幻想転生記   作:黒崎竜司

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第16話

俺と竜也はしばらく再会を喜び合っていた。だが、ルーミアは難しい表情をしていた。

 

「ルーミア?どうしたんだ?」

「この気配…妖怪じゃないわね…」

「何だと!?」

 

妖怪じゃない気配…

 

「まさか…」

「嘘でしょう…」

「何何!?何なのさ!?」

 

俺とルーミアは予想がつき始めていた。竜也は何も分からないらしく、パニックになっている。

 

「「魔界の悪魔!?」」

「魔界って何さ?」

 

予想した結果を言うとき、二人で声がそろってしまった。竜也は魔界を知らないらしく、俺たちに聞いてくる。

 

「ルーミア…教えとけよ…」

「私も存在は知ってたけど、詳しい事は知らないって言ったでしょ!」

「名前だけでもだな…」

 

ルーミアとコントのような会話をする。

 

「仕方ないわね…」

 

ルーミアが説明を始める。

 

「魔界って言うのは、大雑把に言うとこの世界よりも危険な妖怪や神が住んでいる所よ。」

「へぇ~」

 

ルーミアの説明に竜也は理解できたか分からないような返事をする。

 

「それが来るってことは…」

「十中八九侵略目的でしょうね…」

 

俺たちは小さな声で話す。すると、都のほうで爆発音がした。

 

「しまった!!」

 

音に反応して都のほうを向いたら、都があったはずのところには、何もかもがなくなっていた。

 

「あらあら~こっちの世界は物騒ね~」

 

都だった場所から女の声が聞こえた。声のした方を見ると、六枚三対の翼を持った女の人がいた。

 

「あれは…」

 

ルーミアが青ざめた顔で見ている。

 

「あら、ルーミアちゃんじゃない。久しぶりね~」

 

その女の人はこっちに近づいてくる。

 

「あら~ルーミアちゃんったら、こんないい男二人侍らせて、羨ましいわ~」

 

その人はルーミアに向かって軽い口調で話しかけていた。

 

「嘘だろ…都が…」

 

俺はというと、一瞬で都がなくなっていた事に対して放心状態になっていた。

 

「神綺…紛らわしいわよ…魔界の悪魔かと思ったじゃない…っていうか、こいつらは侍らせてるわけじゃないわよ!」

 

ルーミアは赤くなりながら反論する。

 

「あらら、物は言いようよ~。それに、銀髪の子も久しぶりね。」

「お、お久しぶりです。」

 

神綺がルーミアを少しからかい、竜也に声をかける。声をかけられた竜也は少しオドオドしながら挨拶する。

 

「そういえば神綺…あなた、何しに来たの?」

 

ルーミアは気にせず神綺に要件を聞く。

 

「今日はルーミアちゃんに会いに来たのよ~」

「そうなの…」

「それはそうと、銀髪の子は前もいたけど、貴方のお気に入りかしら?」

「ばっ…そんなんじゃないわよ!」

 

ルーミアは神綺にからかわれ、少し顔を赤くしながら答える。

 

「あらら、結構一緒にいるみたいだから、お気に入りかと思ったのだけど…」

「違うわよ!」

「そう…なら、私が貰っちゃってもいいかしら?」

 

神綺はルーミアをからかうように続ける。

 

「それは…困るわね…」

 

ルーミアは急にしおらしくなり、小声になる。

 

「あらあら、いい反応じゃない♪」

 

神綺は楽しそうにルーミアを見ている。

 

「そういえば、銀髪の子…竜也と言ったかしら?」

 

神綺の興味がルーミアから竜也に移る。

 

「あなた、何でルーミアと一緒にいれたのかしら?」

 

神綺は竜也に質問する。

 

「いえ、料理を作ったら気に入られて…」

「あら、やっぱりお気に入りじゃない。」

 

竜也が質問に答えると、再びルーミアをからかう。

 

「だから違うってば!」

 

ルーミアが怒ったように答える。

 

