ソードアートオンライン 刀使いの少年   作:リスボーン

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はい、久しぶりとなる更新です。

と、言っても4話の最後の方とタイトル変えただけですけどね!

……本当、すいません。

期末テストや引越しやらで忙しかったんです。

そしたら気づいたら3週間たってました。

言い訳にしか聞こえないと思いますけど、なにとぞよろしくお願いします




デスゲームの初日 中編

「シュウウウウ!」

 

 

 数体のネペントが俺の方へと向かってくる。

 

 

「邪魔だ!!」

 

 

 俺は素早くソードスキル《スラッシュ》を発動させ、俺の方に向かってきた数体のネペントを葬る。

 

 その後大量の光のかけらが飛び散り、俺の目の前にドロップされたアイテムの名前や加算された経験値が

表示されたが、それ等を見ずにその場を走り抜ける。

 

 しばらく走ると敵モンスターを示すカーソルが2つ出現する。

 

 

「クソ、どこに逃げてもネペントだらけかよ」

 

 

 吐き出すように文句を言う。

 

 今、この場所一帯にはネペントが大量に集まってきている。

 

 理由は大体察しがつく。

 

 恐らく俺の後に来たプレイヤーが《実》をつけたネペントを攻撃したのだろう。

 

 実付きのペネントの出現確率は花付き並に低く、それほど強くもない。

 

 ドロップするアイテムも通常のと変わらない。

 

 実がついている以外はなにも変わらない普通のネペント_______

 

 だとは思ってはいけない。

 

 実付きのネペントについている《実》を攻撃すると、その瞬間甘ったるい匂いが周囲に拡散する。

 

 そしてその匂いは広範囲から大量のネペントを呼び寄せる。

 

 そうなってしまえば後は囲まれてペネントからの集中砲火を受けることとなる。

 

 いくら俺がペネントよりもレベルが上だと言っても、これはさすがにヤバイ。

 

 おまけに武器の耐久値も半分きっているという始末。

 

 もし、こんな状況で武器が壊れでもすれば________

 

 よそう。

 

 これ以上考えたら精神の方が先に限界がきそうだ。

 

 とにかく今は数の少ないところを通りながら、なるべく戦闘を避けるしかない。

 

 武器を強く握りしめてスピードを上げる。

 

 そのまま2匹のペネントのタゲを取り、片方にスピードをプラスした斬撃を弱点に叩き込む。

 

 攻撃を受けたペネントは光の欠片となり爆散する。

 

 同時にもう片方のペネントは溶解液を吐き出すモーションを取っていた。

 

 この溶解液を浴びると武器や防具の耐久値が大幅に減り、動きもしばらく阻害されてしまう。

 

 しかも広範囲で、後ろに逃げても無駄だというおまけ付きだ。

 

 今の俺がこいつを喰らえば、ほぼ積んだと言っても過言じゃないだろう。

 

 だが、当然俺はこの攻撃の回避方法をマスターしている。

 

 ペネントが溶解液を吐き出そうとする瞬間に、態勢を最大まで低くして突っ込む。

 

 吐き出された溶解液は、俺の頭上ギリギリの所を通過して5メートル先の木に命中した。

 

 俺は突っ込んだ勢いを加算させた《リーバー》を発動させ、ペネントの胴体部分を切り裂く。

 

 ペネントは硬直し、そして爆散した。

 

 

「はぁはぁ」

 

 

 息が乱れてきた。

 

 どうやら度重なるペネントとの戦闘で、俺もかなり疲労しているようだ。

 

 俺は崩れるように木を背につけて座り込む。

 

 ここはまだ安全地点ではないが、敵モンスターはパッと見近くには見当たらない。

 

 少しでもいい、休憩をしよう。

 

 

「ぎゃああああ!!」

 

 

 尋常ならざる悲鳴が聞こえ、俺は慌てて立ち上がって周りを見渡す。

 

 すると索敵の範囲ギリギリの所でプレイヤーを示すカーソルを発見した。

 

 よく見ると、赤のカーソルも10個確認出来る。

 

 明らかにこのプレイヤーは囲まれている。

 

 恐らく《実》付きを攻撃したのはこいつだろう。

 

 あの悲鳴から察するに相当パニクっている。

 

 早く助けに行かないとやばいな。

 

 悲鳴が聞こえた方向に走って行こうとすると______

 

 

 ______なんで?______

 

 

 声がした。

 

 と、言っても周りには誰もいない。

 

 自分の頭の中から聞こえた。

 

 漫画や小説で言う心の中の悪魔ささやき、もしくは本音といったところだろうか。

 

 どうやら俺は精神的にも疲労しきっているようだ。

 

 

