「おらっ!」
俺だ。臨人だ。今俺は、見た事無い生物と戦っている。
「ガァァァ!」
「おっと…」
相手の噛みつきを躱しつつ、包丁を相手の肌に滑らせる。それを繰り返していると、猛獣は腹を立てたのか、攻めが激しくなった。
「よっ、ほっと。」
連続で噛み付いてくるので、しっかり躱す。一回でも噛まれたらやばそうな音がしてるので、余裕が無い。
「ガァァァ!!!!!!」
あまりにも攻撃が当たらない事に怒りの臨界点を超えたのか、口から何かの液体を吐き出してきた。
「危ねぇ!!!」
間一髪で躱すことに成功した。その液体は、俺の後ろにあった壁に着弾した。
「マジかよ…」
着弾先の壁を見てみると、壁の一部が溶けてなくなっていた。
「ヤバイな…」
今まででも被弾したら終わりの戦いを繰り広げていたのに、これからはもっと厳しい戦いになりそうだ。
「ガァァァァ!!!」
液体を吐き出したままの勢いで噛み付いてきた。
「ヤバッ…」
躱しつつ、手に持っていた包丁を喉の部分に突き刺す。
「ギャァァァ!!!」
さすがに効いたのか、悶絶するような声を上げる。
「殺ったか?」
思わず確認する。
「グォァァァァ!!!」
どうやら、そう簡単にはくたばらないようだ。
「チッ…」
その様子を見て舌打ちしてしまう。結構深々と刺さった感覚はあるのだが…
「ガァァァァ!!!」
「これでも喰らえっ!」
持っていた包丁をコピーして、元から持っていた包丁を抜いた直後に目に向かって投げる。
「ギャァァァァ!!!」
包丁が目に刺さり、さっきよりも強くのけぞりながら悶絶の声を上げながら奴が横たわる。
「今度こそ殺ったか?」
警戒は解かずに確認する。さすがに目を貫けば死ぬだろう。
「大丈夫…みたいね…」
戦いを傍で見ていたルーミアも確認する。
「駄目ですよ。しっかりと止めを刺さなければ。」
「誰だ!?」
「誰…?」
俺たちが猛獣の生死を確認しようとしたら、凛とした声が響いた。それと共に岩で出来た刃が飛んできて、猛獣の首を刎ね飛ばした。
「これでいいでしょう。」
警戒する俺たちをよそに、声の主は落ち着いて姿を現した。声の主は、青髪の若そうな青年だった。だが、服装や立ち振る舞いは顔に似合わずだいぶ上品だ。
「私は神薙亮。初めまして、ですね。」
声の主は警戒もせずに一礼しつつ自己紹介をする。
(神薙亮…うぅ…何故頭が…)
相変わらず『神薙亮』と聞くと頭痛が起きる。
(俺は…この名前を知っている…?)
初めて聞いたときもそうだが、初めて聞いた感じがしないのだ。
「大丈夫ですか?」
亮が俺に大丈夫かと聞いてくる。
「あ、あぁ。大丈夫だ。」
心配ないと答える。
(何故だ…何故こんなにモヤモヤするんだ…)
解決できない思いが渦巻く。
「それなら良いんですが…」
神薙も納得する。
「ガァァ!」
そんな事を思っている間に、神薙亮と名乗った男の後ろから何本も足の生えた超大柄のワニが現れた。
「危ない!」
叫びながら包丁を出して投げようとする。
「やれやれ…おこぼれを狙おうとしたのですか…」
そいつはそう呟くと、風の刃を放ってそのワニを一瞬で真っ二つにした。
「マジか…」
それを見た俺は小さく呟いた。
「気をつけてくださいね。このあたりは油断できませんから。」
「あ、あぁ。」
このあたりは結構危険な場所らしい。
「そういえば、貴方たちの名前を聞いていませんでしたね…」
少ししてから、亮が俺たちに言う。
「俺は川神臨人。で、こっちの金髪がルーミアだ。」
「ルーミアよ。よろしく。」
亮に軽く自己紹介をする。
「川神臨人…ですか…」
亮が俺の苗字を反芻する。
「知ってるの?」
ルーミアが亮に聞く。
「いえ、懐かしい名前だな…と思って。」
「懐かしい?」
亮の『懐かしい』という言葉に反応してしまう。
「えぇ。私がここに来る前に何度も聞いた気がするんですよ。」
「そうか…」
亮はそう呟いた。俺は身に覚えが無いので、簡単な答えしか返す事ができなかった。
「何となくですけどね。」
