俺は臨人を探すまえに集合のため、いつもの公園に来ていた。
「あら、竜也。早いわね。」
そういいながら軽い金髪?の女が声をかけてきた。
「おお、メリーか。」
「久しぶりね。」
今話しかけてきたのはメリー。秘封倶楽部のメンバーの一人で、結界の境目が見える程度の能力を持っている。メリーのおかげで秘封倶楽部の活動ができているといっても過言ではない。
「だいぶ早く来たのね。」
「まぁな」
「しかし、臨人はどこに行ったのかしら?」
「さぁな。あいつは一回いなくなると帰ってくるまでどこにいるか分からんからな。」
「本当ね。」
そんな話をしながら三十分以上が経った。ちなみに集合時間はとっくに過ぎている。
「しかし蓮子は相変わらず遅いわね。」
「今に始まったことじゃないんだろ。」
「それもそうね。」
蓮子の遅刻癖にも困ったものである。
「あなたと臨人が初めてきた時もこうだったわね。」
「あの時は臨人もいたがな。」
俺と臨人が初めてきた時も蓮子は遅刻してきた。
「そうね…」
「すまん。無神経だった。」
「いえ、大丈夫よ。今日探して見つければいいんだから。」
「そうだな」
そんなことを話している間に話題の人物がやっときた。約50分の遅刻である。
「ごめん!遅れちゃった!」
「やっと来たわね。置いていこうかと考えていたわ。」
「置いていくのは勘弁して頂戴。」
「ふふっ、冗談よ。」
「冗談キツイわよメリー…」
「いつものことじゃない。」
「うぅ~」
メリーが蓮子の遅刻をネタに弄る。もう何度も見た光景である。
「竜也も何か言ってよ!」
「毎回遅刻してることは弁護できんな。」
「酷い!助けて臨人~…っていないんだった…」
蓮子が臨人に泣きつこうとするが、今日あいつはいない。
この流れももう何回も見てきた。だが、今回は臨人がいないので不発に終わる。
「さて、臨人を探しに行きましょうか。」
蓮子がまとめるようにそう切り出す。ほんとにこいつは…
「でもどうやって探すのよ?いそうな場所も分からないのに。」
メリーがそう返す。残念だがメリーの言う通りだ。さすがの俺でも臨人の居場所なんざ分からない。
「最初は臨人の家に行ってみましょうか。」
蓮子がそんな提案をしてきた。
「いや、無駄だと思う。」
俺は蓮子の提案を否定する。
「そうね。竜也の言う通りだわ。」
メリーも俺に賛同する。
「何でよ?何か手がかりがあるかもしれないじゃない?」
蓮子が反論してくる。
「臨人は一人暮らしだぜ?」
「鍵が閉まってると思うわ。」
俺、メリーの順で発言する。
「とりあえず行ってみましょうよ。もし鍵が閉まってたら別の場所を考えましょう。」
蓮子がそう言う。
「そこまで言うならいってみるか」
俺は仕方ない、といった形で同意する。
「仕方ないわね。なら、行ってみましょうか。」
メリーも渋々同意する。
そうして俺たちは、公園から臨人の家の前に来た。
「久しぶりに来たな…」
俺はつい小さく呟く。
「とりあえずドアを開けてみましょうか。」
蓮子がそんなことを言いつつドアノブに手をかけた。すると、鍵が開いていたらしく、扉が簡単に開いた。
「あら、開いてたじゃない。」
蓮子が俺たちに向けてそう言いつつ中に入る。
「珍しいな…臨人が鍵を閉めないなんて…」
「そうね…」
俺とメリーは怪しみながら蓮子に続く。いつもは蓮子がドアを開けようとして臨人が出てきて中に入るという流れなので、不自然に感じる。
三人で臨人の家の中に入り、中を捜索する。
不法侵入に思われるかもしれないが、近所の人からしたら割といつもの風景だ。そのため、通報されることは無い。
「しかし、臨人の家は相変わらず綺麗だな。」
「そうね。蓮子とは大違いだわ。」
「ちょっとメリー!それどういうこと!?」
なんて話しながら探していた。
しばらく探索していると、机の上に一通の手紙を見つけた。
「なんだ?これ?」
手紙をよく見てみると、『最高の友人へ』と書いてあった。
「メリー、ちょっといいか?」
近くにいたメリーに話しかける。
「何かしら?」
