俺と竜也はしばらく再会を喜び合っていた。だが、ルーミアは難しい表情をしていた。
「ルーミア?どうしたんだ?」
「この気配…妖怪じゃないわね…」
「何だと!?」
妖怪じゃない気配…
「まさか…」
「嘘でしょう…」
「何何!?何なのさ!?」
俺とルーミアは予想がつき始めていた。竜也は何も分からないらしく、パニックになっている。
「「魔界の悪魔!?」」
「魔界って何さ?」
予想した結果を言うとき、二人で声がそろってしまった。竜也は魔界を知らないらしく、俺たちに聞いてくる。
「ルーミア…教えとけよ…」
「私も存在は知ってたけど、詳しい事は知らないって言ったでしょ!」
「名前だけでもだな…」
ルーミアとコントのような会話をする。
「仕方ないわね…」
ルーミアが説明を始める。
「魔界って言うのは、大雑把に言うとこの世界よりも危険な妖怪や神が住んでいる所よ。」
「へぇ~」
ルーミアの説明に竜也は理解できたか分からないような返事をする。
「それが来るってことは…」
「十中八九侵略目的でしょうね…」
俺たちは小さな声で話す。すると、都のほうで爆発音がした。
「しまった!!」
音に反応して都のほうを向いたら、都があったはずのところには、何もかもがなくなっていた。
「あらあら~こっちの世界は物騒ね~」
都だった場所から女の声が聞こえた。声のした方を見ると、六枚三対の翼を持った女の人がいた。
「あれは…」
ルーミアが青ざめた顔で見ている。
「あら、ルーミアちゃんじゃない。久しぶりね~」
その女の人はこっちに近づいてくる。
「あら~ルーミアちゃんったら、こんないい男二人侍らせて、羨ましいわ~」
その人はルーミアに向かって軽い口調で話しかけていた。
「嘘だろ…都が…」
俺はというと、一瞬で都がなくなっていた事に対して放心状態になっていた。
「神綺…紛らわしいわよ…魔界の悪魔かと思ったじゃない…っていうか、こいつらは侍らせてるわけじゃないわよ!」
ルーミアは赤くなりながら反論する。
「あらら、物は言いようよ~。それに、銀髪の子も久しぶりね。」
「お、お久しぶりです。」
神綺がルーミアを少しからかい、竜也に声をかける。声をかけられた竜也は少しオドオドしながら挨拶する。
「そういえば神綺…あなた、何しに来たの?」
ルーミアは気にせず神綺に要件を聞く。
「今日はルーミアちゃんに会いに来たのよ~」
「そうなの…」
「それはそうと、銀髪の子は前もいたけど、貴方のお気に入りかしら?」
「ばっ…そんなんじゃないわよ!」
ルーミアは神綺にからかわれ、少し顔を赤くしながら答える。
「あらら、結構一緒にいるみたいだから、お気に入りかと思ったのだけど…」
「違うわよ!」
「そう…なら、私が貰っちゃってもいいかしら?」
神綺はルーミアをからかうように続ける。
「それは…困るわね…」
ルーミアは急にしおらしくなり、小声になる。
「あらあら、いい反応じゃない♪」
神綺は楽しそうにルーミアを見ている。
「そういえば、銀髪の子…竜也と言ったかしら?」
神綺の興味がルーミアから竜也に移る。
「あなた、何でルーミアと一緒にいれたのかしら?」
神綺は竜也に質問する。
「いえ、料理を作ったら気に入られて…」
「あら、やっぱりお気に入りじゃない。」
竜也が質問に答えると、再びルーミアをからかう。
「だから違うってば!」
ルーミアが怒ったように答える。
「ルーミアが人間を側におくことってないのよ。」
「そうなんですか!?」
「そうよ~。」
神綺はルーミアを無視して竜也と話をする。
「ルーミアから貴方をとる事は難しそうね…」
神綺がわざとらしく呟く。それに対して、ルーミアが本気で怒ったような気配を出す。
「なんてね♪冗談よ。」
神綺はルーミアが怒った事を見計らい冗談だと明かす。
「さて、私はもう帰るわね~」
神綺と呼ばれた人が帰ろうとしている。
「待ってくれ!」
俺は、我に返ると同時に神綺に質問をぶつけようとして、神綺を呼び止めた。
「何かしら?私のところに来たいの?」
「そうじゃない。都に…都に何があったんだ!?」
若干怒りと焦りの混じった声で聞く。この人に怒りをぶつけても仕方ないんだがな…
「都?あぁ、あの町のような場所なら、『人間の気配なし。月移住計画成功を確認。自爆します。』とかいって、爆発に巻き込まれて無くなったわよ?」
「そう…か…」
「それだけかしら?」
「あぁ。」
「そう、じゃあまたね。」
そう言い残すと、神綺はどこかに飛んでいってしまった。
「都の事は…気の毒だったわね…」
「仕方ないさ…起きてしまったことは戻らないから…」
「臨人は…強いのね…」
「強くないさ…」
ルーミアが慰めてくれた。妖怪に慰められるって…
「まぁ、仕方ない事なのかもな…」
都がなくなったのは悔しいが、もう戻らない。それに、都があったとしても、人がいないのだ。それに、月移住計画の後の兵器の自爆は噂になってたし。本当にやるとは思ってなかったけど…
「さて、切り替えよう!」
無理やり気分を切り替える。
「ふぅ…いつもの臨人に戻って安心したわ。じゃあ、私はもう行くわね。」
「待った!」
ルーミアが帰ろうとしているところに竜也が待ったをかけた。
「ルーミアも俺たちと一緒に行動しようぜ。」
竜也がルーミアに対して提案する。
「竜也は臨人と行動する気満々なのね…」
「そりゃあ親友だしな!」
ルーミアが呆れたように呟くと、竜也は俺の肩に腕を乗せ、『当然だろ』とでも言うように答える。
「どうしようかしら…」
ルーミアは迷っている。
「俺たちだけだと華が無いんだよなー」
「別に良いじゃない…」
「ルーミアが来てくれれば今までよりいい物食べれるのになー」
「くっ…」
あれ…ルーミアさん、まさか揺れてる?
「臨人の料理は俺より美味いんだよなー」
「うぅ…」
ルーミアがうめき声に似た声を出す。
「ちょっと待て。まさか、ルーミアがある時から都に来なかったのって…」
「あぁ、それか。たぶん俺のせいだな。」
マジかよ!都に来なかったのって、竜也の飯を食ってたからなのか!?
「ルーミアが人間を食べるって言うから、やめさせようと思って臨人から教わったやり方で料理を作ったら、急に人を食べなくなったんだ。」
「そうだったの!?」
「だってぇ…竜也の作るご飯おいしいんだもん…」
「えー…」
何で俺はルーミアと戦ってたんだ…もっと簡単な対処法があったのに…
「で、どうするんだ?ルーミア?」
竜也が、最終確認するように聞く。
「一緒に行かせて貰うわ。」
「よっしゃー!」
ルーミアが折れた。竜也は結構嬉しそうだ。って、これって俺の負担が増えたって事?
(そういうことじゃな)
神が交信で肯定する。マジか…まぁでも、料理好きだから良いんだけどね。
「これから改めてよろしく。竜也、臨人。」
「お、おう」
こんな感じで新たな(?)仲間が増えた。