ソードアートオンライン 刀使いの少年   作:リスボーン

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遅くなりました。
ここ最近ゴタゴタしてたのとこれからの展開に悩んでたらもう春に……
まあ、まだ寒いからギリセーフ……にはならないですよねー。

そんなことでサブタイは前二話のを変えて、今回の方に持ってきました。
あと、もしかしたら今回の話は内容が分かりづらいかもしれません。
もし気になることがあったらご指摘してもらえれば嬉しいです。






攻略の代償 

このフロアを支配していたコボルド王が消滅し、それと同時に配下のセンチネルもこの場から完全に消え失せた。

 部屋もそれとなく明るくなり、場の雰囲気も先ほどまでの重苦しいのとはまた違ったものに変わっている気がする。

 しかしそれにも関わらず、誰も勝利の歓声を挙げようとするものはいなかった。それどころか一人として身に持つ武器を収めようとせず、未だ戦いは終わっていないと言わんばかりの雰囲気だった。

 キリトやレイピア使い、そしてディアベルでさえもその場で硬直状態のまま呆然としている。かく言う俺も剣を収めずにいた。

 戦いは終わった。

 頭ではそう理解しているのに身体は今も尚、新たな脅威を恐れて臨戦態勢を解こうとはしない。いや、ここは仮想世界だから多分頭でも理解できていないのだろう。

 結局のところ、まだ俺達は勝てていないのだ。この場が《恐怖》に支配されている限り、それを勝利と呼ぶことはできない。

 そう考えるとなんかイラッとしてきた。既に勝敗は決しているのに、これではまるでこっちが負けたみたいだ。

 そうじゃないだろ。βテスト版の頃はボスに勝利する度にそこら中から歓声が上がっていたのだ。今は確かにデスゲームになってしまったが、それは今だって変わっていないはずだ。

 俺は剣を地面に突き刺し、腹一杯に息を吸って____

 

「よっしゃあああああ!!」

 

 拳を空に掲げて、高らかに叫んだ。

 静寂を破るときは誰かが一声上げるだけで済むのだが、その一歩を踏み出そうとするのには中々度胸がいる。よって、漢気を見せた俺に対して帰ってくるのは同じく喜びの叫び声____。

 ではなく____冷たい視線でした。

 正確に言うと「いきなりどうしたコイツ?」と言うような眼で此方を見ているのだ。

 ……いや、まあ確かにいきなり声を上げましたけど、こういう時って体外ノリに乗ってくれますよね。確かに俺なんかより、騎士様の方が良いんでしょうですけど、そこはなんか色々と補正掛けてくれっていいじゃないかな。

 

「……ぷふっ!」

 

 どこかで吹き出した声が聞こえた。

 そこからしばらくは声を抑えているのか、音は少しずつ小さくなっていくが、やがて持ちこたえられなくなったのか、爆発したかのように笑い声を上げた。

 それを皮切りに一人、二人と緊張の紐がほどけたかのように声を上げていく。

 あ、あれ~? これは結果オーライってことでいいの? 確かに静寂は破ったけど、何かが違うような気もするような。

 

____まあ、いいか。

 

何やともあれこれでようやく《勝利》できたのだ。

 例えそれが俺の心を軽く傷つけた事になったとしても、さっきみたいなジメジメした暗い雰囲気よりは随分とマシだ、と心の中で無理やり納得しましたよ。

 ため息を軽く吐き、突き刺した剣を引っこ抜いて鞘に収める。

その後頭を掻きながら俺はキリトとレイピア使いのもとへと真っ直ぐに向かった。

 

「お疲れ」

 

 向かってくる俺にキリトは労いの言葉と、右手を上げるアクションを起こした。

 それにほとんど反射的に俺も右手を上げて、

 

「おう、お疲れさん」

 

 パァン、といい音を響かせながらハイタッチは交わされた。

 さっきの《歓声》が勝利を表すというならばこの《ハイタッチ》は終わったのだと実感させてくれる。

 

「お疲れ様」

 

「おう、お疲……」 

 

 

 続いてレイピア使いも手を挙げたので、同じく手を上げて____ん?

 あれ、もしや彼女は俺とハイタッチをしてくれようとしているのだろうか? 

