ゼスティリアリメイク   作:唐傘

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 原作にはない町が登場します。ご注意下さい。

 神器という原作の名前があるのに使わないのは勿体ないかなと思い、近日中に武器化→神器化に変更しようと思います。



21.木立の傭兵団

 細い木の立ち並ぶ緑生い茂る山林の中を、数十人程の男女が同じ方向へ歩き進んでいく。

 

 彼らは一様に鉄製の防具を身に纏い、各々剣や盾を手にしている。だが同じ装備に身を固めた彼らの集団に混じって、スレイ達導師一行と『セキレイの羽』のメンバーであるロゼがいた。

 

「まさかこの『木立の傭兵団』が、子供(ガキ)のお守りをする日が来るとはなぁ」

「ほら、ぼやいてないで目の前の仕事に専念する!」

「へいへい。お嬢は手厳しいな」

 

 小声で愚痴を零す男、この『木立の傭兵団』の団長を務めるルーカスは、ロゼに叱られて気の無い返事を返す。

 最近噂の導師と合同での魔物退治を聞いたときから、ルーカスが嫌な予感がしていたのだった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 マーリンドの事件から1ヶ月が経過した。

 

 あれからマーリンドを出発した後スレイ一行はレディレイクへと戻り、国王に事件のあらましを報告した。例のごとく天族については話していない。報告を受け取った国王はスレイに感謝の言葉を述べると共に、金銭やアイテムの褒美を与え大いに労い、次の依頼を提示したのだった。

 

 

 まずはレディレイクの北にある、ハイランドの食料庫とも呼ばれる町グリフレットだ。ここはハイランド王国に供給される食料の半分以上を担っており、多様な農作物が豊富に採れる農業の町だ。

 だが最近、農作物を荒らす魔物のオークやアルマジロが多数出現し農作物を食い荒らされたり農家の者が怪我をする被害が続出していた。それだけならば被害の増減はあれど毎年のことであるためグリフレットを守る警備兵が魔物を退治するだけなのだが、それらの魔物に加えて後に憑魔だとわかったマウンテントロールがいたために退治は困難を極めていた。

 そのため、国よりスレイ達が依頼されたのだった。

 

 またこれと並行して、レディレイクで拘束されていた元人間の憑魔は勿論、周辺や旅の道中の魔物化した人間を浄化し元に戻すという依頼も受けていた。

 

 早速ハイランド王国の保有する馬車でグリフレットへ向かったスレイ一行は到着して間もなく、憑魔マウンテントロールを浄化した。穢れに取り込まれていたのは町で農作業に従事していた男性で、憑魔になる直前の記憶や憑魔になっていた時の記憶は無い様子だった。

 

 そしてエドナの兄、アイゼンを元に戻す手がかりを探すことも忘れていない。食料の町グリフレットへ行った際、どうにか目標の1つである孤島へ行くことが出来ないか探ったものの、結論としてここから向かうのは不可能だと判明した。

 海岸に沿うようにして山脈が築かれているため人が通れる場所は見当たらず、また船を出せるような海岸も無い。ローランス帝国からならば船があるかもしれないが、孤島の周囲は潮流の動きが激しく近づくことが出来ない。後は非現実的な手段として、空を飛んで行くしかとれる手段が見つからず、孤島はとりあえず後回しとなった。

 

 また、八天竜に関わる場所以外の伝承やおとぎ話も調査した。レディレイクの西にあるガラハド遺跡の奥には滝があり、そこにはいくら待っても現れない導師に失望した湖の乙女が、蛇に姿を転じて隠れてしまったと言う伝説がある。竜と蛇には見た目に似た特徴があり、且つ湖の乙女と呼ばれる女性が蛇に姿を変えたとのことなので調べることにしたのだ。

 結果として、滝に居たのは上半身が女性で下半身が蛇という憑魔ラミアだった。浄化はしたものの元はただの蛇であり、昔憑魔ラミアを見た誰かが勘違いしたのだとわかった。

 

 

 そしてその次の依頼は、ハイランド王国の庇護下には無いある町からの要請を受けての依頼だった。

 

