ユコの声優
浅倉 杏美
です。
どういうことだ……?
戦闘中に俺はただ呆然としていた。原因は、新しく仲間になったユコだ。この子の行動一つ一つに、腹から胸にかけて熱いものが溜まっていく感覚を覚える。つまり、イライラしているわけだ。
「うわ~~ん!助けてサコ~~!!」
おいおい、逃げんな。
「無理だよ~~!怖いよ~~!」
せめて動こうぜ?武器だけ構えて腰が退けて動けないとか、本当に訓練受けてる?
「キャーーー!!痛いよ~~!助けて~~!」
そんな怪我で回復薬使ってもらえると思うなよ。マジで。……だいたい、動かなかったら的になることぐらいわかるだろ!
「もうやだ~~!えぇ~~~ん!!」
泣き始めた。ああ、もう……!
「がぁああああああああ!!!じゃかましいわ!!」
遂にキレた。
怒りに満ちた叫び声が辺り一帯を震わす。ユコは泣くことを忘れて俺を呆然と見つめる。戦っていた四人、更にはクリミナルまでもが固まっていた。
「お前ら……さっさと終わらせろ……」
いつになくドスの効いた声が場を支配する。
四人はユウの雰囲気の違いを感じ取り、急いで戦闘を再開する。クリミナルも戦闘から気がそれていたので、すぐに一掃することができた。
戦闘終了。それを確認したユウは懐から一枚の紙を取り出すと、それを破り捨てた。
『休息チケット』。破り捨てることでキャンプまで一瞬でワープすることができる便利アイテムである。
ユウ率いる一行は光に包まれ、キャンプへと戻った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《おしおき開始》
キャンプのおしおき部屋。そこには、身動きが取れないユコと、その前に立つユウの姿のみがある。
キャンプに戻ってすぐに、ユウがユコを引っ張っていきここに籠ってこの状況が作られた。あまりにも早すぎる行動に、ユコは自分が拘束されるまで、何かをしようと考え付かなかった。
「な、なに?ここどこなの?」
やっと出てきた言葉がこれである。
「ここはおしおき専用の部屋です。そして今からキミはおしおきされます」
そう言って俺は、やわらかいムチを取り出して、わざと大きな音を鳴らした。バチンバチンとムチが音を鳴らせば鳴らすほど、ユコの表情は怯えを見せて青くなっていく。
「やだ……助けて……助けてよ!サコーー!」
悲鳴にも似た声を入ってきた扉に向かって掛けるユコ。それに反応したのか、扉を叩く音が聞こえる。ついでに、「ユ"~~~コぉ~~~!!ユ"~~~コぉ~~~!!」と、喉への負担が尋常じゃないような声も聞こえる。しかし、今の俺はそんな声を気にもかけない。あるのは、この根性のないあまちゃんをおしおきによって少しでも更生させる使命感のみ。
「はっはっはっ、鳴きたくば鳴け。そっちの方が俺としては楽しいからな」
「なんでこんなことするの?ユコ、なにも悪いことしてないよ?」
「は~~~あ?それはどの口がほざいてんですか?えぇん?」
俺はユコのほっぺをムチの先端で弄る。つんつんしたり、ぐりぐりしたりするたびに、形を変えてもとに戻ろうとする白い肌は、少しするとほんのり紅くなっていった。
ユコは嫌がるように、顔を背けてムチから逃れようとするが、その場所から動けない以上、思うように逃れられない。
「ほ~~~らほら、文句があるなら言ってみろよ?」
「んんッ!ゆ、ユコは何も悪いことしてないもん!」
「小娘が!まだ言うか!」
俺はムチを仕舞い、両手でユコのほっぺを引っ張る。
やわらかい♪
「にゃ、にゃいひゅうお!?」
「なにするの?ってか。?いやがらせだよ、ほれほれ♪」
俺の思いのままに形を変えるユコのほっぺ。やわらかくて癖になる。
ユコはまだまだ元気に抵抗の意思を見せる。
「うう~~~!」
「なかなかしぶといな。んじゃ、さっさとやりますか」
俺はユコのほっぺから手を離し、再びムチに手を掛ける。顔は笑顔のままで、ムチを上げて降り下ろす。
*バチン*
「いたい!」
肉の弾けるような音と痛みによる悲鳴が部屋中に響く。
俺はユコの悲鳴に躊躇することなく、寧ろ興奮を覚えながら、二発三発とムチを振るう回数を増やしていく。