 ______そもそもこいつのミスで、俺まで危なくなったんじゃないのか?______

 

 

 

 「だからって放って置けるかよ」

 

 

 ____でも、あっちには数十体も敵がいるんだぞ? そんな武器で相手ができるのか?____

 

 

 握っている武器を見るとボロボロで今にも折れそうなまでになっていた。

 

 なるほど、自分の心の本音だけあってなかなか的確だ。

 

 

 _____ほら、見ろ。 それじゃ行ってもお前も死ぬだけだぜ?______

 

 

 「……そうだな」

 

 

 反論はできない。

 

 自分の声は正直だ。

 

 これを否定できるやつなんているわけがない。

 

 

 _____だったら、見なかったことにしようぜ? そうすれば問題な______

 

 

「うるせぇ、とっと消えやがれ!!」

 

 

 ゴツン!!

 

 

 木に思いっきり自分の頭を叩きつける。

 

 痛みはないが不快な感覚が頭部に感じられ、HPも若干少し減った気がする。

 

 だが、先程までの声は消えており、もうなにも話しかけてはこない。

 

 

「まったく心の声ってのは正直で、聞いてると気持ち悪くなる」

 

 

 まだ僅かに不快な感覚を残している頭部をおさえながら、悲鳴の聞こえた方向を見る。

 

 

 息をスゥーと、吸い込んで大きく口を開いて叫ぶ。

 

 

「待ってろよ、今助けに言ってやる!!」

 

 

 左足で地面を大きく蹴り、全速力で走り抜く。

 

 

 

_________

 

 

 

 索敵に反応したとしたということは距離的に、あまり離れてはいないはずだ。

 

 幸いプレイヤーを示すアイコンはまだ健在のようで、このままのスピードで行けば恐らく後数分もあれば着けるだろう。

 

 だが。

 

 走りながら一つ疑問に思うことを考えていた。

 

 このフィールド、というより《ホルンカの村》は比較的わかりにくい場所にある。

 

 それこそ道を知らない初心者ではたどり着くのは奇跡に近いほどに。

 

 現段階ではこの場所にたどり着けそうなのは、βテスターぐらいだろう。

 

 だからこそ疑問に思うのだ。

 

 なぜ、《実》を攻撃したのかを……

 

 なにも知らない初心者プレイヤーが《実》を攻撃してしまったと言うならまだ話が分かる。

 

 だが、《実》を攻撃した後の恐怖を知っているはずのβテスターがなぜ?

 

 ミスをした、と言うのは考えにくい。

 

 もちろんないことはないのだが、今のSAOはデスゲームと化している。

 

 注意は十分過ぎるほど払っていたはずだ。

 

 それなのに《実》を攻撃した。

 

 実に奇妙な話だ。

 

 まあ、どちらにしろ会えばわかる話だ。

 

 それまでは考えるのはよそ……

 

 

「ギャアァァァ!! 嫌だ、死にたくない!! 死にたくないぃぃぃぃぃ!!」

 

 

 耳に響くような悲鳴が響き渡る。

 

 先ほどの悲鳴の声と同じ、こいつで間違いない。

 

 さらに走るスピード上げる。

 

 と、同時に腰に手を回しベルトポーチに手をかける。

 

 戦闘に使うアイテムはアイテム欄に保存するのではなく、すぐに出せるようにベルトポーチに入れる。

 

 ポーチに手を突っ込み、中に入っているポーションを取り出す。

 

 取り出したポーションをそのまま左手に握り、《スラッシュ》のモーションを取る。

 

 準備は万端だ_____

 

 

「うおおおおおお!!」

 

 

 腹のそこから声をだして、叫ぶ。

 

 視認ができる距離まで来ると、少年とそれを囲む10数体のネペントは確認でき、その内の何匹かはプレイヤーに溶解液を浴びせようとする。

 

 俺は溶解液を浴びせようとしているペネント数匹に走る勢いをプラスした《スラッシュ》を喰らわした。

 

 途端に数匹のペネントは、光の欠片となり、消える。

 

 俺は素早くプレイヤーの方を向き、左手に握ってていたポーションを投げ、少し早い口調で述べる。

 

 

「俺がしばらく壁タンクになってやるから、さっさとPOTを飲み干せ!!」

 

 

 普通の人が聞いたらちんぷんかんな言葉だが、どうやら意味がわかったようで、一気にポーションを口に流し込んでいる。

 

 やはりβテスターか。

 

 心の中で確信し、ネペント達の方を向く。

 

 先ほど数匹倒したはずだが、まだまだ数が多い。

 

 

「(武器が壊れるのが先か、それとも先にネペントを殲滅するか……)」

 

 

 フッ、もちろん決まってるよな。

 