 現在このグリンウッド大陸には2つの大国が存在する。アリーシャの所属するハイランド王国と、その敵国ローランス帝国だ。この2国はマーリンドの西にあるグレイブガント盆地にて散発的に争いを繰り広げており、最近では近々大規模な戦争が起こるのではないかと懸念されている。

 

 そんな2国に挟まれるようにして存在するのが、今回導師の派遣を要請した町リスウェルだった。

 リスウェルはグレイブガント盆地から北西、霊峰レイフォルクの遥か真西に位置する山間に作られた町だ。元はハイランド王国とローランス帝国の間を旅するための通り道、その休憩地点だったのだが、まだ両国の関係が良好だった頃に商人の一団が目をつけ、山を切り開いて町を作ったと言われている。

 そしてその商人の狙い通り、両国の特産物や金銭を流通させることによってこの町は大きく発展した。森や水に囲まれた自然豊かなハイランド王国からは新鮮な農作物や家畜を、工業的な開発が進んでいるローランス帝国は小麦粉や酒などの多くの加工品を流通させることで両国から一目置かれていたのだった。

 

 だがこのような板挟みの立地であるため、良い事ばかりでは無い。相手国との交易によって財を生み出すことが出来、また自国の軍を配置することが出来れば大きな牽制にもなる。そのため両国はそれぞれリスウェルを吸収しようと画策してきたのだ。

 

 しかしながら、商魂逞しいリスウェルの商人達はそれに対し屈することは無かった。町に傭兵を引き入れたのだ。

 山間部にあるリスウェルは周りを囲む山々が自然の要塞となってるため両国の派兵は制限され、また魔物退治や盗賊退治を生業とする傭兵達が酒と仕事の集まるこの場所に在留してしまったため、両国は手が出せなくなってしまったのだった。

 

 その後、両国と不可侵条約を結んだことで、流通と傭兵の町リスウェルとして特殊な位置付けとなった。

 

 

 閑話休題。

 

 そのような特殊な町の近隣の山林に、最近魔物のオオムカデが出没するようになった。初めは魔物退治の専門家(エキスパート)である傭兵が請け負っていたのだが問題が生じた。

 オオムカデは洞窟や地中に住む成人男性の背丈を超える程大きな魔物であり、天井や足元から突然強襲してくるため危険度が高い。オオムカデだけでも退治には骨が折れるというのに、それに加えて更に巨大なオオムカデらしき魔物が出現したため怪我人が続出し討伐は困難となった。

 

 そんな時にハイランド王国で導師が討伐の困難な魔物を次々と撃破しているとの噂を聞き、リスウェルの町長バジルはハイランド王国に導師の派遣を要請を決断した。

 

 だがいざ導師に来てもらうと、バジルはマーリンドの町長ネイフトと同じく失望した。年若いとは聞いていたものの予想とは違い、どこにでも居そうなただの純朴な少年にしか見えなかったのだ。しかもお付きの者は騎士をしているというハイランド王国の王女ただ1人。こちらも若く見るからに経験が不足しており、とても頼りになりそうにはなかった。

 こんな若く経験も未熟そうな男女を信用することはとても出来ず、バジルはこの話は無かったことにさせてもらおうと思ったのだが、そこに待ったがかかった。それがこのリスウェルを拠点に置く商人キャラバン隊『セキレイの羽』だ。

 このセキレイの羽は以前この導師と行動を共にしたことがあり、彼らの実力は把握している。まだ腕は未熟ながらも強さは保証出来、尚且つセキレイの羽がレディレイクに到着する前に早々とマーリンドの疫病を解決してみせたという実績もある。

 特にロゼからは、彼らには幸運(・・)が側についており、商人として絶対に損はしないと念を押されたため、半信半疑ながらも改めてスレイに任せてみることとなった。

 

 だが話はそれで終わらない。

 信用のあるセキレイの羽から太鼓判を押されたとはいえ、大人の傭兵が数十人がかりで討伐に失敗した。このまま導師と王女だけで行かせて万が一何か問題が起き、ハイランド王国との関係が険悪になることは避けたい。そのため優秀な傭兵集団である『木立の傭兵団』と、お互いの顔見知りであり仲介役として『セキレイの羽』から1人導師に同行させることとなった。

