俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第40話

 

 

 

とある日の夜中。夜中の2時。慶はゲームをやっていた。

 

「っし、ボス倒した……。って、もうこんな時間か」

 

目覚まし時計を見ながら呟いた。隣のベッドの茜はすでに寝息を立てている。

 

「切りいいしここでやめとくか……」

 

そう判断すると、布団の中に潜った。だが、

 

「歯ぁ磨いてねぇや……」

 

そう思い出すと慶は立ち上がった。で、洗面所に向かい、歯をシャコシャコする。ふと何かの気配がした気がして、扉の向こうの風呂場を見た。ピチャッと水滴が落ちた気がした。

 

「……………いや、ねぇって。ねぇよ。大体、歳いくつだと思ってんだ」

 

そう思いながら鏡を見ながら歯を磨く。鏡の中の自分を見ながらシャコシャコしてると、自分の後ろに誰か黒い影が映った気がした。内側からズコッと頬に歯磨きが刺さり、止まる。

 

「……………疲れてんなこれ。間違いなく赤疲労だわこれ。やべーよ轟沈するよこれ」

 

で、気を紛らわすためにリビングへ向かった。で、電気をキッチンまで全部つけてシャコシャコする。

 

『逃げられると思うなよ……』

 

「ッ⁉︎」

 

そんな声が聞こえた気がした。

 

「む、無音はつまんねーよな。いや別に怖いとかじゃなくて……」

 

そう決めると、慶は少しでも気を紛らわすため、テレビをつけた。その瞬間、

 

『お前の後ろにだぁぁぁああああああッッッ‼︎‼︎‼︎』

 

「ギャアァァァァァァァァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

テレビに頭と目から血を流して白い顔をしている女が映り、反射的に自分の後ろに裏拳をブン回した。だが、誰もいない。ハァハァと息を乱していると、テレビから声がした。

 

『と、このように呪われる場合があります。殺人はやめましょう。警視庁からでした』

 

「どんなCMゥッ⁉︎広告するほどこの街治安悪くねぇだろ!お前らが呪われろ!今すぐ呪い殺されろ!」

 

で、ハァーッハァーッと呼吸を整え、テレビを消した。

 

「んだよコンチクショウ。もういい寝る。それがベストだこの野郎。警視庁め、明日親父にチクってあのCMやめさせてやる」

 

言いながら慶はリビングだけじゃなく、廊下まで電気を付けっ放しにして洗面所に入った。

 

「……………」

 

念のため、風呂場の電気もつけて、さっさとうがいをすると、つけた電気は消さないで自分の部屋に戻った。

 

「……………流石に自室の電気までつけたら眠れねぇや」

そう判断すると、慶は自分のベッドに入る。そして、目を閉じた時だ。

 

『お前の後ろにだぁぁぁああああああッッッ‼︎‼︎‼︎』

 

「ッッ⁉︎」

 

急いで目を開けて振り返るが、誰もいない。

 

「……………俺ってもしかして霊感あるのカナー……」

 

背筋に冷たい汗が流れた。そして、ゲームをつける。ボス撃破後のムービーでも見て気を紛らわそうと思ったからだ。

 

『………っし、これでこの町は大丈夫だな』

 

『ああ……やったな……でも、本当に大丈夫か?やつがこの程度で終わるとは思えないんだが……』

 

『大丈夫だって。奴の死体もそこに……何っ⁉︎』

 

『奴の死体が消えた⁉︎一体何処に……』

 

『お前の後ろにだぁぁぁああああああッッッ‼︎‼︎‼︎』

 

『『ギャアァァァァァァァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎』』

 

「ギャアァァァァァァァァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

思わずゲームの画面を叩き割った。で、ゼーハーと呼吸を整える。

 

(間違いない……。俺、呪われてるッ!)

 

そう判断し、慶はチロッと茜の方を見た。で、ツンツンと肩を突く。

 

「あ、茜さぁ〜ん……」

 

「………………」

 

「お願い、起きてぇ?」

 

「……………んにゃっ、何ぃ………?」

 

「そ、その…一緒に寝てほしいなぁーなんて……」

 

「はぁ…………?何を馬鹿言ってるの………?大体、今何時だと………」

 

「お願い……。じゃないと俺、呪い殺されちゃうよ……『お前の後ろだぁーっ!』みたいな……何も言ってないのに後ろからバッサリ何もかも持ってかれちゃうよー……」

 

「何言ってんの……?分かったよ、おいで?」

 

「ほんとごめん……」

 

「ん」

 

で、同じベッドの中に入る。

 

「にしてもどうしたの?急に……」

 

「いや……ちょっと、な……」

 

と、これまでの事情を説明する。

 

「あははっ、考え過ぎだよけーちゃん。まぁ怖かったなら甘えさせてあげるから、おいで?」

 

言いながら微笑む茜。その笑顔が余りに優しく見えたもんだから、慶は気恥ずかしくなって背中を向けた。

 

「う、うるせっ。おやすみ」

 

「うん、おやすみ」

 

言いながら茜は優しく後ろから慶を抱き締めた。普段なら拒絶するが、今はそれによって恐怖が緩和されていったもんだから、慶はそのまま身を茜に預けた。その時だ。

 

「けーちゃん」

 

「ん?」

 

「ようやく後ろを見せたな」

 

ニヤリと口を歪ませる茜。慶がゾクッとして後ろを見ると、テレビで見た顔の白い女の顔があった。

 

「ギャアァァァァァァァァァァァッッッ‼︎‼︎‼︎」

 

と、いう夢を見て結局一睡も出来なかった。

 

 


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