目の前で二人の女性が音も無いままに火花を散らせている。いわゆる一触即発という状態だろう。しかもその原因が僕なのだ。
「アサヒ、下がってて! わたしが助けるから」
と、一人が僕を庇う。僕は言われるままにそそくさと部屋の隅へと避難する。女性に庇われる僕、ましてそれが見た目小さな少女に。なんと情けないのだろうか。
「妹様、どいてくださいまし。その男を殺せないじゃないですか」
なんというかもう、コメントが浮かばない様な状況だと思う。何故か僕はいま、殺されかかっているのだから。その対峙している女性とはフランと使用人の女性だ。なんだろう、「喧嘩をやめてください! 僕のために争わないでください」なんて叫べばいいのだろうか。いや、こんなこと考えている余裕なんか実際無いのだけれど。たいがい僕も図太いななんて自嘲してしまう。
「あのう、使用人さん? とりあえず僕に事情は理解していないので、ひとまず話し合いをしてみるとか如何でしょうか?」
恐る恐る声をかけてはみたが、
「アサヒはだまっててッ!」
「ふんっ、妹様に庇ってもらってるくせに。情けない男」
うんもうバッサリだ。僕は情けないことは自覚はしているつもりだが、あれ? しかし僕は当事者のつもりだったのだけれど、なんか自分が邪魔者扱いになっている。どうにも理不尽な思いでいっぱいになる。ふと見れば少し向こうの本棚の影に小悪魔先輩が見える。いつのまにか戻ってきたのだろう。ただ戻ってみればとんだ修羅場だったので、怖くて身を潜めていると言う様子だ。
だったら助けてください小悪魔先輩。僕の中で貴方の株はダダ下がりですよ。しかもこっちを見て「頑張れ~アサヒさん!」なんて声を出さずに口をぱくぱくとさせて声援を飛ばしてさえいる。正直イラッとしてしまった僕は悪くないはずだ。
フランはこの僕の危機に目覚めてくれたからここにいる。しかしパチュリーさんは未だ夢の中だ。パチュリーさん、貴方の部下がピンチですよ。そう思ったところで状況は変わらない。非常に困った。
「咲夜、どうしてアサヒをいじめるの!」
「妹様、それはアサヒではありません、敵ですよ」
「敵じゃないもん! アサヒをいじめるなら咲夜が敵だ!」
「あらあら、おいたが過ぎますよ? 妹様。大丈夫です、妹様はだまされているだけなんです。今、それを分からせてあげますから」
二人の会話の応酬が続くが、ちなみにこの状況、例の光の球――弾幕が飛び交う最中なのだ。この書庫の空中に飛び出して弾幕ごっこに発展している。言葉はなにかシリアスな様子であるが、フランも使用人の子もなんとなく楽しそうに弾幕を飛ばしている。
フランは僕を守るナイトを気取っており、使用人の子は日頃のストレスを発散するかのように。
もしかして僕はただ”ダシ”に使われただけなのだろうか? ふと小悪魔先輩のセリフが脳裏に浮かぶ。たしか彼女はこう言っていた。弾幕ごっこは「娯楽なのですよ」と。
二人の弾幕の余波をほうほうの体でかわしつつ、どうでもいいから早く終われよと思う僕であった。
★
使用人さんのスペルカードが光ると、無数のナイフがばら撒かれ、それがフランへと襲い掛かる。
フランはそれをギリギリでかわしつつ、空中をくるくると何度も宙返りしつつ、耳まで口が裂けたかのような邪悪な笑みで使用人さんへと迫りゆく。見た目が幼い少女でしかないフランが、
僕はそれをただ見上げることしか出来ないが、このフランを負かしたという霧雨魔理沙と自分は対峙しなければならないのだ。それを考えると首筋がうすら寒く感じてしまう。
この書庫は見上げても上が分からないほどに天井が高い。普通の館であればシャンデリアが輝き、天井画が浮かび上がるだろうに。だがここは灯りなど住人の行動範囲にしか灯さないから、ただの漆黒の空間がそこにあるだけに見える。そこに赤色と青白い弾幕が飛び交う姿は、えも言われぬ美しさだ。
