幻想転生記   作:黒崎竜司

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第⑨話

どうも臨人です。あの後、家に帰って荷物の整理を始めておこうと思ってあの武器部屋に行こうとしたら、部屋があった壁に手紙が貼ってあった。あぁ、またか。次はなんだろうか…そう思って手紙を手に取った。

『久しぶりじゃの。わしじゃ。そっちの世界でお主が武器と能力を使いこなしたのを確認したからのう。この武器庫は撤去させてもらった。もしまた必要なら、棚の上の腕輪に気を流してくれ。じゃあの。二度目の生をしっかり謳歌してくれ。』

と書いてあった。あの神は…でも、生前の知識も合わさって武器の形と名前はもう完全に一致するので、能力で出せる。一応、保険としてその腕輪は持っておくか…

 

手紙の確認を終えた俺は、部屋の棚を見た。そこには、だいぶ前からあったかのように青い腕輪が置いてあった。

 

「とりあえず着けるか。」

青い腕輪を手に取り右腕に着ける。着けていても違和感がない分、さすが神の贈り物だ。

それはそれとして、荷物どうしようか…そう思っていると、急に転生の時聞いた声が聞こえてきた。

 

(久しぶりじゃのう。儂じゃ。)

(この声…神か…)

このセリフ、実は一回言ってみたかった。

(そうじゃ。しかし、驚かないんじゃな。)

(この都市で暮らしてる間に超技術なんかいくらでもみてきたからな。)

 

都の技術にはいつも驚かされてばっかりだった。会議に参加するようになってからもらった端末で永琳さんに連絡しようとしたら、端末から某カードゲームのアニメの如くソ○ッドビ○ョンみたいなやつで永琳さんが出てきた時が一番ビビった。

 

(ほう、月に引っ越しか。なかなか面白いこともあるもんじゃ。)

(面白いって…)

(お主、別の世界に引っ越してるんじゃぞ?)

(そりゃそうだけどさ…)

 

転生って考え方によっては確かに引っ越しだな。

 

(月に行くときの荷物について悩んでおるのか?)

(そうだよ。あんな荷物になるとは思ってなかったんだよ。)

(なるほどのぅ。なら、その辺は儂が何とかしておこう。)

(できんのか?)

(儂に任せよ。)

(わかった。)

 

これで、不安だが荷物の問題は何とかなった。

 

(ところで、この交信ってどうやったら解除できるんだ?)

(必要ないとお互いが思えば勝手に切れる。)

(そうか。)

 

何ともテキトーな感じである。

 

(じゃあ今回はもういいかの。)

(そうだな。)

(じゃあの。)

こうして、神との交信が途絶えた。

 

「さて、荷物の問題もどうにかなったし、外回りでも行くか。」

荷物の問題が思ったより早く終わり、時間が余ってしまったのである。なので、暇つぶしついでに軽く仕事をできればいいな、なんて思ってる。

 

「そうと決まれば準備するか。」

外に出るため準備をする。

「秘封倶楽部はどうなったんだろう…」

俺が生前入っていたサークルだ。オカルトに興味のある宇佐美蓮子とマエリベリー・ハーンの二人でやっていて、俺と竜也も何回か一緒に活動させてもらっていた。

「なんで転生の時、思い出せなかったんだろう?」

なぜ今になって思い出すのかが疑問だが、思い出せないよりはマシだろう。じゃなくて、なんであの瞬間に思い出せなかったんだろう?

 

(それは、転生の時は他人についての記憶が薄くなるからのう。)

(そうなのか。)

神がいきなり交信をONにした。

(転生の時に他人についての記憶を持っているのはとても珍しくての。)

(あんたは俺以外の人間を転生させたことってあるのか?)

少し気になったので聞いてみる。

(もちろんあるぞい。)

(そーなのかー)

(もう少し反応してくれんかのう…)

(いや、半分予想がついてたから)

(嘘でも驚いてほしかった…)

(この世界にあんたが送ったのは何人だ?)

これは聞いておかないとあとで苦労する。

(他の奴はおらんよ。この世界では今はお主だけじゃ。)

(何…だと…)

(これで驚くのか…)

(今はってことは後で何人か来るのか?)

(お主…転生の前に自分で言ったことを忘れておるのか?)

(竜也か)

(その通りじゃ)

(他は?)

(他は特にないのぅ。)

(ないのか…)

(用はそれだけかの?)

(おう。じゃあな。)

再び神との交信を切って準備を再開する。それにしても、転生の時には他人についての記憶ってなくなるのか…なんかそれって寂しいな…

 

「考えてたって仕方ない。過ぎたことは戻ってこないんだから。」

準備が終わり、そう呟いて外に向かった。

「元気にしてるといいな…」

小さく呟いて外に出た。

 

「こことももう少しでお別れか…」

そんなことを口に出してしまう。月に移住したらもうここには戻れないだろう。俺だけが戻れたとしても、この風景は見れないだろう。町の人が買い物をしていたり、甘味処のようなところで笑い話をしながら甘味を食べていたりという日常の風景が見れるのもあと数日なのだ。

 

「さて、行きますか…」

あと何回できるか分からない外回りに出発した。

 




最後が強引かな…

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