いや~、まさかこんなに遅くなるとは考えてもみませんでしたよ。
ハハハ……すんません、悪気はないです。
なんか、毎度「なるべく速く投稿します」とか言ってますが別に嘘付いてるわけではないです。
ただ、間違ってしまっただけなんですよ。
PS、アスナがパーティーに加わる時の描写がアレですが、後で直します。
二千人。
これがこれまでにSAOこの世界で死んだプレイヤーの数と言われている。
そしてアルゴの調べではその中の約三百人が、βテスターの死亡数であるらしい。
βテスターの募集枠は僅か千人。
流石に全員がこのゲームに参加している訳は無いので、その中の七割、八割が実際に参加しているプレイヤーだろう。
これらの情報を照らし合わせると、元βテスターの死亡者数の割合は四十%。
ほぼ、半分に近い数のβテスターが死んだということになる。
もちろん、この情報が正確だという確証はない。
だが、俺はこの情報を、アルゴの情報屋としての腕を信じている。
だからこそ、俺はこの情報を《真実》として受け止めた。
《真実》と受け止めたからこそ、俺はキバオウの言ったことが許せなかった。
「まず初めに名乗らせてもらうぜ。 俺の名前はシンジだ。」
自己紹介しながら、一旦登った熱を冷やす。
俺は熱くなりやすいタイプだ。
このまま、何か言おうとしてもただの暴言になってしまう。
それではだめだ。
そんな事をすれば、そこに付け込んで、キバオウはますますβテスター達の印象を悪くするだろう。
まずは冷静クールになれ。
「キバオウさん、あんたはつまり、二千人もの大勢のプレイヤーが死んだのはβテスターのせい、だと言いたいんだよな?」
「せや、あいつら見捨てなかったら今頃ここにたくさんのプレイヤーがおったはずやで。 他のVRMMOでトップ張ってたベテランたちがなあ! こないことなったのも、アホテスター共が情報やら金やらアイテムやらを分け合わなかったせいや!!」
勝手な事ばかり言うなよ。
確かに俺を含めた多数のβテスターは、結果的にビギナーを見捨てた。
それは変えようのない事実であり、許されないことだというのは俺だって分かってる
だけど、そのβテスターだって被害者なんだ。
命の危険があるのは俺たちだって同じなんだ。
それが分からない奴にβテスターの事をとやかく言われる筋合いはない。
「あんた、勘違いしてるぜ? 金やアイテムはさておき、情報はあった!!」
腰に付けたポーチから一冊の本を取り出し、広場全体に見えるように高く掲げた。
その本の表紙には《鼠マーク》が描かれている。
「もらってない、って事はないよな? なんせ、こいつは至る道具屋で無料で手に入るものなんだからよ」
「無料!?」
俺の真横で驚きの声が聞こえた。
……キリト、お前知らなかったのかよ?
ツッコミたかったが、今は目の前の事に集中しよう。
「こいつはここに居るみんなが知っているように《エリア攻略本》だ。 この本には様々な攻略情報が載っている。 ここ、第一層のな。 しかも、情報が流れるのが異様に速い」
「せやからなんや。 何が言うたいんじゃ!!」
「まだ分かんねえのか。 つまり、本の作者に情報を流したのはβテスターだってことだ!!」
「くっ!!」
ようやくキバオウは口を閉じた。
キバオウの主張は「βテスターがビギナー達に対し、何もしなかったせいで大勢死んだ」というものだ。
しかし、今の俺の話で多少なりにもβテスターはビギナー達を気にかけていたということが証明できた。(もちろん根本的なことは変わらないが)
これで、なんとか最悪の状況にはならなそうだ。
そう思っていたが、甘かったらしい。
キバオウの次の発言で状況はまたも一変する。
「そないこと言う、おまはんこそがβテスターちゃうんか?」
キバオウの言葉の牙が俺に突き刺さる。
この言葉こそ、この場に居る元βテスターが最も恐れるものである。
なぜ、βテスターをそこまで庇護するのか?
