まぁ、楽しく読んで下されば光栄です。
では、本編です。
大カエルを退けた青年は振り返ってチルノを見た
「大丈夫?痛いところとか、ある?」
「ない!!あたい最強だもん!!」
チルノは強がって嘘を吐いた。
バレバレである。
痛そうな顔してるのを隠しきれていないから
スッと青年は、チルノの右腕を触った。
「痛ッ!!」
痛みでチルノの顔が歪む
折れてるのか?
傷だらけじゃないか、さっきの奴にやられた傷じゃあないな
弾幕ごっこで……
「ったく……無茶すんなよ、こんなになるまで……」
どの口が言うのだろうか……
青年は、そんな事偉そうに言える立場じゃないのに……
「あれ……痛くない、傷が……消えて……」
不思議な事が起きた。
青年がチルノの腕を触った瞬間、チルノの負っていた傷が癒えたのだ。
不思議そうにしているチルノを青年は厳しい表情で見た。
「八つ当たりだよね……チルノちゃんの遊びって、いつも弾幕ごっこで勝てないから……」
「えっ……ちっ、違うよ!!あたい最強だもん弾幕ごっこで負けたりなんか……」
「嘘吐き……知ってるよ、チルノのちゃんが弾幕ごっこ弱いこと」
「よっ、弱くなんかない!!!クロ!!あたいの子分の癖に生意気だぞ!!」
キッとチルノは青年を睨んだ。
「本当に強い人は、自分よりずっと弱いカエルなんか虐めて遊ばない……チルノちゃんは悔しかったんでしょう?いつも負けるから、いつも一方的に負けてしまうから、一方的にカエルを虐めたんだ……それって、弱い者虐めだよね?かっこ悪いよ、そういうのは弱い奴がやるんだ……」
「ッ!!!うっ、うるさい!!見てろよ、さっきの大きなカエルだってあたいが氷漬けにしてやるから!!あたいは強いんだ!!弱くなんかない!!」
チルノはムキになって青年に反抗する。
無理もない、人間は本当の事を看破され、言われると怒る。
とても怒る。
妖精のチルノも同じようだ。
「馬鹿じゃないの……あんな目に遭ったのに、まだそんな事言うの?まだ、八つ当たりするの懲りてないの?いい加減にしろよ……」
「馬鹿って……あたい馬鹿じゃない!!!みんなみんなあたいを馬鹿にして!!ちがうもん!!馬鹿じゃないもん!!クロまであたいを馬鹿にするの?あたいは馬鹿じゃないし弱くもないもん!!!」
顔を真っ赤にしてチルノは言った。
目に涙を浮かべている。
胸が痛かった。
苦しかった……でも、それでもなんだ。
言わなくちゃ……
「チルノちゃんは強さを履き違えてる、なんでもかんでもやっつけて上から押さえつけるのが強いと思ってるんじゃない?いじめっ子の思考だね……そんなの強くないよ、もう止めよ?八つ当たりなんてさぁ勝てなくてもいいじゃない?強くなるんじゃなくて強くあろうとしようよ、大丈夫、チルノちゃんなら強くなれるさ、霊夢さんや魔理沙に負けても諦めなかったんだから……」
「うるさい!!!子分の癖に偉そうな事言うな!!!あたいは負けてない!!誰があんたなんかの言う事聞くもんか!!バーカ!!クロだって弱い癖に!!」
チルノは顔を真っ赤にしてあっかんべーした。
青年は、それを厳しい表情でみつめている、
「弱いよオレは、でも、強くあろうとしてるつもりさ」
「あたいはクロなんかとは違うもん!!あたいは強いんだ!!あたいあんたの言う事なんて聞かないよ?また、カエルを氷漬けにしてあの大きなカエルだってやっつけてやる!!怒ったからここの池のカエル達だってみ〜んな氷漬けにしてそのあと、踏んづけて氷ごと砕いてやるんだ!!」
チルノは顔を真っ赤にしてフーフーと息を吐く
怒っているようだ。
「………………」
青年は暫く黙り込んだ。
「みんなみんな凍らしてやる!!あたいに逆らう奴はみんな永久冷凍保存してやる!!クロだってそうだぞ!!これ以上あたいを怒らせるな!!氷漬けにしてやるぞ!!」
パァン!!! と音が響いた。
「えっ……」
右頬を赤くしたチルノは困惑していた。
「…………いい加減にしなさい」
苦虫を噛み潰したような辛そうな表情で青年はチルノを見る。
「よっ、よくも叩いたなぁ〜!!バーカバーカ!!クロなんて大っっ嫌いだ!!死んじゃえ死んじゃえ!!あんたなんか死んじゃえばいいんだ!!」
ポロポロと涙を流しながらチルノは反抗する。
パァンと再び青年はチルノの左頬を引っ叩いた。
「死んじゃえなんて……オレ以外には絶対に言うなよ、二度とな!!」
「うっ、うるざい!!クロなんて死んじゃえばいいんだ!!嫌い嫌い!!大っっっ嫌い!!!!バーカバーカ!!あんたとなんかもう二度と遊ばないもん!!クロなんて死んじゃえ!!死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえバーカ!!」
チルノは泣きながら飛んで行った。
青年は無言でそれを見ていた。
チルノを引っ叩いた右手がプルプルと震えている。
痛い……痛いよ……
右手が痛い……
泣かしちゃった……あの子の事……
フラフラと家の前まで帰ってきた。
どこを歩いて帰ったのか記憶していない。
ストンと青年の腰が抜けて地面にへたり込む。
「おやおや〜どうしたのかなぁ〜クロく〜ん、元気無いですねぇ?」
空から少女が降りてきた。
「手がね……痛いんだ……今まで感じた痛みの中で一番痛いかもしれないくらいに、痛いんだ……」
「あやややや、怪我ですか!?今手当てを……」
「違う、違うよ……オレ、引っ叩いちゃった……チルノちゃんの事……こうでもしないと分からないと思ったけれど……痛かったかな?大丈夫かな?あの子……初めて子どもを叱ったよ……叱り方間違えてたかな?オレ……よく分からないから……どう叱れば良いのか分からなくって……あの子泣かしちゃった……」
「………………心配し過ぎですよ、大丈夫、大丈夫ですよ〜あの子はそんなに弱い子ではないですからね!!ちゃんとクロ君の伝えたかった事を分かってくれる筈です。」
ニコッと笑う少女の顔を、青年は直視する事ができなかった。