東方風天録   作:九郎

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遅れてすいません……

そして、感想ありがとうございます。
やる気出ました!!

では、本編です。


一緒に……

ア〜カァーア"〜

 

煩い……

 

起きてからずっと鴉が窓辺にとまっている。

 

さっき、八意さんに

 

「鴉が窓辺に居て煩いんです、追い払って貰えませんかね?」

 

と言ったら。

 

八意さんは、窓辺を見るなり首を傾げて

 

「何を言ってるの?」

 

と答えた。

 

おかしいな……

 

 

と首を傾げていると

 

窓から新聞が投げ込まれて顔面に直撃……

 

痛い……

 

 

「おはよ、クロ君!!」

 

元気一杯に文が窓から入ってきた。

 

「行儀悪いぞ……」

 

 

「えへへ〜良いじゃないですか〜」

 

何故この子はニヤニヤわらっているのだろう?

 

何か良いことが有ったのだろうか?

 

あっ、またアイツが鳴いている……

 

 

「ねぇ、窓辺にいる鴉……うっさいから追い払って貰える?」

 

 

「ん?何を言ってるんですか?そんなの居ないですけど……」

 

少女は首を傾げて窓辺を見た。

 

なるほど、コイツはオレにしか見えてないのか……

 

 

幻覚というやつだな。

本でしか知らない事だけれども……

 

「ねぇ、知ってる?」

 

 

「ん?何ですか?」

 

 

「死期が近い人間は、幻覚を見るそうだ……」

 

 

「はっ、はぁ……」

 

 

「ある老人は黒い猫が側に居たと言う……また、ある人は側に可愛らしい子どもがいたそうだ。」

 

 

「なっ、何を言ってるんですか?なんかクロ君変ですよ……」

 

 

少し困惑しながら少女は言う。

 

「この話は止めよう……オレも何を言ってるのか訳が分からなくなってる、さて、悪いねオレ、まだ山には戻れないからさ……新聞作る手伝いができない」

 

 

「別に良いですよ、私……ずっと1人で新聞作ってて、手伝ってくれる相手が居るだけで充分です……」

 

ニコッと笑う文の笑顔を見て胸の辺りがざわついた。

 

後めたい気持ちになった。

 

「もし、助手になったら……何を手伝って欲しい?」

 

 

「えっと……そうですね、私の取材の手伝いはもちろん、原稿の書き込みに、取材の資料の整理整頓、それに、新聞の印刷、それにそれに……etc〜」

 

 

 

「おっ、おいおい……オレを過労死させる気かよ?」

 

「記者の仕事は過酷なのです!!」

 

エッヘンと文は胸を張った。

 

確かに過酷なんだと思う。

それを1人でやってたんだ、たった1人で……

 

 

「頑張らなきゃな……」

 

 

 

「クロ君が居たら心強いです!!」

 

嬉しそうに文は笑う。

分からないな……オレなんか頼りにならないのに。

 

「はぁ?どこが?オレ、ど素人だぜ?」

 

 

「貴方の技術が心強いんじゃない……貴方が居てくれるのが心強いんです……」

 

 

「うおっ!?」

おいおい……反則だろそれ

 

殺し文句だわ、オレの心臓破裂させる気かお前は?

 

やめてくれよな、そろそろ限界きてるみたいだしな。

 

 

「ずっと不安でした……みんなに読まれない私の新聞、同族にも笑われる、でも、貴方はちゃんと新聞として大事に扱ってくれましたから……貴方がいてくれるだけで、私は幾らでも新聞を書くことができます……」

 

また、文はニコッと笑う

 

そして、オレはまた後めたい気持ちになってしまった。

 

また、鴉が喚いている。

 

煩い……

 

「そうかい……」

 

 

「だから、これからよろしくお願いしますね!!一緒に色んな出来事を記事にして、一緒に新聞を配達して……一緒に……」

 

 

 

「うん……一緒に……頑張ろう……」

 

困った顔で笑った。

 

無情な物だ……オレはあとどれくらい……

 

「では、私はこれにておさらば〜」

 

文は笑って飛び去った。

 

 

「また、言いそびれたわね……」

 

ドアを開けて八雲さんが入ってきた。

 

「あれ?聴いてたんです?貴方も行儀が悪い……」

 

 

「あら?誰が臨死状態の貴方を隠すために彼女を食い止めてたのか分かって言ってるの?心配……させたくなかったのでしょう?」

 

 

「オレは別に頼んじゃいないですよ?」

 

 

「ふふっ、それもそうね……」

 

苦笑いする八雲さんには少しだけ感謝してる。

 

貴方はオレに死んで欲しいと言ったけれど、オレを担ぎ込んできたのは貴方はなんでしょう?

 

 

聞きました。

 

 

分からない人だなぁ……

 

 

「案外……伝えるのに必要なのは言葉じゃないのかもしれないわね」

 

 

遠い目をして八雲さんは言った。

 

「気持ち……ですかね?言葉にするのも勿体無い感じはするんです、でも、ちゃんと伝わってるとは……どうなんだろう?」

 

 

「もう十二分に伝わってると私は思うわよ?」

 

ニッコリと紫は笑う

 

 

「そうなんでしょうか?」

 

 

「あの子は恥ずかしがり屋なのよ……無論、貴方もね……」

 

 

「ふふっ、オレが恥ずかしがり屋なのは間違いないですね〜素直でもないですから〜」

 

 

「良い男になったわね……ホントに、勿体無い……」

 

 

「オレをおだてても出るのは埃だけっすよ〜」

あの子といる時間。

そして、ヘラヘラと笑うこの瞬間でさえオレにはとても幸せな時間だったんだ……

 

 


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