夢を見るんだ
真っ暗でなにも見えない空間にただ一人佇む俺がいる。
その暗闇をずっと進むと淡く儚げな光があるんだ。
一つ一つが集まって光を増すんだ。でも、俺が近づくと光は陰り、消えてしまう。
それを繰り返し、繰り返し、繰り返し…………
デスゲームが始まって五ヶ月ほど経っただろうか。最前線より十層近くも下の階層でとあるパーティに出会った。
五人編成にも関わらず、前衛を任せられそうな盾役一人。あとは、アタッカーだが全員腰が引けている。
あれじゃ、前衛のHPが減り続けて後退するだけだな。などと思いながらその場を離れようとした。
だが、見えてしまったのだ、その後方から迫るモンスターの姿を。
このままでは倒しても連戦、後退してもモンスターの追撃となる可能性が大きいだろう。
「……仕方ない、か」
そう呟き、面倒臭げにそのパーティに近いた。
「少しばかり手を貸すが、俺は奥にいる奴を殺る。」
そう告げてから奥にいるモンスターに突っ込んだんだが、うん。団体さんだった。近づくにつれて、索敵スキルにどんどん引っかかるわ。
結局、その団体を片付ける頃には向こうも片付いていた。
「あ、ありがとごさいます!ほんとに、怖くて、助けに来てくれて、ありがとう。…ありがとう」
そう言いながら半べそをかいているのは、紅一点の黒髪の槍使いだった。
そう、これが〈サチ〉、そして〈月夜の黒猫団〉との初めての遭遇だった。
それから、俺は黒猫団と一緒に主街区まで戻り、助けてくれた御礼にと酒場に連行された。
「なぁ、ハチマン。俺たちのギルドに入らないか?」
「はぁ?」
言ったのはこのパーティのリーダーである〈ケイタ〉である。
何を抜かしてるんだこいつは?
そう思いながらも、事態の急展開について行けずにいると、ケイタが手を上げて黒髪の槍使いだった少女を呼んだ。
「こいつ、サチって言うんだけどさ。メインスキル両手用長槍なんだけど、スキル値低いんだよ。だから、今のうちに盾持ちの片手剣に転向させようと思うんだ。」
そう言いながらサチと呼ばれる少女の頭をグリグリしている。
「なによ、人をみそっかすみたいに言って」
と頬を膨らまし、そっぽを向いている。
「そこで、ハチマンに片手剣のレクチャーを頼みたいんだよ。」
気がつくと他のパーティメンバーも近づいており、「お願いします!」と頭を下げて来た。
なんだ、この空気。マジでやめて!人目のある酒場で晒し者とかバツゲームだろ!
と思いながら、早く抜け出すためにも
「し、指導だけにゃら」と噛むのであった。
次回は2話に分けるか1話に纏めちゃうか分かりませんが文字数しだいです。はい