それは、お前がβテスターだからだ。
と、言う調子で有無を言わさず仕立て上げられることとなる。
まあ、実際その通りなんだがな。
だが、今は自分がβテスターであることを宣言するわけにはいかない。
理由はキリトとレイピア使いだ。
よくよく考えてみたら俺が今正体をバラしたら、一緒に居たこいつらまで巻き添えを喰らう可能性がある。
行動を起こしたのは俺だ。
二人を巻き込んでいいわけがない。
とは言ったものの、なんて言い返せばいい。
「どうしたんや。 さっきまでの威勢がなくなっとるで?」
「うっ……」
やばい、考えろ。
なんかいい誤魔化せそうな言葉を。
必死に頭の中で言葉を模索していると、一人の男性が手を上げていることに気がつく。
「発言いいか?」
立ち上がった男性は二百はあるだろうか、大きな体をしていた。
色は黒く、頭は見事なスキンヘッド。
背中に背負っている斧も実に似合っている。
だけど、何故いまこのタイミングに発言を?
「オレの名前はエギルだ。 そうそうで悪いが、一つだけ言わせて欲しい」
そう言うと、エギルは俺とキバオウの方を向く。
この男は一体何を言うつもりのか。
思った瞬間、
「こんな時にあんた達は何を言い争っているんだ!!」
広場、いや、アインクラッド全域にに響き渡る怒声をエギルは発した。
俺とキバオウは唖然とした。
多分、他のプレイヤー達も。
「今はそんな事している場合じゃないだろ。 この会議は「これからオレ達がどうするか」を決めるためのもののはずだ。 ケンカをするならよそでやってくれ」
最後に「発言を終える」と言い、エギルは静かにその巨体を席に沈めた。
しばらく時が止まったが如く、誰も何もしようとしなかったが、
「キバオウさん、シンジ君。 君たちの言いたいことはどちらも理解できる。 でも、今はエギルさんの言う通り仲間割れをしている場合じゃ無いと思うんだ。 それぞれ思う所があるかもしれないけど、今は目の前のボス戦に専念しよう。 できない人は申し訳ないけど、このチームから抜けて欲しい」
ナイト様はこちらをじっと見ながら言った。
それに対し、キバオウも納得はしてないものの、今は自分に分が悪いと考えたらしく、素直に自分の元居た席に戻った。
____俺を睨みながら。
でもまあ、キバオウが引っ込めば、俺もいう事はない。
空気に合わせて、俺も座ろう。
安堵のため息を吐きながら腰掛けると、横からすごい視線が送られてくる。
……キリトか。
「シンジ、お前_____」
「悪ぃ、今はその話は無しにしてくれ。」
「……分かった」
小声で会話を一旦終わらし、キリトには悪いことをしたと思いつつ頭を切り替えて会議に専念した。
それからの会議はスムーズに進み、パーティメンバー編成の時もすぐに決まった。
俺のチームのメンバーはキリトと何故かレイピア使い。(レイピア使いは多分知り合い居なさそうだから、アブれたんだろうな)
ちなみにパーティーを組んだ際に分かったのだが、レイピア使いの名は《アスナ》と言うらしい。
まあ、名前で呼び合うほど親しくないから知っていてもあまり意味がない気がする。
その後は作戦のことを色々と説明され、明日のボス攻略のために早めの解散となった。
□ □ □ □
今の状況を分かりやすく言おう。
スゲー気まずい。
ボスの攻略会議が終わった後、作戦の最終確認をキリトの部屋でやろうと言う話になった。
のだがここに風呂があるということに気づいたレイピア使いが、目の色を変えてキリトに半ば強引に頼み込み現在彼女は入浴中である。
そのため、俺とキリトは二人でレイピア使いが上がるのを待っているんだが……。
チラッ、とキリトの方を見る。
例の分厚い攻略本を読んでいるが、明らかに様子がおかしい。
妙にソワソワしてるし、何か別なことに気を取られているような感じだ。
そして、それは俺も同じだ。
アイテムの整理をしているが、どうも身が入らない。
恐らく俺とキリトが気を取られているのは同じことだ。
そう、第一層ボス攻略会議の時の。
俺が勝手な行動をしたことについての追求だろう。
当たり前だよな。
間接的とは言え、危険に晒してしまったんだから。
どう謝まったらいいのか正直分からないが、とにかくキリトとちゃんと話すべきだよな。
後、レイピア使いにも。
脳内で考えがまとまり、早速行動に移そうとしたとき。
扉からコン、コココンと言うノックの音が聞こえてきた。
「この音は……」
俺とキリトとアルゴで決めた合図。
キリトはここにいるので除外したとして、残りはアルゴ。
ということはドアの前に居るのは_____ハッ!!
