体育祭の季節になった。あ、ちなみに能力の使用は禁止である。あと茜と慶は赤組、奏と修は白組だ。
「いいかぁー!櫻田さんの為にも絶対に勝つぞおおおおおおおおおッッッ‼︎‼︎‼︎」
『ウオオオオオオオオオオオオッッッ‼︎‼︎‼︎』
福品の掛け声に慶以外の全員が拳を突き上げる。その隣で顔を赤くして俯く茜。
「はぁ……。どうしてこんなテンションなんだろうみんな……」
「まぁまぁ、頑張ろうよ茜」
肩を落とす茜の隣に行って、ポンっと肩を叩く花蓮。
「それに、あそこでパズドラやってるあんたの弟がいれば勝てるでしょ」
花蓮の視線の先にはぐんまコラボを周回している慶の姿があった。
「そーだね。なんだかんだ負けず嫌いだもんけーちゃん」
そんなわけで、開会式。奏生徒会長の心温まる挨拶の間も慶はパズドラに夢中だ。で、ラジオ体操。それでも慶は微動だにせずパズドラをやっていた。体育教師に引き摺られた。体育館裏で怒鳴られた。
*
第一種目。徒競走だ。誰も出ないのでスキップ。第二種目、一年生による綱引きだ。先頭にいるのは茜。その後ろに並ぶ慶が茜に言った。
「茜、能力使えよ」
「ダメだよ。正々堂々!」
言われて、慶はペッと唾を吐き捨てる。そんなわけで、両チームが綱の上に立つ。
「けえええええいッ!頑張れえええええええッッ‼︎‼︎」
「奏、うるせぇ。あとチームが違ぇぞ」
全力で応援する奏にスパッと言い放つ修。で、パァンッと音を立てて綱引きが始まった。
「ッッッ」
「ふんぬぉおおおおおおおお!」
静かにひっぱる慶と喧しい茜。だが、慶の力は強くともクラス全体は引っ張られている。
「チィッ、仕方ない。福品、一秒だけ頼む」
「へ?お、おう」
後ろで引っ張っている福品に慶は言い放つと、前で引っ張っている茜のズボンを下ろした。
「えうっ⁉︎」
『ッッ⁉︎』
敵のクラスの前の方で見えた奴全員は顔を真っ赤にし、固まった。
「今だ、引っ張れ!」
さらに慶の号令で味方チームは思いっきり引っ張った(福品、茜以外)。
「キャアァァァァァァッッ‼︎‼︎」
茜が急いでズボンを上げる中、試合終了のピストルが鳴り響いた。
*
「けーちゃんのバカ!最ッッッ低!」
さっきから怒っているのは茜だ。慶は携帯を弄りながら言った。
「だから悪かったって。勝つためには仕方なかったんだよ」
「だからって普通脱がす⁉︎」
「他に良い方法が思い付かなかったんだよ。今度パフェ奢るから許して」
「私のパンツはパフェ以下か⁉︎」
「じゃあジャンボパフェ」
「サイズの問題じゃないわよ!」
なんてやり取りはしばらく平行線を辿り、結局遊園地栞と茜のチケット奢りで済むことになった。なんてやってると、二年の騎馬戦が始まった。
「っと、始まったか。じゃ、俺は席外すわ」
「ど、どこ行くの?」
「ちょっとな……」
返事を濁すと慶はスナイパーライフルを取り出した(麻酔銃)。で、校舎の屋上に登り、白組の鉢巻をしている奴に狙いを定めた。
「安らかに眠れ」
パシュッと音を立てて奏を撃ち抜いた。それを見た修がため息をついて瞬間移動した。
「よしっ、続いて二人目……」
と、言いかけた慶の頭をぽかんと殴り、スナイパーライフルを取り上げる修。
「馬鹿かお前」
「いってぇなこの野郎」
「そういう事はよせよ。これは没収な」
スナイパーライフルはシュンッと消滅した。
「あっ!てめっ……」
「じゃあな」
そのまま瞬間移動で修は逃げた。
*
「アホ!バカ!死ね!カス!ゴミ屑!」
「いや言い過ぎだろ!」
目が覚めた奏になじられてるのは慶だ。
「あんたね、普通騎馬戦で狙撃する?バカなの?」
「騎馬戦の文字には『戦』って文字が書いてあんだろ。これ即ち戦争だ。それなら狙撃くらいあってもおかしくねぇだろ」
「理論が飛躍しすぎよ!」
「まぁ気持ちいいくらい見事に当たったし、奏に当てられたし、俺は満足だぜ」
「結局、私に当てられたから満足しただけじゃない!」
などというやり取りも平行線を辿り、遊園地デート一回で許された。