叩かれる度に、「いたい!」「やめてよ!」などと懇願してくるが、今はまだ止める気など毛頭ない。
ユコの悲鳴が響く度に扉を叩く音が騒がしくなる。流石に気になり始めた。
俺は暫く叩いた後、行為を止める。叩かれた部分は紅くなり、眼に涙を溜めながら荒い息を吐くユコ。
この、やってやった感漂う光景に満足する。今更ながら、こんなことに躊躇いが無くなってきた自分が心配になる。でも、この仕事はこうでもなきゃやってられないし、しょうがない。と正当化しといて今は考えないでおく。
「終わった……の……?」
「まだなんだな~これが」
期待が詰まった問い掛けに、無情にNOを突きつける。それを聞くと、泣きそうな顔のままうつ向き、懇願の声をあげる。
「もう、やめてよ~……」
このタイミングが吉と見た。ここからは話し合いの時間だ。
「だったら、お前も戦闘に参加しな」
「で、でも、ユコ、喧嘩は苦手だし。痛いのやだし」
「その辺は安心していいよ」
「え?どうして?」
「ここの世界……まあ、地獄なんだが……。ここの戦いはやっぱり現実世界の殴り合いとは違う訳だ。ユコも見ただろ?サコの拳が真っ赤に燃えたり、アリス……紫色の髪したちっこい子が魔法みたいな球飛ばしたりしたのをさ」
「う、うん。ユコ、ビックリした」
ユコの声が怯えたトーンではなくなっていき、期待・好奇心が強いものとなっていく。
俺は先程とはうって変わって、敵意のない紳士的な雰囲気を纏わせて喋り続ける。
「あれは、この世界ルールに基づいて起きている訳だ。どういう原理かは知らないが、ゲームみたいにMP使ったり、職業によって使える技が決まってたりするんだろう。なら、あまり、殴り合いたがらないユコなら、どんな技が使えると思う?」
「う~ん……どんなのだろう。わからない」
「なら、見つけようぜ。見付けようと努力するなら、俺も手伝う。だから、やってくれないか?」
俺はユコの目を見て、真剣な態度で申し出る。
ユコは目をチラチラと反らしては考えるように、顔を伏せたりする。そして、意を決したような表情になり、
「わかりました。ユコ、頑張ってみます!」
そう言ってくれた。
「おう、ありがとうな」
感謝の言葉と一緒にユコの頭を撫でる。
「えへへ♪」
ユコは笑顔を浮かべて笑う。もっと撫でてと主張するように、頭を自分から俺の手へ押し付ける様はまるで犬のようだった。そういや、ユコは犬っぽいな。
「どうしたユコ?撫でてもらうのがそんなに良いのか?」
「え~っとね、ユコは撫でてもらうのが嬉しいんじゃなくて、褒められるのが好きなんです♪」
「そうかそうか♪なら、頑張った分だけ褒めてやるよ」
「はい!」
《おしおき終了》
最後のそう話しておしおきは終了する。俺はユコの手を引いて、扉に向かった。。
この部屋唯一の鍵を取り出して扉を開ける。おしおき部屋にはなかった明かりが開いた扉の隙間から差し込み、徐々に大きくなる。差し込んだ光が眩しく、俺は目を細める。
今度からおしおき部屋の光を多くしよう。雰囲気出すために暗くするのはよくないな。そんなことを考えている内に、目が慣れて視界がはっきりとする。
「しねーーーー!!あくまーーー!!!」
クリアになった視界に突如飛び込んだ、目と鼻と口から体液を撒き散らしているサコの顔と、俺の顔面へと飛んでくる彼女の拳。
「サコ!」
ユコがサコに声を掛けた時にはサコの拳が俺の顔のど真ん中に突き刺さっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
場所は変わって沼ノ試練の次の階層。
俺は鼻の穴に詰めてあるテッシュを適度に交換しながら、五人の先導をしていた。俺のすぐ後ろにはキサラギ、ラン、アリスが俺をチラッと見ては笑い声を漏らしている。その後ろには俺を視界に入れないようにしているサコとその横で笑顔を作っているユコの姿がある。
大体はお察しの通り、あの後、俺は顔面にサコパンチを食らって、鼻血を垂れ流すはめになりました。止まる感じもないし、時間も勿体無いので、先に進むことに。今も鼻血が止まらない。出血多量で死ぬんじゃないかな?
