受験シーズンなもので中々時間が取れませんでした。
こう見えても学生なもので。(まあ、本当は他作品とか読んでたのもあるのだが……ゲフン!
と言う訳で今回久しぶりとなりますがよろしくお願いいたします。
若干、文的におかしいと思うところや見苦しい思うところを見つけた場合には教えてもらえると嬉しいです。あっ、そもそもこの作品自体おかしいだろと言うのは無しで。
噴水広場に集まった四十五人のプレイヤー達。
彼らは現時点で見るに、この世界SAOでの最高戦力であり、もっと言えば自力でここから脱出するための唯一の希望とも言えるだろう。
しかし反面もしもこのメンバーが全滅、あるいは多数の死亡者により攻略を断念したときに希望は絶望へと変わる。
これだけの戦力を揃えて、第一層のボスすら倒せない。
そうなってしまえば噂はすぐに広がり、一気にはじまりの街から外に出るプレイヤーは少なくなる。
果たして次の攻略部隊の戦力はどうなるか。考えるまでもない。
だからこそ今回の戦いでは絶対に負けられないし、被害も出させない。
俺たちは次につなげるための《希望の道》になるんだ!!
と、心を熱くするような見事な演説をしている騎士様を尻目に俺は別な方向へと視線を持ってかれていた。
その方向に居るのはフードに素顔を隠された女神______。
「……何見てるの、あなた達?」
とは言えないような鋭い目つきでこちらを睨み返す。
それも、小さくも胸元を抉るようなささやき声もセットで。
「い、いやー、今日は天気がいいな~」
「そうだな! 雲一つない、いい天気だよな!!」
咄嗟に嘘くさいごまかしをした俺たちに、レイピア使いは何も言わず、後ろ向いてしまう。
その様子から彼女は明らかに不機嫌であり、その理由を思い出そうとすると別な意味でキリト共にこの世界からオサラバしてしまうので何も思い出すことはできない。永遠に。
つか、大丈夫なのかこのパーティ。いくらサポート重視だからって、こう変な空気だと色々と危ない気がするんだが。
「おい」
聞き覚えのある、低い声が聞こえたので後ろを向く。
目の前に居たのは茶色の短髪で、さらにその髪を逆立てることにより完済されるサボテンヘアーの男性プレイヤー。
俺が今最も警戒している人物、キバオウが立っていた。
「……何か用ですか、キバオウさん」
「ひとつジブンらに言うとこうと思うてな。ええか、今日はずっと引っ込んどれよ」
キバオウはこちらに憎悪をでも込めているかのような目でこちらを見ながら言い放った。
よほど、昨日の事が頭にきているらしい。
まあ、俺も人のこと言える立場じゃないけどな。
元βテスターの件といい、キリトとの取引の事といい。
明らかになにかしろ因縁をつけてきているのは間違いない。
「大人しく雑魚コボルトの相手でもしとれや」
そう吐き捨てると、キバオウは唾を吐いて身を翻し、味方のEパーティーの方へと歩いて行った。
「……何よ、あれ」
途端、となりで声が響く。
声の方向を見るとレイピア使いが先ほど向けてきた視線の倍ぐらい恐い。
もはや、、目を合わせるだけで心がボロボロになりそうだ。
……でも、気持ちは分かる。
あれだけ馬鹿にされりゃあ、誰だって怒るさ。ただ、今は攻略戦前だと言うことは忘れてはいけない。
ここで、場の雰囲気を壊すのは戦闘にも支障をきたす恐れがある。
「まあまあ、そう怒んなさんなって。なあ、キリト」
「……」
レイピア使いの怒りを鎮めるためにキリトに協力を促す。
が、まさかの無反応。
「おーい、キリト」
再度声を掛けるが、またも無反応。
それどころか視線さえ、固定したまま動こうとさえしない。
流石に心配になり、三度目に声を上げようとした時____
「……え? ああ、悪い。少し考えことしてた」
「考えごとって。一体何を____」
俺の言葉は途中でより大きな声によって遮られた。
声の主はさっきまで熱い演説をしていた、青髪の騎士ディアベル。様子からしてどうやら今日の攻略に参加するプレイヤーが全員集まったようだ。
「みんないきなりだけど一言言わせてもらうよ。ありがとう! 誰ひとり欠けることなく此処に集まってくれてオレ、スゲー嬉しい! この調子でボス戦も死亡者無しで闘いぬこう!!」