 

「俺は生きる!!」

 

 

 右から攻撃を仕掛けてきたネペントに1撃、そのまま刃を返し、切り返しで2擊目を喰らわせ、爆散させる。

 

 次に溶解液を放つモーションをとっているペネントに向けて、《リーバー》を放つ。

 

 その後バックステップをして、一度距離を取り、《スラッシュ》で前にいる数匹のペネントを一掃する。

 

 残りの数匹のネペントたちもなんとか倒すことができ、とりあえず戦闘は終了した。

 

 ふぅ~、と小さなため息をつきながら俺はボロボロになった剣を鞘に収めて、助けた少年の方へと歩いていき声をかける。

 

 

「お前大丈夫だったか?」

 

 

「あ、う、うん。 ありがとう、助けてくれて」

 

 

 少年はお礼を言った後、俺の方から顔をそらす。

 

 よほど実を割ったことを気にしているのかと思い、俺はできるだけ表情を明るくして話す。

 

 

「実を割ったことなら気にすんな。 それよりさっさと《ホルンカの村》に帰ろうぜ」

 

 

 俺が帰り道を確認するため、メニューを開こうとした時だった。

 

 

「帰れない……」

 

 

「えっ?」

 

 

 唖然とした顔で少年を見る。

 

 かえりたくない?

 

 一体どういう事なんだ。

 

 

「僕は……僕は……。 取り返しのつかない事を……」

 

 

 さっきからこの少年が言っていることが俺には分からない。

 

 だが、ただ事ではないことだけはわかった。

 

 

「話してくれ、一体なにをしたのかを。」

 

 

 少年は、目に涙を溜めながら、話し出す。

 

 

「僕は、僕と同じくらいの歳のプレイヤーに《MPK》してしまったんだ……」

 

 

「《MPK》!?」

 

 

 これには流石に俺も驚いてしまった。

 

 《MPK》とは、M(モンスター)P(プレイヤー)K(キル)の略称で、意味は文字通りモンスターに故意的にプレイヤーを襲わせて、殺すというものだ。

 

 これは、《PK》の中でも最も古典的な方法とされ、β版のSAOでも何人か使っていた。

 

 

「なんで、そんなことしたんだ?」

 

 

 少年に問いかける。

 

 

「僕は、怖かったんだ……」

 

 

 少年はうつむいたままつぶやく。

 

 

「この現実ではないこの世界ゲームで人知れず死ぬのがたまらなく怖かったんだ……。 その心の弱さのせいで…… 」

 

 

 少年は両膝をおって、泣きながら四つん這いになる。

 

 こいつは自分がしてしまったことに対して、後悔をしている。

 

 それは、誰が見ても分かることだった。

 

 恐怖に屈してしまい、取り返しのつかない事をしてしまったと。

 

 だが、今するべきは後悔することじゃない。

 

 

「お前、名前はなんて言うんだ?」

 

 

「えっ?」

 

 

 少年は涙を垂らしながらこちらを見る。

 

 

「俺はシンジって言うんだ。 お前の名前は?」

 

 

「……僕は、コペル」

 

 

「よし、コペル。 さっさと立ち上がれ、いくぞ」

 

 

「えっ?」

 

 

 コペルはきょとんとした顔で呆然としている。

 

 だが、俺は構わず続ける。

 

 

「コペルが《MPK》した奴を助けに行くんだ。 まだ間に合うかもしれないだろ。」

 

 

「でも……」

 

 

 ためらっているコペルに対して、俺は手を差し出す。

 

 

「手を取れ、コペル。 お前はまだやり直せるんだ。」

 

 

「……どうして」

 

 

 コペルは、小さくつぶやくように言う。

 

 

「どうして他人の僕にそこまでしてくれるの?」

 

 

 コペルの問いに俺は一瞬戸惑い、思わず手を引っ込める。

 

 考えてみれば自分でもなんでこんなことをしているか分からない。

 

 だけど_____

 

 

「理由なんて俺にも分からない。 ただ、やるべきだと思うからやるんだ」

 

 

 俺はもう一度手を差し出す。

 

 その手をしばらくコペルはしばらく見つめ、右手で顔をこすり、手を取る。

 

 

「君って意外と見た目と違って、熱血でお人好しなんだね」

 

 

「ああ、自分でもびっくりだ。」

 

 

 コペルの手を引いて、立たせると、コペルは北西の方に指を指す。

 

 

「多分あっちの方角だと思う」

 

 

 コペルの指差した方を見ると、かすかに敵を示すカーソルが見える。

 

 

「分かった、さっさと行こうぜ」

 

 

「うん」

 

 

 俺とコペルは北西の方角に向かって、走っていった


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