朝陽の幻想郷   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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ボツネタです。本編と一切関係ないです。なんでこんなの書いたのだろうというレベルです。本編がシリアスなので、息抜き程度にどうぞ。


魔理沙外伝一.

 

その一. チート能力で幻想入り

 

 俺はなんやかやあって幻想入りした。元々原作STGでは屈指のルナシューターと自負していた俺だから、例の少女臭香るあのお方の悪戯だとて、渡りに船という事だ。

 

 以前から某動画サイトの幻想入りシリーズを見ては「俺も幻想入りしてーなー……慧音先生のけしからん胸の谷間でけしからん遊戯をしたいなー」と考えていたのだ。

 

 掃除は三日に一回しかしない腐臭溢れる俺の部屋。親のスネを齧りまくった結果手に入れたハイエンドPCだけが俺の居場所だった。何をやっても続かない俺のクズ加減に一生懸命言い訳を繰り返し、ダルくなれば妄想へと逃げる。親に対しての罪悪感はあるけれど、何せやる気が出ないでござる。

 

 日々そうして怠惰なネット生活を繰り返す俺。一日のサイクルはネット三割、自家発電三割、そして持て余した性欲が限界突破した末にたどりついた境地――目的の無い筋トレが二割。あとは睡眠。その全てが俺の部屋の中で完結していた。

 

 そんな中、東方という作品は俺の妄想を加速させ、マイナス方向に俺の生活を潤した。だって出てくるキャラクターが全て女の子。それも人外ばっか。俺はあっという間に夢中になり、東方に関るものは全て目を通した。

 

 眠る前のひと時、毎晩のように俺は脳内で幻想入りし、好みのキャラとコミュニケーションをする。そんな時間だけが俺を潤してくれたのだ。リアルの俺は全てが自己弁護だけで完結するクズ野郎だ。けれど妄想の中の俺はひたすらヒーローを演じているのだ。

 

 それは現実での俺という存在に、自分の中で「このままじゃいけないんじゃないか」という引け目がるからこその反発な気がする。それでもいつかはこの掃き溜めから這い上がりたいと願っているんだ。けれど何一つ建設的な行動を自分からしていないのだから矛盾でしかないのだが。

 

「じゃ、それをかなえてあげましょう」

 

 ふとそんな声が聞こえてきた。既にパジャマに着替えて床に入った俺は今日の嫁は誰にしようと妄想の内容を考えていた、そんなときの話だった。

 

「おう、今すぐ叶えてくれ。俺はここにいたくないんだ」

 

 まさか本当にそうなるなんて思ってもいない俺は、安易にそう答えた。世の中そんなに甘くない。それがこの世の真理だと知っているのに。そして俺はそのまま背中から落下した。あとは皆が知っている通りの展開だ。

 

 どこか見知らぬ森の中、寝巻き姿の俺は暗闇の中で出会う。そうルーミアだ。

 

「貴方は食べてもいい人類?」

 

「ああ、本当にテンプレだ。おいルーミア、俺を食べてもおいしくないぞ!」

 

 俺はそう答える。ここで喰われるなんて難易度高すぎだろうよ幻想郷。

 

「そーなのかー? でもあなたは人間でしょ? ならとりあえず味見だけでもしてみるよ」

 

「ちょ、待てて。味見とか認めないから! おいやめろ。噛むんじゃねえ!」

 

 ルーミアは俺の言葉など無視し、笑顔を浮かべて俺の肩に噛み付いた。なんかぽかぽかするってやかましいわ。口を開けたルーミアはまるで耳まで裂けたかのようで、めりめりと音を立てて俺の肉に歯を食い込ませている。

 

 想像を絶する痛みとはこういうもんか。どうやっても覆せない状況だとなんの根拠もなく納得してしまうような、そんな感じだ。きっと血も滲んでいるだろう。俺は泣きながら止めろ止めろと繰り返すが、ルーミアはまったく意に介さない。

 

 そんな時、俺の脳裏に言葉が浮かんできた。

 

『そこまでよっ!と叫ぶととどんな強い能力も無効化できる能力(ただし・・・をする必要がある)』

 

