「ふぅ…」
竜也が部屋を出た後、俺も自分の部屋に戻って準備を始めた。
「サリエル…ねぇ…」
手紙には『魔界の天使』と書いてあったが、天使が戦闘をできるのだろうか?勝手なイメージだが、天使といえば神の周りを飛び回ってるだけのイメージなんだが…
「考えても仕方ない…か…」
とりあえず行ってみない事にはわからない。会う前にあれこれ考えるより最善を尽くす事を考えよう。
少年準備中…
「あ…」
これからの事に備えて、もう少し動きやすい服に替えようとしたのだが、服とかはあの時(人妖大戦の時)に神に預けてた事を思い出した。
「まぁ…いいか。」
今までもこの服で戦ってきたのだから、気にしないことにした。
(でも、もう少し魔界っぽい服であったほうがいいよなぁ…)
今まで着ていた服があまりにも周りと合わないのでそろそろ着替えようと思ったのだが、まだ返してもらってない事に今更気付いた。
「他には…」
服の事は気にしないで、別のことを考えることにした。
「特には…無いな。うん。」
よくよく考えれば、服と武器以外はテキトーに決めても何にも問題は無かったのに、なんで考えたんだろう。
「これでいいか。」
準備を終えて部屋の片付けをしてから、竜也の部屋に向かった。
「悪いな。遅くなった。」
「いや、俺のほうの準備がまだ終わってなくてな…。」
「そうか。分かった。」
竜也の準備が終わってると思ってきたが、どうやら終わってなかったようだ。
「待たせたな。さ、行こうぜ。」
そうこうしている内に、竜也の準備が終わったようだ。
「おう。行くか。」
二人とも準備を終わらせた後、神綺の部屋に行った。
「神綺ー。居るー?」
神綺の部屋の前で竜也が確認する。
「入っていいわよ~。」
神綺の気の抜けた声が聞こえる。
「失礼するぜ~。」
竜也はそういわれると、さっさと入っていってしまった。俺も遅れて神綺の部屋に入った。
「二人とも来たのね~。別に、私のところに来なくてもよかったのに~。」
神綺が俺たちに対してそう言ってくる。だが、言葉の割には少しうれしそうだ。
「ここに居たのですか。出発の準備が整いました。」
神綺が話を始めようとした時に夢子さんが部屋の中に現れ、準備が終わったことを伝えてくれた。
「おっ、出発か。じゃ、ちゃっちゃといって帰ってくるか。」
「頑張ってね~。」
竜也が出発前に気合を入れるように独り言を言うと神綺がそれに応え、夢子さんは知らん振りをした。そして、三人で部屋を出て、町の門まで来た。
「あら、三人でお出かけ?珍しいわね。」
門の前に着くと、サラがこちらを見て興味深そうに呟いた。
「えぇ。これから《魔界の天使》に会いに行くのよ。」
「へぇ~。で、その《魔界の天使》に何か用でもあるの?」
「いえ、あちらがこの二人に用があると…」
「その二人に…なんか嫌な予感がするわね…」
夢子さんが《魔界の天使》についてサラと話していた。
「大丈夫だって。あんまりいろんな事気にしてると、楽しめないぜ?」
サラの言葉に割り込むように竜也が口を挟んだ。
「そうね。それに、もしもの時は夢子も居るみたいだし、心配ないわね。」
竜也の言葉にサラが応える。
「では、私達はもう行きますので。」
「そうね。あまり長話してもしかたないわね。じゃあ、行ってらっしゃい。町は私がしっかり守っておくわ。」
「お願いね。」
二人の会話が終わり、町を離れた。
少年少女移動中…
しばらく歩いていると、時空の裂け目のような場所を見つけた。
「ここです。」
夢子さんがそれの前で立ち止まり、この先にサリエルが居るという事を教えてもらった。
「ここなの…」
竜也は驚きのあまり、いつもの調子を失っている。
「では、行きましょうか。」
夢子さんはなんでもないことのように催促してきた。
「行くか…」
俺は、覚悟を決めて(決めるまでもない気はするが)時空の裂け目に入った。