誰も心配してくれなくて、寂しさを覚えつつも、鼻血のお陰で空気がやわらかくなっているのを感じ、どうでもよくなった。
そんなこんなで進んでいると前方に一つの人影が見えた。
「あ、あの子!」
「逃げた子だな!追いかけるぞ!」
急いで追いかける我ら一行。途中で見失うが分かれ道がないので、真っ直ぐ進めばたぶん大丈夫だろ。あと、鼻血が止まった。
「おい!ここ、道が分かれるぞ!」
「片方は扉が閉まってるから、こっちだろ!」
「さっさと急ご!」
「まてよー!」
「置いてかないで~!」
「……疲れたの」
*バタン*
え?
全員がこの聞き覚えのある音を聞いて足が止まる。後ろを振り返ると、さっきの分岐場所の道が扉のトラップで閉ざされていた。
「やべ!閉まっちまった!」
泥ノ試練の特徴の一つである、通ると自動でロックが掛かる扉。正直忘れていて、注意をしていなかった。
「ちょっと!これどうすんの!」
「あ~大丈夫だ。うん、大丈夫。ほら、スイッチ探そう。先はまだあるし」
「でも、なんだか嫌な予感がすんだよなー」
皆思うことがあるようだが、取り敢えず先に進むことにする。
「あ、スイッチあったよー!」
「お!ホントだ!」
ユコがスイッチを発見。
「……サコ、押してみてよ!」
「おう!!おすぞー!」
それをサコに押させる。すると、扉の開く音が聞こえた。
やった!これで一安心だ!と、この時の俺はそう思ってました。
閉まった扉の前まで戻ってきた俺らに絶望的な光景が目に飛び込んだ。
扉が開いていない。
「あ、開いてない……!」
「はぁ……信じらんない。開いたのは別の扉だったわけ!?ここが開かなきゃ意味ないじゃん!」
キサラギの言う通りここが開かなきゃ意味がない。
さっきのスイッチのあった場所が最後に、進む場所が無くなったのだ。
ヤバい!これはかなりヤバい!どうする、考えろ!……無理だわ。どうしよ?休息チケットはもうないんですよ。
「このままここでくたばるなんて、最悪だぜ……」
ランの悲観的な一言に皆が黙る。
諦めムードが漂い始め、絶望感がじわりじわりと心を侵食していくのを感じる。
こんなんじゃダメだよな!俺だけでも何とか諦めずに策の練るんだ!
頭を必死捻る。何も思い浮かばない。なら、奇跡が起これと念じてみる。
奇跡よ!起これぇええええええ!!