亮が付け加える。
「そ、そう…」
ルーミアが苦笑いしつつ言葉を返す。
(神薙亮…何か思い当たるものは…)
あちらに知られているのなら、当然俺も向こうのことを知っているのではないかと記憶の中を探す。
「少し話しませんか?臨人さん。」
亮が話をしたいと持ち出してきた。
「話?」
「えぇ。私の中にある疑問も晴らしたいので。」
「分かった。」
亮の提案に乗る。
「じゃあ、私は神綺の所に戻るわね。」
そういい残してルーミアは食材を持って、帰っていってしまった。
「さて、これで落ち着いて話せますね…久しぶりです。同じ世界に生きていた人と、それも高校が同じだった人と。」
「何!?」
亮の言葉に驚きを隠す事ができなかった。
「私はさっきああ言いましたが、私は貴方をしっかり覚えていますよ…『異常分子』さん。」
「ッ…」
もう驚きを通り越しておかしくなりそうだった。転生した後に生前の(しかも高校の)二つ名を言われるなんて思いもしてなかった。
「貴方に少しですが協力していたあの神薙亮です。本当に覚えていないのですか?竜也君の誕生日も共に祝ってあげたのですが…」
亮が俺に聞いてくる。
「あぁ!まさか!!」
「そのまさかです。貴方に頼まれてギターをわざわざ担いでいったじゃありませんか…」
(やっと繋がった…神薙亮は…)
学校では俺とあまり喋らないのに、必要な時にいつも力や知恵を貸してくれる奴だった。2年の時の竜也の誕生日には、家が遠いのにギターを担いでわざわざ家まで来てくれたっけ…
「もしかして、クラスでいつも成績上位に入ってた…」
「えぇ。その通りです。久しぶりですね…『異常分子』の川神臨人君…」
そう言って亮は俺に手を差し出してきた。
「思い出してやれなくてすまん。」
亮に謝罪する。
「良いんですよ。私も人間界で有名になった貴方の名を聞いてから思い出したのですから。」
亮が気にしなくていい、と言ってくれる。
「本当にすまんな。でも、本当に久しぶりだな。『機音神』神薙亮。」
もう一度謝罪をしてから、俺は差し出された亮の手を掴んだ。
「さて、もうそろそろ私は帰らせていただきましょう。」
亮がそういい残し、立ち去ろうとする。
「待ってくれ!」
亮に確認したいことがあるので呼び止める。
「何でしょうか?」
亮が声に気づき、足を止める。
「お前は…何故ここに?」
「覚えてないんですよね…気がついたらここにいましたし。」
「え?」
「では、これで失礼します。」
そういい残して、亮はワニを持って立ち去ろうとした。だが、数歩進んだところで急に立ち止まって、
「言い忘れてましたが、ルーミアさんの前での行動は、7割が演技です。では、またどこかで会いましょう…それと、この話は竜也君以外には他言無用ですよ。」
と言い残してそのまま帰っていった。あれが演技かよ…さすが元演劇部…
「俺も帰ろ。」
一人でそう呟いてから、来た道をまっすぐ帰っていった。
新キャラ登場です。初期設定っぽい奴書いておきます。(読みにくいかもしれませんが、勘弁してください。)
名前:神薙亮
種族:人間
能力:音を力にする程度の能力
炎や風などを音としてイメージすると、実際に魔法のように使えるというもの。神薙君の場合、こっちの世界(物語の世界)に来る前に覚えていた曲を力にできる。
なので、いろいろな力を使う事ができる。これにより魔界を創るときにだいぶ楽に出来たという。
二つ名:機音神、魔界の祖
機音神は前世で音楽ゲームを極めていたため呼ばれた物。魔界の祖は、魔界の
一部で呼ばれている物である。
見た目:髪は青で、服も青が基調。
性格:冷たい感じもするが、実は優しい。口調の割には面白い事を言ったりする。
人間友好度:高
危険度:低
備考:魔界を神綺と共に作り上げた実力者で、臨人の高校の同級生。音楽に関しては誰にも負けない。戦闘も能力でしっかりこなせる上に、頭も良い。いつもは落ち着いた話し方をしている。
後で主人公組も設定を書こうかなと思っています。