言葉を終えると、剣を抜いて天高くそれを掲げた。
「オレ達がこれから切り開くのは《希望の道》だ。その一歩を踏み出す為にこの戦い絶対に勝とうぜ!!」
高らかに叫びディアベルに対し、会場の声はそれを倍にして沸き上がった。
□ □ □ □
____何と言うか、こりゃあ流石に浮かれすぎだろうよ。
ボスの間に向かう道中、俺はてっきり無言で行くものだとばかり思っていた。これから戦う相手はフロアボスの中で最弱に属し、このメンツならば楽勝とまでは言わなくても無難に勝てる相手だ。
しかしそれでも強さはそこら辺のモンスターとは次元が違う訳で、油断すればあっさりあの世行きってことも十分にありえる。
だってのに右や左からも笑い声の嵐。途中、モンスターと出くわしても連携を取るどころか我先へと攻撃する有様。
緊張しすぎってのも困るとこだが、これは気を抜きすぎだろ。
そんなことを考えていると、となりのフードを被った少女がこちらに近づいてきた。
「……ねえ、あなた達ってここに来る前もエ……MMOゲームをやっていたんでしょ?」
「ん、ああ、まあね」
「同じく、ってところだな」
少し意外だ。アスナ、いや、レイピア使いの方から声を掛けてくれるだなんて思っても見なかった。なにか疑問に感じたことでもあるのか。
「他のゲームも移動の時ってこんな風だったの?」
なるほど、彼女が疑問に感じていたのは今の雰囲気か。確かに、これから正に命懸けの戦いをするってのに今のこんな状態を見たらそう思うな。
「俺は
ただ、その少しやってた奴ってのはSAOのベータ版だけどな。
「キリト、お前の方は?」
「んー、俺の方も大体シンジと同じかな。賑わってた所はそうだったし、そうでない所もあった」
「ふ~ん」
レイピア使いは各々の質問の答えを聞くと、何か考えているような動作を見せながらまたも口を開いた。
「本物は……どうなのかしら」
「へ? 本物?」
「仮にファンタジーのみたいな世界が実際にあったとして、これから怪物に立ち向かおうと考えている剣士たち一団はどんな風なのかって話」
質問の意味が分からなかったキリトに、レイピア使いが詳しく説明した。まあ、正直俺も分からなかったが。
多分だが、彼女は今のこの攻略部隊とファンタジー世界の冒険者集団と重ねているのだろう。
言われてみればそうかもしれない。状況にいくつかの違いがあるが、どちらも《命》を掛けているのに違いない。そう考えてしまえば今の状況は正にそうだ。
「____死か栄光への道行、か」
唐突にキリトの声が耳に届いた。
「それを日常としている人たちなら……多分、黙るもしゃべるもその人次第だと思う。今はちょっと気が抜けてるみたいだけど、いずれはこのボス攻略組もそうなるんだと思う。このまま順調にいけばね」
「……確かにな。俺もそうだと思うぜ。」
道中、何をしようとも結局はその人の勝手だ。例えば今日みたいに少々浮き立つ人がいれば、進むごとに何も喋らなくなる人、作戦の確認をする人等色々出てくるはずである。
今回の場合は初めてということもあり、多分あまり実感が沸かないがためのこのお祭り騒ぎ。もしくは恐怖を隠すためのものだろうか。
キリトの言う通り、これが日常と同じになってしまえばきっとみんな変わるのだろう。ただ____
「考えには同調するけど、お前その台詞完全中二病だぞ」
「え、そうかな?」
「スゲー鳥肌立ったわ」
分かり易い説明だったのは認めるが、普通に聞けばただの中二病の痛い人である。
「まあ、キリトもまだまだガキってことだな」
「なっ! そういうシンジだって前に『さあ! 狩りの始まりだぜ!! レッツパーリ!!!!』とか言ってたって聞いたぞ」
「グハッ!! お、お前それは一時の気の迷いという言うか何と言うかだな。……つか、誰に聞いた?」
「アルゴが面白い小話があるぞって言ってきて五コルで買った」
「あの野郎おおおおおおおおお」
どおりでここ最近知り合いと会う度に笑われてると思ったらそういうわけか。しかも五コルっておい。黒パンとほぼ同価格じゃねーかよ。アレか、俺の社会的立場は黒パンと同格なのか?
