アマテラスside
「銀龍は…抑えられないのでしょうか…」
私は今、暴れ出した銀龍をみんなと共に結界で抑えています。いつも『宵闇の銀龍』が、『月の英雄』が復活することを望み、その二人を象徴にしてこの天下を統一しようとしていました。この銀龍の暴走は、それの報いなのでしょう。死んだはずの存在を蘇らせ、それを利用しようとした私たちへの…
「姉さん!『月の英雄』が!『月の英雄』が生きていた!」
「何ですって!それは本当ですか!」
入ってきた私の弟、スサノオが素っ頓狂なことを言う。『月の英雄』が生きているわけがないでしょう。
「間違えじゃない!俺はこの目で見た!虚空から武器を出す男を!」
「なっ!」
虚空から武器を出す…簡単にできることではありません…
「それに、武器も伝承にあったものと似通っている!」
「それが本当だと信じられる証拠は?」
「なら、そいつをここに連れてくる!」
「わかりました…」
スサノオはそう言い残して、元来た道を戻っていった。
「あり得るはずが…」
言葉ではそう言いながら、期待している自分がいる。
「スサノオ…お願い…」
『月の英雄』なら…銀龍を…
アマテラスside out
臨人side
爽やか神が奥に入った後、銀龍とどう戦うかを考えていた。蛇(?)を倒したことはあるけど…龍はな…それも銀龍か…
「竜也…」
銀の竜と言われると思い出してしまう。早く探しに行かなくては…
「待たせたな!向こうで姉さんが待ってる!」
「わかった」
爽やか神が戻ってきて、姉さんとやらのところへ案内してくれるようだ。
さぁ、銀竜の元へ向かおう…
「連れてきたぜ!姉さん!」
爽やか神の案内で銀龍のいる場所に来た。銀龍の前でめっちゃ光を放ちそうな女の人が他の人?神?たちとともに頑張ってる。
「スサノオ!本当に『月の英雄』なのですか!?」
女の人がそう言って爽やか神に確認を取る。こいつスサノオだったのか…
「あぁ!本物だ!」
爽やか神改め、スサノオの言葉に続いて名乗りを上げる。
「俺は川神臨人。『月の英雄』って呼ばれてるらしい」
「本当に月の英雄がいるとは…」
「あんたは?って、そんな場合じゃないか…」
結界維持に意識を持って行ってるため、話せる状況じゃないよな…
「とりあえず、他の神を避難させてくれ」
「わかりました。スサノオ!協力しなさい!」
「わかった!結界維持は任せろ!」
「念のため、ツクヨミも一緒にやってください!」
「わかりました…」
アマテラスがツクヨミの名を呼ぶと、銀髪の超クールそうな佇まいの男が現れた。
「あなたが私の大事な民を守ってくれた英雄ですか…と、話したいことはありますが、後にしましょう」
そう言い残すとツクヨミと呼ばれた男はスサノオとともに結界の維持を始めた。
「皆!ここは私達に任せて離れなさい!」
その号令のもと、神々が一斉に離れる。
「くっ…」
「厳しいですが…英雄の前で諦めるわけにはいきません…!」
スサノオとツクヨミの顔が曇る。結界にもヒビが入り始めている。
「手伝いますよ?臨人君…」
まさか…この声…
「大和の神が揃ってもこれとは…相当強いんでしょうね…この銀龍は…」
全身青に包んだあの男が現れる。
「結界の維持はお手の物ですよ…?」
そいつがツクヨミ達が張ってる結界に触れると急に強度が上がり、入っていたヒビが消える。
「全く…なぜ竜也君に会う前に銀竜に会ってるんですか…」
「亮!」
神薙亮が、駆け付けた。
「さて、残っている皆様も避難したほうが賢明ですよ?」
亮は残っているスサノオ達に言うように避難勧告をした。
「それと、入口から覗いてるそこの小さな神様…あなたも避難しては?」
「なっ…!」
まさか…諏訪子が!?
「無関係な臨人が頑張ってるのに…私が何もしないのは…」
「ですが、あなたの力では…」
「なら、私が力を貸そう!」
力強い声がこの場に響く。
「軍神・八坂神奈子、見参!」
「軍神ですか…」
「銀竜に直接攻撃することはしないよ。私じゃ届かないからね…でも、攻撃を防ぐぐらいなら、できないことはないよ!」
八坂神奈子が俺たちに言い聞かせるように言う。
「そうですか…まぁ、自分の実力はわかっているようですね…わかりました」
亮が静かに了承する。
「俺たちも残ろう!」
「神奈子にそこまで言われては、私も残るしかありませんね…」
「弟たちが残ると言って、姉である私が残らないわけにはいきません…」
どうやら、みんな残るようだ。
「なら、銀龍との戦いを始めますよ?」
亮はそう言うと、結界を解除した。
「グギャァァァァァァァ!」
銀竜の咆哮が響く。さぁ、開戦だ!
前回も書きましたが、来年もこの幻想転生記を宜しくお願いします!