 

 そして現在に至る。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

「ルーカスさんとの仲介役とはいえ、ロゼも来て良かったの?」

「ん?」

「ほら、魔物に襲われる危険があるしさ」

 

 歩みを止めないままスレイはロゼを心配する。

 セキレイの羽を護る守護神ことデゼルがロゼについて来ているとはいえ、この山林の中、何処から魔物が襲って来るかわからない。念のためだろうか、ロゼは腰の剣帯に短剣を2つぶら下げているが商人なのでまともに振れないのではないかと思っていた。

 

「大丈夫、大丈夫!木立の傭兵団は破落戸(ごろつき)っぽいけどあれで頼りになるし、スレイ達だっているからね」

「おい聞こえてるぞ」

 

 ルーカスが声を上げるがロゼはあははと笑って誤魔化す。

 

「それにあたしだって護身術程度には剣も使えるしね。剣の腕だけならスレイにだって負けないよ~?」

「確かに、よく使い込まれているように見えるな」

「おっ!さっすがアリーシャ様!よく見ていますね。スレイとは大違い!」

「い、いや、剣の腕なら流石に商人のロゼには負けないと思う!俺だって、小さい頃から剣を振ってたんだし!」

 

 おどけるように笑みを浮かべてふふんと威張るロゼに、スレイはどこか悔しそうな表情を滲ませながら負けじと言い返す。

 

 

 そんな話をしていると、ルーカスが近づいてきた。

 

「さて、場所はこれくらいで良いだろう。導師殿とお付きのお嬢さんには先に言っておく。俺達はあんた達を信用していない」

 

 足を止め、数名の部下に何かを指示して先に行かせた後、ルーカスはスレイとアリーシャに向けて突然そう話しかける。

 

「ちょ、ちょっとルーカス!?いきなり何言って―――」

「お嬢は黙っててくれ」 

 

 口を開こうとするロゼを遮りルーカスは話を続ける。

 

「当然だろう?導師殿の噂は最近耳にしているが、2人共まだかなり若い。それなのに俺達魔物退治の専門家(エキスパート)よりも良い働きが出来るだなんてとても信じられねぇ。何かイカサマをして名声を上げているんじゃないかと疑っちまうんだ」

「僕達がイカサマなんてしている筈がないだろう!」

「まあでも仕方ないんじゃない?天族(わたし達)も見えなければ、自然現象みたいなものを自発的に起こせるだなんて知らないんだし」

「そうですわね~」

 

 ミクリオを始めとして天族の3人は口々に言う。

 ルーカスには天族の声が聞こえない。そしてそのまま、そこでだ、と言って一旦言葉を切る。そしてそれとほぼ同時にスレイ達の進行方向からルーカスの部下が戻って来た。

 

「仕掛けの設置は完了しました。それと、団長の指示通り1体だけ連れて来ました(・・・・・・・・・・・)

「おう、ご苦労。さて話の途中だったな。今聞いた通り、もう間もなくオオムカデが1体こちらにやって来る。もしもイカサマで無いと言うのなら1つ俺等に戦い方を教えちゃくれねぇか?駄目なら俺達が責任持って退治してやるよ」

 

 ルーカスの言葉に反応して周りの木立の傭兵団の者達からも失笑が漏れ聞こえる。

 

 魔物を引き連れて来るなど、悪質にも思える行動だがルーカスの側にも一応の言い分はあった。魔物退治を生業としている彼らにとってはスレイ達はいきなり出て来て仕事を奪おうとする同業者なのだ。国のお墨付きを盾にして好き勝手されては堪らない。今の内から実力を見ておきたかったのだった。

 

 当然のことながら、こんな挑発染みた言葉をかけられてスレイ達も良い気分などしない。だがそれ以上に怒り心頭の者がいた。

 

「ムカつくー!!仕事してない時は酒飲んで遊んでばっかのくせに、こんな時だけ偉そうにしちゃってさ!」

「何でロゼが怒ってるのさ。でもまあ、言葉はキツイけどルーカスさんの言い分もわからなくはないかな。だから俺達がイカサマしてるかどうか、きっちりとその目で確かめてもらおうか」