「みんな、どうしたん?」
「ッ!?」
突如、扉の向こうから聞こえた女の子の声。少し大人びている感じが俺の不安を和らげていく。
「もしかして、さっきの子か!」
「さっきの子やなくて、春川朋。トモエて呼んでな」
なにやら、独特の訛りが見られるしゃべり方ですな。
「そんなことどーでもいいから、この扉開けてくんない?」
おいこらキサラギ。失礼だろ。
「扉??ええけど、どないしたらええの?」
「この近くの何処かにスイッチがあるはずなんだけど……」
「スイッチをおしたらとびらがひらくんだ!」
「へえ……そういう仕組みなんやねえ~。みんな物知りで、羨ましいわぁ。うち、なんも知らんくて……」
サコユコの話しに素直に関心するトモエ。なんだか、この危機的状況がギャグみたいに感じられるから不思議だ。
「だーかーら!!無駄話はいいから、早くスイッチ探してよ!」
キサラギがしびれを切らす。
「はいはい。お安いご用よ。ちょっと待っててね♡」
何事もなかったように、トモエが行ってしまった。
「んじゃ、トモエがスイッチを押すまで待ちますか」
俺達は開かない扉の前で時間を潰した。
・
・・
・・・
「ホントに開けられんのか?」
・・・・
・・・・・
・・・・・・
「いつまで待たせる気なのよ!」
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・*ゴゴゴゴ*
どれくらい待ったか。地面が揺れると遂に扉が開いた。
「ドア……開いたの……」
「心配だったけど、あいつ、ちゃんとスイッチを探してくれたんだな」
「でられるのか!ほーっ」
束縛から解放された皆は嬉しそうにはしゃぐ。
そこまで長い時間でもなかった気もしなくもないこともないはず。どっちだ?……まあ、いい。さっさとトモエの所へ急ごう。
俺達は先程閉まっていたはずの扉を抜けて先に進んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
暫く進んで、広い場所へと辿り着くと、そこに和服の様な囚人服を来た、そこそこ背の高い女の子、トモエがいた。
「みんな出られたんやね。良かったわぁ」
漆の様に黒く美しい長い髪に花の髪飾り。清楚で大人びた雰囲気を漂わせる彼女は正に大和撫子と称するのが相応しい。そして、なにより目を引くのが巨大な胸。つまり、おっぱいである。スゴイ。超スゴイ。
ランの胸も同じ年齢の子達相手なら、かなりでかいはずなんだろうけど、トモエと比べるとそれも影に隠れてしまう。ランが巨乳ならトモエは爆乳と言うところだろう。
まさか、自分より若い子の爆乳を拝めるとは……地獄に来て よかった!
「助けてくれてありがとう」
早速、紳士モードで感謝を述べる。親睦を深める為の第一印象をよくするテクニック。
「ずいぶん待たされたけど」
キサラギが台無しにしてくれた。
「嫌やわぁ~。これでも一生懸命探したんよ?」
それでも温厚な笑顔を崩さず答えるトモエ。
「ユコたちのために……ありがとうね」
「ええんよ。困ったときはお互い様やし!ほな、この先も気を付けてね~」
そう言って、すぐ近くの通路に行ってしまう。
「ちょっと待って!一緒に……」
そこまで行ったところで突然、トモエの姿が見えなくなった。トモエと俺たちの間に扉トラップが作動して隠れてしまったからだ。
「あら、扉閉まってまったみたいやなぁ」
「また面倒なことになったな」
俺はため息混じりに呟いた。
遂に来ました……トモエです。
私、DAMUDOは彼女の登場に不安しかありません。
なぜなら!彼女が方言を使うから!
私は岐阜生まれなんです。自分の方言・訛りすら把握できてないので不安しかない。意図的にトモエの登場回数を減らすことはできますが、そんなことしたくない!トモエも好きですもん!
だから、トモエのセリフに違和感があるかもしれませんが、ご了承ください!お願いします!
話しは変わりますが、サコとユコ。妹にするならどっちがいいですか?
私は即答で「姉妹丼で」と言います。
既プレイの方も未プレイの方もまだまだお付き合い願います。
以上、DAMUDOでした。