本当に何か参考になるものがあれば良いんですけどねぇ〜
では、本編です。
妖怪の山、青年の自宅付近にて……
ブン……ブン……
青年は、大剣を振る。
クソッ重すぎる……こんなじゃまともに闘えない。
いや、闘う必要なんてもうないのだけれど……
でも、剣を振るのは好きなんだ。
男の子ってチャンバラとか好きだもんな……
オレもまだまだガキだなぁ。
でも、これくらいしかやる事がないんだよ。
それに、もう少しだけ、強くなりたいから。
「下手くそですね〜」
ヒュンと音を立て、少女は青年の前に現れた。
速いなぁ〜まぁ、視えてはいるんだけど……
「下手くそで結構……こうやって何も考えずに振ることに意味があるんだ。」
「ハハッ、対して強くもない癖に知ったような口を利くんですね〜」
ヘラヘラ笑って少女が言ったので、青年は、苦笑いした。
「知ったようなって言うかさ?ただ、耳を澄ましてるだけなんだよね」
「何を聴こうとしてるんですか?」
「ん〜、どうやって振って欲しいのかってことかな?あと、自分の身体と対話してる感じだよ、どうやったら上手く振れるのか、最速、そして最善を、探すんだ。」
「はぁ〜?クロ君ってたまに訳の分からないこと言いますね〜、で?聞こえるんですか?」
「全っ然……いっそのこと……耳が聴こえない方が聴こえるのかも知れない……」
「耳が聴こえないなら何も聴こえないじゃないですか、クロ君ってアホですか?あっ……アホだった……」
イラつくなぁ……
オレは一人で黙って剣を振りたいのに……
正直、さっさとどっかに行って欲しい。
邪魔だ。
「ほぅ……」
どこからともなく老人が現れる。
何者か分からない爺さんだ。
オレの事を義経と呼ぶから、僧正様かと思ったけれど、違う天狗らしいし……
「いい加減に何者か教えてくれませんか?ただのボケ老人かと思ってるんですけど……」
「ヒィィ!!こんのバカクロォ!!!!」
バコォ!!!
と少女は、青年の頭を下駄でぶっ叩いた。
「痛ッッッツてぇぇぇええええ!!!!!」
頭が割れるかと思った。
まだ、頭がグワングワンしてる。
お星様だって見えるぞ〜
「もっ、申し訳ございません無二斎様!!!こっ、こいつ頭おかしいんですよ!!気が触れちゃってましてね?まともじゃないんです!!どっどうかお許しを!!」
ダラダラと冷や汗をかいて少女は、無二斎にペコペコと頭を下げる。
そんなにこの爺さんが怖いのだろうか?
「こいつが阿呆なのはとうの昔から知っとるわ……それに、そこまで怯えんでいい……」
あまりに少女が硬くなるものだから無二斎は、苦笑いして言った。
「いっ、いや、だって、無二斎様は生ける伝説ですよ!!我が組織最強の天狗!!気合いで妖怪を倒したとか、妖怪の山の滝を真っ二つに斬ったとか、極め付けは悪鬼の70人斬りですよ!!」
「あほう、そんなもん嘘に決まっとろうが!!わしらよりも高位の妖怪を70人も斬れるかよ……全部嘘じゃ……」
困った顔して無二斎は、笑う。
いつもの厳しい表情ではなく和かな表情だった。
だから、猫被る奴と皮被ってる奴は嫌いなんだ……
と、青年は心の中で呟いた。
「なっ、なんか想像してたイメージと違いますね!!最強の天狗と言われる程なので修羅って感じだと思ってましたけど、思ってたよりとフランクな方なんですね〜」
「最強の天狗という呼び名も誰かが勝手に言っとるだけじゃ……変な噂が一人歩きしとるのだよ、わしはそこまでバケモノのような天狗ではないぞ……」
「あっ、あの、もし良かったら取材させて貰ってもよろしいでしょうか?滅多に会える方ではないので、またと無いチャンスなんです。」
目をキラキラさせて少女は、無二斎を見た。
無二斎は、笑ってそれを快諾する。
青年は、それをボケ〜ッと見つめていた。
「ヘッ……」
自然と吐き捨てるような声を出してしまった。
オレはあまりこの爺さんは好きじゃない。
何が0点だよ……
そんな事を思って無二斎とか言うボケ老人を睨んでいたら。
キッ!!と文に睨まれた。
「変な真似するな!!!」
と言いたげだったので。
こいつらの取材が終わるまで一人でボケっと空を眺めていた。
小一時間経ったあと。
「物凄く意外でした……私が聞いた伝説、ほとんどデマだったんですね……ちょっとガッカリですけど、このネタはとても価値のあるネタです!!本当にありがとうございました!!」
少女は、無二斎に深々と頭を下げた。
「おう、頑張れよ〜」
笑いながらヒラヒラと手を振って無二斎は去って行く。
「…………」
青年は、ジッとそれを見つめていた。
「おやおや〜クロく〜ん、ほったらかしにされて怒ってます?それとも?私が他の人と笑顔で話してたから妬いちゃったのかなぁ〜?」
ニヤァっと笑って少女は、青年を肘でつつく。
「なわけ無いだろばぁ〜〜か!!」
「うわぁ……ムカつくなぁ」
ムスッとして少女は、青年を見たが、青年はボーッとしていて心ここに在らずといったところだ。
「殺されるかと思った」
「えっ!?」
「いや、なんでもない……そんな気がしただけだよ」
遠い目をして青年は言った。
「チキン野郎ですね〜チキンハートのクロ君!!このヘタレ〜ヘタレ〜」
ニヤニヤ笑って少女は、青年をからかうが青年は、それを全て無視するので少女は、飽きて大人しくなる。
同刻、無二斎は山道を一人歩いていた。
「あの小僧、一度たりともわしの刃圏の中に入ってこなかった……何度か移動して中に引き込もうと仕掛けたのにな……しかも、無意識に避けておった……ふっ、殺しそこなったか……」
ニィッと無二斎は、頬を吊り上げて歩いて行ったのだった。