特別短編
俺は川神臨人だ。今日は竜也の誕生日ってことで皆を呼んで俺の家で誕生日パーティーをしようと思っている。呼んだメンバーは竜也、蓮子、メリーの三人だ。まぁ、いつものメンバーだ。
しばらく待っていると、部屋のインターホンの音が鳴った。受話器を手に取り、
「はい、川神です」
「臨人か。俺だ。竜也だ」
「おぉ、竜也か。ちょっと待ってろ」
どうやら、竜也が来たらしい。竜也を出迎えるために玄関のほうに行く。ドアを開けてみると、竜也がいて、
「よっ。誕生日おめでとう」
「おう。サンキュ」
「まぁ上がってけよ」
「おう」
軽くお互いに喋って部屋の中に入る。
「さっきも言ったかも知んないけど、誕生日おめでとう」
「おう。ありがと」
さっきと同じ内容の会話を交わす。
「しかし、誕生日パーティーか…何するんだ?」
「まぁまぁ、こっちでいろいろ考えてあるから心配すんなって」
「お前の考えは結構壮大だからな…心配だ…」
竜也が心配してくる。
失敬な。今までやったことといえば、俺と竜也とクラスメイト数人で俺の部屋をつかったパイ投げ大会(掃除は竜也以外の全員でやった)とか、クラスの楽器ができる奴を集めて演奏会したぐらいだろ。
「今年も期待してな」
「まぁ、期待しとくさ」
そんな感じで三十分ぐらい話をしていると、またインターホンの音が鳴った。
「お、来たか」
「そうみたいだな」
そう呟いて受話器をとる。
「はい、川神です」
「やっほ~、蓮子様だよ~」
「遅くなって申し訳ないわね。メリーよ」
「二人とも来たか。ちょっと待っててくれ」
竜也が来たときと同じように玄関に行く。そして、玄関のドアを開けると、
「あ、臨人じゃな~い。もう準備できたの?」
「臨人のことだから、蓮子みたいに準備不足は無いと思うわよ?」
「う~、何よメリー、あのことをまだ根に持ってるの?」
「あら、私は事実を言ったまでよ?あのことについては何も言ってないわ」
二人の言う「あのこと」とは、蓮子がメリーの誕生日に俺の真似をして壮大なサプライズをしようとしたのだが、準備不足で失敗したということである。内容はここでは言わないが、結構大きなものになる予定だったらしい。
「まぁまぁ、立ち話もその辺にして、二人とも上がって上がって」
「そうね。お言葉に甘えさせてもらうわ」
「そうしましょうか。ここで喋ってても竜也を待たせるだけだしね」
そう言って三人で部屋の中に入る。
「それじゃ、ちょっと待っててくれ。今いろいろと持ってくる」
そう言って俺はその場をいったん離れ、キッチンへ向かった。
別室のキッチンに着き、いろいろ準備していたものを探す。(とはいっても、ここでは料理ぐらいだけど)
「えっと、あれとこれと、これか」
用意してあった料理を大きめのトレイに乗せて運ぶ準備をする。
(あれは…後でいいか…)
とりあえず、トレイに乗ってる料理を運ぶ。
「おまたせ~」
料理を運ぶと三人が
「相変わらず凄いな。お前は」
「臨人の料理って話は聞いてたけど凄いのね」
「臨人~これから私専属の料理人にならない?」
上から竜也、メリー、蓮子である。
「そりゃ、一人暮らししてりゃこの位は普通だろ」
「いや、一介の料理人レベルだろこれ」
今、竜也の目の前には、俺と竜也の高校の修学旅行で泊まったホテルで出されたコース料理と同じものが並んでいる。(全部臨人一人で作りました。)
「これは…普通じゃないわね…」
「何か…女子として負けた気がするわ…」
蓮子とメリーの前にも同じものが並んでいる。
「全部並んだか?」
俺は全部並べた後に、しっかり確認を取る。
「大丈夫よ」
「ええ、問題ないわ」
「あぁ、揃ってる」
三人とも問題ないと返事か来た。
「しまった。ちょっと待っててくれ。今飲み物とって来る」
「わかった(わ)」
三人揃って返事が来る。何か面白いなこれ。
再びキッチンにきて、冷蔵庫の中にあるシャンパン(ノンアルコールです)を二本取り、食器棚にあるコップを4つ持ち、皆の元ヘ向かった。
「ほい、飲み物」
「サンキュ」
竜也にコップを渡し、シャンパンを注ぐ。
「ほい、お二人さんも」
「ありがとう」
「ありがと~」
蓮子とメリーにコップを渡し、メリーにシャンパンのビンを渡す。二人が注ぎ終わるのを待って、
「全員準備は良いか?」
「俺は大丈夫だ」
「私も大丈夫よ」
「私もOKよ」
全員から準備完了の返事か来る。
「じゃあ始めるぜ?Happy Birthday竜也!乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
こうして、竜也の誕生日パーティーが始まった。
パーティーが始まって数十分後に俺は、ある物を用意するために自分の部屋へ向かった。
「ん?どうしたの臨人?」
無言で立ち上がった為か蓮子に怪しまれてしまった。
「ちょっとな」
「何かするの?」
「まぁな。ちょっと待っててくれ」
蓮子と軽く喋ってから自分の部屋に着いた。
「あれは何処にあったかな…っと」
自分の部屋においてあった「あるもの」を探す。
「あったあった。これだ」
「あるもの」を取り、皆がいるリビングへ向かう。
「お待たせ~」
リビングからは見えない場所で皆に声をかける。
「あ、臨人だ」
蓮子が声に気付き反応する。
「何が起こるのかしら。楽しみね」
メリーが楽しみそうに呟く。
「今度は何をするつもりだ…臨人…」
竜也が諦めたように呟く。
(三者三様の反応だな…)
そう思ってリビングの中にパソコンとプロジェクターとベース(楽器)とアンプを持って入る。
「今年はそうでもなさそうだな」
竜也が安心半分残念半分に呟く。だが、安心するのはまだ早い!