「ルーミアが人間を側におくことってないのよ。」

「そうなんですか!?」

「そうよ~。」

 

神綺はルーミアを無視して竜也と話をする。

 

「ルーミアから貴方をとる事は難しそうね…」

 

神綺がわざとらしく呟く。それに対して、ルーミアが本気で怒ったような気配を出す。

 

「なんてね♪冗談よ。」

 

神綺はルーミアが怒った事を見計らい冗談だと明かす。

 

「さて、私はもう帰るわね~」

 

神綺と呼ばれた人が帰ろうとしている。

 

「待ってくれ!」

 

俺は、我に返ると同時に神綺に質問をぶつけようとして、神綺を呼び止めた。

 

「何かしら?私のところに来たいの?」

「そうじゃない。都に…都に何があったんだ!?」

 

若干怒りと焦りの混じった声で聞く。この人に怒りをぶつけても仕方ないんだがな…

 

「都?あぁ、あの町のような場所なら、『人間の気配なし。月移住計画成功を確認。自爆します。』とかいって、爆発に巻き込まれて無くなったわよ?」

「そう…か…」

「それだけかしら?」

「あぁ。」

「そう、じゃあまたね。」

 

そう言い残すと、神綺はどこかに飛んでいってしまった。

 

「都の事は…気の毒だったわね…」

「仕方ないさ…起きてしまったことは戻らないから…」

「臨人は…強いのね…」

「強くないさ…」

 

ルーミアが慰めてくれた。妖怪に慰められるって…

 

「まぁ、仕方ない事なのかもな…」

 

都がなくなったのは悔しいが、もう戻らない。それに、都があったとしても、人がいないのだ。それに、月移住計画の後の兵器の自爆は噂になってたし。本当にやるとは思ってなかったけど…

 

「さて、切り替えよう!」

 

無理やり気分を切り替える。

 

「ふぅ…いつもの臨人に戻って安心したわ。じゃあ、私はもう行くわね。」

「待った!」

 

ルーミアが帰ろうとしているところに竜也が待ったをかけた。

 

「ルーミアも俺たちと一緒に行動しようぜ。」

 

竜也がルーミアに対して提案する。

 

「竜也は臨人と行動する気満々なのね…」

「そりゃあ親友だしな!」

 

ルーミアが呆れたように呟くと、竜也は俺の肩に腕を乗せ、『当然だろ』とでも言うように答える。

 

「どうしようかしら…」

 

ルーミアは迷っている。

 

「俺たちだけだと華が無いんだよなー」

「別に良いじゃない…」

「ルーミアが来てくれれば今までよりいい物食べれるのになー」

「くっ…」

 

あれ…ルーミアさん、まさか揺れてる?

 

「臨人の料理は俺より美味いんだよなー」

「うぅ…」

 

ルーミアがうめき声に似た声を出す。

 

「ちょっと待て。まさか、ルーミアがある時から都に来なかったのって…」

「あぁ、それか。たぶん俺のせいだな。」

 

マジかよ!都に来なかったのって、竜也の飯を食ってたからなのか!?

 

「ルーミアが人間を食べるって言うから、やめさせようと思って臨人から教わったやり方で料理を作ったら、急に人を食べなくなったんだ。」

「そうだったの!?」

「だってぇ…竜也の作るご飯おいしいんだもん…」

「えー…」

 

何で俺はルーミアと戦ってたんだ…もっと簡単な対処法があったのに…

 

「で、どうするんだ?ルーミア?」

 

竜也が、最終確認するように聞く。

 

「一緒に行かせて貰うわ。」

「よっしゃー!」

 

ルーミアが折れた。竜也は結構嬉しそうだ。って、これって俺の負担が増えたって事?

 

(そういうことじゃな)

神が交信で肯定する。マジか…まぁでも、料理好きだから良いんだけどね。

 

「これから改めてよろしく。竜也、臨人。」

「お、おう」

 

こんな感じで新たな(?)仲間が増えた。

 


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