幻想転生記   作:黒崎竜司

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特別編5話

意識を失う寸前、俺はあることを考えていた。

 

(クソッ…ここまで…なのかよ…)

 

そうして、意識を失って少しした後、風が吹いたのを感じ、目が覚めた。

 

「風…?」

 

おかしい。洞窟の中に閉じ込められたのだ。隙間風ぐらいは吹いたとしても、目が覚めるくらいの量の風が吹くことはありえないのだ。

 

「助けが来たのか?」

 

助けが来たかどうかを確認するため周りを確認する。

 

「あれ…」

 

洞窟にしては妙に広いな…

 

「ん?なんだ?」

 

ズボンのポケットに違和感を感じ、中を探る。

 

「なんだこれ?」

 

中から手紙が出てきた。

 

『竜也へ

 こっちに来ちまったみたいだな。全く…これだから神隠し関連はヤバいって言っといたのに…まぁいいや。来たからにはしゃあない。単刀直入にいう。お前は死なずに転生しちまった。転生の時は死なないと特典が選べないらしい。でも、死ななかったお前は勝手に特典が決まっちまったらしいんだ。それだけは一応伝えとく。特典は以下の奴だ。

・属性を操れる

・孔明+龐統レベルの頭脳

・不老不死

・『消す程度の能力』

・戦闘術

まぁ、こいつらを使ってうまく合流してくれ。待ってるからよ。

臨人より』

 

「マジか…」

 

死なずに転生って…マジかよ…

 

「どうしよう…」

 

手紙をしまって、周りを見渡してみたが、見渡す限り木だ。

 

「あら、こんなところに人間なんて、珍しいわね。」

 

状況確認をしていると、女の人の声が聞こえた。

 

「あなたは?」

「私?私はルーミア。宵闇の妖怪よ。」

「妖怪…ですか…」

 

失礼ながら妖怪には見えない。

 

「信じられないって言う顔ね。いいわ。証拠を見せてあげる。」

 

そう言うとルーミアは、闇の翼を展開した。

 

「どう?信じてもらえたかしら?」

「あ、あぁ、まぁ。」

 

あまりの衝撃に言葉を失ってしまう。

 

「それにしても、人間がここにいるなんて珍しいわね。自殺志願者かしら?」

 

おいおい…だいぶ物騒な事を言うな…

 

「あなた、名前は?」

「星影竜也だ。」

 

名前を聞かれたので名乗る。すると、ルーミアは首をかしげる。

 

「竜也…どこかで聞いた名前ね…」

 

え!?おかしいって!?俺ここに来たの今日だし!?

 

「まぁ良いわ。あなたは何しにここに来たのかしら?」

「いえ…これと言った目的は無いんですよ。ただ、気がついたらここにいたんですよ。」

 

嘘は言ってない。

 

「へぇ…珍しいわね。アイツの仕業かしら…」

「あいつ?」

「あぁ、説明する必要があるわね。アイツって言うのは隙間妖怪の事よ。あの妖怪は遠くから人を攫って来るの。」

「へぇ…」

 

まぁ、ある意味遠くから攫われてきたな。

 

「まぁ良いわ。」

 

良いんだ…

 

「この辺りに人の集落ってありますか?」

「あるけど、そこには入れないと思うわ。」

「そうですか…」

 

ショックだ。このままだと妖怪に食われてしまう。

 

「安心して頂戴。あなたを食べるような真似はしないわ。」

「読まれたっ…」

「あなた、顔に出てるわよ。」

「そうですか…」

 

どうやら、不安が顔に出ていたらしい。

 

「あなたを見ていると、臨人を思い出すの。」

 

今、臨人って…

 

「臨人って?」

 

ちょっととぼけてみるか…

 

「最近、都に現れた人間で、私と戦っても一歩も引く気配が無いのよね…」

「そうですか…そいつの苗字は?」

「川神。川神臨人よ。」

 

噴出しそうになるのを堪え、聞き返す。

 

「そいつの特徴は?」

「髪の色は紫で、ちょっと癖っ毛っぽかったわね。目は青かったわ。肌はうらやましいくらいの白さだったわ。背は…低くは無かったわ…」

「そうですか…」

 

髪の色と目の色以外は俺の知ってるあいつと同じだ。

 

「いろんな武器を使ってきたわ。槍を使ってるときは手ごわかったわね。」

 

槍…か…益々親友を思い出すな。

 

「何か知ってそうな顔ね。」

「いえ、親友に似てるな~って思っただけです。」

「そう…」

 

ふぅ、何とかごまかせたか…

 

「そういえば、あなたはこれからどうするのかしら?」

「そうだった…どうしよう…」

 

これからなんて考えてない。今日生きるのも精一杯だ。

 

「私と一緒に来ないかしら?」

「え…」

「どうせ今日生きる術も無いのでしょう?」

「ぐっ…」

 

図星なせいで言い返せない。

 

「月移住計画が始まるまでなら暮らしは保障してあげるわ。」

「本当ですか!?」

「えぇ。あなたといれば、臨人と多く会えそうだし。」

 

こうして、俺は宵闇の妖怪ルーミアと共に生活する事になった。

 




竜也君の転生編はこれで終わりです。これから本編に繋がります。秘封倶楽部のその後については、皆様のご想像にお任せします。

(書けたら書きたいとは思っています。)

訂正

結構危険だな…→マジかよ…

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