俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第41話

 

 

 

体育祭の季節になった。あ、ちなみに能力の使用は禁止である。あと茜と慶は赤組、奏と修は白組だ。

 

「いいかぁー!櫻田さんの為にも絶対に勝つぞおおおおおおおおおッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

『ウオオオオオオオオオオオオッッッ‼︎‼︎‼︎』

 

福品の掛け声に慶以外の全員が拳を突き上げる。その隣で顔を赤くして俯く茜。

 

「はぁ……。どうしてこんなテンションなんだろうみんな……」

 

「まぁまぁ、頑張ろうよ茜」

 

肩を落とす茜の隣に行って、ポンっと肩を叩く花蓮。

 

「それに、あそこでパズドラやってるあんたの弟がいれば勝てるでしょ」

 

花蓮の視線の先にはぐんまコラボを周回している慶の姿があった。

 

「そーだね。なんだかんだ負けず嫌いだもんけーちゃん」

 

そんなわけで、開会式。奏生徒会長の心温まる挨拶の間も慶はパズドラに夢中だ。で、ラジオ体操。それでも慶は微動だにせずパズドラをやっていた。体育教師に引き摺られた。体育館裏で怒鳴られた。

 

 

 

 

第一種目。徒競走だ。誰も出ないのでスキップ。第二種目、一年生による綱引きだ。先頭にいるのは茜。その後ろに並ぶ慶が茜に言った。

 

「茜、能力使えよ」

 

「ダメだよ。正々堂々!」

 

言われて、慶はペッと唾を吐き捨てる。そんなわけで、両チームが綱の上に立つ。

 

「けえええええいッ!頑張れえええええええッッ‼︎‼︎」

 

「奏、うるせぇ。あとチームが違ぇぞ」

 

全力で応援する奏にスパッと言い放つ修。で、パァンッと音を立てて綱引きが始まった。

 

「ッッッ」

 

「ふんぬぉおおおおおおおお!」

 

静かにひっぱる慶と喧しい茜。だが、慶の力は強くともクラス全体は引っ張られている。

 

「チィッ、仕方ない。福品、一秒だけ頼む」

 

「へ?お、おう」

 

後ろで引っ張っている福品に慶は言い放つと、前で引っ張っている茜のズボンを下ろした。

 

「えうっ⁉︎」

 

『ッッ⁉︎』

 

敵のクラスの前の方で見えた奴全員は顔を真っ赤にし、固まった。

 

「今だ、引っ張れ!」

 

さらに慶の号令で味方チームは思いっきり引っ張った(福品、茜以外)。

 

「キャアァァァァァァッッ‼︎‼︎」

 

茜が急いでズボンを上げる中、試合終了のピストルが鳴り響いた。

 

 

 

 

「けーちゃんのバカ!最ッッッ低!」

 

さっきから怒っているのは茜だ。慶は携帯を弄りながら言った。

 

「だから悪かったって。勝つためには仕方なかったんだよ」

 

「だからって普通脱がす⁉︎」

 

「他に良い方法が思い付かなかったんだよ。今度パフェ奢るから許して」

 

「私のパンツはパフェ以下か⁉︎」

 

「じゃあジャンボパフェ」

 

「サイズの問題じゃないわよ!」

 

なんてやり取りはしばらく平行線を辿り、結局遊園地栞と茜のチケット奢りで済むことになった。なんてやってると、二年の騎馬戦が始まった。

 

「っと、始まったか。じゃ、俺は席外すわ」

 

「ど、どこ行くの?」

 

「ちょっとな……」

 

返事を濁すと慶はスナイパーライフルを取り出した(麻酔銃)。で、校舎の屋上に登り、白組の鉢巻をしている奴に狙いを定めた。

 

「安らかに眠れ」

 

パシュッと音を立てて奏を撃ち抜いた。それを見た修がため息をついて瞬間移動した。

 

「よしっ、続いて二人目……」

 

と、言いかけた慶の頭をぽかんと殴り、スナイパーライフルを取り上げる修。

 

「馬鹿かお前」

 

「いってぇなこの野郎」

 

「そういう事はよせよ。これは没収な」

 

スナイパーライフルはシュンッと消滅した。

 

「あっ!てめっ……」

 

「じゃあな」

 

そのまま瞬間移動で修は逃げた。

 

 

 

 

「アホ!バカ!死ね!カス!ゴミ屑!」

 

「いや言い過ぎだろ!」

 

目が覚めた奏になじられてるのは慶だ。

 

「あんたね、普通騎馬戦で狙撃する?バカなの?」

 

「騎馬戦の文字には『戦』って文字が書いてあんだろ。これ即ち戦争だ。それなら狙撃くらいあってもおかしくねぇだろ」

 

「理論が飛躍しすぎよ!」

 

「まぁ気持ちいいくらい見事に当たったし、奏に当てられたし、俺は満足だぜ」

 

「結局、私に当てられたから満足しただけじゃない!」

 

などというやり取りも平行線を辿り、遊園地デート一回で許された。

 

 


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