だって35試験小隊よんでたんですもん!
仕方ないさ!
すみません!ごめんなさい!
「うわあああ」
誰が口にしたかわからない叫び声。いや、悲鳴だろう。
それが広いボス部屋を満たした。
プレイヤーのほぼ全員が、己が武器を縋るように握り締め、眼前の現状を否定する。
リーダーであるディアベルが真っ先に死んでしまった。
この想定外な出来事はレイドを崩すのには充分だった。
パニックを起こしたプレイヤーたちのHPはすでに半分を下回っていた。
完全に恐慌して逃げ惑うプレイヤーもおり、これでは無闇に指示を出したところで通るとは限らない‥‥
ならば、やることは一つだ。
「俺たちの役目は時間稼ぎだ。」
俺は走りながら、後ろにいるアスナに指示を出す。
こいつの武器は細剣だ。下手に攻撃を受けたら武器の耐久値を持って行かれるだろう
「俺がボスの攻撃をなんとかするから、隙を見て攻撃してくれ」
「解った!」
アスナの返事と同時に俺はボスへ全力で突っ込んだ。
挨拶とばかりにボスの背中に片手剣基本突進技《レイジスパイク》を叩き込む。
ダメージによって俺へのヘイトが上昇したのか、コボルド王は野太刀を構え、俺を標的と捉えた。
深呼吸を繰り返し、状況を再確認する。
1.ボスの攻撃は躱すか、受け流す
一発でももらえば、防具なんてほぼ無い俺は終わりだ
2.防御だけに専念する
士気が戻るまでの少しの時間でいい。下手に攻撃するより防御に集中したほうがいいだろう
3.何分持つか、だな
ボスの技のスピードが半端なく速い。あんなのをノーミスで見切り続けろって方が無茶だ。
そんな俺の思考を切るようにして
コボルド王の咆哮と共に野太刀が振り下ろされた。
「ハァーハァーハァ‥‥どんぐらい経った?」
まだ、戦闘を開始して数分ってところだろうか?
一秒一秒がとても長い。放たれる一撃に全神経を集中して挑む。掴んでいる剣をチラッと見ると見るからにボロボロだ。残り耐久値が僅かなのだろう。
「‥‥どれくらい保つか、だよなっ!」
振り上げられた攻撃をすかさず、《バーチカル》で弾き返す。
が、上段からの刃がくるりと半円を描いて動き、真下に回ったのだ。
「くそっ!!」
急いで、右手の剣を引き戻そうとしたが、ダメだ。間に合わない。
真下から跳ね上がってきた野太刀が、俺の身体を捉え、鋭い衝撃が走る。
「あっ‥‥‥‼︎」
吹き飛ばされた俺の元にアスナがかばうように駆け寄ってくる。
「っ!‥‥来るな‼︎」
自分に近づくアスナを標的に定め、コボルド王が高く掲げた刃が、血の色のライトエフェクトに光った。
「グラァァァァ‼︎」
アスナに振り下ろされた野太刀の刃が迫る。その瞬間、彼女の頭上から緑色の光芒を引いた両手斧が阻んだ。
その激しい衝撃にコボルド王が大きく後方へノックバック。
割って入って来たのは、褐色の肌のB隊リーダーの確か、エギルだった。
「回復するまで俺たちが支えるぜ!ダメージディーラーにいつまでも壁やらせる訳にはいかないからな」
俺の背後からキリトも駆けつけ、懐からポーションを取り出し、投げ渡してくる
「悪い、待たせたな」
「‥‥‥‥‥‥おせぇーよ」
文句を吐きながら、貰ったポーションをぐっと口に押し込む。‥‥うん。やっぱり不味いわ、これ。どうにかならなかったの?
エギルを含む数人がコボルド王の攻撃をローテしながらなんとか凌いでいる。
が、長くは続かない
「キリト、お前ならアレ勝てるか?」
キリトは渋い顔をしながら「絶対とは言い切れない」と答えた。
「‥‥充分だ」
ボスのHPは残り僅か。俺、キリト、アスナで削り切る。
俺は立ち上がり、インファングに向かって疾走した。
「スイッチ!」
俺の声に反応したエギルがソードスキルで武器を大きく弾く。その隙間をから這い出て左肩口から腹まで切り裂き、剣を跳ね上げる。
「おおおおおお‼︎」
Vの字を軌跡を描いた剣が右肩口から抜けた。ソードスキル《バーチカル・アーク》を叩き込んだ。が、まだだ!
「アスナ、《リニアー》‼︎」
俺の斬撃を喰らった直後、インファングの左脇腹にアスナの渾身の《リニアー》が撃ち込まれた。
残りHPは1ドット。僅かに残るそれはプレイヤー達に絶望を与えた。
インファングが俺たちを見て、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべ垂直に飛び上がった。
飛び上がった瞬間、その笑みが消えた。
理由は下にいる1人のプレイヤーが邪悪とも取れる笑みをこちらに向けているからだ。
「「これで、‥‥終わりだ‼︎‼︎」」
インファングの斜め背後から《ソニックリープ》によって砲弾のように上空へと飛び出すキリト。
鮮やかなライトエフェクトが長いアーチを描いてインファングを捉えた。
地面に叩きつけられたインファングは一瞬、よろめきその身体に幾つものヒビが入る。消えるような咆哮をした瞬間、それは硝子片となって盛大に四散した。
俺たちの視界には【Congratulation!!】というシステムメッセージが現れた
スノボー用品がボートを残してどっかに行きました
マジで泣きそう