 きた! 能力きた! これで勝つる!! 俺の興奮は有頂天に達した。これもまたテンプレであるが、襲われて咄嗟に能力を発現するパターンだ。しかし某動画サイトの二次ネタのままやんけ。しかも後半のとこが非常に胡散臭いし。

 

 しかし状況は逼迫している。このままじゃ死んでしまいそうだもの。能力はなんなのかはハッキリしないが、とりあえず俺は心の中で叫んだ。

 

(能力出ろ~能力出ろ~……)

 

 そう呪詛のように繰り返した途端、俺の身体が眩い光に包まれた。

 

「目がぁ~!!目がぁ~!!」

 

 ルーミアは俺が突然光った眩さに目をやられ、どこかの大佐のようなセリフを吐きながらそこらをゴロゴロと転がった。さすが闇の妖怪、光には弱いか。そしてその光が止んだ時、俺は何かをセットアップした白い魔王のように姿が変わっていた。

 

「なにこれひどい……」

 

 そう思わず呟いたのは仕方ないだろう。だって今の俺の姿は、紫色のロングヘアーのズラ(全く持ってズラとバレるレベルの粗悪品)、パジャマのようなストライプの女物の服、そしてドアノブカバーと揶揄される所謂ZUN帽を装着していたのだ。そうあの紫もやし……いや、動かない大図書館、または日陰の少女と呼ばれるパチュリー・ノーレッジの胡散臭いコスプレだったのだから。

 

「な、なんなのよ……」

 

 目の前のルーミアは俺を見て完全にひいている。まだ「へ、へんたいだー!」と叫ばないだけまだマシだった。せっかく発現した能力だが、既に俺の心は折れそうだった。どうやらこのコスプレは任意で脱げるようで、そこは安心だが、例の能力発現の瞬間の後半部分のワードの意味がこれでわかった。

 

 このコスプレをしている状態で「そこまでよ!」と叫ばなければ能力は意味をなさないのだ。でもちょっと待て。そもそも「そこまでよ!」のセリフはアリスが言ったのであって、パチュリーは一度も言ってないのだ。しかしまあこの際どうでもいい。俺は赤面するのを抑えられないまま、それはそれは勇ましく、利き手を前に掲げ、腹のそこから叫んだのだ。

 

「そこまでよッッッ!!!!」

 

 BBA~ん!と効果音がつていそうなほどに決まった。その瞬間、空気が凍る。あらやだ滑っちゃったみたいな切ない気持ちがわいてくる。だが、

 

「お見それしました!!!」

 

 それを見たルーミアは驚くほどに見事な土下座を決めると、凄い勢いで逃げていったのだ。見た目は酷いがこの能力は素晴らしい。そう思った。

 

 こうして俺は幻想郷最強への階段を上り始めたのだった。

 

 あれから数年、俺は幻想郷の中でどんどんのし上がった。紅魔館、永遠亭、命蓮寺、妖怪の山、守矢神社、地底に冥界。知ってる場所はどこにでも出向き、俺は次から次へと実力者を倒してきた。最近じゃ最強と呼ばれている博麗霊夢すら打ち倒した。

 

 レミリアなんか俺の姿を見ただけでカリスマガードを繰り出してうー☆と叫ぶ。もはや最強を名乗っても問題ないだろう。ただしパチュリー本人にはグーで殴られたがな。

 

 俺の幻想郷生活は最高だぜ! 俺を湛える者たちを集め、博麗神社の宴会で俺は高らかに叫んだのだ。

 

「幻想郷さいっこーーーーー!!!」

 

 + + +

 

「……はっ」

 

 そこで俺の目が覚めた。所謂夢オチというやつだ。これもまたテンプレか。

 ぐっしょりと寝汗で濡れた万年床。いつもと変わらない日常がそこあったのだ。

 俺は起きたばかりだというのに倦怠感がひどく、あくびを一つして体を起こした。

 

「ハローワークでも行くか……」

 

 俺の未来は薔薇色だ。多分。

 

 




本当にごめんなさい。仕事のストレスがハンパなかったのでつい。

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