部屋割り通りに部屋に分かれ、慶は心がぴょんぴょんしていた。
「さぁー栞。こっちゃ来い来い」
「んっ」
で、栞は慶の膝の上に座った。
「よーしよしよしっ。良い子だなー栞は」
頭をワシャワシャと撫でまくる。
「んっ、きもちいっ」
すると、光が慶の膝の上に座ってきた。
「おっ、どした?」
「あ、あたしも!中学に上がってからはやってくれないんでしょ?」
「光……お前、満点……。中学入ってからでもやってやるから結婚しよう」
「だめ!お兄様とけっこんするのは栞!」
「ふおおおおおおお!」
思わず鼻血が出そうになる慶。その時だ。ガラッとドアが開いた。
「けーちゃん!みんなでトランプ……」
岬だった。が、その顔面に枕が減り込んだ。
「死ね!出てけ!邪魔すんな!」
ブフォッと断末魔をあげてぶっ倒れる岬。
「ったく……邪魔しおってからに……」
「トランプ⁉︎あたしもやりたい!」
「えっ」
光が立ち上がった。
「行こ?栞」
「うんっ」
仕方ないので慶もあとに続いた。
*
茜、岬、遥の部屋。
「で、何やんの?」
「大富豪!」
茜が元気良く答えた。
「OK。ボコボコにしてやるよ。どーせなら金賭けようぜ」
「だ、だめだよ!葵お姉ちゃんとかにバレたら怒られるよ⁉︎」
「バレなきゃいいんだよ。あ、もちろん栞と光の分は俺が出してやるからなー」
「うーん……どうする遥?」
「僕は構わないよ。慶兄さんには勝てないけど、僕の能力があれば負けはないからね」
「遥がいいなら私も……」
岬も賛成した。まぁ大富豪での金の掛け方なんて知らないし、あるかどうかも分からないので、みんなで100円ずつ出してくみたいな感じだ。
で、案の定、栞か光が毎回1位になり、慶、遥、茜か岬という順番になった。理由はもちろん、慶が二人を勝たせてるからだ。
「………なんかもうやめよう」
「えーなんで⁉︎儲かってたのに!」
遥の台詞に光が絶望的な声を上げるが、そりゃ完全にゲームをコントロールされちゃ周りはつまらなくなるもんだ。
「それよりさ、枕投げやろ!枕投げ!」
「「やだよ」」
岬が元気よく手を上げたのに対して、遥と慶が冷たく断った。
「なんでよー!」
「疲れるもん」
「そうだよお前。大体、枕投げやって旅館のどっかぶっ壊して母親にメチャクチャ怒られた5年前の夏を思い出せ」
「あー……確かにあれはやばかったねー……」
茜も思い出したように言った。その時だ。茜の顔面にボフッと枕が直撃した。岬が投げたのだ。
「ちょっ……岬!何するの⁉︎」
「えいっ!」
まったく話を聞かずに岬はさらに遥に投枕。が、ギリギリ躱した。
「あっぶな!岬!僕はやらないって言っ……!」
と、言いかけた遥に光が投げた。今度は直撃した。
「はい、ハルくん負けぇ〜」
ずるりと落ちた枕の下から出てきた遥の顔は鬼の形相だった。
「上等だよ!やってやろうじゃないか!」
そのまま枕投げ大会開催!
「お前らほどほどにしとけよ〜」
と、慶は言いながら立ち上がった。巻き込まれないように部屋に帰るためだ。だが、その慶のお尻に枕が可愛くポスっと当たった。振り向くと、栞が悪戯っ子の顔で言った。
「けーちゃん、あうと」
「お、おいおい冗談キツイぜマイシスター。俺に枕投げを挑むなんてザクがクアンタに挑むようなもんだぜ」
だが、栞はニコニコしている。すると、慶の背中にポスッと枕が当たった。
「あ?」
振り返ると、光が立っていた。
「みんな!今こそけーちゃん倒すチャンスだよ!」
光の合図で五人はザッと並ぶ。それに慶は「ふはっ」と笑う。
「一応、確認しとくけど、命は全員一つずつでいいんだよな?」
「そだよ。ま、この人数に勝てるわけないけどね」
茜が自慢げに言った。
「はっ、五人?少な過ぎだろ、それじゃ」
その瞬間、遥の顔面に枕が減り込んだ。
「んなっ……⁉︎ま、まったくモーション無しで……⁉︎」
「は、遥!」
思わず遥の方を振り返った茜と岬の間にいつの間にか慶は立っていた。
「「えっ」」
そして、スパパァンッ!と音を立てて二人に枕を叩きつけた。残り、光と栞のみとなった。が、圧倒的な慶の強さに二人は完全にビビってしまっている。
(ビビってる栞たんと光たん萌え)
と、思いつつ、慶は豪快に言い放った。
「ふはははっ!恐怖と後悔をするがいい!この俺に枕投げを挑んだことを後悔するがい………」
「何やってるの?」
ゾクっとする声が響いて、振り返ると葵が立っていた。
「あ、葵……」
「6人とも、分かるわよね?」
「「「ごめんなさい……」」」
気絶してる三人以外はとりあえず謝った。