さきほど使用人の彼女は、あの弾幕を僕に飛ばしたのだ。自分の今の姿をあらためて見る。何箇所も切り裂かれた白いシャツが赤く滲んでいる。
そこでふと思い至る。気がふれたとされるフランが生き生きと弾幕を撃つ。それをいなして使用人さんは撃ち返す。そのスピードは閃光のようで、フランも相当に苦労しているように見える。その証拠に使用人さんのナイフが撃ち込まれるたびに、フランの狂気染みた笑みは一瞬なりを潜め、真剣そうな必死そうな表情に変わるのだ。
彼女のナイフはたぶん、フランの身体の中心線を狙って撃たれている。つまりそれは急所ということになる。吸血鬼のフランとて、あれだけの数のナイフが撃ち込まれれば無事には済まないだろう。生死というレベルかどうかは別として。
あれはフランだからかわせるのであって、それが僕ならば? 逃げる間もなく即死するんじゃないだろうか。だからこそおかしい。あれほど憎悪のまなざしで僕を見ていた彼女が、殺す気ならばあの時あっさり殺せたのじゃないだろうか。レミリアさんに叱られるなんて言っていたけれど、そもそも書庫の掃除をしたくらいで殺されたらたまったもんでは無いだろうし、フランと仲良しだからと言われても、それが嫉妬するほどのレベルだろうか?
だいたいフランはレミリアさんの妹だ。その当主の妹であるフランに、あんな暴言をはき、あまつさえ襲い掛かる使用人がどこの世界にいるのだろうか? ここがいくら常識の通じない幻想郷だとて、そもそもフランが暴れていたわけでも無いのだから。
僕は上空の赤と白の閃光を物憂げに眺めつつ、さきほどの使用人さんの行動を
「どう? アサヒ。幻想郷の決闘は美しいでしょう? あの咲夜はね、私の忠実なメイドよ。どんな困難な命令も、涼しい顔をしてやってのけるわ?」
「……それでいつも私が苦労するのだけどね。いい加減、静かに読書をしたいわ」
「…………え?」
いつのまにか僕を挟むようにレミリアさんとパチュリーさんが立っていた。レミリアさんはどことなく誇らしげに、使用人さん――咲夜さんと言ったか。彼女を誉めそやし、パチュリーさんは相変わらずの仏頂面で立っている。いったいどういうことだろうか?
「……パチュリーさん、具合は大丈夫なのですか?」
「ええ、もう大丈夫よ。さっきは迷惑かけたわね。ありがとうアサヒ」
僕が慌ててそう言うと、パチュリーさんは若干目線を逸らしながらそう言った。一体なんなんだろう。
「もういいじゃないパチェ。アサヒったら目を白黒させて可愛そうだもの」
「え、えっ!?」
この人は何を言ってるんだろう。何やらニヤニヤとしながら僕を見ている。
そうして僕が混乱をきたしていると、上空でキャッと言う可愛らしい悲鳴とともに、ふらふらした咲夜さんが降りてきて、その後フランが勝ち誇った表情で降りてきた。どうやら決着はフランの勝利で終わったようだ。
「アサヒ~、咲夜をやっつけたよ! ほめてほめて!」
フランは僕を見つけると嬉しそうに諸手を挙げて飛びついてきた。相変わらずすごい衝撃だ。しかしあれだけ動いていたというのに汗一つかいていない。吸血鬼って本当にすごいと思う。とりあえず僕はフランの頭を撫でてみる。こう言う姿を見ると、さっきまでの邪悪な笑顔はなんだのかと首を傾げたくなるほどの落差だ。
今のフランは見た目相応の無邪気な笑顔だ。どうにも複雑な心境でいると、
「アサヒ様、先ほどは失礼いたしました。お嬢様の命にてあのような行動をとりましたが、故あってのことなのです。本当に申し訳ありません」
フランを撫でながら、両隣のレミリアさんとパチュリーさんに生温い目で見られている最中、弾幕ごっこで乱れたメイド服を直した咲夜さんが僕の前で頭を下げた。
「は、はぁ……」
