俺はルーミアと戦った後、妖怪が何故連日都を攻めていたのかを聞いていた。
「実は、私達は人間の月移住計画を知ってるの。」
「何だと!?」
なんてこったい…計画は知られてたのかよ…
「私が言ったわけじゃないんだけど、どこからか情報が入ってきたのよね…」
「そうか。」
ルーミアじゃない…ということは誰だ?都に近づく奴はルーミア以外は知性が無い。それに、襲ってきた奴は皆殺しにしてるから、ルーミア以外には情報はいかないはずだが…
「都に裏切り者が…」
「それは無いと思うわ。あなたたちの誰かが裏切ったら私に情報を伝えて都を滅ぼしてるはずよ。」
「それもそうだな…」
もし俺が裏切り者だったら、俺が外回りに出ている時間を教えてルーミアを都に向かわせる。俺がいたとしても、もっと戦略的に攻めてくるはずだ。
「まぁ、用心しておきなさい。最近、魔界のほうも騒がしいらしいしね。」
「魔界?」
魔界?知らないな…
「魔界については私も詳しくは知らないわ。でも、こっちの世界への進出を考えてるらしいわ。」
「へぇ…」
話が多少ずれたが、いい情報を聞けた。しかし、魔界か…警戒しといた方が良いかな…
「私から言えるのはこれだけね。せいぜい生き残って私を愉しませて頂戴。」
そういい残してルーミアは去っていった。
「俺も帰るか…」
帰ろうとすると、ルーミアが戻ってきた。
「ん?もう言う事はなかったんじゃないのか?」
「言い忘れた事が二つあったわ。一つ目はあなたたちの計画?の実行日に大量の妖怪が攻め込むわ。対策しておく事ね。二つ目は、私はその時参加しないわ。」
「そんなこと言って良いのか?」
「いいのよ。私も愉しませてくれる人を失うわけにはいかないから。」
「そうか。」
不思議なものだ。妖怪なのに妖怪の有利な状況を崩すなんて…
「今度こそ言う事は全部言ったわ。じゃあね。」
さっきと違い、決め台詞(?)は言わずにさって行った。
「今度こそ、帰りますか…」
俺は、人間にとっての不利な情報を持って都に帰った。
次の日、俺はルーミアから聞いたことを報告するため上層部の人間に会いに行った。
「失礼します。」
俺はそう言ってから中に入る。
「君か…何か用かい?」
中にいた俺の同期が声をかける。正直こいつは苦手だ。
「急いで会議を開いてくれ。」
今回はさすがにヤバイ。
「どうしてだい?君が会議なんて…」
「どうしてもなにも、ちょっとマズイことになった。」
「分かりましたよ。すぐ手配します。」
奴はそう言って上層部のいる部屋の奥に入っていった。
そして…
俺は少ししてからあの会議場の前に来ていた。
(俺が自分から進んでここに来る羽目になるとは…)
「珍しいですね。会議に消極的なあなたが会議を開くなんて。」
会議場に入る直前、永琳さんがそう声をかけてきた。俺からしたら何も問題ないのだが、ほかの人にとってはこれは一大事だ。
「少し厄介な事になりまして…」
「何があったのですか?」
「詳しくは会議で言います。」
永琳さんの問いに軽く答えて、会議場に入っていった。
会議場に入り、少ししてから会議が始まった。
「今回集まってもらったのは、臨人殿から重大事項があるという事で集まってもらった。」
進行役の人が皆に向けて言った。
「重大事項?」
上層部の人間が反応する。
「それについては俺から説明します。」
俺はすぐに伝えないとヤバイと思い、突然立ち上がる。
「臨人殿が…自分から…」
上層部の人間は驚いている。確かに、俺から発言する事はほとんど無いからな…
「これから言う事は、月移住計画にも関係しています。」
「計画に関係しているだと…」
「何かあったのか…」
月移住計画と言っただけで雰囲気が一変する。小声で話すものも現れる。
「静粛に!!!」