 突然の疑問に、行おうとした動作は途中で硬直され、俺はあ然とレイピア使いの方を見ていた。 

 

「……どうしたのよ、いきなり固まって」

 

「いや、何つうか。……俺とハイタッチしてくれるの?」

 

 俺から見るレイピア使いという女子はなんと言うか、そういうことはやらない人だと思ってた。何せ、いかにも気高きお嬢様って感じだったからこういう体育会系ぽいのをやるイメージが湧かない。どちらかといえばお風呂の女神さまってイメージが____。

 

「……何かまた変なこと考えてるでしょう? 」

 

「へ? ハハハッ、そんなこと無いっすよ」

 

 レイピア使いの鋭い視線に即座に気づき、何とかごまかす事ができた。

 しかし、イメージとして俺の中でそう根付いてしまっているので今更どうこうできる気はしはない。健全な中二男子にはあまりにもインパクト強すぎたのだ。

 よってどこかの某ゲームキャラの言葉を借りるなら「俺は悪くねぇ!」。

 

「はあー、何であなたたちは私にそう言うイメージしかもってないのよ」

 

「と、言いますともしかして」

 

 

 呆れ顔でレイピア使いが指差す方に居たのは予想通りキリトだった。

 若干苦笑いしているところから察するに、やはり奴も俺と同じような事を言ったに違いない。間違いなく俺と同じ反応をしたんだろう。もしくはコミュニケーションの熟練度が俺よりも低いからもっと酷かったか。

 

「ところで……やっぱり変なこと考えてたじゃない」

 

「あっ」

 

 しまった。いつの間にか彼女の術中に嵌っていたということか。おのれ、やりおる。そんな負け惜しみにも似た俺の思考をも読み取られたのか。

 一息吐き出すと、彼女は再び手を上げた。

 

「改めてお疲れ様」

 

「オッス、お疲れ」

 

 ようやく互いの手を打ち合い、パーティー内での労いを終えると同時に、こちらに一つの人影が近づいてきた。

 両手斧を扱うチョコ色の巨人エギル。脳内で何故かそう変換してしまい思わず笑いそうになったが、流石に失礼極まりないのでコホンと咳払いをしてから向き合った。

 

「……見事な連携だったぞ。君たちのお陰で今日の攻略戦は誰も死なずに済んだ。congratulations、この勝利は誰のものでもない。君たちのものだ」

 

 そう言ってエギルはその太くたくましい腕を持ち上げて、拳を握った。

 外見からの威圧感がとてつもなく、攻略会議の時では恐ろしい程の咆哮を上げた____これはまあ、俺のせいでもある____彼だが、本当は凄くいい人なんだろうな……多分。

 そんな人を怒らせてしまうようなことをしてしまった事に少しばかり反省し、今だ誰も拳を合わせていないので、ならば最初の一発は俺から行こうと拳を固めた時だった。

 

「____ふざけるなよ!!」

 

 突然誰かの叫び声が響き渡り、この場は再び静寂に包まれた。

 一体誰が出した声だったのか。その声の主が見つかるのはそう遅くはなかった。

 叫びを近くで聞いていた者は突然の声に驚き、目を見開きながら《その人》を見つめていた。それが周りに伝染して自然に声の発生源へと向けられていく。

 発言者は俺と同じ《曲刀カテゴリー》のシミッター使い。前半ではボスと主に戦闘を繰り広げていたチーム、つまりそれはディアベルの隊であるということだ。

 しかし様子がおかしい

 

「リ、リンド? いきなりどうしたんだ?」

 

 その隊のリーダーたるディアベルは現状をまるで把握していない。むしろ、彼自身が一番驚いているようにリンドと呼ばれるシミッター使いを見つめている。

 そして問題のプレイヤーであるリンドの視線は此方に向けられていた。表情は《怒り》、か?