「いい、アサヒ。これは言わば茶番よ。貴方は今日、パチェに召喚された新参者。それでもパチェとの契約を結んだのならば、その役目は果たさなければならない。でも、貴方は普通の人間。少しばかり数奇な運命をしているけどね。けれど弱い人間であることには変わりは無いわ。それがどういう事かわかるかしら?」
レミリアさんが僕を見上げる。小さな身体で胸を目一杯張り、尊大な口調で言葉を紡ぐ。僕は彼女の真紅の瞳に吸い込まれそうになりながらも、ただ見つめ返すことしかできなかった。それでも無言は許されないという雰囲気がして、僕は考える。彼女が何を言わんとしているのかを。
「……ここの現実を身を持って教えてくださったということですか?」
「正解。アサヒ、貴方賢いじゃない。ここは幻想郷。人ならざるものがしのぎを削る地獄よ。ある者にとっては天国であるけれど、それはここで生き抜くことができる実力があってこそなの。フランには悪いけれど、それを理解してもらう為に一芝居打ったというわけ」
「やっぱりな~なんか咲夜が手を抜いてるきがしたもん! でも楽しかったからいいけどね~」
「ふふっ、フラン、貴方なら大丈夫だと信じてるからそうしたのよ。ちゃんと壊さずに出来て偉いわ?」
「えへへ、ありがとうお姉さま。でもアサヒをいじめたらヤだよ?」
「わかってるわ。アサヒは貴方のお友達。そうよね?」
「うん!」
僕の前で姉妹が笑顔で抱き合っている。なんと麗しい姉妹愛だろうか。願わくばこの茶番たる僕を置き去りにしないで欲しくもあるが。
「さあパチェ。アサヒを連れて応接へ行きましょ。お茶でも飲みながら種明かしよ」
「ええ、そうしましょう。喘息だけはお芝居ではないのだから、流石に喉が渇いたわ。行くわよアサヒ」
「は、はあ。それではご相伴に預かりますね」
こうして僕への手荒い歓迎会の幕は閉じた。そんな時、
「ええ……アサヒさんを担いでいたんですか……怖かったぁ~」
本棚の影から小悪魔先輩が現れた。この紅魔館の面々が集まり、シリアスな雰囲気の続く中、何やら情けない表情で歩いてくる。そんな姿を見て一同の溜息はユニゾンし、僕の彼女への評価はさらに下がることとなったのだった。
★
先ほどまでの重たい空気は消えうせ、今は落ち着いた応接室で僕らは紅茶を飲んでいる。この部屋も確かに赤いが、それは割りと抑え目であり、来客のために配慮されてるのだなと感じる。トルコ絨毯のようなラグ、オーク製のローテーブル。上等な革張りのソファ。壁には作者はわからないが高そうな印象派の絵画。
僕はフランと並んで座り、その向かい側にはレミリアさんとパチュリーさんがいる。咲夜さんは僕らに紅茶とお茶請けのフィナンシェを置くと、静かにレミリアさんの後方に控えた。
さっきまでの彼女の印象とは変わり、今はまさに”できる女”と言う風に見える。彼女はあのしなやかな細い腕で僕を持ち上げたと思うと、今度はフランと戦って見せた。それが今はすっかりなりをひそめ、ただレミリアさんに忠誠を誓う忠実なる従者だった。
「さて、アサヒ。レミィの言いたいことは理解してくれたと思うけれど、もう一度私から言うわね。貴方は私の体調が悪いときに魔理沙から本を守る役目を果たしてもらう。けれどさっきフランと咲夜の戦いを見てわかるだろうけれど、普通の人間にアレを止めることは出来ないわ。でも私はその役目を貴方に担ってもらうのを決めたの。それは私の直感と、対価にした魔力の量という根拠があるけれど、さっきレミィの能力で貴方を見た結果も理由なのよ」
パチュリーさんの言葉は真剣で、僕を担いでいるという印象は無い。ただまっすぐに僕を見ていた。
