奥へ進み、本殿だったであろう建物の中に入ると、嵐でも来た後かのような悲惨な光景が広がっていた。どこを見渡しても瓦礫の山、死体の山、血だまりと、魔界でも見たことないような悲惨な光景だ。
「マジかよ…」
相当銀龍が強いのだろう。そこかしこの無事だった壁にも、大きな爪の跡や細長い凹みが出来上がっている。
「龍は…どこだ?」
龍を探す。どうやってここまで来たって?適当に走って、一番大きな建物目指して走ってきただけだが?
「おかしいな…神もいない…」
ここにきてから、生存者に会っていない。まさか、考える時間が長すぎて全滅しちゃったとか?
「おい!そこのお前!ここは危険だ!」
考え事をしていると、この環境には似合わない爽やかな声が聞こえた。だが、声色は怒りと焦りが混じったようなものだ。
「今は銀龍が暴れている!今は結界で押さえているが、いつまた暴れだすかわからない!すぐにここから離れるんだ!」
爽やかの声の持ち主はすぐにここから離れるように指示する。その声に応えるように振り向くと、屈強な肉体を持ち、どこからどう見ても強そうな男がいた。
「あんたは?」
「今は自己紹介なんてしてる場合じゃない!すぐにここから離れるんだ!」
その男は一刻も早く避難しろと俺に言う。
「離れる?何言ってんだよ?今は少しでも戦力が必要なんじゃねぇの?」
「確かにそうだが、一般人がいていい場所じゃない!」
「おいおい…人を見た目で判断するなよ…」
「だが…」
なんとも失礼な…ここまで来て避難?そりゃねぇよ…
「来い!鉄騎尖!」
銀龍の前で武器を出すつもりだったんだけど…戦える証明をしないといけなさそうだったので、武器を出す。いつもの鉄騎尖だ。
「虚空から武器を出現させただと…まさか、あなたは…」
「月の英雄…らしいけど、文句あるか?」
「まさか月の英雄だとは…」
「さて、銀龍をどうにかしたいんだろ?案内してくれよ」
「あぁ、わかった」
どうやら、俺は月の英雄として有名らしい。月の英雄として伝わってるのが能力だけなのは悲しいけどな…というか、この能力をどこで知るんだ…
「ここだ」
爽やか神に案内され、銀龍がいるというところまで来た。
「さっきも言ったが、今は姉さんたちが全力で結界を張って止めてる。今から姉さんに『月の英雄が来た』って言って、結界を解除させてくるから待っててくれ」
「大丈夫かそれ?」
「おそらく大丈夫だ。今まで俺たちは『月の英雄』と『宵闇の銀龍』を血眼になって探してきたんだ…むしろ、疑わずに喜んでくれるさ…まぁ、今回の銀龍騒動はだいぶ堪えてるみたいだけど…」「そうか…」
銀龍…あいつも銀龍って呼ばれてるんだな…
「さて、俺は行ってくるぜ?」
「わかった」
そう言って、爽やか神は奥に行ってしまった。
「どうなることやら…」
信じてもらえるとは思っていない。だが、もし急に銀龍が出てきたらやばいので警戒は怠らない。「さて…と」
どちらにせよ、銀龍との対決は…近い…
今年も幻想転生記の投稿を続けてきましたが…正直こんなものを1年以上も読んでくれる人がいるのに驚きです…新しい話をうpした時にUAが増えるのを見て、毎回感動してます。もしよかったら、来年も幻想転生記を読んでいただけると幸いです…
これを読んでいただいてる皆様、良いお年を…