あの後、外回りに行って帰ってきてから数ヶ月が過ぎ、計画の決行日が刻一刻と近づいてきていた。
「そろそろか…」
そう思いながら街に出る。すると、ルーミアが来たときと同じような警報が聞こえてきた。
「またこれか…そろそろ決行日なんだから勘弁してほしいぜ…」
もう何回目になるか分からない警報を聞きながら都の門に向かう。あんまり妖怪が来すぎると月移住計画に支障をきたすから、そろそろ落ち着いてほしいんだけど…。
「あら、大変そうね。毎日毎日妖怪の対処で。」
永琳さんがこっちに来てそう話しかけてきた。
「確かに大変ですよ。もう何日連続かわかんなくなってきてる位ですから。」
「そうね…月移住計画も近いのにこれだけ来られたら計画も…。」
「計画のときの防衛ならお任せください。妖怪一匹通しませんから。」
「それは分かってるわ。でも、ここまで頻繁に来られると人々が恐れてしまうわ。」
「そうなんですよね…。」
二人して少し愚痴をこぼしてしまう。ここの人たちの肝っ玉の小ささは結構なものである。妖怪一匹侵入してきただけでも大騒ぎになるレベルである。一般人は仕方ないが上層部が我先に逃げようとするのはどうかと思う。おかげで俺の仕事が増えるのだ。まぁ、避難誘導は全部部下に任せているのだが。
「上層部がこれに対してどんな政策を行うのかしらね。」
「そうですね…」
上層部の勝手で移住の日が変更になる可能性もあるので非常に不安である。
「計画については私が何とかするわ。あなたは引き続き妖怪の撃退をお願いするわね。」
「もちろんです。」
「じゃあ、今回もよろしくね。」
「では、行ってきます。」
会話を終え、撃退するためにいつもの戦闘域に向かう。ちょっと会話に時間をとってしまった気がするので急いで向かう。
「やっと着いたか…」
全力で走って戦闘を行っている門の前に来た。
「少し遅かったですな。臨人殿。」
「すまん。」
「まぁ、これだけ絶えず襲撃が来ては一日ぐらい遅れる日があろうな。」
「俺としたことがな…。」
やっぱ遅れてたか…
「後は俺に任せろ。」
「では、私はいつも通り離脱させていただきますぞ。」
「あぁ。後は任せろ。」
遅れたことを突っ込まれつつ、先に戦っていた奴らを離脱させる。
「さて…行ったか…」
味方が全員離脱したことを確認して、妖怪の勢力の確認をする。
「うわ~…どれも強くなさそうだな…」
どいつもこいつも弱そうだ。最近は骨のある妖怪が少ない。最近の妖怪は集団で来るが、一体一体が弱い。
「じゃあ、やりますか。」
いつも通り小さく呟く。
(出でよ!鉄騎尖!)
俺は標準的な柄だが穂先が三段構えのようになっている槍を出す。
「さぁ、かかってきやがれ!」
大声で啖呵を切ると、一斉に妖怪が俺に向かってきた。なんとも単純な…
妖怪の一匹が俺を殺そうと腕を伸ばす。
「ふんっ!」
伸びてきた腕を躱し、穂先で突き刺す。突き刺した直後に石突きを利用して死体を突き飛ばす。その後、周りの妖怪を吹き飛ばすように一回転しながら槍で払う。払った直後も油断せず片手で槍を振るう。
「はっ!せやっ!」
迫ってくる妖怪を何体も殺し続ける。久々に槍を使ったが、やっぱり槍の方が戦っていて楽しい。それに、大勢の妖怪が一気に来ても対処しやすい。
「やっぱ槍の方がいいな…」
小さく呟く。転生前から遊びでよく槍を使っていたがやっぱりしっくり来る。そんなことを考えていたら妖怪の殲滅が完了したようだ。
「ん?もう終わりか。」
少し名残惜しいな、と思いつつ構えを解く。すると奥のほうからルーミアが現れた。
「お見事ね。前会ったときより強くなってるんじゃないかしら。」
「ルーミアか。何だ?お前も襲撃に来たのか?」
「そうじゃないから安心して頂戴。」
「そうか。」
襲撃に来たわけじゃないらしい。
「あなた、今なんで妖怪が連日都を攻めてるか知りたくない?」
「知ってるのか?」
「えぇ。でも簡単に教えるわけにはいかないわ。」
「教えてくれりゃ楽なんだが…」
「じゃあ私と戦って頂戴。」
「何故?」
ルーミアが戦闘を挑んできた。何故だ?お互いにメリットは無いぞ?
「リベンジよ。」
「面倒な…」
「その余裕、無くさせてあげるわ。」
「やるしかないか…」
向かってくるルーミアを迎え撃つために鉄騎尖を構え、突っ込んだ。
人妖大戦までが遠い…