茅場の説明が長いわ!短縮したい
では、どうぞ
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
俺たちの上空に現れた真紅ローブのアバターは開口一番にそう告げた。
俺は意味が分からず周りを見渡した。しかし、どのプレイヤーもこの言葉の意味を理解したものはいないようだ
この疑問を考えている俺たちに次の言葉が届いた
『私の名前は茅場晶彦、今やこの世界のすべてをコントロールできる唯一の人間だ』
「はぁ!?」
驚愕のあまり、俺の口から間抜けな声が漏れた。
茅場晶彦だと!?
知らないはずがない、ナーヴギアの基礎設計者でもありながら、このSAOの開発ディレクターでもある天才だ
しかし、何故だ?何故、こんなことをする?
俺は必死に思考を回転させたが、次の言葉で中断させられる。
『プレイヤー諸君は、すでにメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかし、これは、不具合ではない。これは《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』
この言葉に全プレイヤーが一斉に騒めく。
『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、自発的にログアウトすることはできない』
ん?城だと?城ってどこだよ
『‥‥また、外部の人間によってナーヴギアの停止あるいは解除は有り得ない。もし、それらが試された場合はー』
僅かな間、静寂がこの場に重くのしかかる。
そして
『ーナーヴギアが発する高出力のマイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止される』
俺は近くにいたキリト、クラインと顔を見合わせた。
2人共、混乱を隠しきれていない
しかし、茅場は俺たちにこう宣言したのだ
ナーヴギアの電源を切ったり、ロックを解除しようとすれば、ユーザーを殺すと
集団のあちこちがざわめき始める。この言葉を理解出来ていないか、理解することをこばんでいるのだ
クラインの乾いた笑いが漏れる
「はは‥‥なに言ってんだ?ただのゲーム機で脳を破壊するなんて‥‥人を殺すなんてできるわけがねぇーんだよ。だろ?キリト!ハチ!」
いや、ナーヴギアの原理的にはそれとまったく同じ家電製品を知っている
つまりはー
「電子レンジ」
キリトが小さく呟いた。アイツも同じ考えに辿り着いたみたいだな。
「原理的には可能だろうな。でも、電源コードさえ抜いちまえば大丈夫なんじゃ?」
「あぁ、そんな高出力の電磁波は発生できないはずだ。バッテリーでもないか‥ぎ‥り‥」
キリトは言葉を口にしたことにより思い出した。
その言葉を聞いた俺とクラインも理解した。理解してしまった‥‥
「内臓‥‥してるぜ。ナーヴギアには大容量のがな」
「おうよ、ギアの重さの3割はバッテリーだって聞いたぜ」
そして、また茅場からの説明が始まった
『残念ながら、この警告を無視してナーヴギアの強制解除を試みた者たちがいる。結果、すでに213名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
茅場が腕を振るうと現実世界のニュースであろう映像が幾つも出てきた
つまりは、事実だ
そう理解した瞬間、手足が震えだした。キリトもよろめいだがなんとか倒れるのを堪えた。クラインは力無くその場に尻餅をついた
『諸君が向こう側に置いてきた肉体の心配は必要ない。現在、あらゆるメディアが報道しているためナーヴギアの強制解除の危険は低いだろう』
『病院などの施設に搬送されたのち、厳重な介護態勢がとられるだろう。諸君には安心してゲームクリアを目指してくれ』
「ふっ、ふざけるな!」
「なにを考えてんだ!」
プレイヤーたちから怒号が茅場に飛ぶ。しかし、茅場はそれを無視し説明を続けた。
『しかし、十分に留意していてほしい。諸君にとって《ソードアート・オンライン》はすでにただのゲームではない』
『‥‥今後、ゲームにおいてあらゆる蘇生方法は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、アバターは永久に消滅し、』
『諸君らの脳はナーヴギアによって焼き切られる』
俺の視界にある自分のHPバーを凝視した。これが俺たちの命の残量だと?
