はよ刀剣書けやと自分で思ってます
西暦2045年。奴らは初めて観測された。
日本近海を哨戒していた海上自衛隊のイジース艦が観測した謎の生物は人とはかけ離れた姿形をしており、現代の技術の枠を集めた鋼鉄の船をたった一時間で葬り去った。
イージス艦が沈む直前に送られた画像と音声データから、日本政府は謎の生物を深海から現れたと断定。そのことから“深海棲艦”と呼称する様になった。
深海棲艦が初めて観測されたその日に、同時多発的に世界各地でも深海棲艦の姿が見られた。
太平洋から地中海、インド洋、南西諸島……海と名のつく場所に、深海棲艦は出現し、そこに船があるならば沈め、陸に近ければ対地砲火を行い、一帯を焦土にした。
制海権を奪われた人類は深海棲艦に対し、砲撃、爆撃、雷撃……ありとあらゆる手段を用いて、反抗しようとした。時にはタブーとされていた核ミサイルまでも用いて、攻撃を行った。
しかし、どれも効果はなかった。
装甲と呼ばれる障壁が深海棲艦を攻撃から守り、その障壁は一番下位の存在と思しき駆逐級のものすら、核の熱に耐えた。
もう、駄目だ。
誰もが絶望し、反撃の手を止めた。
勝てるわけがないと、誰もが嘆き、泣き叫んだ。
だが、それでも諦めなかった人がいた。
敷島型戦艦の名を名乗る少女たちを擁する“軍”と自称する組織が、世界で初めて深海棲艦を撃沈することに成功した。
それは、観測された日から二年後のことだった。
少女達は“艦娘”と呼ばれ、艤装と呼ばれる謎の装備を身につけ、イージス艦以上の深海棲艦に対する攻撃力を持っていた。
政府は軍と艦娘の有用性を認め、深海棲艦との攻防に関する一切の権利を認めた。
まず、最初に軍が行ったことは艦娘の開発方法と運用例の開示だった。
深海棲艦とも異なる謎の生物……通称、妖精さんのオーバーテクノロジー過ぎる技術力により生まれた古の戦船をモデルとした艤装と適合した女性。それが艦娘だ。
軍は魂だの前世だの、オカルト的な要素は信じなかったが、艦娘となった女性(あるいは少女)には自分の艤装の元となった艦の記憶とも言うべきものがあった。かつての日本海軍の工廠で生まれたその日から、沈むその日までの記録に残らなかった些細なことまで、彼女らは言ってみせた。
艤装に適合できる女性は少ない上に、一度沈めば艤装は失われ、二度とその艦娘は戦うことが出来なくなる……つまり、量産は不可能ということだ。
そして、その情報は軍の一部以外に開示されていなかった。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
抜かった。少女は詰まる呼吸の中で、小さく吐き捨てた。
航行能力は既に失われ、浮砲台の方がまだましだろうという状態だ。まだ生きているのが奇跡だと、少女自身も理解していた。
砲撃が直撃した脇腹が痛みを通り越して、赤くなるまで熱せられた鉄を押し付けられているようだ。頭が上手く回らない、ついでに呼吸も上手くできない。最悪だ。
「最期二言ウコトハアルカ? 艦娘」
セーラー服にビキニの様なものを着た深海棲艦は少女に照準を合わせた。
既に濁り始め、焦点の合わない目で、少女は深海棲艦を睨んだ。紅玉の様に光り輝いたであろう目は深い憎悪が渦巻き、黒ずんだかの様に鈍く光った。
死に損ないがと、深海棲艦は酷く冷たい目で少女を睨んだ。
艤装の約4割が破損し、深海棲艦を相手取るどころか、離脱することも不可能な少女を殺すことなど、赤子の手を捻るより簡単なことだ。ただ、自分の意思で16inch三連装砲を打てば、少女の頭は脆く吹き飛ぶ。それだけのことだ。
どうしようもない、絶望的な状況。
だが、たった一発の砲弾が
このどうしようもない状況を覆した。
「クソッ‼︎ マタ貴様ラか‼︎‼︎」
降りかかる砲弾に、深海棲艦は忌々しげに吼えた。
暁の水平線の彼方から現れた、艤装を纏った艦娘達の内の一人は右手を振り払った。
「全主砲、斉射ッ‼︎ てーーッ‼︎‼︎」
大胆でありながら、繊細で、緻密な計算の上で成り立つその砲撃は深海棲艦の近くにいた少女にかすりもせずに、深海棲艦に直撃させてみせた。
惚れ惚れする様な、美しい攻撃だ。少女は痛みすら忘れて、魅入った。
「クソォッ……‼︎ マダダ、マダダァッッ!!!!!!!!!」
「いいえ」
青い血を流しながら、絶叫する深海棲艦。しかし、その声は涼やかな少女の声に遮られた。
「ッ!!!?」
「あなたはここで、今、沈むのよ。私の妹を傷つけた報いを受けて‼︎」
青混じりの長い黒髪が風になびく。
左弦の雷撃戦の構えに移行した艦娘は柳眉を逆立て、怒りの表情だった。その迫力は戦艦にも勝るとも劣らないものであった。
「ちょっと揺れるから、痛いかも。我慢してね?」
「あな…た……は………? ッ…!」
突如と訪れた浮遊感。背中に回された腕は温かく、少女にとっては初めての感覚であった。
生まれて初めて、触れた人の優しさに少女の警戒心は緩く解けてった。そして、安堵感が体を支配し、急に眠気に襲われた。
嫌だ、まだ目を閉じたくない。少女は睡魔に抵抗しようとしたが、優しい声に遮られた。
「いいのよ、初月。もう、眠ってしまっても」
優しい、優しい声だった。
その声を、私は今でも覚えている。
私は木曽嫁なのですが、秋月型も大好きです
実はこのプロローグだけでも、一ヶ月以上かけて書いてます
途中で照月が実装されて、ほぼ完成しかけていたデータを消して……とか色々やってました
自分の設定では照月はショートパンツでした