進行役の人が浮き足立つ人間を静める。すると、一気に会場が静かになった。
「臨人殿。」
進行役の人が俺に詳細を話すように促す。
「えー、今回皆さんを集めたのは、妖怪の侵攻についてです。」
『妖怪』と聞いただけでまた騒ぎ始める。俺はそれを気にせず話を続ける。
「月移住計画の情報が妖怪側に漏れたらしい。そのせいで、現在のように侵攻が激しくなっているようです。また、妖怪は移住計画の決行日も知っているようで、その日に総戦力でせめて来るようです。」
俺が大まかな内容を伝えると、騒ぎが大きくなった。
「心配ありません。」
騒ぎの中、凛とした声が響く。この声…
「妖怪の対策なら組んでおきました。」
会議前に会った同期が声を上げる。
「おぉ、聞かせてもらおう。」
上層部の人間が安心したように聞こうとする。
「分かりました。では…」
そういうと、あいつは妖怪に対する策をいくつも披露する。妖怪がどこに来たらどう迎え撃つか、ロケットをどう守ればいいかを完璧に解説していく。
「…以上です。」
数十分ぐらいしてそいつの説明が終わった。終わった後、そいつは進行役や上層部を見ずに、俺のほうを向き直り、自慢するような顔を向け、「どうでしょう?大将さん?」と言ってきた。
(なんだ…?)
奴の行動を不審に思ったが、俺は「まぁ、良いんじゃないか?」と言っておいた。すると、上層部の人間が口々に安心の言葉を口にする。
「ほかに対策のあるものはいるか?」
進行役に人が全員に聞く。ほかには誰も出なかった。
「では、これにて終了とする。解散!」
進行役の人が会議を終わらせたとたん、皆が一斉に退出する。皆が退出する中、対策を話していた奴が俺にそばに来て、すれ違いざまにこう言った。
「成功すれば良いですねぇ。移住計画…」
そういった後、あいつはどこかに行ってしまった。
「何だったんだ…まぁいいや。」
気にする必要も無いだろう。
「さて…帰るか…」
そう呟き、帰ろうとすると永琳さんがこっちに来た。
「本当に大丈夫?あの策、不自然な部分もありましたが…」
そう永琳さんに言われた。確かに、完全とはいえない。でも、ロケットの周りに人員を配置するのも、正面を俺に任せるのも戦力を考えれば当然の事だ。
「大丈夫でしょう。あの対策も不自然とはいえ、当然といえば当然のやりかたでしょう。」
ロケットを守る事が第一目標だし、正面以外に俺を配置すれば戦力が傾く恐れがある。
「そう…でも、無理はしないで頂戴。あなたがいなくなると、輝夜様も綿月姉妹も悲しみますので。」
永琳さんは俺の答えに対して、渋々了承し、忠告をしてくる。
(綿月姉妹…ここでその名前が出てくるか…)
俺がこの都に来て、輝夜と会っていたときに知り合った姉妹である。姉が豊姫、妹が依姫という。この姉妹は輝夜と仲がよく、俺ともよく話をしたりして、親交があった。俺は二人に護身術や学問を教えていた。そのためもあって、二人とはかなり仲良くなっていた。
(苦しいな…)
いろいろ思うところがあるが、俺はどのような形であれ月に行く事は出来ない(と思う)ので、永琳さんの言葉に答える事が(多分)できない。でも、それを伝えたら永琳さんは俺が月にいけるよう必死で手回しするだろう。それは心苦しいので、吐きたくはないが、嘘を吐く。
「分かりました。無茶は出来る限りしないようにします。」
「その言葉…信じてもいいのよね…」
涙目+涙声で聞いてくるこれほど心配されるのは初めてだ。でも、本当のことは言えない。なので、また嘘を吐く。
「大丈夫です。」
「そう、安心したわ。」
そう言って永琳さんは帰っていった。
「俺も…帰るか…」
苦しい心持のまま、俺も帰った。
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