声優
キサラギ:長谷川明子
アリス:又吉愛
サコ:高山ゆうこ
ラン:羽飼まり
ミウ:田村睦心
なんですよ。
「じゃ、さっそくだけど4人をここまで連れてらっしゃい。首に縄をつけてでもね」
と、ミウは涼しい顔で言う。
「首に縄って、本当に動物あつかいですか。殺伐としてません?」
と、俺は諭すように話す。
毎回思うがミウの言葉選びに容赦がない。手もすぐ出すし、かなり攻撃的な性格をしている。だから、ここで彼女にも良心があるのか確かめる意味も込めて尋ねたが……
「はぁ~。キミね、この子達のこと全然わかってないわねぇ」
返ってきたのは、ため息とバカを見るような態度だった。
「そりゃ、俺はあの子達とは今回が初対面なんだから、知らなくて当然っすよ」
つい、反抗的な態度をとってしまった俺。また、平手打ちがくる!
犯した過ちに悔いる時間など捨てて、痛みを覚悟した。…………あれ?平手打ちがこない。
代わりにミウは挑戦的な笑みを浮かべていた。
「いいわ。そこまで言うなら好きにやってみなさい」
そう言って、ミウは手に持っているファイルを俺に差し出した。
ミウが平手打ちしないってことはそう言うことなんだろうか……?
「ほら、行きなさい」
「は、はい!」
俺はファイルを受け取り、少女達の元へと向かう。ミウの態度に一抹の不安を抱えながら。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
んじゃ、一人目。
「…………」
ツインテールが一番の特徴の少女。
ファイルによると、この子名前は『如月恭華』。キラサギと言うらしい。
「…………」
キラサギは何も話さず俺の体を舐めるようにみる。まるで、骨董品や高級品の値踏みをする。そんな目付きで。
「…………」
「…………」
あかん。こう言う場合、俺から喋りかけなきゃいけないんだが、俺はそんなに異性とお話しする人種ではないため、うまい話題がみつからない。
この子、見た目から判断するに、お洒落意識が高い系女子だろう。そうなると、俺が思い付くような話題では軽くあしらわれる。最悪、「うわ、キモ」とか思われる危険性さえある。そうすると、この先関係を築くのに支障がでかねない。
さて、どうしたものか……お、お裁縫とか興味あるかな?
「……そのベルト、いくら?」
キャアアアアアアシャベッタァアアアアア!!
「なによ、その顔は」
「いや、すまん。驚いただけだ」
「ふ~ん。で、いくらなの?」
あっちから話題をもらえたのは好都合。だがしかし!最初の会話が「ベルトいくら?」と言うのはどうなの?
いやいや、そんなことを気にしてる場合ではない。これはチャンスなんだ。どうな話だろうと、会話を広げなければ!
……しかし、ベルトか。前、デパートでセールしてたやつだから、確かぁ……
「1500円くらいだ」
「……ふ~ん」
「それが、なんなんだ?」
「……べつに」
以後、キラサギが口を開く様子を見せなかった。
ダメだった。嘘言って10000ぐらいの値段にすればよかったか?
悩んでも仕方ない。キラサギはまた後と言うことで、次の子に言ってみよう!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………」
四人の中で一番小柄の少女。服のサイズが合ってないようで肩とか鎖骨とか見えてる。
「……お友達が……」
虚空に目をさまよわせながら、何かぶつぶつと呟く。コワイ!
資料によると、この子の名前は『水菜悠里』。自称アリスらしい。
アリス?不思議の国の?電波とかメルヘンとかそう言った類いの子かな?
ん~俺は童話とかはよく知ってはいるが、たぶん関係ないんだろうな。この子が一番、コミュニケーションに困るんじゃなかろうか……はやくも不穏な予感。
「……何が……?」
「ん?」
「……何が欲しいの?」
どういうことなの?なんと言えばいいのかわからん。この質問に対するパーフェクトな回答とは一体なんだ……。俺はこれまでに得たこの子情報を結集し推理した。
アリス……童話……女の子……姫?
……そうかわかったぞ!答えは、
「お前が欲しい」
とうだ!?
「………………ダメ」
「……ごめんなさい」
かなり本気なトーンでダメって言われた。あれ可笑しいな……お兄さん、なんだか胸が痛いや……こんな感覚、高校生の時にフラれた時以来だなハハ……。あれ?なんだろ?頬に……何か、つたうものが……。
俺はそっと袖を濡らした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
え~次の子です。
「…………」
最早お約束となりました、初対面の黙りです。ただ、さっきの二人と違って凄く睨んでます。
「…………」
「…………」
なんでしょう?私を怪しい者を視るような視線を浴びせてきます。確かに、今は目元が赤くて怪しいかもしれんが、顔は怖くない面をしてると思うけど。警戒してるんでしょうか?
