幻想転生記   作:黒崎竜司

29 / 55
第28話B

臨人Side

 

俺はサリエル達とに戦いが始まると同時にサリエルに向かって突っ込んでいった。

「さぁ、始めようぜ!戦いを!」

サリエルに突っ込みながら、豪快に啖呵を切った。

「武器も持たずに突進とは…地上最強が聞いて呆れますね…」

サリエルは残念がっているが、俺は今回武器を隠しているだけである。

「すぐに終わらせて差し上げましょう…」

そう言ってサリエルはありえない量の弾幕を放ってきた。

「甘いっ!」

弾幕の隙間を抜けて、どんどんサリエルに近づいてゆく。

「さすがに足りませんか…」

サリエルはそう呟くと同時に弾幕を厚くしてきた。

「おっと、そう簡単には当たらないぜ?」

厚くなった弾幕も気にせず、距離を詰める。

「なかなかやりますね…ですがまだ本気ではありませんよ?」

「当然だろ!」

サリエルの言葉に応えるように叫ぶ。そのうちにもしっかりと距離を詰めていく。

「そろそろ危険ですね…」

サリエルはそう呟くと、翼を動かして飛び上がると同時に俺を吹き飛ばそうとした。

「そうはいくかよ!」

サリエルと同時に飛行を開始し、吹き飛ばされないように前に傾くように飛んだ。

「やはり効果はありませんでしたか…」

「当たり前だろ!」

「でしたら、これならどうでしょう…!」

ただの弾だけじゃなく、レーザーを織り交ぜた弾幕を放ってくる。

「メンドクセェな…っと」

さっきまでよりも躱しにくくなっている。それに、飛んでいる分地上にいた時よりも小回りがきかない。

 

「クッソ…なかなかきついな…」

「そろそろ武器を出したらどうですか?」

サリエルが挑発してくる。

「仕方ないか…」

そろそろきつくなってきたので、隠していた武器を出す。

「これでっ!行け!匕首!」

服の中に隠していたを投げる。匕首はまっすぐにサリエルのところに飛んでいく。

「なるほど…投擲武器を隠していたのですか…」

サリエルはそう呟くと、軽い動きで匕首を躱してしまった。

「やっぱ簡単にはいかないか…」

「当たり前でしょう…」

サリエルと言葉をかわす。

「それで終わりですか?」

「終わるわけないだろ!」

正直、これが避けられるとは思ってなかったので焦ってしまう。だが、俺の武器はそれだけじゃない。準備したものはまだまだある。

「これならどうだ!鴛鴦鉞!」

次の武器である鴛鴦鉞を取り出して投げる。これもまたサリエルの方に向かって物凄い速度で飛んでいく。

「こんなものでは当たりませんよ?」

これもまた躱される。やっぱり普通の武器じゃ無理か…とはいえ、まだ最終兵器を使うわけにはいかない。

「この程度ですか?それなら、今度はこちらから行きますよ!」

サリエルはそう言うと左右に大きな球体を出して、弾幕をさらに厚くしてきた。

「マジかよ…っと…」

増えた弾幕に気をつけながら左右に飛び回って必死に避けていく。

「幻滅ですね…地上最強などと言われていたので期待したのですが…」

サリエルが心底がっかりしたように言う。

「そんなわけ…ねぇだろ!」

そう言って匕首と鴛鴦鉞を両手に4本ずつ持ち、一斉に投げた。狙いはあまり定まっておらず、いろんなところに飛んでしまった。

「無駄打ちはしないほうがいいですよ?」

サリエルに心配される。

「無駄打ちじゃ…ねぇよ!」

サリエルが飛んでいった武器たちに気が向いているうちに一瞬でサリエルの前までたどり着いた。

「甘かったな!終わりだ!」

サリエルの前に着いた俺は、左腕を弓を引くように引いて、自分が放てる最大威力の拳をサリエルの腹に叩き込んだ。

「カハッ…」

相当効いたのか、サリエルは悶絶している。

「まだまだ行くぜ?」

さっき放った拳の反動を利用して、右腕で同じところにもう一度拳を叩き込んだ。

「クッ…」

攻撃を受けたサリエルは相当苦しいのか、飛ぶのをやめて地上に降りた。

「どうやら見くびっていたようです…」

息を切らしながらサリエルが言ってくる。

「仕方ありません…本気を出しましょう!」

サリエルはそう言うとゆっくりと飛び上がり、6枚の翼を全開まで広げてなにやら呪文を唱え始めた。

「ハァ!」

呪文を唱え終えたサリエルが一喝のような大声を上げると、サリエルが闇に包まれた。

「なにが起きるんだ…」

サリエルを包んでいた闇が晴れると、サリエルの形をした影が魔法陣に囲まれたように存在していた。

「………」

さっきまであんなに言葉を発していたサリエルが一言も喋らなくなった。

「これが本気ってわけか…」

小さく呟く。これが本気ということは、今までは手を抜いていたのかと思うと少し悲しくなる。今まででもだいぶ苦戦してたのに、それ以上ということは間違いなく苦戦させられるだろう。

「………」

そう思っていると、無言でサリエルはレーザーを撃ってきた。

「あっぶな!」

間一髪で避ける。レーザーの速度が今までとは桁違いだ。

「これは…今まで以上に気を引き締める必要がありそうだな…」

そのつぶやきを最後に、俺も気を引き締めるために自分が最も使ってきた武器を出す。

(来い!暁!)

一振りの鞘に入った研ぎ澄まされた刀を出す。それを鞘からゆっくりと出し、吠えるように叫ぶ。

「お互い本気で行こうじゃねぇか!後悔すんなよ!」

大きく啖呵を切って、再びサリエルに突っ込んだ。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。