鼓動が速くなる。自分のHPがゼロになった瞬間を想像してしまい、嗚咽が漏れる。
『諸君がゲームから解放される条件はたった1つ。アインクラッド最上部、第100層に辿り着いき、最終ボスを倒せばゲームクリアだ。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員のログアウトを保証しよう』
っ!《城》ってこういう意味かよっ!
このゲームの舞台、浮遊城アインクラッドそのものをさしていやがるのか!
『最後に諸君にこの世界が現在であるという証拠を見せよう。アイテムストレージに私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』
俺たちは、ほぼ自動的に茅場の言う通りアイテムストレージを開いた。
アイテム欄の所持品リストの1番上にそれがあった
アイテム名は《手鏡》
はぁ?なんだ、これは?
俺は手鏡をタップし、オブジェクト化を選択する。
俺の手に出現したそれはなんの変哲もない鏡だ
首を傾げ、キリト、クラインを見やる
キリトは苦笑いを浮かべ、クラインは呆然とした表情をしている。
突如、手鏡から白い光がアバターを包んだ。
状況を判断するために周りを見渡す。そこで異変に気付く。
先程まで近くにいたキリト、クラインが別人に変わっていた。
「お前ら‥誰だ?」
「そっちこそ」
「おい‥誰だよおめぇら?」
黒髪の幼さの残るアバターが何かに気付いたように手鏡を再度覗き込む。
俺もつられて手鏡を覗く
そこにあったのは目が腐った青年アバターだった
つーか、俺じゃん!
そこで《手鏡》の役割に気付く。
スキャンだ。ナーヴギアは顔をすっぽりと覆っているし、キャリブレーションで身体を触ることで体格、身長までも割り出したんだ
「でも、なんでだ?なぁキリト」
そんな疑問を遮り、茅場が次の言葉を紡ぐ
『私の目的はテロでも身代金でもない。私にとっての最終的な目的は、この状況なのだから』
その言葉には今までの無機質なものではなく、茅場の感情が現れた気がした。
『‥‥以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤーの諸君、健闘を祈る』
言い終わると、真紅のローブのアバターはゆっくりと霞のように消えてしまった。
消えると同時に街本来のBGMが流れ、先程の出来事が嘘のように感じられた。
始まりは1人の悲鳴からだった
囚われたプレイヤーが一斉に感情を爆発させた。1万ものプレイヤーがパニックの中キリトが囁いた。
「クライン、ハチ、ちょっとこっちこい」
キリトを案内され裏路地に飛び込む。
「アイツの言葉が本当ならば、生き残るにはひたすらレベルを上げて自身を強化するしかない。一緒に来ないか?」
「悪いなキリト、ダチがまだ何処かにいるはずなんだよ。そいつらを置いてはいけねぇー」
キリトが苦い顔をした。つまりは、これ以上の人数はキリトでもカバーしきれないのだろう。
「それに、これ以上お前さんに迷惑もかけられないからな。心配するな、教えて貰ったテクでなんとかしてみせら」
「そうか、それじゃあ、ハ「断る」え?」
ふん、ぼっちの俺が他人と2人っきりとか気まずい
たぶん、キリトもぼっちだろう
ぼっちにぼっちを掛け合わせても良いことはない
「俺は俺なりにやってみようと思う」
俺の返事に俯きながらも了承した。そして、
それぞれは次の目的地に向けて走り出す。
「キリト!おめぇ本物は可愛い顔してんな、ハチ!おめぇは現実でもその目してんのか?」
「クライン!お前はその野武士ヅラのほうが似合ってるぜ、ハチは無理すんなよ!」
「おい、コラ!クライン、どういう意味だ!」
1人は他の仲間の元へ
1人は次の村へ
そして、最後の1人は‥‥‥
次は一層攻略へ踏み出したい
八幡のユニークスキルは検討中!