俺だけ能力を持ってない   作:スパイラル大沼

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第15話

 

 

 

そんなこんなで、強盗に入られました。慶は困った表情を浮かべながらも落ち着いてエスカレーターの陰に葵と一緒に隠れていた。

 

(奴ら、こんなデパートなんか占拠してどうするつもりだ?身代金を目的か?いや、デパートを占拠するのに五人だけってのは少な過ぎる。いや、この際目的はどうでもいい。奴らをどうするかだな。拳銃を持ってる以上は穏便には済ませられないだろう。この客の数だとあいつらの拳銃の腕がどうあれ誰かには当たるだろうし……クソッ、リア充どもが。だからクリスマスは嫌いなんだ。死ね)

 

と、ボヤきつつも慶は強盗を見た。

 

(考えるのめんどくせーな。もうここで大人しくしてるか)

 

そう思って慶はふぅっと息をついた。

 

「何か思いついたの?」

 

葵が聞いてきた。

 

「逆だ。考えるのメンドクセーからほとぼりが冷めるまで待機。どーせ監視カメラで何処に逃げようと後を追える」

 

「そっか……」

 

「奴らの目的にも寄るんだけどな。身代金とかじゃなくてもっと……こう、テロリストみたいな目的だったら話は別だ」

 

「テロリストみたいって?」

 

「『この国のやり方に意義を反するー!』みたいな?そういうのだったら自由にはさせられないな」

 

「そうね」

 

「ま、変に暴れたりしなけりゃ撃ってはこないだろ」

 

そう言って2人はエスカレーターの裏で一息つく。慶は気付かれないように写真を撮った。

 

『強盗なう☆』

 

で、Twitterに投稿。すると、隣の葵がふるふると震えてることに気付いた。

 

「………怖いのか?」

 

「当たり前よ。こんな状況で落ち着いていられるわけがないわ」

 

「…………俺、落ち着いてる」

 

「慶が異常なだけよ」

 

言われて慶はため息をついた。すると、「次は二階を制圧するぞ」と、声がした。

 

「! 上には岬が……!」

 

声を上げる葵。その瞬間、ニイッと笑う慶。

 

「作戦変更だ」

 

「え?」

 

「制圧するのは俺の方だ」

 

すると、後ろからどたどたと足音が聞こえた。強盗が五人、エスカレーターに向かってきた。その瞬間、慶はバッと飛び出て先頭の奴の顎に拳を叩き込んだ。

 

「⁉︎」

 

「な、なんだお前……っ!」

 

そう言うと残りの強盗は拳銃を向ける。慶は殴った奴の拳銃を奪うと、そいつの背中をドンッと強盗に向けて押した。仲間が前に出されたため、撃てない。その隙を見て、慶は懐に潜り込んで、更に前の奴の拳銃を握る拳を払い、さらに腹パンを決めた。

 

「てめっ……!」

 

と、殴られた奴が声を上げるが、その頭を浮かんでエスカレーターの取手に叩きつけた。

 

(こいつら……撃って来ないところを見るとやっぱ拳銃なんて使えねぇのか。なら、この間合いは俺のものだ)

 

そう判断すると、さらにもう一人にあっという間に近付いて袋叩きにした。そのまま拳銃を奪った時だ。

 

「動くなッ!」

 

その声が響いて、慶は残りの2人に銃口を向ける。敵のうちの1人は慶に拳銃を向け、もう一人は葵の首に手を回し、こめかみに拳銃を突き付けていた。

 

「!」

 

「この女がどうなってもいいのか?」

 

「お前、そいつが誰だか分かってる?」

 

「はぁ?誰でもいいだろ」

 

慶に聞かれるが、強盗はシレッと答えた。が、もう一人の強盗が「あっ」と声を上げた。

 

「おっ……おまっお前っお前それ……お、お前……お前………」

 

「あ?お前お前言い過ぎだろ。なんだよカス」

 

「そ、その人………」

 

「あん?」

 

言われて、銃を向けてる奴は葵を見た。

 

「あっ……」

 

「離れた方がいいぞ。現時点で一番人気の人だ。お前ら社会的に死にたいの?」

 

慶が言うと、強盗はダラダラと汗を流す。

 

「さっき、Twitterでお前らの写真ばら撒いたし、警察いつ来るかわからんよ?どうするよ。今のうちに自首するなり巣に帰るなりしたほうがいんじゃね?」

 

慶がそう言うと悩む強盗2人。

 

「じ、じゃあ……帰ります……」

 

「なんか悪いね」

 

「いえいえ」

 

そのまま強盗は倒れた奴らを背負って帰ろうとした。その時だ。

 

「逃がすかァッ‼︎」

 

慶が片方のの背中にドロップキックした。

 

「んなっ……て、てめっ嘘だろ⁉︎」

 

と、言った奴の背後を取ってバックドロップした。周りの客や葵が思わず半眼になる中、慶は気絶する強盗に言った。

 

「敵に背中を向けるとか、論外」

 

 

 

 

そんなわけで、無事に三人は帰宅した。

 

「ただいま」

 

「ただいま〜!」

 

「ただいま」

 

慶、岬、葵が挨拶をした。岬と慶は先に部屋に入る。そして、「いいよ〜」の声。葵が中に入ると、パンパンパンッ!とクラッカーの音がした。

 

『葵お姉様、誕生日おめでとう〜‼︎』

 

そんなわけで、誕生日会が始まったのだった。

 

 


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