「警告!警告!妖怪の大群が接近中!」
警報がけたたましく鳴り響く。やっぱ来たか…でも、対策は出来ている。俺は都のパノラマがある軍人の部屋で、兵士をあいつの対策に従った配置につけていた。
「臨人様!兵の配置、完了致しました!」
兵士が一人俺に近づいてそう告げる。
「そうか…」
「後は臨人様だけです。」
「分かった。」
そんな会話をした後、今回配給されたインカムをつけつつ席を立ち、自分の配置である門の正面に向かった。
そこには兵士が数人来ていた。
「本当に大丈夫か?」
「いくら臨人殿とはいえ無謀では…」
兵士が数人、俺に話しかける。
「心配すんなって。俺が死ぬと思うか?」
兵士の心配を笑い飛ばすように問いかける。
「いや…」
「そうは思わぬが…」
兵士がなおも心配してくる。
「俺が今まで妖怪退治を繰り返して、都に近づけたか?」
今度は事実を確認するように問いかける。
「たしか…無かったな…」
「無かった筈ですな…」
「だろ?」
問いかけに答える兵士に対して軽めに返す。
「だから、今回も心配すんなって。」
俺は兵士に対して安心させるように話す。
「わかった。死ぬなよ。」
「承知。ですが、生きて帰ってきて戴きたいですな。」
兵士はそういい残して都の奥に入っていった。
「ふぅ…」
門の前には俺一人が残った。これで俺は自分のやり方が出来る。
「さて、これで…」
俺は一息ついてから服のポケットに入れてあったボタンを取り出し、それを押す。このボタンは都の兵器を起動させるスイッチだ。これ一つで都の兵器が全て起動するって言うんだから驚きだ。
「後は…」
ボタンを押し、自分の後ろの兵器が起動した事を確認する。これで、俺以外の準備が終わった筈だ。
「よし…」
後は俺の準備をすればOKだ。
(橋…一人…来るのは妖怪の大軍…)
心の中で今回の戦いについての情報を繰り返す。
(不安なのかの?)
(いや、そうでもない。)
神が俺に向かって問いかけてくる。
(怖く無いんじゃな。)
俺の答えに感心したように神が語りかける。(心に)
(そうでもないさ。)
(そうかのぅ…わしが他に送った奴は皆、普段は強気なくせに窮地に立たされると弱気になっとったからのう…)
(へぇ…)
なんとも情けない話である。
(まぁ、死なない程度に頑張る事じゃな。)
そういい残すと、神との交信が途絶えた。
「死ぬわけねぇだろ…」
いくら妖怪の大軍とはいえ、ルーミアが来ないのだ。ルーミア以外の妖怪はあまり強いのを見かけてないから大丈夫だろう。
「さて、そろそろ武器を構えるか…」
遠くに土煙が上がるのを見て、俺は小さく呟いた。
???Side
森の奥で、大量の妖怪の前に一人の男が立っていた。その男は小さく呟いた。
「始まったな…」
男は五千体ぐらいの妖怪の群れがその場を離れたのを見て笑みを浮かべ、残った妖怪に向けて叫んだ。
「者共!開戦だ!」
妖怪の大軍が男の一声で動き出した。
「川神臨人…必ず殺す…!」
先ほどとは違い、憎悪に満ちた表情で忌々しげに呟き、妖怪の向かった方向に歩みを進めた。
???Side Out
土煙と共に妖怪が向かってくる音が大きくなってきた。
「やるか…」
戦いが始まる前にもう一度都を見る。もうここに戻ってくる事はないだろう。
(考えてみると寂しいもんだな…)
その考えを振り払い、武器を出す。
(来い!蛇矛!)
橋の上に一人ということで、この武器を出す。ぶっちゃけ、この武器以外考えてなかったし。
蛇矛を構えたと同時に妖怪の大軍が目に見えるぐらいまで接近してきた。
「ウオォォォォォォ」
森の木を薙ぎ倒しつつ、妖怪が接近する。その中でも俺に一番近づいていた奴から何体かずつ切り倒す。その後、蛇矛の本当の持ち主の構えを取り、俺は咆哮を上げる。
「さぁ、死にたい奴だけかかってきな!」
さぁ、開戦だ。