頭を抱えながらも、メニューを開いて残金を確認。情報屋のアルゴの口を塞ぐには、買うのと同じく口止め料を払う以外方法はない。
つい最近も、と言うより昨日の出来事を黙っててもらうために多額のコルを支払ったばかりであり、現在の俺の懐は氷河期を迎えている。
……うん、全然足りないな。今日頑張ろう。
「ふ、ふふふ」
ふと、小さな笑い声に気づいた。
「笑ってごめんなさい。でも、あなた達のやり取りが面白くて」
そう言いながら、レイピア使いはまた何かを思い出しかのように笑い声を上げた。
恐らく、彼女の笑ったところを見るのは今のが初めてだろう。最初に出会った時なんかは妙に刺々しいものがあったが、どうやらあれから少しは距離が縮まったようだ。
____なんとなく、俺はそれが嬉しかった
□ □ □ □
「着いたぞ」
迷宮内にディアベルの声が響く。
現在、目の前に見えているのは巨大な二枚扉、《ボスの間》への入口である。
この先に待ち構えているのはカテゴリー《斧》を扱う獣人の王《イルファング・ザ・コボルドロード》とその配下の三匹の斧槍ハルバート使いの《ルインコボルド・センチネル》。
注意すべき点はまず、彼ら亜人型はプレイヤーが扱うソードスキルを発動することができること。この世界の必殺技とさえ言われるこの《剣技》の威力は今まで行ってきた戦闘で十分に理解できるはずだ。
それに加え、今回の攻略戦の最難関とも言えるのがコボルド王の
奴のHPバーを最後の一本にするとそれまで使用していた武器を捨て去り、腰から巨大な湾刀(曲刀)を取り出して今までとは全く違う攻撃パターンで襲い掛かってくるのだ。
もちろん攻略本にはも一寸違わずそれに対する攻略パターンも記述されているわけだが、やはり読むのと実際にやるのとでは大きく差がある。
今回の勝利の鍵はいかに速く攻撃パターンの切り替えに適応できるか、と言ったとしても過言じゃない。
ワケなんだが、残念なことに今回俺たちのパーティーはボスとは接触せずに他の隊のサポートに回り、主に《センチネル》と戦うことになっているためこの知識が生かされることはない。
「はぁ~、なんか少しボスと戦えないことについて残念な気がするのは俺だけか?」
「しょうがないだろ。人数の関係で他よりも人数少ないんだからな。それよりも作戦の最終確認だ」
「へいへい」
本体から少し離れたところに移動し互いに身を寄せ合いながら、キリトが今日のパーティー内作戦の確認について口を開いた。
「まず、俺が《センチネル》のタゲを取って引き付ける。次にスイッチでシンジがソードスキルで相手をダウンさせ、最後にフェンサーさんは再度スイッチで《リニアー》を放ってくれ」
「了解」
「分かったわ」
俺とレイピア使いは同時に頷いた。
「敵は取り巻き達で雑魚扱いだけど、充分強力な敵だ。あんたの《リニアー》は凄いけど、多分貫ける場所は喉元だけだと思うから注意してくれ」
キリトは最後にもう一度攻撃する場所を確認して正面を向いた。それに釣られるように俺も前に姿勢を直した。既に扉は半分位開かれており、あと数十秒もすれば完全に解放されるだろう。
「____行くぞ!」
短くディアベルが叫び、まだ開きかかっているドアを押し開けた。
____その瞬間こそが第一層ボス攻略戦開始の合図となった
ここに書くのもアレですが、文行詰めて書きました。