「そう、私の心の目で見た近い未来の映像。そこで貴方はちゃんと役目を果たしていたわ。その手段までは見えないけれど、結果として状況は好転している姿がね。だから貴方は多分、死にはしないし、パチェだけではなく、この紅魔館の未来もいい方向へと導いている。もう既にフランが貴方に懐いているしね。私は決していい姉では無いし、フランには不自由な思いもさせている。だから貴方は既にひとつ、この私に貢献しているのよ。だからアサヒ
、貴方は既にこの館の家族であると私は認めている」
「お姉さま……」
レミリアさんの言葉は真摯なもので、尊大さよりも素の彼女の言葉に感じた。僕はフランに懐かれたと言うが、そこには霧雨魔理沙と対峙する際のひとつのオプションという打算があったことは否めない。だからこそ彼女のまっすぐな言葉に恥じ入ってしまう。横で目を潤ませるフランの表情を見るほどに。
小悪魔先輩に聞いたフランの事情、それだけでは足りない真実が今のレミリアさんの言葉には込められていたのだろう。だから僕はそれだけの期待に答えたいと感じた。いや、そう強く思ったのだ。
そして何より、僕には家族というものがいなかった。だからこそ、レミリアさんの僕は既に家族なのだという言葉に、不覚にも鼻の奥がツンとしてしまった。
僕の両親は僕が幼い頃に飛行機の事故で亡くなった。僕はそのニュースを祖父の家で見たのだ。自分の息子が死んだ事に激しく慟哭する祖父。僕を強く抱きしめ、両親が死んだ事を告げられたが、幼い僕にはあまり理解できなかった。そして僕はそのまま祖父の家で暮らし、その祖父だって僕が大学に合格したのを見ると、まるで役目が終わったと言わんばかり静かに死んだ。
僕は天涯孤独なのだ。アルカナに拾ってもらい、マダムにはいい様に遊ばれたけれど、いつも彼女が僕を見る目は優しくて、まるで母親がいたらこんな感じだろうな? なんて勝手に思ってたものだ。
そんな僕にレミリアさんは家族だと言ってくれた。まだここに来て間もない僕に。
ねえ、マダム。いえメリィさん。ごめんなさい、僕はまだ帰れないかもしれません。それは物理的な意味合いでもありますが、僕の意思という意味でも。僕はこの人では無いのに酷く優しい館の人たちをもっと知りたいと思いました。
「アサヒ?」
フランが心配そうに僕を見上げている。フランの顔が少し滲んでいる。
「ありがとうフラン、心配してくれて。でも僕は大丈夫だよ」
「でもアサヒ、泣いてるよ? どこかいたいの?」
「人間は弱いから、こうしてすぐ泣いてしまうんだよ。こうして優しい人に囲まれるとすぐに心がちくりと痛んでしまうんだ」
「こころがいたい? どうしたら治るかな? フランが治してあげるよ」
「いいんだフラン。この痛みは、この涙は苦しいからじゃないんだ。嬉しいからなんだ。だからありがとうフラン、友達になってくれて。これからもよろしくね」
「当たり前だよ! ねえお姉さま?」
「ええ、そうね。アサヒは家族だもの。でも明日からしっかり働いてもらうけどね。咲夜も先輩としてしっかりアサヒを教育してちょうだい」
「かしこまりました、お嬢様。アサヒさん、私は十六夜咲夜と申します。先ほどのわだかまりをお許しいただけたなら、これからは同僚として助け合いましょうね」
「ま、貴方は私の眷属なのだからしっかり働いてもらうわ。でもレミィ、あまりアサヒを酷使したらダメよ。これは私のなのだから」
微笑むレミリアさん。ソファの上に立て膝で僕の頭を撫でるフラン。読書をしたまま目だけはこっちを向いているパチュリーさん。そして今は屈託のない笑顔の咲夜さん。
僕は何か返事をしたいと思ったけれど、勝手に漏れる嗚咽を止めることが出来なかった。
ねえメリィさん。世界は広いですよ。だってこんなに優しい吸血鬼がいるんだから。
僕はこうしてお客様気分を完全に脱ぎ捨てたのだった。
「でもね、アサヒ。フランにおかしなマネをしたら許さないんだからね……」