 

 スレイの挑戦的な言葉にルーカスはにやりと笑う。そうしている間にも地面を擦る音が徐々に近づいてきた。

 

「スレイ、僕達天族は人目があるから極力手伝えない。大丈夫か?」

「大丈夫だって!アリーシャも平気だよね?」

「ああ!」

 

 と、そこでオオムカデが顔を出し、スレイ達を見定めて襲ってきた。

 

「まずは私が!」

 

 そう言ってアリーシャは前へ出る。

 

「旋華!そして、斬華!」

 

 アリーシャは1歩踏み込み、槍を高速で回転させる。するとオオムカデは突き出した頭を弾かれ上を向いた。続いてそのまま勢いをつけて槍の切先で切り上げ、息つく暇も無く横に切りつける。

 

「あとは俺が!落星!」

 

 そしてアリーシャと入れ替わったスレイが、傷つきフラつくオオムカデへ体重を乗せた振り下ろしの一撃を硬い甲殻も気にせず斬り潰した。

 

 

「……ありゃ身体強化か?だがあんな長時間していられる訳が―――」

 

 先程の挑発的な態度とは打って変わってルーカスは2人の戦いぶりを真剣に見つめ、思考しながら小声で独り言を呟く。2人がルーカスの方へ向くと先程の表情に戻した。

 

「これでイカサマじゃないってわかっただろ?」

「……そうだな。まあ、まずまずってところか」

 

 スレイの自信あり気な笑みにルーカスは余裕の笑みをもって返す。

 

「なら今度は俺達『木立の傭兵団』の戦い方を見せるとするか。おい野郎共!!準備は良いか!?」

 

 ルーカスの声に団員は声を上げて応える。そしてルーカスが合図を送ると部下の1人が手に持っていた縄の1本に火を着けた。火はみるみるうちに遠くなり、破裂音がしたかと思うとオオムカデの鳴き声が響き渡った。

 

「あれは何をしたんだ?」

 

 ミクリオが疑問を口にする。

 

「あれは火薬ですね。オオムカデは地中からの攻撃が脅威となる魔物ですので、破裂音で驚かせ地上へおびき出す作戦なのでしょう。まだ縄が何本もあるところを見ると、オオムカデの数を調節して撃破していくようです」

「成程。これが人間の知恵というものなんだね」

 

 アリーシャの解説に納得したミクリオは感心して大きく頷く。

 

 そして程なくして目の色を怒りに変えた3体のオオムカデがルーカス達へと襲ってきた。

 

「ここが正念場だ!盾持ちは踏ん張れぇっ!!」

「「「応っ!!」」」

 

 オオムカデ達は横一列に並んで盾を構える屈強な者達へと突進していく。響く程の衝突音がその力の強さを物語るがしかし、彼らはそれを見事耐え切ってみせた。失速し動きの止まった魔物へ、何重もの太い鎖を巻き付け引き倒し、完全に固定する。

 こうなってしまえば後は楽なものだ。甲殻の隙間に剣を突き刺していき早々と止めを差していった。

 

「これは…、すごいな」

「確かに。俺達には出来ない戦い方だ」

 

 ミクリオとスレイは声に出して素直に感心しきっている。声こそ出さないものの、ライラやエドナも同様だった。

 

「すごいでしょ?傭兵ってのは如何に自分達が傷つかずに、相手の弱点を突いて無力化するかを考えて戦う人間だからね。ちょっと性格に難がある奴ばっかだけど」

 

 スレイの言葉を聞いて、ロゼはちょっと誇らしげに話す。

 

 

 傭兵は常に自らの被害を最小限にするために役割を分担し、創意工夫する。

 

 ルーカスが始めに先へ行かせた部下は斥候の役割を担い、状況の把握や有利に事を運ぶための仕掛けを設置する。皆屈強な体格の盾持ちは魔物の第一撃をその体で受け止め、攻撃する仲間が傷つかないように努める。そのようにして、彼らは堅実に、そして合理的に仕事をこなしていくのだ。

 