俺はメリーにさっき見つけた手紙を見せる。
「これ、俺たち宛てかな?」
「どうなんでしょうね?」
そんなことを話していると、蓮子がやってきて、
「あら、手紙?ちょっと読んでみましょうか。」
と言って、手紙を俺の手から引っ手繰っていった。
「えーと、何々…」
蓮子は俺から手紙を引っ手繰ると、手紙を読んでいった。
『おう、俺だ。臨人だ。あんたらがこれを見てるとき、俺はあんた達の前にいないんだろうな。簡潔に言うと、俺って秘封倶楽部で仕事ができてないな~、と思って一人で神隠しが起きた場所とか人気の無い心霊スポットとかまわってオカルトについて勉強?してたんだが、その最中に事故が起きてな…あえなく死んじまった。死んでるのに手紙がかけてるのは、オカルトでは結構有名な転生ってのをしたからだ。会えなくなるのに、皆に別れの言葉も言えずに別れるのは嫌だからな。最後に別れの言葉を書いておく。最後って言うか軽く死後だけど。って関係ないか。とりあえず、一人ずつ書いておく。
蓮子。お前はいつも明るくて、あまり貢献できてない俺のことを邪険に見るようなことをせず、仲間として接してくれたこと、本当に感謝してる。おかげで、秘封倶楽部にいる時、すっげぇ楽しかった。それに、お前のおかげで、夜なのに時間と場所が分からなくなるってことが無いから安心して活動できた。でも、遅刻したりテストの日程聞いてくるのは勘弁してくれ。
メリー。お前は蓮子のストッパーをして、周りに迷惑がかからないようにしたり、俺らが見えない境界を見つけて、俺たちの活動の中心になってくれた。正直、メリーがいなかったら俺は秘封倶楽部で何もできずに、ただただ時間だけを潰すことになってたと思う。ただ、蓮子と俺をまとめて弄るのはやめてくれ…結構恥ずかしかったんだぜ?
竜也。お前とは物心つく前から一緒だったな。いつも一緒で、腐れ縁って言うのか?そんな言葉が似合うくらいに同じ道を進んできたな。正直、竜也にはどんだけ助けられたか覚えてねぇや。ははっ。正直竜也のおかげで今まで生きてこれたっつっても過言じゃねぇ。そういや、秘封倶楽部に誘ってくれたのも竜也だったっけ。お前が「面白そうなサークル見つけた!」っつって俺に向かって言ってきて、俺に有無を言わさず活動場所に俺を連れてったんだよな。懐かしいなぁ。おかげで俺は大学生になっても童心に帰れる場所を見つけた。もっとお前と過ごしたかったぜ。今までいろんなことがあって、いろんな奴と出会ってきたが、やっぱ竜也は最高の親友だな。死ぬ寸前にそう思った。じゃあな。親友。あと、異世界探しはほどほどにな。
この手紙に書くことも最後になったか…
最後に、三人に一言だけ言わせて…いや、書かせてくれ。
【ありがとう】
』
手紙にはこう書いてあった。最初のほうは蓮子も、いつも通りのテンションで読んでいたのだが、メッセージの部分では、だいぶ泣きそうになっていた。実際のところ、俺もメリーも泣きそうで限界だった。読み終わるころには、三人とももうボロ泣きで、手紙を見るのも必死だった。
「臨人…なんでだよ…」
「あんまりよ…臨人…」
「何で…何でよ…」
俺、メリー、蓮子の順で小さく呟いた。
しばらく三人で泣いていると、蓮子が吹っ切れたような声で
「帰りましょう。ここにいても仕方が無いわ。」
と言った。
それに続いてメリーも
「そうね。帰りましょうか。」
と言った。
メリーがそういった後に、蓮子が
「竜也はどうするの?」
と聞いてきた。
俺はその問いに対し、
「俺はもうちょっと残るよ。」
と答えた。
「そう…」
蓮子はそういい残して帰っていった。
蓮子たちが帰った後、俺は臨人の家で痴呆のように立ちすくんでいた。臨人が死んだのが今でも信じられない。でも、実際ここには臨人は死んだって書いてある。この手紙がイタズラだとは思わないが、俺は臨人はこの世界のどこかで生きてるんじゃないかって心のどこかで思っていた。
「探しに…行くか…」
こうして、いるはずも無い俺の親友、臨人を探すことにした。
シリアスなのに最後のやっつけ感…文才がほしいです…