色々大変なもので。
時々、仕事をしているときにふと思いつく。
なにかと言えば武器のアイディアである。
師匠のアトロが狂ったように対凶魔武器を開発しているのをずっと見ていた俺も開発するようになった。
アトロの元から離れた後も自分で開発していた。
それは魔神を倒した後も続けていた。
時々、武器や薬品を作っているとき楽しいと感じたことがある。
それは魔神や凶魔どもを抹殺するのを楽しみにしているからなのか、それともただ純粋に開発することが楽しかったのか、そのときはわからなかった。
魔神を倒した後、フレミーとしばらく旅をしていたとき、
「あなた、ものを作るときは楽しそうな顔をしているわね」
と言われた。
そのとき初めて自分が純粋に楽しんでいたんだと気付いた。
ちなみにそのときのフレミーはなぜかいじけているような感じだった。なぜかはわからない。
「アド、夕飯ができたわ」
フレミーが声をかけてきた。
もう少しでいい感じになりそうなのに。
「ああ、わかった」
「落ち着いたらでいいわ」
そう言ってフレミーはリビングへと戻っていった。
気の利く妻だと思いながら作業を進める。
ものづくりとは不思議なもので、みるみるうちに時間が減っていく。
たしか作業を始めたのは陽が落ちる少し前だったはずなのだが、気付けば月の光が高い位置から差している。
そう言えばさっきフレミーが呼びに来ていたな。
さっきってどれくらいなんだ?
そう思うような集中ぶりである。
フレミーのことを考えていると、フレミーが再びやってきた。
「アド、私、あなたを待っているのだけど…」
「悪いフレミー。つい長引いてしまってな」
なんかフレミーが不機嫌だ。
いつよりちょっと恐い。
俺はどのくらい待たせてしまったのだろうか。
フレミーの後ろ姿に少し恐怖しながらリビングへと向かう。
テーブルにはシチューが置かれていた。
「今日はシチューか」
「ええ、そうよ。いつもはすぐに気がつくのに、ものづくりのときはわからないのね」
フレミーの目が冷たい。
やっぱり怒っている。
「とりあえず、頂きましょう」
重い空気のまま食事が始まった。
スプーンでシチューを一口分掬う。
シチューからは湯気がたっていない。
シチューを口に入れ咀嚼する。
冷たい。
俺がフレミーをどれだけ待たせていたかわかるほどに。
「フレミー、ごめんな」
一瞬フレミーと目が合う。そしてまたシチューに目を落とすフレミー。
「もういいわ」
そう言うとフレミーはシチューを口に入れた。
今は怒っていないように見えるがまだ少し恐い。
「でも、よそってしまったんだったら、先に食べていればよかったのに」
するとフレミーはスプーンを持った手を止めてなんだかもじもしし始めた。
俺とシチューを交互に見つめながら。
「…だって、一緒に食べたかったから」
フレミーの頬が少し紅くなっている。
色白のフレミーはすぐにわかるのだ。
「それに、一度ものづくりを始めたアドはいつも素っ気なくなるもの。食事くらい、一緒に食べたい」
俺はフレミーに寂しい思いをさせていたのかと今更気付く。
自分が楽しくて、フレミーのことを考えてあげれなかった。
元々、フレミーは誰かと一緒にご飯を食べたいなんて思わないやつだった。
そんなフレミーが、こんな自分と一緒にご飯を食べたいと言ってくれる。
それは俺にとって、嬉しい変化である。
「フレミー、ごめんな。寂しい思いをさせて」
「別に寂しいというわけではないわ。…ただもう少し私にも構って欲しかっただけよ」
顔をシチューに向けたまま、時折上目遣いで俺を見つめるフレミー。
それは寂しいんじゃないかとは思ったがそこは言わない。
またフレミーが怒りそうだ。
そしてまたシチューを口に入れモグモグ食べるフレミー。
「フレミー、ありがとな」
そう言うとフレミーの頬がまた紅くなった。
下を向いたまま、俺と目を合わせようとしない。
でもまた一度だけ俺を見た。
「…うん」
そのときの表情は、あなたといると生きたくなると言った時と同じだった。
そんなフレミーを愛おしく思う。
いじけるフレミーもなかなか可愛いと思います。個人的に。
アドレットを待ちながら文句とか言ってそうですよね。
「アドレットの馬鹿…」
とか言って。
やっぱ可愛いですね。
これからも更新が遅れると思います。
もう少ししたら落ち着くと思いますので気長にお待ち頂ければ幸いです。