臨人の家であの手紙を見つけた日から数日が過ぎた。俺は転生についての情報を集めていた。冷静に考えたら転生なんて想像上のものでしかないのだが、俺は冷静に考えることもできなくなっていた。
「くそっ!まともな情報が無い…」
まともな情報など見つかるはずが無い。想像上の話が現実になる時点でおかしいのだ。
「仕方ない…神隠しで有名な場所を片っ端からあたってみるか…」
転生で異世界に行ってるのなら、神隠しでも異世界に行けるのではないかというどう考えてもおかしな考えに至ったのだ。
「そうと決まれば準備するか。」
これからは長い旅になりそうなので、しっかり準備をしていく。食料や水、資金が途中で尽きては話にならないので、持ちきれる限界まで持っていく。
「これでいいか…」
持ち物の確認を終えてから家を出る。学校のほうは蓮子とメリーの二人に、前もって数日の間休むと連絡してあるので問題ない。
「さて…行きますか…」
もうここに帰ってくることは無いかもしれない。そう思い、この台詞を言う。
「行って…来ます…」
なんともいえない気持ちになりながら家を出た。家を出てから駅に向かう。駅に着くと、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「あら、一人でどこに行くのかしら。」
「私達も同行していいかしら?」
声に反応して後ろを振り返ると、蓮子とメリーの二人が旅支度をして立っていた。
「お前ら…」
思わず声が出てしまう。何でここにいるんだろうか?
「この蓮子様を差し置いて長期旅行なんていい度胸ね。」
「そういうことなら私と蓮子も呼んでほしかったわ。」
二人とも…
「二人とも良いのか?この旅行についてはメールで言っている筈だが?」
この旅行はいつ帰ってこれるかわからないものになる。俺一人ならなんも問題ないが、二人はどう考えているのだろう?
「二人とも、親とか心配しないのか?」
一応聞いておく。もしものことがあったら大変だ。
「大丈夫よ。私達の親、もういないから…」
嘘…だろ…
「すまん。失言だった。」
「いいのよ。言ってなかった私達も私達だわ。」
俺の謝罪に蓮子が答える。
「それよりも!謝罪してほしいのは、私達に黙って楽しそうなことしてることよ!」
楽しそうなことって…
「今回の旅は臨人を探しに行くものだ。もしかしたら死ぬかもしれないんだぜ?」
半ば脅迫のようなことを言う。これで身を引いてくれれば良いが…
「臨人探し!?何で言ってくれないのよ!」
「どうして私達に言ってくれなかったのかしら?」
あ~…たぶんこれ地雷踏んだ…
「メリー!これは大きなチャンスよ!私達、秘封倶楽部の力、竜也に知らせてやりましょう!」
「そうね。竜也は私達のことを甘く見すぎよ。危険な事なんて気にしないわ。それに、今更危険なんて、もう慣れたわ。」
ほらな…
「そうと決まれば行くわよ竜也!」
「行きましょうか?竜也。」
「しゃーない。行くか?二人とも。」
「「えぇ!」」
こうして、俺たちは本格的に臨人を探し始めるのだった。