俺たちは神綺の案内で神綺の家に向かっていた。さっきまでとは違い、綺麗な洋風の街並みが広がっている。
「そういえばさ、」
竜也が急に何かを思い出したように神綺に質問しようとした。
「何かしら~?ルーミアちゃんの弱点でも教えてほしいの?」
「ちょっと神綺!」
神綺の言葉にルーミアが面白い反応を示す。まぁ、他人にいきなり弱点暴露されそうになったらそんな反応もするか…
「いや、この街ってどうやってここまで綺麗に作ったのかなって。」
竜也が神綺の返しをスルーしつつ疑問を口にする。
「あら、残念ね。」
「良かった…」
神綺が少し残念そうにしている横でルーミアが安心した声を出す。良かったな。ルーミア。
「確かに…外の景色と見比べるとあまりにも差が大きすぎる。」
竜也の疑問も頷ける。町の外には枯れはてた植物や何の動物のものかはっきり分からない動物の骨が転がっていたりした。もしここに町を作るならそういったものを撤去したりここまで資材を運んでくる必要がある。それを考えると、相当な労力と時間がかかったのではないだろうか。
「この町を作った時…懐かしいわね…」
神綺が心底懐かしそうに答える。相当昔の話なのだろう。
「この町は私とあの子の二人で作ったのよ。」
「え?」
「私はほとんど何もしてないけど、あの子が資材を運んでせっせと町をここまで作り上げてくれたのよ~。あの子がいなかったらこの町の完成はもっと遅くなってたと思うわ~。」
神綺が答える。これだけの町を2人で作り上げたというのか?それはだいぶ凄いと思うが…
「あの子?」
竜也が神綺の話に出ていた『あの子』についての質問をする。
「あ、名前を言ってなかったわね。確か…神薙亮っていったわね…」
「へぇ~。」
神綺が竜也の質問に答える。その神薙亮って奴…相当凄い奴なんだろうな…
(神薙…亮…うっ…頭が…)フラッ
その名前について考えようとすると、急に頭痛に襲われた。
「おい、大丈夫か?」
竜也に心配される。表には出さないようにしてたんだがな…
「お、おう。」
あまりきつい物でもなかったので、大丈夫だと答える。
「あまり無理をしては駄目よ~。あ、もし辛いならおぶっていってあげましょうか?」
「いえ、大丈夫です。」
神綺からも心配される。神綺の台詞の半分はしっかりスルーする。
「あら~、残念ねぇ。でも、無理そうなら言うのよ。」
神綺が俺に対して言ってくる。
「本当に駄目そうな時はお願いします。」
「任せて頂戴。」
一応、ひどくなった時のために保険はかけておく。神綺もそれに対して答える。
(何だったんださっきの…)
さっきの謎の頭痛について考えつつも、引き続き神綺の家に向かっていった。
「もうすぐ着くわ。」
神綺が他の建物より一際大きな建物を指差しながら俺たちに到着を伝える。
「あそこが私の家よ。」
「あれか…」
前住んでいた都の建物にも負けないくらいの大きさの館が見えた。
「さて、入りましょうか。」
「おじゃましまーす。」
扉の前に来たとたんに神綺と竜也は先に入っていってしまった。
「さて、二人もいらっしゃ~い。」
奥から神綺が俺とルーミアを呼ぶ声がする。
「それじゃ、失礼して。おじゃまします。」
「えぇ。お言葉に甘えさせていただくわ。」
そう言って俺たちも館の中に入っていった。
こうして、神綺の下での生活が始まったのだ。