 

「____なんでみんな何も言わないんだ?  そいつ等(・・・・)はボスの使う技を知っていたんだぞ? そいつらがそもそも俺たちにボスの情報を流していれば、ディアベルさんやみんなは死にかけることなんかなかったんだぞ!? 」

 

 息を切らしながら叫ぶリンドの言葉は、プレイヤー達の波紋を呼ぶには十分だった。

 そこらかしこから声が聞こえる。話題はどれも同じで、話し合っているのは一つの疑問について。

 

____なぜ、攻略本にも書かれていなかったボスの技を知っていたのか?

 

 思えば飛び出す前から気づくべきだった。

 元βテスターでさえ存在を知る者は限られているというのに。現時点に置いてほとんどのプレイヤーにとって未知の存在である《カタナスキル》を相手取るということは一体何を意味するのか。

 自分で言うのも何だが、気づいていてもディアベルは助けたと思う。しかし、戦い方についてはせめて工夫をするべきだったのではないのだろうか。気の利いた言い訳の一つや二つぐらい考えられたのではないのか。

 何より彼____リンドは《そいつ等》と言った。その言葉が意味しているのは……

 

「お、俺は分かったぞ! こいつ等……元βテスターだ!! みんながボスの攻撃にやられている隙にオイシイ所だけ持ってこうとしたんだ!! きっと他にも何か隠してるぞ!!」 

 

 誰かが言ったその推測とも呼べぬ発言はしかし、俺には否定できなかった。

 もちろん我先にボスに止めを差そうとか、何かを隠そうとか考えていたわけでもない。割合にして九割はハズレだ。

 だが、残りの一割である《元βテスター》だということだけは事実なのだ。

 安易に否定の言葉を述べようものならば、その後に待っている追求を逃れる術はない。

 何よりこの状況、さっきから彼らは俺個人にではなく複数人に対して発言している。つまり疑いの対象は既にキリト、最悪レイピア使いにまで及んでいるということになる。

 

「ほら見ろ! 何も言い返せないってことはそれが真実____」

 

「いい加減にしないか!!」

 

 怒声が言葉を遮った。

 反論の声を上げたのは意外にもディアベルだった。

 

「彼らはオレ達を助けてくれたんだぞ!? 命の恩人にそれはないだろう!!」

 

 大部隊を指揮する彼は常に中立に立っていなければいけないのに、それを破ってまでこちら側を庇護しようとしてくれている。それに続いて何人かもこちら側を庇うようなことを発言を申しだしてくれた。

 しかし、もう一方の方ではそれに対立するように言葉を飛ばし、気づけばレイドパーティーは半分に割れていた。

 

____これは、やばい

 

 ディアベルや他のプレイヤー達が庇おうとしてくれているのは素直に嬉しい。

 しかしだ。その結果、攻略隊は分裂寸前の所まで来てしまっている。このまま続けば遅かれ早かれ隊は分裂し、埋められない溝ができてしまう。

 それだけは絶対に阻止しなくてはいけない。無論、キリトやレイピア使いがβテスターとして烙印を押されることも阻止しなければいけない。

 今回の責任は後先考えずに動いた俺だけが取るべきなのだ。

 荒くなる息を整えろ。攻略会議の時を思い出せ。

 俺が出ていくことで現状がどう転ぶかは全く想像できないが、少なくとも今よりは現状を良くしてみせる。

 拳を握り締め、俺は一歩を踏み出し____

 

____えっ?

 

 誰かに手を掴まれて、後ろへと引っ張られた。 

 代わりに俺の横を一人の見知った少年が通り過ぎていった。

 

「き、キリト?」

 

 思わず名を読んでしまったが、キリトは振り向くどころか無反応で歩き続けた。

 一体アイツはどこに行くつもりなのか? 俺はアイツの突然の行動に理解が追いつかず思考が二、三秒停止し____アイツがフロアの中央に着いた時にようやく悟った。

 瞬間、すぐさまキリトの元へと駆けようと足を動かした。

 予想通りなら、いや間違いなくキリトはやる。だったら口を開く前に止めなくては。それは俺の責任で、役目なのだ。お前が被る必要はない。

 様々な感情が脳内を巡り、またしても行動は阻まれた。

 右腕を両手でガッシリ掴まれている。振りほどこうにも、解くことができなかった。

 

「放せよ!!」

 

 無駄だと分かっていながら抵抗を続けたが、ふと目に入ったレイピア使いの眼。そして静かに左右に首を振る仕草を見た途端、身体から力が抜けた。

 そして____

 

「さっきから聞いてりゃあ、笑わしてくれるぜ」

 

 俺を含むこの場に居た全プレイヤーは一人の少年に視線を移した

 

「元ベータテスターだって? あんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」

 

 発せられた声はとても無感情で、表情はふてぶてしかった。




個人的にですけど原作と同じ展開にはしたくなかったです。
でもそうすると後々の展開が……。
作者の力不足が恨めしい。

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