この細身の少女の名前は『片木左子』。サコと呼ぶ。
「……おい、おまえ」
うわおまえって言ったよこの子!?
「な、なんすか?」
「おまえか?ユコをつれていったのは」
「ん?ユコ?誰?」
「どこだよ!ユコをどこにかくした!」
サコは怒鳴るなり、俺を叩き始める。しかも、その細い腕からは考えられないぐらい痛い。
ちょっと!マジでやめて!痛い!痣できるって!
「そんな子は知らん!逃げた3人内のひとりだろ!?」
「うるさい!うるさい!はやくユコをさがしてこいよ!」
興奮しているのか、サコは俺の言葉に耳を貸さない。むしろ、俺を叩く腕にも更に力が入る。
あーもう!ユコって誰だよ!話になんねーよ!
次だ次!次は、まともだろ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………ちっ」
あかん。初っぱな舌打ちされた。目付きコワイ。この子が一番ヤバイ気がする。
長身……170はある眼鏡をかけた少女は、
資料によると、名前は『蘭堂かよ子』。ラン、ね。
「…………」
すんごい睨んでくる。変な動きをすれば殺す、って顔してるよ!
なんだか、本能的に目をそらしちゃう。すみませんね意気地無しで。
「…………」
「…………」
ダメだ、何も話せない。だって、何か喋った瞬間この子に殺される気がするもん!
ん?目をそらしたことによる発見!この子おっぱい大きい!
「お前、ケンカ売ってんのか?」
「え?」
ヤバイ、凝視しすぎたか!?いや、まず目の前に来て何もしずに、ただマゴマゴしてりゃ怒るよね!!?ごめんなさい!
心の中で懺悔をしていると、突如、ランは殴りかかってきた。
俺はとっさに顔を庇うようにガードする。
「は!甘めぇな!」
「──────!!」
顔ではなく、ボディに突き刺さるような強烈な一撃。
ゲロッちまいそうな感覚を抑え、俺はランの前から急いで退散する。
お兄さん、カッコつけといて早くもバイトやめたいです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それで?どうだったかしら?」
「……ダメッした」
「だから言ったでしょ?一筋縄じゃいかないって」
ぐうの音も出ねぇ。
「どうする?このままだと職務失格。現世の体とはお別れになるわよ?」
「た、助けてください!!」
「あははははははは!」
″バチンッ″
「痛ええぇぇ!!」
精神攻撃→絶望→命乞い→嘲り→平手打ちのドSコンボ!某ストリートファイター達も真っ青である。
「ま、いいわ。一回だけ助けてあげる。このままじゃ、あたしも困るしね」
マジですか!ありがとうございます!ありがとうございます!
ミウは笛をふき、四人の注意を集める。
その顔はいじめッ子のような残虐さを秘めていて、端から見てとても楽しそうな笑顔だった。
「あなた達。この人の言うことを聞かないとずーっとこのままだけど、いいの?」
幼い子どもに諭すようにゆっくりとした、それでいて海に鉄塊を静めるように重く。ほどよいテンポと強弱をつけた話し方をする。
「固いパン。不味い水。冷たい床。そんな生活が、ずーっと続いちゃうわけよ」
話が続いていくに連れて、四人の少女達もざわめきだす。
「周一回のおしおきも続けていき、しだいに人には言えないあーんなことやこーんなことまでされちゃうのよ」
それは正に熟練者の立ち振舞い。
「あたしは、それでもいいけどね」
最後に笑ってみせた。
脅すのがうまい。雰囲気もどこか女ボスみたいだし、さすが地獄の管理者ってとこか。
「さ、行ってらっしゃい。あたしを失望させないでね?」
ミウの鋭い視線が向けられる。次は失敗できんな。
「よしッ」
俺はボソリと呟き気合いを入れ直した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
と言うわけで、まずはキサラギだ。
「…………」
相変わらずの黙り。ここはいっちょ厳しくいこう。
「アンタに、ついていけって?」
キサラギが問う。
「そういうことだ」
「フン、えっらそうに……」
そんなんじゃ怯まんぞ。
俺は顔色をかえずキサラギを見続ける。すると一瞬、キサラギが目をそらす。よし、このままの姿勢でいこう。
キサラギは少しだまり、躊躇うように、また問い掛けてきた。
「アンタのその服、いくらよ?」
「また値段か?お前はそれしか聞けんのか?」
「な、なによ……ちょっと気になっただけでしょ!」
キサラギが動揺をみせる。そう、聞かれたことをほいほい話すほうがおかしいんだ。ちょっと強気でいこうと決めた以上、自分の先生と言う立場に自覚をもたなければ。
「……はぁ……。ずっと牢獄ぐらしってのもダルいし、ついていくしかないか……」
「ああ、そうしてくれ」
「あんまえらそうにしないでよね!」