訂正。やはり吸血鬼は怖いです……。
★
あのあと僕は正面エントランスから左手に入った場所にある部屋を与えられた。パチュリーさんは書庫で寝ればいいと主張し、フランは一緒に地下室で寝ようと言ったが、どっちの意見もレミリアさんに却下された。パチュリーさんの意見は、書庫にいるとレミリアさんが行くのが面倒と言う理由で。フランのほうは妹の貞操を守るためと拳を握って力説していたが、残念ながら僕に幼女偏愛などの性癖は無いので甚だ心外である。
そして僕は咲夜さん以外のメイド――――妖精らしいが、それらに案内されてここに来たというわけだ。
この館では珍しく大きな窓のある部屋で、毎朝陽が登ればしっかりと明るくなるのだと言う。人間である僕への配慮を感じて嬉しく思う。ここが僕がこれから住む部屋なのだ。
(本当に今日はいろんなことがあったな。いや、ありすぎて少々疲れた……)
楽しくはあったが気疲れもあり、こうして一人になれる空間は心底ありがたい。
この部屋の壁紙はやはり赤くあるが、それでもベッドやチェスト、姿見などの家具が置かれており、広さもそれなりにあって快適そうに思える。
僕はパチュリーさんにかけていたジャケットをまさぐる。そういえばアレが残っていたはずだ。
くしゅりと音がして、目当てのものを内ポケットから取り出す。そして窓を開けるとソレを咥えて火をつける。僕の唯一の嗜好品である煙草だ。なんの変哲もないメンソール。
その紫煙をなんとなく眺めながら、館の庭園の景色を楽しむ。
そういえば幻想郷の庭師とはどんな種族なのだろう。小悪魔先輩が天狗や鬼もいると言っていたものな。
トラ模様パンツをはいた鬼が、大きなはさみで生垣を手入れしていたら面白いな。
そんなどうしようもない想像をする余裕が僕の心に少しだけ生まれていた。
「家族……か」
「そうよ。お嬢様がそう言ったのなら、貴方はもう家族なのよ」
「ッ!!……咲夜さんか」
突然僕の独り言に返事があり、驚いて振り返るとそこにはドアにもたれかかる咲夜さんがいた。
「ええ、それよりもアサヒ。この部屋で吸うならいいけれど、火事には気をつけなさい」
「はい、咲夜さん。でもどうしてここへ?」
「さっきは怖がらせてごめんなさい。お嬢様の指示だったとしても怖かったでしょう?」
「はい、それはもう。すこし下着を汚してしまうほどに」
彼女はすこし意地悪な笑みを浮かべて僕に謝罪する。僕はそんな彼女が少し憎らしくて、下品な事を呟いてやった。
「そう、なら脱いでくれるかしら? それとも私に脱がせて欲しい?」
でも彼女のほうが一枚上手だったようだ。
西日の入るこの部屋で、その陽光に照らされた彼女の表情になんの含みもなく、ただ僕をからかっているだけだった。どうやら本当に彼女から憎まれてはいないようでホっとする。言葉遣いも軽い口調で、どこか嬉しくなってしまう。
「ごめんなさい咲夜さん。僕にそんな勇気はありません。それはさておき、これからよろしくお願いしますね。僕はアサヒ。京極朝陽です」
「私は十六夜咲夜。咲夜と呼んでくれて構わないわ。貴方も大変な仕事を仰せつかったわね。私も出来るだけ協力するから、遠慮なくいいなさい」
「ありがとう咲夜さん。きっとたくさん頼るかもしれない」
「ふふっ、程ほどにね? 私はこう見えて中々忙しいのだから」
こうして僕の波乱すぎる幻想郷の一日は幕を閉じたのだった。
明日は少し、知恵をしぼろう。どれほど出来るかは分からないけれど、でもなんとかやってやるさ。
そして僕はベッドに入り、もう眠る事にした。
『おやすみなさい、外の人。せいぜい楽しませてほしいものですわ……』
どこかで誰かの声が聞こえたが、閉じた瞼は重すぎた。
リライトせずに投稿。すいませんです。
魔理沙が出てこない……
そして紅美鈴ェ……忘れてたわけじゃないんですヨ