま、そーゆーこった!小娘ども、わかったか?俺様を恐れろ!敬え!」

「はあ?誰がテメーみたいなバカ男にビビるっつーんだよ」

「う~ん……そおやおねえ。もう少しお顔が格好良かったらその肩書きもイケてたと思うけど……」

「……やや残念なの……」

「なななんだと!」

 

みんなにボロくそ言われて遂に激怒するバーン・レイジー。

ホントにコイツら初対面の奴に容赦ないな。

 

「ふ、ふん。まあいい。オメーらは俺様の実力を知らねーからな!見せてやるよ!」

 

戦意を剥き出しにしたバーン・レイジーが吼えると、幾つもの火柱が上がる。

みんなもそれぞれの武器を手にして、戦闘体制を取る。正面から迎え撃つ気だ。

そんな中、俺はみんなの後ろで、

 

「いやいやいやいや、これはマズイ!マズイだろ!」

 

戦う気はなく、逃走手段を考えていた。

 

 

 

 




やあやあ、DAMUDOだ。

遂に炎ノ試練に挑むことになった一行の前にいきなり現れるボス、バーン・レイジー。
バーン・レイジーのキャラって茶目っ気があるじゃないですか。なので私はボスキャラで一番好きなんですよ。
恐竜と獣は吠えるだけ。お花は悲しいのぉ、と性格が悪い。影製造機は趣味が悪い。ラスボスは元の姿を知ってるから……。隠しは喋らん。インビボスのシステム娘はそこそこ可愛いけど、やっぱり強さアピールできて、弄られキャラのバーン・レイジーが好きです。

嗚呼、ランとアリスの脱がせあいとか……熱くなりますわぁ。

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