私の名前は片木右子。みんなからはユコって呼ばれてる。
今は試練の休憩中。みんなぐったりとしていて、疲れてるのがわかる。私もすっごく疲れた。だから……ご褒美が欲しい。
「どうした、ユコ。なにか相談か?」
先生はとても良い人だから、私が少し視線を送って気にして欲しい素振りを見せるとすぐに声をかけてくれる。
「あ、あの……その……」
「どうした、遠慮しなくてもいいんだぞ?」
私が言い難そうにしていると、また気を使って優しくしてくれる。お陰でお願いが言いやすくなった。
「ユコ……いっぱい頑張っちゃったから……お腹がすいたの……。それで、甘いものが食べたいな-と思って……」
「なるほど、甘いものが食べたいのか。う~ん……でもお菓子なんて売ってないしな~」
「おねがい先生!ユコ、いっぱい頑張るから……」
精一杯お願いしてみる。先生はう~ん、と唸りながら頭を捻っている。ダメなのかな……。
私の残念な気持ちになりそうなその時、先生は手叩いた。
「良いこと思い付いた!ユコ、ちゃんと頑張るなら甘いもん用意してやはんこともない」
「ほんと!?」
「ああ」
「わかった!ユコ、頑張るから!」
「よし!なら、一緒に台所行こうか」
こうして、私は先生に連れられて台所に向かった。
台所は基本的に先生しか入らないから、よく知らなかったけど、本当に最低限の設備と数少ない道具しかないみたいだった。これで何をする気なんだろう?
不思議に思っていると、先生は砂糖を取りだした。
最低限の調味料はちゃんと買えるはずだから、砂糖はあるんだ。
先生は砂糖を鍋に入れて、その後に水を加えて混ぜる。そして、コンロで鍋に火を掛けた。
「~~~~♪」
先生は鼻唄を歌いながら鍋を見守る。
「……先生、なに作ってるの?」
「んあ?べっこう飴だけど?」
「あめ?」
「そう、飴。甘いぞよ~♪」
「へぇ~、あめってこうやって作るんだ。楽しみ」
「できるまで、お喋りでもしてようか?」
「うん」
私はあめができるまで先生と楽しくお喋りをした。
「できたー!」
「わ~い!」
先生が言っていた名前の通り、べっこうそっくりな透明感を持ったあめがお皿に盛られた。
「さてさて、お味はどうかな~♪…………うん、甘い!」
先生は味を確認するとあめを袋に入れて、私に渡してくれた。
「先生、ありがとう!!」
「いいってことよ。あと、サコにも分けてやれよ?」
「サコに?うん、わかった。ふふふ……」
嬉しくって幸せで思わず笑いが溢れる。幸せついでに、あめを一つ食べてみる。
「あま~い♪先生、ホントにありがとう!」
私は嬉しさのあまり、先生に抱き着いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
うちはトモエ。今、悩んでることがある。我慢しよかと思うたけど、もう無理や。センセに頼んでみることにする。
「こう歩き通しな上に、おしおきまでされてたら、流石に気になってまうわ……」
「ん?なんか欲しいもんがあるのか?」
「うん、実はな、ここには制汗スプレーみたいなものはないんかなって思ってたんよ。うち、汗臭いんのは堪忍やし……」
「制汗スプレー、ね……まあ、女の子だから臭いは物凄く気になるよね……」
「無理言うてんのもわかってはいるんよ……でも、そう言うたかて嫌なもんは嫌やわ……なあ、センセ……?」
うちはセンセにお願いが聞いてもらえるように、近付いて見詰めてみる。
「わかった!わかったから少し離れてくれ!」
いつの間にか体が密着するまで近くにいたみたいや。
センセは少し紅くなった顔のまま咳払いをして言った。
「と、取り合えず、何とかしてみるよ」
「ほんまに?うれしいわぁ~!」
うちは嬉しさのあまりセンセの腕に絡み付いた。
「お、おお……ッ!え、と……このまま出掛けたいんだがいいか?」
「ええよ、お供します」
「じゃあ、行きましょうか」
うちとセンセは二人でキャンプの外に出た。
暫く歩いていたら、センセが目的の物を見つけたみたい。
センセが見付けたのは何やようわからん、ガラスのような光沢を持った白い石。
これはいったいなんやろ?