「ならお前も生意気言うなよ」
「ふんっ」
キサラギがしぶしぶだが、ついてくるようになった。
さて、次は……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………」
「…………」
アリス、か……。この子にはあんまり強気な態度はよくないな。四人の中でも一番気が弱そうだし。かえって、信頼関係を築くのに支障がでかねない。
「怖くないから、ついてこい」
俺がアリスにとって敵ではないことを前面に出していこう。
「……いや……」
アリスは首をふるふると横に振る。……カワユイ///
おっといかんいかん。惑わされるな俺。兎にも角にも、説得あるのみ。
「大丈夫だ、心配はいらない。俺はアリスに危害を加えるつもりは毛頭もないんだ」
俺は両手を上げて何もしないことをアピールしてみる。
「…………」
「ずっとここにいるより、俺と来たほうがいいはずだ。信じてくれ」
「…………」
「それにほら、ここにはあの怖ーいおば「ん?」……お姉さんがいるからな……。どうだ?」
「…………」
少し、何かを一人でボソボソと話すアリス。
その後、俺の必死の説得のかいあって、アリスはこくこくと首を縦に振った。
「……行くの」
「よし!」
アリスもついて来てくれる気になってくれた。
順調だ。勢いそのまま行くぜ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………」
相変わらず警戒心全開のムスッとした顔をしているサコ。
どうしよ、ぶっちゃけ説得の切り口が見つからん。どうしようと、またユコユコと騒がれるだけな気がするんだよね。
そんな風に悩んでいるとサコから口を開いた。
「……ユコをつれてくるきになったのか?」
やっぱりユコか……そんなにユコってこが大事なのかサコは。
ん~恐らく逃げた三人の内のひとりだろうし……この先にいるだろからなぁ。
「俺はユコとかいう子の場所は知らんから連れてくるのは無理だ。けど、俺についてくれば見つかるぞ」
「ほんとうか?」
おそらくだけどね……
「ほんとうだな?うそついたら、はりせんぼんのますぞ?いたいぞ?」
「ああ、大丈夫だから、ついて来い!」
「うそじゃないんだな!……じゃあ、ユコのためだ。おまえはたよりないけど、ついていってやるよ」
よし!説得成功!しかし、上から目線だな。しゃべり方は幼稚なのに。そこら辺も教育してやろう。
「けど、ちゃんとユコをみつけないと、ひっさつのひだりをおみまいするからな!」
サコが左拳を突きだすと、ヒュンヒュンと鋭い風切り音がなる。
……無理矢理の教育はよくないな!個性を潰すのもよくないし!はっはっは!
気を取り直して……そっか、次はあの子か。……おし!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…………」
相変わらず眼鏡越しに殺気 だっている目がこっちを睨み付けてくる。
怖い。けど、さっきとは覚悟が違う。
「お前、また殴られにきたんだ?」
と、言い終わる前に、またもやランが殴りかかってきた!
俺はとっさに左に身をかわす。瞬間、ランの右フックが鼻先をかすめて空を切る。
恐ろしく速い!何も考えずに左に避けたが、右だった顔面当たってた。もしそうだったら……おー恐ろしい。
「ッ!!」
ランは俺が避けたのに一瞬驚いたが、すぐさま空振りした右拳でバックブローを繰り出す。
ダメだ、これは避けれないッ!なら……
俺は歯を食い縛り、足に力をこめた。
最初ッから顔で受け止める気で迎え撃つ!
「────ッ!!」
顔面に強烈な一撃……だが、今回は堪えられた。ランも俺が避けなかったのが予想外なのかそこで動きが止まった。そこを捕らえる!
俺は顔面にめり込んでいるランを拳を掴む。
「つ、捕まえたぞ……へへっ」
これで、まともに話し合えるだろ。話してる途中にまた、殴られても敵わんからな。
「な、なんだよお前……」
ランはまだ、驚いた顔で呆然と俺を見ている。
「……けっ。この勝負、アタシの負けだ……言い訳はしねぇ」
「え?」
「お前について行けばいいんだろ?どこへでも行ってやるよ」
お、説得をふっとばして成功した。なんだ、拳と拳による熱い友情でOKなのか!いやーよかったよかった!ランが心を開いてくれるなら怖いもんは何もないぜ!
「けど、覚えときなアタシは男が嫌いなんだ。せいぜい、背中には気をつけろよな」
現実は非情である。
さて、これで四人の説得に成功した。次は地獄の塔とか言うやつを登ればいいんだな。
大変なのはこれからだ!
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そうすれば貴方は幸せになれます(ニコッ