技名として、我来タル也の我来也にしようか迷ってたんですよね
自来也の元ネタは、中国の古典から来ていて
正義の義賊が、盗みに入った後に我来タル也と壁に書いていた事から我来也となり、紆余曲折を経て自ラ来タル也になって自来也になったらしいです。
まぁ、クロ君自身の意思で決断して行う事なので
我というより、自ら来て欲しかったので『自来也』と名付けました。
これがACT1です。
ダサいっすね。
けっこう好きな言葉の一つではあるんですよ。
では、本編です。
青年は、湖への道を歩く。
散々に怒られた……
オレが悪いのは分かってるよ、悪かったさ……
ガキだなぁオレは……
ん?
遠くにチルノちゃんが立っていた。
服がボロボロになっている。
「ちくしょ〜覚えてろ〜アホ霊夢にアホ魔理沙!!」
霊夢さんと魔理沙にやられたのか……
弾幕ごっこというやつで。
「大丈夫?チルノちゃん?」
「なんともないよ大ちゃん、あたい最強だもん!!」
側に居たもう一人の妖精にチルノは言った。
なんだか、強がってるようにしか見えなかった……
「あんまり無理しちゃダメだよ……もう諦めなよ、あの人達には勝てっこないよ……」
心配そうに大ちゃんと呼ばれた妖精はチルノを見ていた、
「無理なんてしてない!!みんなみんなあたいを馬鹿にして!!あたいは馬鹿じゃないし弱くもない!!あたいは、最強なんだ!!だから霊夢や魔理沙なんかに負けないもん!!」
「う……うーん……」
「あたい負けてない……まだ、負けてない!!あたいは強いんだ!!霊夢にだって魔理沙にだって勝つんだから!!」
チルノは飛んで行った。
また、弾幕ごっこを挑みに行くのだろうか?
「無理してるね……」
「わっ、だっ誰ですか?」
背後から青年が声を掛けたので大妖精は驚いて振り向いた。
「クロ……」
「あっ、貴方がクロさんかぁ!!チルノちゃんの友達の、よく話を聞きますよ、私、大妖精っていいます」
なるほど、だから大ちゃんって呼ばれてんのね。
「あの子……いつもあんな調子で霊夢さん達に立ち向かってくの?」
「ハイ、ずっとずっと続けてます。きっと悔しいんでしょうね……いつも負けてばかりで、馬鹿にされてるから、チルノちゃん……いつも私の前では強がってるけど、一人の時は凄く不安そうな顔をしてるんですよ……本当はチルノちゃん自身が一番分かってるんです……敵わないことを、それでもやっぱり認めたくないんでしょうね、自分が、弱いこと。」
「意地っ張りだなぁ……それはいい面もあるけれど、悪い面もある、大丈夫かな?」
「そうです、意地っ張りなんですよ、本当は不安なのに人の前では出せないから色々と溜まってるんだろうなぁ、私がしっかりしなくちゃ……」
「ふ〜ん、チルノちゃんがカエル凍らして遊ぶのもこういった事が原因なのかな?自分より弱い奴を一方的に苛めて自分は、強いんだって思う事で自分を保ってるんじゃないだろうか?」
「そうかも知れません、いつも一方的に負けてますから……」
悲しい顔をして大妖精は呟く。
それを青年は困り顏で見つめていた。
「なるほどねぇ、困ったなぁ〜じゃあオレ行くわ」
「もう行っちゃうんですか?」
「うん、オレがここに居たらチルノちゃんは辛いのに無理をするからね」
困り顏で青年は大妖精に微笑んで去って行った。
悔しくて堪らないんだろうなぁ
霊夢さんや、魔理沙は酷いなぁ少しは手加減してやればいいのに……
手を抜くことが苦手なのかなぁ……
手を抜かれたら抜かれたで、頭にくるよなそれも悪いし……
あの子はいつもいつも負けているんだ。
だったら、カエルみたいな弱い立場の相手を虐めたりしないと思うけれど……
認められないんだろうな、自分が弱いって事……
認めてしまう事が怖いんだ、強いと思っていたいのだろう。
自分の弱さを直視したくないんだ。
オレだってそうだもん。
でも、弱さを知らないと……ただ強いだけってのは何も意味がない
強いってなんなのか、オレにも分からないけれど、弱いのはオレだって嫌だ……だから、強くなりたい……いや、強くありたいんだ。
暫く歩いていると更にボロボロになった。
チルノが1人ポツンと立っていた。
「グスッ……ヒグッ……」
すすり泣くような声が聞こえたので咄嗟に物陰に隠れた。
励ましてあけたいけど逆効果なんだ……
一体どうすればいいんだ?
何が正解なんだ?何が模範的行動なのだ!?