目線を素早くバスルームの扉に向けた。
キリトもまた、俺と同じ考えに至ったのか見ている所は一緒だった。
あの扉の向こうでは今、レイピア使いが入浴している。
それがもし一流の情報屋であるアルゴにバレてみろ。
すぐさまネタにされて、俺たちの人生(社会的に)DEADEND直行だ。
「ど、どうするキリト?」
「落ち着け! SAOでは、ドア越しの音は聞こえない。つまり、この部屋にアルゴを入れても問題はないはずだ」
「レイピア使いが出てきたら?」
「……その時は逃げよう」
「うぉーい!!」
コン、コココン。
尚も鳴り響くノック音。
流石にそろそろでなければ、何か在ると怪しまれる
そうなったらこの手については猟犬並の鼻を持つ彼女を欺くことは不可能。
これはもう行くしかない。
「開けるぞ」
キリトに確認をとり、頷いたのを見て俺は扉を開けた。
「よぉアルゴじゃんかよ。ドウシタンダ?」
「いや、それはこっちの台詞だナ。なんかあったカ?」
くっ、話してそうそう怪しまれた。
流石アルゴ、鼻が利きやがる。
だが、まだバレた訳じゃない。
ここから話をずらせばいいだけだ。
「中にハイレヨ。ドーセキリトの事だろ?」
「まあナ。それじゃあ、上がらせてもらうヨ」
平然と部屋の中に入ると、アルゴは手近なソファに腰掛ける。
それと気のせいかキリトがため息をついているところが見えた。
いや、俺頑張ったし。
充分やったと思うよ、俺。
そう思いながら俺はドアを閉め、近くの椅子に座った。
「さて、これは俺の予感なんだが。またキリトの剣を買取りたいって奴の依頼だろ?」
「おっ! 正解ダ。シン坊は妙なところで勘がいいナ」
「よせよ照れるぜ!!」
「シンジ、褒められてないぞ」
「マジで!?」
「まあ、そこは置いといてでナ。そろそろ本題に入らせてもらうゾ」
コホン、と咳払いをして場を仕切りなおしてからアルゴは口を開いた。
「キー坊の剣、今日中なら三万九千八百コルだすそーダ」
「……さ!?……」
「ちょい待てアルゴ。そりゃあ、少しばかり怪しくないか?」
あまりの金額に言葉を失っているキリトはさておき、いくらキリトが持っているアニールブレードが高性能と言えど、それだけの金があればこれと同等、もしくは上回る性能のモノが作れるはずだ。
なのに何故、わざわざそこまでしてキリトの剣を欲しがるんだ。
「オレッちも散々言ったんだけどナ。どうしてもってきかないんダ」
両手を上げたって事は、理由はアルゴも知らないのか。
だとすると、本格的に分からないな。
大体メリットよりもデメリットの方が多い取引なんて聞いたことないぞ。
……待てよ、この取引によって起こるメリットやデメリットってのはそもそもなんだ?
依頼者の場合、メリットはアニールブレードの入手。
逆にデメリットはそれに払う定価以上の金。
キリトのメリットは本来の売値よりも多くの金を入手とデメリットは……戦力の低下ぐらいか。
まあ、キリトだって予備の剣ぐらいは持ってるだろうけど、今の装備には及ばないだろうしな。
そうなれば本来よりも弱くなるのは当然……ん?
弱くなる?
オイオイ、ちょっと待てよ。
いままで依頼者のデメリットとキリトのメリットがでかすぎて見えなかったけど、依頼者の方にはもう一つメリットが、キリトにはもう一つデメリットがあった。
そう考えるとキリトの剣を執拗に欲しがっていたのは、使いたいからではなくキリトの戦力を低下させるのが目的か。
だが、それに一体何の意味があるんだ?