「臨人はあれで何をするつもりかしらね?」
メリーが不思議そうに呟く。
「ライブ?でも、今楽器を持ってるのは臨人だけだから無理じゃないかしら?だったら弾き語り?でもそれはギターよね?そしたら…」
蓮子は俺の意図を測れないのか、ぶつぶつ何かをいっている。
俺はというと、皆の反応をよそにプロジェクターをモニターに向け、立体映像が出るようにする。今の技術ではできないと思う方もいるかもしれないが、竜也と二人で高校生のときに卒業製作で頑張って開発したのだ。プロジェクターをセットした後でパソコンとつなぎ、自分の前に置く。そして、ベースを持ったままパソコンの操作をする。パソコンをセットし終えたら、再生ボタンにカーソルを合わせ、そして、再生ボタンを押し、ベースを構える。すると、俺の近くに楽器を構えた立体映像の竜也、蓮子、メリーが出てきた。ちなみに、メリーはギター、竜也はドラム、蓮子はマイクを構えている。
「すごい!メリー、私たちよ!」
蓮子が興奮した声でメリーに話しかける。
「さすが臨人ね…」
メリーが感服したように呟く。
「マジか…」
竜也が呆れたような声を出す。
皆の反応が終わるや否やある曲が鳴り出した。
♪Bad Apple feat. Nomico
立体映像を交えたライブが終了して、三人のほうを見ると、
「すごいわね…」
「ええ…」
「やるな…」
三人ともおんなじ様な反応をしていた。
しばらくして、料理もなくなりかけてきて、皆も「もう終わりか?」と思い始めたであろうころに、最後の一手を打つためにキッチンへ向かおうとして、
「ちょっと良いか?」
と竜也に対して言った。すると、竜也が、
「どうしたんだ?まだなんかあるのか?」
と俺に対して言ってきた。
「誕生日といえば?」
「成る程な」
これだけでも皆さんもうお分かりだろう。そう。「ケーキ」である。
「皆、ちょっと待っててくれ。最後にケーキ取ってくるわ」
すると、蓮子が
「待ってました!」
と期待通りの反応を返してくる。
「じゃ、行って来る」
そうして、本日三度目のキッチン到着である。そして、冷蔵庫から直径24cmぐらいあるケーキを取り出して、最初料理を運んでいたものより大きめのトレイに乗せてリビングへ運んだ。
「お待たせ~」
本日何度目になるか分からない「お待たせ~」を皆に言ってリビングにケーキを運び込む。
ケーキをテーブルに置き、席に着き皆の反応を見てみると
「ちょっと…大きすぎないかしら?」
メリーが心配そうに呟く。
「これ…四人用じゃないわよね…」
蓮子が半分引きながら呟く。
「やっぱ日にちにかけてきたか…」
竜也がこっちの思惑を見抜いたように呟く。
「さ、切り分けるぞ」
そう言って俺はケーキを切り分けた。(余談だが、ケーキを切り分ける前に蓮子とメリーがケーキの写真を撮ってましたw)
切り分けたケーキを食べ終わり、パーティーも終わりを迎えた。その後、竜也以外で、ある程度片づけを終わらせてから
「ふぅ、今日は楽しかったわ。じゃあ、また秘封倶楽部で会いましょう」
そう言って蓮子は帰っていった。
「蓮子も帰っちゃったみたいだし、私も帰るわね。」
メリーもそう言って帰っていった。
「二人ともまたな~」
帰っていく二人に俺は大声でそう言った。二人を見送った後、家に戻ると竜也が、
「臨人、今年もだいぶやってくれたな」
と言ってきた。なので、
「毎年のことだろw」
と答えといた。
「それもそうだなw」
と竜也も答えた。
少し間が空いて、
「あ~今日は楽しかったぜ。臨人、また来年もよろしくな」
「おう。川神臨人の名に懸けて来年もでっかい花火を上げてやるぜ」
「頼もしい奴だな。お前は」
「そうでもないさ」
などと軽く話してから、
「じゃ、俺も帰るわ。じゃあな」
「おう。じゃあな」
といつも通りの台詞を言って竜也も帰っていった。
「さ、明日の準備でもするか…」
こうしてまた、いつもと変わらない日常が始まる。
ケーキの24センチは今日が24日だからです。
11/26ミス訂正