もしもし、ヒトモシと私の世界【完結】   作:ノノギギ騎士団

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【新訳】表にならないアノ事件の真相!【長期密着取材】巻70

 我々、ゴーストポケモンマルヒ倶楽部(弊社)は、歴戦のトレーナーからの投稿を募集しています!

 

 今回は寄せられたマルヒ情報のなかから特に編集者を驚かせた、アノ事件の真相に迫った人物を紹介していく!

 

 

 

 

「イッシュを旅するバックパッカー レイジロウ氏(以下敬称略)」

 

 

 

 全国のオカルトを愛する読者の皆さん、おはよう、こんにちは、こんばんは、レイジロウです。

 

 これまで2回にわたりストレンジャーハウスにまつわる事件の概略、解説、考察を行ってきました。事件について(詳細⇒68巻)、人物について(詳細⇒69巻)理解が深まったところで今回は事件に関係があると思われるポケモンについて考察をしていこうと思います。

 

 さてポケモンについて考察する前に、我々は少女を捕らえた「夢」について知っておかなければなりません。

 

 夢は眠っている間に見るもの、と思っている方が多いかもしれません。自分はその筋の専門家ではないのでここでは簡単な説明になりますが……まず、眠りは深いものと浅いものがあります。夢というのは、なかでもごく浅い眠りのなかで起きるものなのです。皆さんも、起きているのか寝ているのか、寝起きの曖昧な時間というのを経験した方は多いでしょう。その時間こそが夢を見ることができる眠りの浅い時間なのです。

 

 ここでもう一度「夢」と体の関係について考えてみましょう。

 少女はいなくなるまで「夢」を見ていたのです。

 

 ふつうの人間にとってこれが『おかしな』事態であることをお分かりでしょうか。眠りは深いものと浅いものが交互に……ちょうど波打つように訪れるものなのです。しかし、少女は「夢」を見るほど浅い睡眠のなかにいました。きっと波長にすれば平坦でしょう。そして夢を見ている間とは意外にも眠れないものです。また徹夜をしたことがある皆さんはよーくおわかりになると思いますが、丸一日起きているとだいたい思考力・判断力が落ちます。その状態でさらに数日いたらどうなるでしょう。成人の健康体であっても心身に異常をきたしてしまいます。

 

 ストレンジャーハウスにまつわる言葉として『「夢」を見続けたが故にいなくなったのだ』というふうに語られることが多いですが、これではまるで少女に原因があるような言い方になります。ポケモンが原因であると仮定すれば『「夢」を見せ続けられた故にいなくなったのだ』というふうがしっくりきます。

 

 さて、「夢」を見続けるというのが人間にとってどれだけ危険か。ふつうの人間にとって『おかしな』事態であることがおわかりいただけたでしょうか。

 

 ここからが本題です。

 なぜ少女は「夢」を見続けなければならなくなったのか。少女を苦しめたポケモンとは何なのか。

 

 結論から申しますと、これというポケモンの特定は不可能でした。

 

 これからも特定は難しいでしょう。なぜなら事件からすでに何年も経っていること、関係者が軒並み行方をくらましていること、そして現地に行っても生態をうかがわせるようなポケモンの生活痕が見られないことです。

 

 しかし、数少ない物証と筆者たちが得た経験から恐らくこのポケモンかもしれない……というところまで絞り込むことができました。

 

 その前に、よく犯人候補として挙げられることの多いポケモンについて考察をしていきます。まずはジュペッタ。現在、ストレンジャーハウスで見かけることが多いポケモンのひとつです。また、ポケモンとしての生い立ちから「いかにも」と思われています。また現地で聞き取り調査を行った際も、「少女はかつてぬいぐるみを粗末に扱ったのではないか」ということがまことしやかに囁かれていました。しかし、ここでも何度か論題になったように(参考⇒巻53)ジュペッタは「さいみんじゅつ」系の、人を眠りに誘うわざをもっていないことから犯人候補から外れます。

 

 どうしてもジュペッタが怪しいという思う人の気持ちも分かりますが、「夢」を見ることができる、眠りの浅い状態に意識を固定しておく方法をジュペッタは持っていないのです。まだ物理わざの「ふいうち」や「はたきおとす」をつかい少女を失神させ、「あやしいひかり」で混乱状態に陥れたというほうが納得できるくらいです。またジュペッタはその性質から怨み深いポケモンの代表格(もちろん、反面として愛情も深いポケモンでもある)です。いちいち「夢」で苦しめるなんてことをするでしょうか。「みちづれ」を使い、いっそ人間ともども……というほうが性質を考えてもしっくりきます。

 

 さて次はヒトモシです。ヒトモシも「いかにもあやしい」雰囲気がありますが彼らも候補からは外れます。ジュペッタと同じく「さいみんじゅつ」系のわざをもっていないからです。ただポケモンとしての性質上、少女の命が燃え尽きる瞬間……それを察知して寄ってきた可能性はあります。間接的に犯人になった、主犯の手伝いをした、という可能性は拭い切れません。しかし、ヒトモシは基本的に元気でエネルギッシュな人が好きというデータ(ライモン在住の某双子提供)があります。今でこそハウスはヒトモシの巣窟になっていますが、当時はごく少数だったと考えられます。

 

 以上、これまでの仮説の再考察を行うと共に、我々は現時点で最も可能性が高いポケモンにたどり着きました。

 

 そのポケモンは、世にも稀。

 人やポケモンをを眠らせることができる「さいみんじゅつ」系のわざをもち、なおかつ人の意識を「夢」のなかに固定し、命を削ることができる……。

 

 しかし、そのポケモンの個体数は少なく、そして存在が確認されている場所もイッシュから遠く離れています。どうして、この場所にあのポケモンが? 我々が唯一解決できなかった理由のひとつでもあります。ですが、そのポケモンでなければ事件の辻褄があわないのです。それ以外のどのポケモンで試行しても矛盾が生じてしまいます。

 

 

 そして、今回、我々はこの考察を裏付ける証拠を手に入れるに至りました。ハウスのなかにある書架、そこには夢についての書籍がいくつも並んでいます。そのなかにクレセリアというポケモンについて書かれた本があるのです。三日月を象徴するクレセリア。その羽には悪夢をはらう力があるとされています。噂では「悪夢の感染を恐れた両親は娘を置いて逃げた」というものもありますが、事実は真逆でしょう。両親はきっと「夢」が何のポケモンに由来するものでそれをはらうにはどうするべきか、分かっていたのでしょう。だからこそ少女を残し家を空け、クレセリアを求め奔走していたと思われます。

 

 さて、クレセリアを語る上で忘れてはならないのがシンオウ地方のポケモンです。そして、そこにはクレセリアと対極をなすポケモンがいます。

 

 親愛なる倶楽部の皆さんは、もうお気づきでしょうね。

 

 

 

 

 

 

 そう、事件を引き起こしたポケモンは――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 取材協力者 サイキッカー シオリ女史。







【あとがき】
 賛否両論、諸々の考察結果があると思います。もちろんそれらを否定するものではありません。この話もストレンジャーハウスについての、この作品世界での解釈の一例となります。

【次話】
 普通の文章にもどります。

作中、面白かったもの、興味深かったものを教えてください。

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