まだだ、まだ何かあるはずだ。
……もしかすると期限か
確か依頼者は今日中限定で、この金額と言っていた。
と言うことは今日までに手に入れなければならない理由がある。
それは何か。
明日あるのはボス攻略だ。
だとすると依頼人はボス攻略会議に出席していた誰かという可能性が高い。
しかし、だったら味方を弱くしてどうするんだ。
それもよりにもよってボス攻略の日に。
もしやそこに何かまた別のメリットがあるのか?
いくつもの考えが頭に浮かぶが、まだ全てがつながらない。
_____そうすると、残る手がかりは。
「キリト、俺も金払うからクライアント様の名前調べようぜ。興味がでてきた」
「ああ、俺も丁度そう思っていたところだ。アルゴ、頼めるか?」
「……わかっタ」
アルゴは頷くと、素早くインスタントメッセージを作成、そして飛ばした。
それから一分後、返事が来たのか彼女は肩をすくめた。
「教えて構わないそうだ」
「ん、随分とあっさり解決したな」
てっきり徹底抗戦になるかと思ったんだけどな。
余計な心配だったらしい。
俺とキリトは互いにコインをオブジェクト化し、アルゴの目の前に置いた。
それを一枚ずつアルゴはストレージに格納し、最後の一枚を入れ終わると同時に言った。
「キー坊とシン坊はもう、そいつの顔と名前を知っているヨ。特にシン坊はネ。今日の会議で二人で大暴れしてたしたからナ」
「……冗談だろ?」
「……まさか………キバオウ、か」
キリトの囁きにアルゴは、はっきり頷いた。
間違いはないという訳か。
ここまで来て、まさかコイツの名前が出てくるとはな。
嫌なイレギュラーだよ、まったく。
おかげでますます混乱してきたぜ。
まあ、その代わり一つだけ分かったこともあるが。
「この取引はやめたほうがいいぜ。あいつは何してくるか分からねーからな」
触らぬ神に祟りなし。
キバオウと言う男は今日の攻略会議を見るあたりどうも信用ならない。
それに相手の真意が分からん以上、手を出すのは危険だ。
「それじゃあ、剣の取引は不採用でいいんだナ?」
「……ああ」
心がこもってない返事でキリトは返したが、よほど驚いたらしい。
しばらくはこのまんまだな。
「そんじゃ、オレっちはこれで失礼するヨ。二人共、明日頑張ってくレ」
「おう、任せとけ」
「ああ……」
「っと、その前に悪いけどとなりの部屋借りるゾ。夜用装備に着替えたいカラ」
「どぞ、俺のへやじゃねえーけど」
「ああ……」
さて、どうしたものか。
名前を知ったら、逆に謎が深まっちまった。
一体どうしたものか。
……ちょっと待て。
その前に俺、まだキリトと今日の事謝ってないじゃん。
アルゴが来てバタバタしてたからすっかり忘れてた。
しまった、今すぐ謝らなければ。
そう思い、キリトの方を向くと____。
何故かカッチコチに固まっている
その様子はまさに蛇に睨まれたカエルに等しい。
何を見て固まったのか気になり、視線の先を見てみると
_____アルゴがバスルームの扉の中に入っていったところだった。
サァー、と血が引いていくのが分かった。
その数秒後、二つの叫び声が聞こえた。
ひとつは驚声、もう一つは悲鳴が。
とっさに俺とキリトは窓から逃げようとしたが遅かった。
直後、ドアから飛び出してくるプレイヤー。
それはアルゴではなく_____。
今、思えば彼女をちゃんと見たのはこの時が最初かもしれない。
透き通りそうな程の白い肌、よく手入れされている栗色のロングヘアー、そして今起こった状況を理解し、りんごのように赤くなった顔。
それを見て、俺とキリトは、
「女神だ」
「ああ、モノホンの女神様が降臨なされた」
「ばっ、ばかああああああああ!!」
悲鳴が聞こえたと思ったら、意識は既になくなっていた。
女神さまもいいですが、いい加減ヒロイン出したいです。
追伸、更新が今さっきあったと思いますが作者のミスです。
ごめんなさい