「センセこれはなんなん?」
「これはミョウバン石。制汗効果があったはず……」
「へえ~」
センセは妙に物知りなところがある。
「これちょっとばかし、砕いて砕いて細かくし~て、粉にする♪……できた」
「これが制汗スプレーの代わりになるんか」
「ああ、ちゃんと使えるはずだ」
「ホンマか怪しいけど、センセがそう言うんやったら、そうなんやろうな」
うちはそう言って粉を受け取った。
なんでやろう……プレゼントは今まで沢山もらったことがあるけど、センセから渡されるとなんや、恥ずかしいと言うかなんと言うか……うれしいなぁ。
「センセの気持ち、ちゃーんと受け取ったよ。おおきにな、センセ」
「おう、どういたしまして」
うんうん、今回で確信したわ。センセとおると楽しい♪
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「教官。貴方が私達を率いるのに相応しい人物か……ギルマス、じゃなくて指揮官としての能力。テストさせてもらえるかしら?」
私ことシンはユウの力試しをすることにした。だって、自分より劣っている人の指示に従うのって嫌なのよ。
私が質問してから間が空く。なんで、シカト決め込んでんだよコノヤロウ。
「なあ、シン……お前今、ギルマスって「言ってないわ気のせいよ」……そうか」
ヤバイ、聞かれてたみたいだ。次はミスらないようにしないと。今は誤魔化せたけど、追求される前に話を進めなきゃ。
「で、テストは受けるの?受けないの?」
「受ける。けどなにすんだ?」
「大丈夫よ。まずはここに座って頂戴」
私はユウに座るように指示する。ユウは大人しく従い、胡座をかいて座る。私とちょうど向き合う形になった。
私はユウとの間にカードを広げる。
「なにするきだ?」
「まあ、見てなさいって」
私が頭の中で特定のワードを念じると……
「おお!」
カードにそれぞれ登録されたホログラムが映し出された。
「これは、私が作った戦闘シュミレーションプログラムよ。今回のテストはこれで行うわ」
「ほうほう」
「自由に戦ってクリミナルを倒すのは難しくないでしょう。だけど、指定されたメンバーならどうかしら?より指導官としての統率力が重要になってくるわよね」
私は四枚のカードをユウの元へ滑らす。
カードにはそれぞれトモエ、ラン、サコ、アリスのホログラムが映し出された。
「今回のテストはその四人でクリミナルを倒すことよ」
「なるほどね……」
やっぱり……いつもはケラケラ笑ったりボーッとしたりセクハラしたりよくわかんない奴だけど、戦闘の時になるとまるで別人に思えるくらい雰囲気が変わる。本当になんなのかしら……今回で見定めてやる。
「で、相手は?」
「相手はこいつよ」
「……スラッグじゃねーか」
「ふふふ、確かに見た目はクリミナル界の雑魚中の雑魚、スラッグよ。でも、こいつは私が作ったスラッグ、その名も『増殖スラッグ』!体力の底上げと特殊能力付与を施したわ。さあ、テスト開始よ!」
「おっしゃ!」
こうしてテストは開始した。
・
・・
・・・
「こうやって、トモエの菊一文字で……どうだ!」
ホログラムのトモエが六体の増殖スラッグを切り裂いた。
全滅
「どうだ?」
「まあ、メンバー限定ならこんなものかしら。思ったよりすぐ終わっちゃったし簡単過ぎたかもね」
本当に早く決着がついた。正直予想外でビックリしている。あまり、テストになってなかった気もするし……やるんじゃなかった、かしら?
「ま、取りあえずは合格、と言ったところね」
「そうか。そりゃ良かった」
ユウは立ち上がり立ち去ろうとする。私も散らばったカードを片付け始めた。
「なあ、シン」
もう向こうに行ってしまったと思っていたユウが私の横に立って声をかけてきた。なにを言われるか怖くて私は何時もより小さな声で「なによ……」と俯きながら言った。
「テスト……楽しかったからまた、用意してくれよ。次はもっと絶望的なレベルのを頼む」
「え?」
「そんだけ。じゃあ」
それだけ言い残すと、こんどこそユウは行ってしまった。
私の課題が楽しかったって?自分で言うのもあれだけど、あのクソつまんない内容で?ふ~ん……
「……次はどんな構成にしようかな……」
暇だから、考えてあげることにした。別にユウの為じゃなくて私が暇だからよ。勘違いしないでよね……って、
「誰に言ってんじゃーーーー!!」
テンプレ過ぎる思考のせいで恥ずかしさの余り、吠えてしまった。
久しぶりだな……私だ、DAMUDOだ。
クリミナルガールズ2の公式コンプリートガイドを買ったのだよ。もうやり尽くしたのに。
さて、今回で確信したわ全員のGOは終わりました。
磁界は遂に泥の試練のボスとの戦闘になりますぞ!さあ、書くぞ書くぞ!
話は変わりますが、トモエとミズキが母娘のような間柄と言うifシュチュを妄想した機会がありまして、なんか涙出てきたんですよね……疲れてんのかな?
それではまた、お疲れさまでした