分からない……分からないよ……
「みんなみんなあだいをバガにじで……あだい……よわぐないのにぃ……」
この子が泣いているところを見たくなかった。
オレはこの子の笑顔が好きなのだ。
でも、どうすればいいのか分からない……
オレは、それが、どうしようもなく悔しくて悔しくて……
ゴツゴツと地面を殴っていた。
「あたい強いもん……あたいは強いんだ……弱くなんてない!!」
まるで自分に言い聞かせるように必死にチルノは、呟いて、妖怪の山の方向へ飛んで行った。
ヤバい!! あっちは池がある……
あのバカタレ……
青年もチルノを追って走り出した。
妖怪の山の池にて
前よりも一段と激しい氷塊の無差別爆撃を行うちびっ子が1人……
「あははは、凍れ凍れ〜!!どうだ!!あたいは強いんだ!!強いんだぞ!!思い知ったか!!」
もはや池ごと凍らせるような勢いで次々とカエル達を凍らせてゆくチルノ
「どうだどうだ!!あたいは強いんだ!!弱くなんてないんだぞ!!」
ヤケになっているのだろうか?
フーフーと息を吐いて顔は真っ赤になっている。
八つ当たりだ……この遊びはただの八つ当たりなのだ。
いつも負ける、いつだって負けてしまう
勝ちたいのに勝ちたくてたまらないのにそれが叶わないから、チルノは代わりにカエル達を虐めるのだ。
「ゲェコ……」
池の中から大きなカエルが現れた。
チルノを睨んでいる。
「なんだよ、お前もあたいに凍らされたいのか!!前みたいにはいかないぞ!!あたいは強いんだ!!お前みたいな弱い奴には負けな……」
言葉を言い切る前に、チルノはカエルの舌に叩き落された。
「痛っ!!」
あれ、おかしいな……こいつ、あたいを丸呑みにした時の雰囲気とちょっと違う……あれ……怖い、体が震える……
カエル達も我慢の限界だったのだろう
だから、大カエルも殺すつもりでチルノを襲っている。
心配する必要は無い。
死なないのだから……
だから、二度とこんな真似が出来ないように徹底的に殺すのだ……
チルノの心を。
痛みという苦痛で……
「うわぁ!!」
再び大カエルの舌を叩きつけられチルノは吹っ飛び木に叩きつけられる。
「アグッ……痛い……痛いよぉ、助けて〜」
カタカタと震えてチルノは、泣き出した。
大カエルは許さない、許す気は毛頭ないのだ。
そして大きく振りかぶって自らの舌をチルノに叩きつけようとする。
「ヒィッ!!」
恐ろしさのあまりチルノは目を瞑った。
助けて……誰か助けて!!クロ……
バシィ!!!
山に響き渡るような大きな音がした。
痛みを感じない……おかしいな……
チルノは恐る恐る目を開けた。
すると鞭のようなカエルの舌を片手で掴んでいる黒い男が見えた。
「我来たれり……ってか?カエルさん、流石にこれはやり過ぎじゃあないですか?本気で殺しにかかってましたよね?」
「ゲェコ!!」
離せ!!と言わんばかりに大カエルは舌を動かすが青年は大カエルの舌をガシッと掴んで離さない。
「殺すのならば……オレは貴方を殺シマス……こちらが悪いのは分かりきっています。頭なら何度でも下げます、妖精が死んだりしないのも知っています……でも、それでも殺す気で相手を叩きのめすのはおかしいでしょう?チルノちゃんは殺す気でカエル達を凍らせていたわけじゃあないんですから……ヤメテクダサイヨ……」
パッと青年は、掴んでいた大カエルの舌を離した。
大カエルは、背筋が凍るような寒気を感じた。
木枯らしが吹いたように、辺りが寒くなった気がした。
しかし、大カエルの怒りは収まらない。
よし、こいつも一緒に殺そう
こいつが死ねばこの、妖精も傷付く
痛めつけるべきは体ではない、心なのだ。
大カエルはそう考えた。
「ゲコ!!!」
再び大カエルは唸りをつけて青年に自らの舌を叩きつけようとする。
それを見て青年は、チッ……と舌打ちをした。
「クロ逃げて!!危ないよ殺されちゃう!!!」
震えているチルノに、青年はフッと優しく微笑んだ。
バシィ!!!!
大カエルの舌が砂を巻き上げて青年を襲い、辺りに砂煙りが立ち込めるた。
先ほどとは比べ物にならない大きな音が響き渡り、鳥達が驚いてバサバサと飛んでゆく。
「ゲェコ……」
ざまぁみろと言いたいのだろうか
大カエルは満足気な顔をした。
「くっ、クロぉ……」
ポロポロと涙を流すチルノ
「ゲコゲコゲコ……」
満足気そうに大カエルは笑う
…………が、再び背筋が凍るような殺気を感じた。
ふとその方向を見てみると、砂煙りの中から青年が現れた。
背中に背負った大剣の峰の部分で青年は、大カエルの舌を受け止めていたのだ。
「コノ子ヲ 泣カスナヨ…………殺スゾ!!!!」
ビリビリビリ!!
青年から威圧感を感じ、大カエルは脂汗を垂らした。
「このまま、舌を斬り落とすことだってできたんだ……10数える前に、池の中へ戻って下さい……安心して下さい、この子も懲りたでしょう……ダカラ、今スグ二戻ってクダサイヨ……サモナイト……」
ガタガタと大カエルは震えだした。
得体の知れない物を感じた。
なので青年がカウントを始めるより早く池の中へ去ってゆく。
さてと……お説教なんてした事がないんだ……
でも、叱らないといけない。結果がどうなろうとも
オレはこの子が大切なんだ、だからこそ……
フゥと息を吐いて青年は、チルノの方を見た。