 ロゼからすれば、彼らは口が悪くても共に仕事をし生活する、信頼できる良き隣人のようなものだ。そんな彼らを友達に自慢しているような気分であり、ちょっとだけ鼻が高かった。

 

 ひとまず何事も無く魔物を倒して見せたルーカスがスレイとロゼの方へと顔を向ける。その顔は殴りたくなる程に勝ち誇った、満面のドヤ顔だった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

 同じように戦いを繰り返し、順調にオオムカデを退治していく。この場で少数であるスレイ達は殆ど手を出すことが出来ないまま木立の傭兵団の戦いぶりを観察するのみだった。

 

 だが。

 

「団長!()が来ます!」

「まあこれだけ派手にやれば出てこない訳がないよな。導師殿、依頼としてはあんた達の獲物だが、どうする?」

「勿論、俺達が倒す。ルーカスさん達だけに良い格好はさせられないしね」

「そうかい。ならやってみな」

 

 暗に俺達が倒してしまっても良いんだぜ、という笑みを浮かべるルーカスに対し、スレイも負けじと笑みを返す。

 そうこうしている間にオオムカデよりも大きく地面を擦る音が近づいて来た。

 

 その体長はオオムカデの約3倍。隙間無く体を包む甲殻が黒々と光る、憑魔ヨロイムカデ。ヨロイムカデはスレイを敵と認識し突進して襲い来る。

 

「アリーシャ、合わせて!」

「ああ!」

 

 スレイとアリーシャは真正面で憑魔を迎え討つ。

 

「襲牙っ!」

「瞬華!」

 

 スレイの剣撃とアリーシャの突きが叩き込まれるがしかし、ヨロイムカデの強固な甲殻に阻まれ弾かれてしまった。

 

「硬っ!」

「…っ、先程のオオムカデとは段違いだ」

 

 あまりの硬さに手を痺れさせる2人。そこへライラが助言をしてきた。

 

「スレイさん、相手は憑魔ですがムカデなら寒さに弱い筈ですわ!」

「わかった!だったらミクリオ、あれ(・・)やろう!」

「ああ!」

 

 そう言うとスレイは儀礼剣に霊力を流し、それを側に来たミクリオの方へと差し出す。そしてミクリオはその剣に氷の天響術をかけた。剣は淡く薄い水色を纏う。

 

「氷月翔閃!」

「ほう……」

 

 スレイが勢い良く剣を振るとそれは、冷気の斬撃となって憑魔へと飛んで行き凍りつかせて体中を包み込む。憑魔ヨロイムカデは寒さの余り動きを止めてしまった。

 

 

 それは偶然の出来事だった。

 以前魔物を相手にしていた時の事。ミクリオが魔物を狙って放った水の天響術が避けられ、その先にいたスレイの儀礼剣に当たった。そして言葉を交わす余裕もなくスレイに向かってきた魔物へ向けて切り上げる剣技、天滝破を放ったところ、水柱が出現した。

 戦闘が終わりライラに尋ねたところ、スレイの霊力がミクリオの水の天響術に触れたことで一時的に属性が変化したとの答えが返って来た。

 

 スレイの霊力の源はライラの御霊(オーブ)であるため火の属性だと思われるかも知れないが、実は属性が無い。なのでスレイ個人では火をつけることも水を出現させることも出来ない。これは霊力がスレイの体を巡る内に属性が無くなるのか、それとも天族で無いから属性を持たないのか定かではなく、ライラもわからないことだ。

 なお、今までライラがこのことを教えなかったのは単に本気で忘れていただけだった。

 

 

「ライラ!」

「はい!」

 

 ライラの名前を呼んで今度は火の天響術を儀礼剣にかけてもらう。剣が淡い紅色を纏った。

 

「止めだ!太刀紅蓮!!」

 

 力を貯めてからの熱を帯びた強力な突進突きを憑魔に見舞う。動きを止めている氷と共に強固な甲殻を溶かし貫く。そのままの状態から霊力を流し込みヨロイムカデは浄化された。




 グリフレット川が無くなったのでその分名前を流用させてもらいました。
 またスレイの霊力の属性変化ですが、ジアビスのFOF変化のようなイメージで書いています。

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